※この作品はR-18です。

青い蕾の誘惑  幼い少女のエロ短編集   作:みなぽん

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埼玉県 K市 夕陽団地 美咲 中学1年生との思い出。

 僕が母と暮らした団地は、大きな工場地帯のはずれにあった。

 

 昼も夜も、遠くで機械が唸っている。鉄を打つ鈍い音や、蒸気を吐くような低い響きが、窓を閉めていても聞こえてきた。空はいつも少し白く濁っていて、洗濯物には油の匂いがつく。団地の壁は煤け、階段の踊り場には誰かの吸い殻が落ちていた。

 

 母はいわゆる夜の仕事をしていた。

 

 夕方になると派手な化粧をして、細いヒールを鳴らしながら出ていく。僕が学校から帰っても、家には誰もいない。冷蔵庫にはコンビニのおにぎりと、ラップをかけた惣菜。机の上には「食べてね」とだけ書かれたメモ。

 

 そんな毎日だった。

 

 別に不幸だと思ったことはない。ただ、世界のどこにも、自分の居場所みたいなものが無い気がしていた。

 

 学校でも僕は静かな方だった。友達がいないわけじゃない。でも、誰かの輪の真ん中に入ることはなかった。

 

 中学二年の六月、雨の降る放課後だった。

 

 商店街を抜けた先の、小さな公園で彼女と出会った。

 

 錆びたブランコに座っていたその子は、黄色いレインコートを着ていた。雨はもう止んでいたのに、フードを深く被って、じっと空を見ていた。

 

 年は同じくらいに見えた。

 

 僕が公園を通り過ぎようとすると、その子は急に立ち上がって、僕に向かって言った。

 

「ねえ、いま、四時二十三分?」

 

 唐突だった。

 

 僕はスマホを見て、「……二十四分」と答えた。

 

 すると彼女は、ぱっと顔を明るくした。

 

「おしかったぁ」

 

 その笑い方は、幼い子供みたいに無防備だった。

 

 あとで知ったことだけど、彼女は軽い知的障害を持っていた。難しい計算や、人との会話の順番が少し苦手で、学校も特別支援学級に通っていた。

 

 名前は美咲という。

 

 僕らの団地の、二棟隣に住んでいた。

 

「お兄ちゃん、いつもひとり?」

 

 二回目に会ったとき、美咲はそう聞いてきた。

 

 夕焼けの公園だった。ブランコをゆっくり漕ぎながら、美咲は僕を見た。

 

「まあ、そうかも」

 

「わたしも」

 

 彼女は笑った。

 

「お母さん、夜いないから」

 

 その言葉に、僕は少し驚いた。

 

 美咲の母親も夜の仕事をしていた。父親はいないらしい。詳しくは話さなかったけれど、きっと僕と似たような暮らしなんだろうと思った。

 

 それから僕らは、自然と一緒にいるようになった。

 

 学校帰り、公園で会う。

 

 コンビニで百円のアイスを買って、半分ずつ食べる。

 

 団地の屋上に座って、工場の煙突から出る煙を眺める。

 

 美咲はよく喋った。

 

「わたしね、パン屋さんの匂い好き」

 

「カラスは頭いいんだよ」

 

「夜の工場って、宇宙船みたい」

 

 話はあちこち飛んだけれど、不思議と退屈しなかった。

 

 美咲は人の顔色を読むのが苦手だった。でも、そのぶん思ったことを真っ直ぐ口にした。

 

「悠くんは、さびしい顔してる」

 

 ある日、団地の階段でそう言われた。

 

 僕は少し笑って、「そんな顔してる?」と返した。

 

「うん。でも、わたしといるとき、ちょっとだけちがう」

 

 胸の奥が、静かに熱くなった。

 

 誰かにそんなふうに見てもらえたことなんて、今まで無かった。

 

 夏になる頃には、美咲は毎日のように僕の部屋へ来るようになった。

 

 古い扇風機の前で二人並んで、アイスを食べる。

 

 テレビではくだらないバラエティが流れていて、窓の外では蝉が鳴いていた。

 

「悠くん」

 

「ん?」

 

「わたし、大人になるの、ちょっとこわい」

 

 美咲はぽつりと言った。

 

「なんで?」

 

「みんな、いなくなるから」

 

 その声は小さかった。

 

「学校の人も、先生も。お母さんもたまに帰ってこないし」

 

 彼女はうつむいて、自分の指をぎゅっと握った。

 

「だからね、悠くんもいなくなったら、やだ」

 

 僕は何も言えなかった。

 

 代わりに、テーブルの上に置かれた彼女の手に、そっと触れた。

 

 美咲は驚いた顔をして、それから少しだけ笑った。

 

 窓から吹く風が、カーテンを揺らしていた。

 

 工場のサイレンが遠くで鳴る。

 

 灰色の団地の一室で、僕たちは初めて、ちゃんと誰かと一緒にいるという気持ちを知ったのかもしれなかった。

 

「いなくなったら、やだ」

 

 その言葉が、僕の胸の内側に張り付いた。

 

 美咲の握りしめた指先は白くて、小さな子供の手みたいだった。僕はその手に触れたまま、どうすればこの不安を取り除けるのかと考えた。

 

 言葉はすぐに見つからなかった。代わりに、頭の片隅に浮かんだのは、親父が隠していた週刊誌のグラビアページで見た光景だった。男と女が、互いを確かめるように抱き合っている写真。大人たちは、言葉以外の方法で誰かを繋ぎ止めることができるらしい。

 

 僕は、どうしていいかわからないまま、美咲の肩に手を回した。

 

