※この作品はR-18です。

綾~許されぬ愛と家族の形~   作:松原隼人

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第51章 別れ

「田島蒼が死にました」。警察からの知らせに、僕たちはただ茫然とした。都内雑居ビルの外階段にロープをかけ、首吊り自殺したらしい。司法解剖の結果、死亡推定時刻は9月15日午前5時、死因は頚部圧迫による縊死だった。僕たちは安堵の気持ちと同時に、なぜ田島蒼は死のわずか3時間前に自宅に戻ったのか?という疑問に囚われた。翌日、田島蒼の自宅の家宅捜索が行われたが、特に事件に直結する証拠などは見つからなかった。

 

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9月17日午前。まだ自宅療養中のさくらとともに、僕たちは遅い朝食を取っていた。その時、郵便配達のバイクが自宅の前に止まった。ポトンと郵便物が投函される音がした。綾が取りに行き、一通の手紙を手に戻ってきた。「蒼君から手紙が来た・・・でも、本物かな?」綾は不安げにつぶやき、テーブルの上に置いた。

 

「どうしようか? これ」と綾が僕に尋ねてきた。僕は「いたずらの可能性もあるから、警察に連絡したほうがいい」と言った。するとさくらは、手紙を一目見るなり「これ、蒼君の字だ!」と叫んだ。彼女の目に涙が浮かんでいる。「蒼君、お酒を飲んだり、タバコを吸ったりするようになってから、字がぐちゃぐちゃになって。なんて書いてあるか読めないくらいだった。だけど、これは、一緒に勉強会してた時の、あの綺麗な字……。私、蒼君の字が好きだった」。

 

手紙には「松原さくら様」、差出人「田島蒼」と丁寧な字で書かれていた。消印は9月15日。蒼君が自ら命を絶った、あの日の日付だ。僕と綾は、黙って手紙をさくらに手渡した。

 

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さくらは、その手紙を震える手で開いた。

 

「松原さくら様。あのような、さくらちゃんを傷つけることをしてしまい、大変申し訳ありませんでした。お父さん、お母さん、お姉さんの愛菜さん、妹さんの結絆ちゃん、大切なご家族を傷つけてしまい、本当に申し訳ありませんでした。

 

中学1年生の頃、父が家を出て、そして母もいなくなり、とても不安でした。家の中は誰もいなくなり、だんだんと食べるものもなくなっていきました。だけど、さくらちゃんが作ってくれるお弁当だけが、僕にとって唯一の楽しみでした。一緒に学校に行ったり、勉強会をしたり。毎週水曜日の部活の練習日に、さくらちゃんと一緒に帰るのが、僕にとって何よりも嬉しかった。

 

居酒屋のバイトは本当につらかったです。酔ったお客さんが、まだ高校生の僕に無理やりお酒を飲ませてきました。タバコもいやいや吸っていました。だけど、生きていくためには、お金を稼がなくてはなりませんでした。だから、頑張ってバイトの雰囲気に慣れようとしました。だけど、周りの友達は大学進学の話をし始め、僕は一人で孤独な気持ちでした。僕も大学で勉強したかった。さくらちゃんと一緒に勉強したかった。なんで僕ばかりこんなに辛いんだろうって。そして、お酒も自分から飲むようになりました。お酒をたくさん飲むと、嫌なことが忘れられると思いました。だけど、だんだんと、自分で自分が嫌になってきました。

 

今度生まれてくるときは、ちゃんとお父さんとお母さんがいる普通の家に生まれて、さくらちゃんに会いたいです。

 

最後にもう一度、さくらちゃん、お父さん、お母さん、愛菜さん、結絆ちゃん、本当に申し訳ありませんでした。」

 

9月15日午前2時 田島蒼

 

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その手紙に綴られた、悲痛な若者の叫びに、僕と綾は胸が締め付けられるように痛んだ。「蒼君、苦しかったんだね……ごめんね、蒼君」。さくらの目からは、次から次へと大粒の涙がとめどなくこぼれ落ちた。彼女は、彼の苦しみを理解し、救えなかった自分を責めているようだった。

 

容疑者死亡により、捜査は打ち切りとなった。手紙は警察に提出され、数日後にさくらに返還された。警察が蒼君の両親の行方を捜したが、結局分からず、行政も戸籍などを辿って親族に遺体の引き取りを依頼したが、いずれも断られた。遺体の引き取り手がないまま、行政により火葬の日時が決まった。

 

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火葬当日には、たくさんの人が集まった。僕、綾、愛菜、さくら、結絆。そして、真一郎さん、由美子さん、結翔君。吉田先生、高畑先生といった、これまで僕たち家族を支えてくれた人々。さらに、学校関係者や、かつてのサッカー部の仲間たちも数人来ていた。

 

火葬場職員より「では、最後のお別れになります。棺の中にお入れしたいものがあればどうぞ」と告げられ、棺が開けられた。サッカー部の仲間たちから順番に最後のお別れが始まった。そして、最後に僕と綾、そしてさくらで、蒼君との別れを告げた。

 

