※この作品はR-18です。

綾~許されぬ愛と家族の形~   作:松原隼人

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第23章 イタリアンレストラン

2015年8月。隼人35歳、綾34歳、愛菜13歳中学2年生、さくら10歳小学5年生。吉田先生は僕たちの事情をすべて高畑先生に話してくれていた。さらに、K女子中学校とK女子高校の校長先生とも情報を共有し、これ以上事実が広がらないよう細やかに配慮してくれていた。

 

8月のある日曜日の午後、吉田先生と高畑先生が僕たちの自宅マンションを訪ねてくれた。吉田先生と高畑先生は旧知の仲で、今でも月に一度、決まったイタリアンレストランに一緒に食事に行っているそうだ。リビングには僕と綾、愛菜とさくら、そして吉田先生と高畑先生の6人が集まった。高畑先生は、静かに自身の経験を語り始めた。

 

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「これは30年も前の話なんですけど、私は駆け出しの養護教諭で、毎日懸命に生徒たちの悩みに向き合っていました。そんな折、高校1年生の女子生徒が妊娠したことが分かったんです。それだけで学校中は大騒ぎになって……30年も前だから、今とは性に対する考え方も違うし、世間はとても保守的だったと思います。そして、さらに問題を大きくしたのが、父親が1歳年上の実のお兄さんだったことなんです」。僕と綾は、冷静さを保ちながらも、驚きを禁じ得なかった。30年前にも、僕たちと同じ状況の兄妹がいたんだ。

 

「その後、どうなったんですか?」と愛菜が真剣な表情で尋ねた。

 

高畑先生は続けた。「その女の子は産む決意をしました。周囲は大反対で、誰も二人の味方はいませんでした。私は担当養護教諭として二人の話を聞く中で、二人が本当に心から愛し合っていることが分かったんです。決して、嘘でも興味本位でもない、真実の愛を感じました」。愛菜の真剣な眼差しが、高畑先生の言葉に注がれていた。「そこで私はご両親に会い、彼女とお兄さんの偽りのない気持ちを伝えました。何度も何度もご自宅に通ってお話ししました。決して、産むことに賛成してほしかったわけじゃない。彼女とお兄さんが、本当にお互いのことを深く想い合っているということを、ただ分かってほしかったんです」。

 

「そのお兄さんと妹さんはどうなったんですか?」今度はさくらが尋ねた。高畑先生はさくらにわかるように、ゆっくりと話してくれた。「色々な人が色々なことを言う中で時間は過ぎていきました。そして、妊娠22週を過ぎたの。もう妊娠中絶ができなくなっていたのよ。妊娠中絶というのは、様々な理由で赤ちゃんを産むことができない人が、赤ちゃんを殺してしまうことなの。でも、妊娠中絶ができるのは、妊娠22週未満なのね。これは、日本の母体保護法という法律で決まっているのよ」。「殺しちゃえっていう人もいたの?」さくらは険しい表情で尋ねた。「そういう人もいたわね。でも、その妹さんとお兄さんは『命を守りたい』と言って決して譲らなかった。そして、産む決心をしたの」。「よかったね。赤ちゃん」。さくらが、目に涙を浮かべながら呟いた。「そして、女の子の赤ちゃんが生まれたのよ」と高畑先生が続けた。「その後、二人は高校を辞めて、妹さんは若いママとして懸命に子育てをしたわ。お兄さんは建設業に入り、毎日朝から晩まで働いたのよ。ママと赤ちゃんのためにね」。高畑先生の話を、愛菜とさくらが食い入るように聞いていた。「何年も何年も、二人の悪口を言う人がたくさんいたわ。でも、二人は負けなかった。いいえ、三人ね」。

 

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「今、そのママとパパと女の赤ちゃんはどうしているんですか?」と愛菜が真剣な表情で尋ねた。「その赤ちゃんは大きくなって、高校を卒業し、イタリアンレストランのお店に就職したのね。そこで、当時シェフ見習いで入っていた同じ年の男性とお付き合いをして、3年前に結婚したのよ。そして、昨年独立して、夫婦二人で自分たちのお店を持ったの。有紗と毎月行ってるイタリアンのお店がそこよ」と、高畑先生は教えてくれた。

 

「これからみんなでそのお店で食事でもしない?もう予約してあるの」と、吉田先生が提案してくれた。

 

「素敵ですね!」と、僕は思わず声が出た。こんな運命的な偶然があるなんて!高畑先生が語った過去の話が、今まさに僕たちの目の前で繋がろうとしていた。「ぜひ、ご一緒させてください!」と、僕と綾は前のめりになって言った。隣の愛菜も、目を丸くして「本当ですか?ぜひ行きたいです!」と興奮した様子で声を上げた。さくらも「うん!行く!」と元気よく頷いた。

 

高畑先生は、少し驚いた表情をしながらも、優しく微笑んでくれた。「そう、よかったわ。きっと、いいお話が聞けると思うわ」。吉田先生が予約してくれたというイタリアンレストランへ、僕たちは期待を胸に、これから向かうことになった。




松原隼人:1980年5月12日生まれ 1998年7月5日(18歳2か月)初体験
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松原 綾:1981年7月5日生まれ 1998年7月5日(17歳)初体験 桑都八王子東高校新体操部キャプテン
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松原愛菜(まな):2001年9月26日生まれ(長女)K大学付属K女子中学校2年生
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松原さくら:2004年11月10日生まれ(次女)小学校5年生
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松原忠晴:1950年8月31日生まれ 2006年7月7日死去(55歳) 隼人と綾の父
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松原清美:1952年3月10日生まれ 2006年6月15日死去(54歳) 隼人と綾の母
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吉田有紗:1964年生まれ 弁護士 K女子中学校高校出身 K女子高校同窓会長
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高畑みずき:1964年生まれ K女子高校養護教諭
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女の子の赤ちゃん:1986年生まれ
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シェフ見習い:1986年生まれ
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30年前の兄:1969年生まれ 女の子の赤ちゃんの父
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30年前の妹:1970年生まれ 女の子の赤ちゃんの母
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山田美咲:綾の桑都八王子東高校の同級生 新体操部副キャプテン ケーキ作りが趣味


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