 引き寄せると、彼女の体は驚くほど軽かった。薄い夏服の下にある華奢な骨格が、僕の腕に直接伝わってくる。不器用な抱擁だった。角度がわからず、体のどこをどう合わせればいいのかもわからない。ただ、離さないようにと、ぎこちなく腕に力を込めた。

 

 美咲の髪からは、安いフルーツのような甘いシャンプーの匂いがした。鼻先を掠めるその香りと、腕の中にある柔らかい感触が、僕の思考を白濁させていく。

 

 週刊誌には、こういう時に唇を重ねるものだと書いてあった気がした。

 

 僕は顔を近づけた。美咲は目を丸くして僕を見上げている。

 

 触れ合った唇は、少し冷たくて、そして熱かった。歯がぶつかって、鼻先が圧迫されて、キスと呼ぶにはあまりに拙い形だったけれど、彼女の唇の湿り気と柔らかさが、電流のように僕の体を駆け抜けた。

 

 美咲は強張ったまま動けずにいたけれど、拒絶はしなかった。ただ、僕の胸に手のひらを添えて、小さく震えていた。

 

 少女の匂い。肌の温かさ。それらが僕を包み込み、息を苦しくさせる。

 

 心臓が早鐘を打つ。下半身に微かな疼きが生まれて、僕はどうしていいかわからず、ただ彼女を強く抱きしめることしかできなかった。

 

 

 それは大人の愛情の形などではなく、ただの迷子が手探りで相手を求めるような、拙くて痛々しい儀式だった。

 外では工場のサイレンが鳴り響き、蝉が飽きもせずに叫んでいる。その騒音とは対照的に、この部屋の中だけが、僕たちの浅い呼吸と、とめどなく溢れる幼い興奮に満ちていた。僕たちはまだ何も知らないまま、ただお互いの体温だけを頼りに、暗がりの中で更けゆく夏の午後に身を委ねていた。

 

「見せて」

 

喉が渇いたみたいに、声が掠れた。

 

何を言っているのか、自分でもわからなかった。ただ、この壁のない肌と肌の触れ合いだけでは足りないと、体が訴えていた。もっと深く、彼女のすべてを知りたい。彼女がそこにいるという確証を、形あるものとして掴みたかった。

 

美咲は僕を見つめたまま、きょとんとしていた。その瞳には、拒絶も羞恥もなく、ただ純粋な困惑だけが浮かんでいた。

 

「全部見たいんだ。美咲のこと」

 

僕の言葉は、まるで呪文のようだった。彼女にとっては、意味をなさない音の羅列かもしれない。それでも、僕の切羽詰まった響きだけは伝わったらしい。

 

美咲は少し考え込むように首を傾げて、それからゆっくりと、自分の着ていた薄いTシャツの裾に手をかけた。

 

僕は息を止めて見守った。

 

彼女の動作はぎこちなく、もどかしいほど遅かった。布地が肌から剥がれる微かな音。白い肌が少しずつ露わになっていく。

 

脱ぎ捨てられた服は、床に音もなく落ちた。

 

そこにあったのは、まだ誰の目にも触れたことのないような、未熟な女体だった。

 

肋骨の薄い陰影が浮き出る脇腹。胸の上には、桃の先端のような淡い色の小さな膨らみがかろうじて存在を主張しているだけだった。腰回りは細く、子供のようでありながら、どこか女の柔らかな曲線を予感させた。

 

僕は眩暈がした。

 

それは欲望だったのかもしれないし、あるいは残酷なほどの無防備さを目の当たりにしたことへの恐怖だったのかもしれない。

 

美咲は両手で自分の体を隠そうともしなかった。ただ、僕の視線を真正面から受けて立っていた。その姿は、まるで神様に捧げる生贄のように無垢で、そして酷く危うかった。

 

僕は震える手を伸ばした。

 

指先が彼女の肌に触れると、微かな電流が走った。温かい。吸い付くような肌の質感。

 

胸の膨らみに手を這わせた。手のひらに収まるかどうかのその小さな丘は、信じられないほど柔らかかった。指にわずかな弾力が伝わる。僕は恐る恐る、その先端にある薄い桜色の突起に触れた。

 

美咲の肩がぴくりと跳ねた。

 

「……ん」

 

唇から小さな吐息が漏れる。

 

僕は確かめたかった。彼女がここにいることを。僕の好きなようにしていい存在であることを。僕は顔を近づけ、その幼い膨らみに唇を寄せた。

 

舌先で転がすように舐めると、ほのかな塩味と、彼女自身の甘い匂いが口中に広がった。そして、そのまま吸い付いた。

 

「あっ……ゆう、くん……」

 

美咲の声が頭上で響く。その声は拒絶ではなく、ただ未知の感覚に戸惑う弱々しいものだった。

 

僕は夢中で吸い続けた。赤ん坊が母乳を求めるように、ただひたすらに。彼女の体が僕の唇の中で形を変えていく感触。

彼女の心臓の鼓動が、唇を通して僕に直接伝わってくる。

 

彼女の手が僕の髪に添えられた。爪が僕の頭皮を軽く引っ掻く。

 

窓の外では、相変わらず蝉が鳴き喚き、工場の煙突は白い煙を吐き続けている。この部屋だけが、世界から切り取られたように静かで、僕のむさぼるような水音と、美咲の頼りない呼吸音だけが響いていた。

それは愛ではなかったかもしれない。ただの孤独な子供たちが、お互いの体温を確かめ合うための、拙い模倣。それでも僕は、彼女の小さな胸に顔を埋めながら、この温もりを手放すことができないと思っていた。この脆い約束が永遠に続くわけではないと知りながら、ただ盲目的に、彼女の未熟な体に縋り付いていた。