さくらは、しばらく蒼君の顔をじっと見つめ、その冷たくなった頬にそっと触れた。「死んじゃうと、こんなに冷たいんだね……」。蒼君の頬に、さくらの温かい涙が、一筋、また一筋とこぼれ落ちた。

 

さくらは、蒼君との大切で、そしてかけがえのない思い出の品々を3つ、慈しむように、ゆっくりと棺の中に入れていった。

 

1つ目は、彼からもらった誕生日プレゼントであり、初めてのディープキスの時に互いの唾液を拭った、二人だけの愛情の象徴である白いハンカチ。

 

2つ目は、付き合いたての頃の、まだ初々しい二人の笑顔が写る写真。それは、輝いていた彼の生きた証だった。

 

そして、3つ目は、彼の魂からの最後の叫びであり、さくらへの切ない想いを綴ったあの最後の手紙。

 

さくらは、一つ一つ、その品に語りかけるように棺の中へ収めた。

 

「蒼君、さようなら……また、会おうね」。

 

さくらの言葉が、悲しいほどに澄みわたり静かに響いた。その声とともに、そっと棺の蓋が閉じられた。

 

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火葬は2時間ほどで終了し、収骨が行われた。真一郎さんが色々と手を尽くして田島家のお墓を探してくれたが、見つからなかった。このため、蒼君の遺骨は5年間保管された後、合葬墓へ合同で埋葬されることになった。いわゆる「無縁仏」である。

 

蒼君のご両親は長期間の住民税の滞納があり、蒼君の自宅と土地は東京都により差し押さえられ、競売にかけられた。大阪の建設業者が落札し、家は更地にされ、冷たいコインパーキング場へと姿を変えた。

 

蒼君と通った通学路、蒼君の家での勉強会へ、胸を弾ませながら向かった道、待ち合わせた近くのコンビニ……。それらすべての思い出の場所が、今やこの無機質なコインパーキング場のそばに、ひっそりと存在する。さくらが今、何を思い、何を考えているのか、その心の奥底は誰にも分からない。しかし、さくらの未来が、必ず明るいものであることを、父としては願わずにはいられない。がんばれ、さくら。




松原隼人:1980年5月12日生まれ 1998年7月5日(18歳2か月)初体験 システムエンジニア 月収40-50万円 身長175cm
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松原 綾:1981年7月5日生まれ 1998年7月5日(17歳)初体験 桑都八王子東高校新体操部キャプテン イラストレーター ペンネーム愛桜(あいさ) 月収50-80万円 身長163cm Fカップ
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松原愛菜(まな):2001年9月26日生まれ(長女)K大学法学部法学科3年 新体操部 弁護士志望 身長165cm Eカップ 2020年3月(18歳6か月)初体験
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松原さくら:2004年11月10日生まれ(次女)K大学付属K女子高校3年 新体操部 産婦人科医志望 身長155cm Bカップ 2020年3月(15歳)ファーストキス 2022年8月レイプ未遂被害
____________________________________________松原結絆(ゆいな):2017年2月6日生まれ(三女)
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松原忠晴:1950年8月31日生まれ 2006年7月7日死去(55歳) 隼人と綾の父
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松原清美:1952年3月10日生まれ 2006年6月15日死去(54歳) 隼人と綾の母
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小川結翔(ゆいと):2001年生まれ K大学法学部政治学科3年 身長180cm イケメン 成績優秀 バドミントン部 2017年7月(高1)から愛菜と交際 一人っ子 巨根(平常時:長さ13cm、太さ3cm 勃起時:長さ18cm、太さ5cm)睾丸は砲丸投げのボールくらい 政治経済に興味があり、将来は新聞やテレビ報道の分野に進みたい
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小川真一郎:1961年生まれ 結翔の父 区議会議員 子供の教育問題に取り組む文教委員 巨根
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小川由美子:1964年生まれ 結翔の母 専業主婦 フラワーアレンジメント教室を開いている
____________________________________________田島 蒼(あお):2004年4月12日生まれ K大学付属K男子高校3年 さくらと同級生の彼氏 サッカー部 身長164cm 2017年に父は家出 2021年3月に母は失踪 2022年9月15日首吊り自殺   
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吉田有紗:1964年生まれ 弁護士 K女子中学校高校出身 K女子高校同窓会長
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高畑みずき:1964年生まれ K女子高校養護教諭
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茗ケ原(みょうがはら)みゆき:1986年生まれ 2011年25歳で妊娠 2012年26歳で結婚 2014年28歳で独立しイタリアンレストラン「Mother」
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茗ケ原(みょうがはら)健一:1986年生まれ みゆきの夫 婿養子
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茗ケ原(みょうがはら)裕之:1969年生まれ 陽子の兄 みゆきの父
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茗ケ原(みょうがはら)陽子:1970年生まれ 裕之の妹 みゆきの母 2014年乳がんで死去(44歳)
____________________________________________鈴木聖羅(せいら):2001年生まれ 愛菜の中学校からの大親友 K大学3年 新体操部 彼氏は健太君
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山田美咲:綾の桑都八王子東高校の同級生 新体操部副キャプテン ケーキ作りが趣味
____________________________________________水野さん:2020年当時30歳くらい 綾のイラスト担当敏腕編集者
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