 

「ねえ、ゆうくん」

 

美咲がもじもじと膝を擦り合わせた。さっきまで胸を吸われていたせいで、Tシャツを脱ぎ捨てた上半身は裸のままだ。薄暗い部屋の中で、その肌は陶器のように白く浮き上がっていた。

 

「お股、むずむずする」

 

彼女は無邪気に言った。大人が使うような言葉を、まるで腹痛を訴えるみたいにあっけらかんと口にする。その無防備さが、僕の腹の底をじわりと熱くした。

 

僕は唾を飲み込んだ。

 

「見せて」

 

またその言葉だった。僕の口から出るのは、いつもその短い呪文だけだ。

 

美咲はこくりと頷いて、ベッドの上に腰を下ろした。そして、スカートのホックに手をかけた。

 

布が擦れる音。スカートが足を滑り落ちる。残されたのは、白地に小さなイチゴのプリントが入った綿のショーツだけだった。

 

その布地の中心が、ほんのりと濡れて色を変えているのが見えた。

 

僕は膝をつき、彼女の足の間に体を滑り込ませた。荒い息遣いが自分でもわかる。目の前のその布の染みに、酷く惹きつけられた。

 

「脱がしていい?」

 

聞くと、美咲は小さく「うん」と答えた。

 

僕は指をショーツのゴムにかけ、ゆっくりと引き下ろした。彼女が腰を少し浮かせて協力してくれる。布が剥がれ、彼女の秘部が露わになった。

 

そこには、淡い桃色の割れ目があった。まだ誰の手にも触れたことのないような、幼い花びら。そして、その中心からは透明な蜜が糸を引いて溢れ出していた。

 

「濡れてる」

 

僕はうわごとのように呟いた。

 

「わたしも、よくわかんない。でも、むずむずして、あったかいの」

 

美咲は恥ずかしがる様子もなく、ただ不思議そうに自分の股間を見下ろしていた。

 

僕は我慢できなかった。顔を近づけ、その濡れた割れ目に唇を寄せた。

 

最初は恐る恐る、舌先でつつくように舐めた。

 

「ひゃっ!」

 

美咲の体が大きく跳ねた。

 

塩辛いような、そしてどこか甘いような、今まで嗅いだことのない匂いと味が鼻腔と舌を満たした。僕は夢中になった。舌を割れ目の間に差し入れ、溢れる蜜をすすり取った。

 

「あっ、あっ……なに、それ……ゆうくん、変な感じ……!」

 

美咲は僕の頭を押し退けようと手を置いたが、力は弱々しく、むしろ僕の髪を掻き乱すような動作になった。

 

僕は構わず舐め続けた。上へ下へ、舌を這わせる。小さな豆のような突起を見つけ出し、そこを執拗に攻めた。

 

「いやっ! そこ、だめっ! 頭、おかしくなるっ!」

 

彼女の喘ぎ声が高くなっていく。太ももが僕の頭を挟み込むように震えている。けれど僕は顔を離さなかった。彼女がここにいるという証拠を、この味と匂いと熱から剥が取りたかった。

 

「ああっ! あっ、あっ、なんか、くるっ! 来るっ!」

 

美咲の背中が弓なりに反った。

 

そして次の瞬間――

 

「きゃああああああっ!!」

 

それは人間の声とは思えない、まるで小さな獣が喉の奥から絞り出したような悲鳴だった。

 

彼女の体が痙攣し、僕の顔に向かってさらに大量の蜜が噴き出した。僕はそれを全身で受け止めながら、それでもまだ舌を休めなかった。

 

ビクビクと体を震わせながら、美咲はようやく力を抜いた。荒い呼吸を繰り返すその顔は真っ赤に上気し、目には生理的な涙が浮かんでいた。

 

「……ゆうくん……」

 

彼女はまだ震える手で、僕の頬に触れた。その指先は汗で湿っていた。

 

「すごかった……頭の中、真っ白になっちゃった」

 

僕は彼女の太ももに頬を擦り寄せた。彼女の匂いと味が、僕の顔全体に染み付いていた。

 

外ではまだ蝉が鳴いていた。

 

美咲の表情が、僕の理性を完全に焼き尽くした。

 

オーガズムの余韻に浸る彼女の顔は、汗と涙でぐしゃぐしゃだった。焦点の定まらない瞳、半開きの唇から漏れる熱い吐息、真っ赤に染まった頬。それは「壊れてしまった人形」のように無防備で、そしてどうしようもなく淫靡だった。

 

僕の股間で、鈍い鉄の塊のようなものが脈打ち、痛いほどに張り詰めていた。もう限界だった。見ているだけで、頭の中が白く染まっていく。

 

僕はズボンと下着を乱暴に引き剥がした。勃起したモノが反り返り、先端から先走りの液が糸を引いている。それは僕の意志とは無関係に、獲物を目の前にした野獣のように猛っていた。

 

「美咲……」

 

僕は彼女の膝を割り開き、その間に体を滑り込ませた。濡れそぼった彼女の秘部に、硬く脈打つ先端を押し当てる。

 

熱かった。彼女の熱が、先端から直に伝わってくる。

 

「ゆう……くん? なに……?」

 

放心状態だった美咲が、太ももの間に異物が触れた感触にハッとしたように目を見開いた。

 

「入れるよ」

 

僕は宣告した。許可を求める言葉じゃなかった。ただの事実の確認。

 

「えっ……? 入れるって……あっ!」

 

僕は腰を一気に押し込んだ。

 

「あぐっ!!」

 

キツかった。想像を絶する抵抗。肉の壁が僕を押し戻そうとする。でも、僕は止まらなかった。体重をかけ、ねじ込むようにして先を進める。

 

ぷつり、とした感触。

 

何かが弾け飛んだのがわかった。その瞬間、美咲の体が弓なりに反り返り、喉が引きつったような悲鳴が響いた。

 

「いぃゃあああっ!! 痛い! 痛いよぉっ!!」

 

美咲は必死に身をよじって逃げようとした。腰を引っ込み、僕の腹を弱い手で押し退けようとする。その瞳には恐怖が宿り、大粒の涙がこぼれ落ちた。

 

「いたい! おおきい! やだ! 抜いてぇっ!」

 

彼女の拒絶の声が、逆に僕の嗜虐心を煽った。

 

逃がさない。

 

僕は美咲の細い両手首を片手で掴み上げ、ベッドの頭板に押し付けた。もう片方の手で彼女の腰をがっしりと掴み、逃げる動きを封じ込める。

 

「いやだ! ゆうくん! やめてぇっ!」

 

僕は聞こえないふりをした。あるいは、本当に聞こえていなかったのかもしれない。耳の中で血液が煮えたぎるような音がして、彼女の悲痛な叫びは遠いノイズのようにしか響かなかった。

 

僕は腰を引き抜きかけ、そして再び奥深くまで突き上げた。

 

「あああっ!!」

 

ビクンッ! と美咲の体が跳ね上がる。

 

一度リズムを掴めば、もう止まることはできなかった。僕は狂ったように腰を振った。前後左右、無秩序に。ただひたすらに、自分の欲望をぶつけるために。

 

肉と肉がぶつかる卑猥な音。濡れた秘部が勃起したモノを飲み込み、吐き出す水音。ベッドが軋む音。そして、美咲の絶叫。

 

「あっ! あぐっ! ああっ! やだ! やだぁっ! おなか……おなか壊れるぅっ!」

 

彼女の言葉は悲鳴となって部屋中に響き渡った。痛みと恐怖で顔を歪め、涙と鼻水でぐしゃぐしゃになったその表情を、僕は見下ろしながら興奮を高めていった。

 

この細い体の奥深くに、僕が入り込んでいる。僕が彼女を支配している。その事実が、背筋を震えるほどの快感をもたらした。

 

「美咲……美咲……!」

 

僕は彼女の名前を呼び続けた。それは愛の言葉ではなく、呪詛のようだった。

 

逃げようと身をよじる彼女の体を力でねじ伏せ、幼い秘裂を容赦なくこじ開ける。きつい肉の壁が僕を締め上げ、吸い付いてくる感触が、脳髄を直接撫でるように心地よかった。

 

工場のサイレンが遠くで鳴っている。

 

でも、この部屋の中だけは、僕の激しい息遣いと、肉がぶつかる音と、彼女の泣き叫ぶ声だけで満たされていた。

 

僕は機械だった。ただピストン運動を繰り返す、欲望の塊。

 

美咲の抵抗は次第に弱くなっていった。痛みに耐えきれず、ただ喘ぎ泣くことしかできなくなっていた。

 

「あ……あ…いや……ゆうくん……おおきい……」

 

虚ろな目で天井を見つめ、ポロポロと涙を流しながら、彼女は僕の動きに身を任せていた。

 

その無惨な姿が、僕の最後の理性を断ち切った。

 

腹の底から熱い塊がせり上がってくる。限界だった。

 

「美咲……! 出す……! 出すよ……!」

 

僕は彼女の腰を強く引き寄せ、最奥まで深く突き入れた。

 

「あああっ!!」

 

美咲の背中が再び反り上がる。

 

そのまま、僕は彼女の中にすべてを吐き出した。

 

ドクッ! ドクッ! ドクッ!

 

脈打つたびに、熱い液体が彼女の子宮めがけて注ぎ込まれる。僕の体が痙攣し、強烈な快感が脳内を白く染め上げた。

 

僕は彼女の上に覆いかぶさったまま、果てるまで腰を震わせ続けた。

 

長い長い時間が過ぎたように感じた。

 

ようやく脈動が収まり、僕は力が抜けたように彼女の上に崩れ落ちた。

 

汗と体液の匂いが充満する部屋。

 

美咲は動かなかった。ただ、規則的に胸を上下させているだけだった。その太ももの間には、処女の血と僕の白濁液が混ざり合ったものがシーツに滲んでいた。

窓の外で、蝉の鳴き声だけが変わらず響いていた。

 

事後の静寂は、耳鳴りのように痛かった。

 

僕はまだ彼女の中にいた。萎んでいく自分を感じながら、荒い呼吸を繰り返す美咲の背中を見下ろしていた。彼女はシーツに顔を伏せたまま、肩を震わせて泣いていた。嗚咽は漏らさず、ただ規則的に痙攣するように体を震わせている。太ももの内側を伝う赤黒い液体が、汚れたシーツに新しい染みを作っていった。

 

僕はゆっくりと体を引き抜いた。

ぬぷり、と湿った音がして、白濁とした液体と血が混じり合ったものが彼女の股間から溢れ出した。その無惨で淫らな光景を目にした瞬間、僕の腹部の奥で、鎮まったはずの欲望が再び鎌首をもたげた。

 

彼女は壊れていた。僕が壊した。

泣き濡れた顔、赤く腫れた唇、力なく投げ出された手足。そのすべてが僕の犯した罪の痕跡であり、それなのに、その無防備なありさまが僕を酷く興奮させた。自分の所有物になったという確信。彼女の体に刻み込まれた僕の痕跡。それが、理性を再び焼き尽くしていった。

 

「美咲」

 

僕は彼女の腰に手をかけた。彼女はビクリと体を強張らせたが、抵抗する力は残っていなかった。

 

「四つん這いになって」

 

命令だった。彼女は理解できないのか、ただ恐怖で目を見開いて僕を振り返った。

 

「して」

 

低い声で繰り返すと、彼女は条件反射のように動いた。震える腕で体を支え、膝を折って、汚れたシーツの上に尻を突き出す格好になった。

 

その姿は、人間の尊厳を剥ぎ取られた、ただの雌のようだった。白く華奢な背中の曲線。その下にある、薄い桃色の割れ目はまだ僕を受け入れた名残で赤く充血し、粘液にまみれてひくついていた。

 

僕は後ろから覆いかぶさった。

 

「やっ……もう、やだぁ……」

 

美咲の弱々しい懇願を無視して、再び硬直した僕自身をその割れ目に押し当てた。前の行為で伸びきってはいたが、それでもまだ異物を受け入れるには狭すぎる穴。僕は容赦なく腰を前に突き出した。

 

「あぐっ!!」

 

肉をこじ開ける感触。彼女の中は熱く、そして痛いほどに締め付けた。逃げようと腰を振る彼女の骨盤を強引に掴み止め、奥までねじ込む。

 

ズン! ズン! ズン!

 

前よりも激しく、深くを狙う。ただの動物的な交尾だった。彼女の背中越しに聞こえる嗚咽と、肉がぶつかる濡れた音だけが部屋に響く。

 

「あっ! ああっ! ゆうくん……! おなか……おなか壊れる……! やだ……抜いて……!」

 

美咲はシーツを掻きむしりながら泣き叫んだ。けれどその声は、僕の背徳的な快感を増幅させるスパイスにしかならなかった。彼女の苦痛が僕の支配を証明している。その事実に、僕は頭がおかしくなりそうだった。

 

僕は彼女の腰を自分の方へ強く引き寄せながら、激しく腰を打ち付けた。彼女の華奢な体が前へのめりそうになるのを、僕の腕が支える。その力の強さ、彼女の無力さ。すべてが僕を夢中にさせた。

 

「美咲……美咲……!」

 

僕は彼女の汗ばんだ背中に顔を埋め、首筋に噛み付くようにキスをした。彼女の匂い、彼女の悲鳴、彼女の中の熱。それらすべてが僕を押し上げていく。

 

限界は突然やってきた。

 

「出る……! また出るっ……!」

 

僕は彼女の奥深くに先端を押し付け、二度目の放流を始めた。

 

ドクッ! ドクッ!

 

彼女の子宮に直接注ぎ込むような感覚。僕は彼女の背中に体重を預けたまま、果てるまで腰を震わせ続けた。彼女はただ「あ……あ…」と力のない声を漏らすだけだった。

 

長い放出が終わったあと、僕は彼女の中から抜くことなく、そのまま余韻に浸った。満たされた感覚。そして、彼女を完全に自分のものにしたという征服感。

 

僕はさらに昂ぶっていた。まだ足りない。もっと彼女を味わいたい。

 

僕は体を離し、ぐったりとベッドに崩れ落ちた美咲の肩を掴んで、無理やり体を反転させた。

 

「美咲、こっち向いて」

 

彼女は抵抗する気力も失っているようだった。虚ろな目で天井を見つめたまま、されるがままになっている。

 

僕はベッドの縁に腰掛け、彼女の頭を自分の股間へと引き寄せた。

 

まだ彼女の体液と血が混じり合って汚れた僕のモノが、彼女の目の前にそびえ立っていた。

 

「舐めて」

 

僕は言った。

 

「きれいにして」

 

これはただの気まぐれだった。支配の果てに求めた、更なる屈辱的な奉仕。週刊誌で見た知識が、またしても僕を突き動かした。

 

美咲は焦点の合わない目で僕のモノを見つめた。そして、素直に従おうとしたのだろう。ゆっくりと顔を近づけ、小さな口を開いた。

 

彼女の唇が僕を包み込もうとした、その瞬間だった。

 

バキッ!!

 

鋭い激痛が股間を貫いた。

 

「ぐああああっ!!」

 

僕は絶叫した。

 

信じられない痛みだった。まるで肉を食いちぎられるような、視界が白く飛ぶほどの激痛。

 

反射的に彼女の頭を突き飛ばした。

 

美咲はベッドの上に転がった。その口元には、血がついていた。僕の血だ。

 

彼女は僕を見ていた。もう虚ろな目ではなかった。そこには純粋な殺意にも似た、強烈な拒絶の炎が宿っていた。獲物に噛み付いて逃げる、小さな野生動物のような目。

 

「……っ」

 

彼女は何も言わなかった。ただ、凄まじい形相で僕を睨みつけたまま、ベッドから転げ落ちた。

 

足がもつれながらも、必死に立ち上がる。裸のまま、僕の白濁液を太ももに垂らしながら、彼女はドアに向かって走った。

 

「まっ……待て!」

 

激痛に悶えながら、僕は手を伸ばした。しかし、痛みで立ち上がることさえできない。

 

ガチャッ!

 

ドアが開け放たれ、彼女の裸の背中が廊下へと飛び出していくのが見えた。重い金属音を立てて、ドアが閉まった。

 

残されたのは、痛みと静寂だけだった。

 

股間から滴る血を見て、僕はようやく理解した。

 

彼女は行ってしまった。

 

あの灰色の団地の廊下を、裸のまま走って。誰にも見つからないように隠れるようにして。二度と僕の前には現れないだろう。

 

窓の外では、工場のサイレンが遠くで鳴っていた。

蝉の声はもう聞こえなかった。

部屋の中には、汗と体液の匂いが充満していて、それがまるで僕たちの終わりを告げる腐臭のように感じられた。

 

僕はシーツに顔を埋めて、声を殺して泣いた。

誰かを繋ぎ止めるはずだった行為が、すべてを壊してしまったことを悟りながら。ただ、股間の鈍い痛みだけが、これが現実なのだと冷酷に告げていた。

 

⭐️大人たち

夏が終わるのを待たずに、僕の世界は完全に色を失った。

 

あの日以来、美咲は公園に現れなかった。団地の二棟隣の部屋の窓も、いつも閉ざされたままだ。時折、彼女の母親が薄いカーテンの隙間から顔を出すことがあったけれど、その表情はいつも疲れ切っていて、何も映していなかった。

 

僕は毎日、学校が終わるとあの公園に行った。錆びたブランコに座り、黄色いレインコートの少女が現れないかと、ただじっと待ち続けた。でも、彼女は来なかった。

 

代わりに耳に入ってきたのは、噂話だった。

 

「二棟の子ね、なんか変わっちゃったみたいよ」

「ああ、あの子? なんかこう、目がうつろになったっていうか……」

「お母さんがね、男を連れ込んでるのを見ちゃったんだって」

 

大人たちのひそひそ話は、僕の胸を冷たい棘で刺した。

 

僕が壊したのだ。

あの日、僕の拙い暴力が、彼女の中にある何か大切なものを粉々に砕いてしまったのだ。

 

九月になった。朝夕は少し涼しくなり、蝉の声は途切れがちになっていた。でも、工場の排気音は相変わらず低く唸り続けていた。

 

その日の放課後、僕は商店街の裏道を歩いていた。時間潰しだった。家に帰っても、ただ空っぽの部屋が待っているだけだったから。

 

ふと、見慣れた背中が目に入った。

 

美咲だった。

 

彼女は養護学校の指定リュックを背負い、とぼとぼと歩いていた。その足取りは重く、まるで魂が抜け落ちてしまったかのようだった。周囲を警戒する様子もなく、ただ無心にアスファルトの路面を見つめながら歩いている。

 

僕は声をかけようとした。謝らなきゃいけないことがある。でも、足が動かなかった。彼女に拒絶される恐怖よりも、自分が彼女にしたことの重さに押しつぶされそうだったからだ。

 

彼女が角を曲がった。その先は工場地帯へと続く道だ。近道として使われることがあるけれど、人通りは少なく、夕方ともなれば薄暗い倉庫の影がいくつも落ちている。

 

僕は彼女を追った。声をかける勇気はないけれど、ただ見ていることしかできないとしても、彼女の無事を確認したかったのかもしれない。

 

工場の資材置き場に差し掛かったときだった。

 

「おい、ちょっと待ちな」

 

ふいに、男の声が響いた。

 

鉄骨の影から、三人の男が現れた。作業着を着た、日焼けした肌をした男たちだ。手にはビールの缶を持っている。顔は赤く、酔っ払っているようだった。

 

美咲は立ち止まった。怯えたように体を縮こませる。

 

「なんだ、一人か? 学校帰りか?」

 

男の一人がニヤニヤしながら近づいていく。

 

「可愛い顔してんなぁ。なあ、ちょっとお兄さんたちと遊ばねえ?」

 

美咲は何も言わなかった。ただ、逃げようともしなかった。まるで状況が理解できないのか、それとも恐怖で体が凍りついてしまったのか。

 

「おい、来いよ」

 

男が美咲の腕を掴んだ。彼女は小さく「ひっ」と声を漏らしたが、抵抗しなかった。

 

「大人しいな。いい子だ」

 

男たちは顔を見合わせて、下卑た笑い声をあげた。

 

そして、美咲を資材置き場の奥へと引きずっていった。錆びた鉄板や古いドラム缶が積まれた、人目につかない場所へ。

 

僕は……立ち尽くしていた。

 

助けなきゃ。

そう思った。頭の中では警鐘が鳴り響いていた。

 

でも、足が動かなかった。

 

恐怖だった。あの男たちの粗暴な雰囲気に。自分も暴力を振るわれるかもしれないという本能的な恐怖に。そして何より、自分の中にある「見てみたい」という歪んだ好奇心に気づいてしまい、自己嫌悪で動けなくなっていた。

 

僕は積まれたコンクリートブロックの陰に隠れ、震えながらその光景を覗き見た。

 

男たちが美咲を囲んでいた。

 

「服、脱げよ」

 

一人の男が命令した。

 

美咲はまだ何も言わなかった。ただ、虚ろな目で男たちを見上げていた。

 

「聞こえねえのか? 脱げっつってんだよ!」

 

別の男が苛立ったように怒鳴った。

 

美咲はびくりと肩を震わせた。そして、おずおずとリュックを下ろした。

 

僕は目を背けたくなった。でも、できなかった。

 

彼女はあの日と同じように、言われたことに従おうとしていた。僕に「見せて」と言われた時のように、彼女にとって大人の命令は絶対であり、拒否するという選択肢が最初から存在しないかのようだった。

 

彼女がTシャツの裾に手をかけた。

 

「おっ、素直だなぁ」

 

男たちが下卑た声を漏らす。

 

布が剥がれ落ちる。白い肌が夕暮れの空気に晒される。胸の膨らみはまだ小さく、あの日僕が吸い付いた痕が微かに残っているのが見えた気がした。

 

「次はズボンだ」

 

男の一人がズボンのボタンに手をかけた。美咲はされるがままだった。

 

スカートが足首に落ちる。そして下着も引き下ろされた。

 

そこには、あの日僕が暴力的にこじ開けた傷跡があった。まだ完全には治っていない生々しい裂け目。

 

「おいおい、なんだこれ? もう誰かにやられちまってるのかよ」

 

男たちが傷口を見てゲラゲラと笑った。

 

「なんだ、食いかけかよ」

 

その言葉が僕の心臓をえぐった。

 

「まあいいや。俺たちもいただくか」

 

男の一人がベルトのバックルを鳴らした。

 

美咲はただ立っていた。裸で。男たちの視線に晒されながらも、逃げようとも隠そうともしなかった。ただ其処にあるだけの人形のように。

 

「いい体してんなぁ」

 

男が美咲の胸を掴んだ。粗末な手つきで揉みしだく。

 

「あっ……」

 

美咲が小さく声を漏らした。それは快楽ではなく、ただ痛みに耐える声だった。

 

「痛いか? 我慢しろよ」

 

男は嘲笑いながら、もう片方の手を彼女の股間へと伸ばした。

 

「濡れてねえなぁ。まあ、そのうち濡れるだろ」

 

男は指を強引に押し込んだ。

 

「あぐっ!」

 

美咲の体が跳ねた。

 

「おっと、逃げるなよ」

 

後ろにいた男が美咲の腰を掴んだ。

 

「先に使わせろよ」

 

そう言うと、男は作業着ごとズボンを下ろし、己の欲望を露出させた。

 

 

「いくぞ」

 

男は美咲の肩を掴み、壁際に押し付けた。冷たいコンクリートの壁に背中が打ち付けられる音がした。

 

そして、一気に貫いた。

 

「ああああっ!!」

 

美咲の悲鳴が資材置き場に響き渡った。

 

それはあの日、僕が聞いた悲鳴よりももっと乾いた、魂が擦り切れるような叫びだった。

 

僕はブロックの陰で震えていた。歯がカチカチと鳴るのが自分でもわかった。

 

目の前で繰り広げられているのは、暴力だった。性欲という名の暴力。そして僕は、その共犯者だった。

 

彼女が抵抗しないのは、僕が彼女に「抵抗すること」を教えなかったからだ。いや、「されるがままになること」を教え込んでしまったからだ。

 

男の腰が激しく動くたびに、美咲の体は壁に打ち付けられた。彼女の口からは言葉にならない喘ぎと嗚咽が漏れ続けていた。

 

「くそっ、キツいな! でもいい締まりだ!」

 

男が快楽に歪んだ顔で叫ぶ。

 

「次は俺だ!」

 

「早くしろよ!」

 

男たちは順番待ちをする獣の群れだった。

 

最初の男が果てると、次の男が入れ替わりに立った。また悲鳴が上がる。

 

僕は見ていた。ただ呆然と。自分の無力さと罪悪感で動けずに。

 

彼女の視線がこちらに向いた気がした。

 

虚ろな瞳。僕を見ているようでいて、何も見ていない目。彼女の意識はもう、この惨劇から遠く離れた場所へ逃げてしまっているのかもしれなかった。

 

三番目の男が終わった後も、彼女は壁に崩れ落ちたまま動かなかった。

 

「おい、大丈夫か?」

 

男たちも少し気まずそうに顔を見合わせた。

 

「まあいいだろ。行こうぜ」

 

男たちはズボンを直し、まだ震えている美咲を一瞥することもなく去っていった。

 

後に残されたのは、裸のままうずくまる美咲と、隠れて震えている僕だけだった。

 

彼女は動かなかった。

 

ただ、その細い肩だけが、規則的に痙攣するように震えていた。

 

僕は助けに行かなかった。行けなかった。

 

自分が彼女にしたことと同じことをされながらも、ただ見ていることしかできなかった自分の惨めさに吐き気を覚えた。

 

夕闇が迫り、工場のサイレンが鳴り響く中で、僕は逃げ出した。

 

彼女を見捨てて。

 

家に戻り、布団を被って震えた。

 

閉じた瞼の裏に焼き付いて離れないのは、あの日僕が彼女にしたことと同じ光景だった。僕はあの時、男たちと同じ獣だったのだ。

 

「いなくなったら、やだ」

 

あの時の彼女の言葉が呪いのように繰り返される。

 

僕が彼女をいなくしてしまったのだ。

 

エピローグ

 

十年が過ぎた。

 

僕はあの工場地帯で、旋盤を回す日々を送っていた。高校を出てすぐに就き、気づけば三十路を迎えていた。あの日からずっと、あの白濁した空気と油の匂いの中で生きてきた。まるで時間が止まったままだ。変わったのは、僕の手が硬く荒れ、目尻に細い刻み目が増えたことくらいだ。

 

「おい、今日は早番だろ? 飲み行こうぜ」

 

先輩の田村さんが、油で汚れた手で僕の肩を叩いた。無骨な男たちが集まる飲み会は苦手だったけれど、断る理由もなかった。

 

駅前のチェーン店で安い酒を煽っていると、田村さんが唐突に言った。

 

「なあ、この後、癒やされに行かねえか? 駅前のソープ、新人が入ったらしいぞ」

 

周りの男たちが下卑た笑い声を上げた。僕は曖昧に笑って誘いをかわそうとしたけれど、「お前もたまには抜いてこいよ」と半ば強引に連れ出された。

 

歓楽街の雑居ビル。薄暗い廊下に安っぽい香水の匂いが充満していた。受付で指名するわけでもなく、空いている部屋に通される。シャワールームと赤い照明のベッド。どこかあの団地の部屋に似た、閉塞感のある空間だった。

 

「お待たせしました」

 

ドアが開き、女性が入ってきた。

 

薄いピンクのワンピース。

長くなった髪。少しだけ華奢になった肩。

 

僕は息を止めた。

 

「……美咲?」

 

名前が喉から勝手に滑り落ちた。

 

彼女は一瞬だけ体を強張らせ、それからゆっくりと顔を上げた。十年の時を経てもなお、その瞳の奥にある透明な光は変わっていなかった。

 

「……悠くん?」

 

彼女の声は、記憶の中のそれより少し低く、どこか擦れていた。

 

沈黙が流れた。互いに見つめ合ったまま、誰も動かなかった。彼女の頬に微かに浮かんだ赤みが、あの夏の日の残像のように揺れていた。

 

「……びっくりした」

 

美咲が先に口を開いた。その口調は、昔と変わらないあっけらかんとした響きがあった。

 

「ほんとに、悠くんだ」

 

彼女は笑った。でもその笑顔は、かつて公園で見せた無邪気なものとは違っていた。どこか諦めたような、それでいて優しい微笑みだった。

 

「……なんで、こんなところに?」

 

僕の問いかけに、彼女は少し首を傾げた。

 

「お母さんが、いなくなっちゃったから」

 

それだけ言って、彼女は視線を落とした。詳しくは聞かなかった。聞かなくてもわかった。あの日から彼女が辿った道は、容易に想像がついたから。

 

「悠くんは?」

 

「工場。あのまま」

 

「そっか」

 

彼女は頷いた。それ以上は何も言わなかった。

ただ、静かに僕の手を取った。その手は温かくて、少し荒れていた。

 

「……お客さんだもんね。ちゃんとしなきゃ」

 

彼女は僕をシャワールームへと促した。

 

服を脱がされ、温かいお湯で洗われる。彼女の手つきは慣れていたけれど、どこかぎこちなかった。まるで、初めて僕の体に触れたあの日のように。

 

「……覚えてる?」

 

洗い終わり、赤い照明のベッドに並んで座ると、彼女がぽつりと言った。

 

「あの公園のこと」

 

「覚えてる」

 

「ブランコ、錆びてたね」

 

「うん」

 

「アイス、半分こしたね」

 

「……うん」

 

彼女は少しだけ笑って、それから僕の肩に頭を預けた。

 

「ねえ、悠くん」

 

「なに?」

 

「わたし、大人になっちゃった」

 

その声は震えていた。

 

「こわかった。みんな、いなくなっちゃったから。でもね、わたし、ここで待ってたの」

 

何を、とは聞かなかった。

 

「悠くんに、会えるかもしれないって、思ってた」

 

僕の胸の奥が軋んだ。

 

彼女は体を預けてきた。薄い生地の下にある温もりが、僕の腕を伝って伝わってくる。

 

「……抱きしめて」

 

彼女の言葉は、あの日と同じだった。

 

僕は彼女を抱きしめた。十年前よりも少しだけ力の込め方を知っていた。角度も、体の合わせ方も。でも、やはり不器用な抱擁だった。

 

唇を重ねた。あの時のように歯がぶつかることはなかった。ただ、静かに触れ合うだけのキス。

 

「……見せて」

 

僕は呟いた。

 

彼女は何も言わず、ワンピースの肩紐を落とした。

 

あの日と同じように白い肌が露わになる。でも、そこには十年の時が刻まれていた。

胸の膨らみは女性らしいものへと成長し、脇腹には薄い影を描く骨格の代わりに柔らかな曲線が宿っていた。肩や鎖骨のあたりにはいくつかの痣のような跡がある。誰かにつけられたものなのか、自らつけたものなのか、僕には判断がつかなかった。

 

僕は彼女の胸に顔を埋めた。柔らかい谷間に鼻先を潜らせると、微かに消毒薬の匂いがした。でも、確かに彼女の匂いだった。あの夏の日と同じ甘酸っぱい匂い。それに交じって、ほんのりと古びた石鹸の香りが漂ってきた。

 

僕は舌を這わせた。左胸の小さな尖りをゆっくりと円を描くように舐めると、美咲の体がぴくりと震えた。

 

「あ……っ」

 

彼女の口から微かな喘ぎが漏れた。それは痛みでも快楽でもない、懐かしさに触れた時に零れ落ちる吐息のような声だった。

 

僕は彼女の腰に手を回した。細いウエストを確かめるように撫でる。その奥にある小さな膨らみへと指先を滑らせた。湿った布が張り付き、秘められた部分の輪郭を浮かび上がらせている。

 

「濡れてる……」

 

僕は指摘した。あの日と同じ言葉で。

 

「だって……」彼女は恥ずかしそうに俯いた。「悠くんが、触ってくれるから」

 

ショーツを脱がせた。その中心は、あの日と同じように蜜で潤っていた。違うのは、そこにある熱と香りが、遥かに濃密で複雑なものになっていたということだけだ。

 

僕は顔を寄せた。

舌先で割れ目をなぞると、彼女の太ももが僕の頭を挟み込んだ。

 

「ああ……っ」

 

彼女は枕を掴みながら喘いだ。その喘ぎは控えめだったけれど、僕の舌が敏感な突起に触れるたびに体が跳ねる反応は正直だった。

 

しばらく彼女を味わった後、僕は顔を離した。

 

「来て」

 

彼女が手を伸ばしてきた。僕は導かれるままに体を重ねた。硬くなった自分自身を、潤った入り口に押し当てる。

 

「大丈夫だから……入れて」

 

彼女は自ら腰を浮かせた。

 

ゆっくりと挿入すると、そこは温かく僕を迎え入れてくれた。あの日のようなキツさはなく、むしろ包み込むような柔らかさがあった。

 

「あ……っ!」

 

彼女が息を呑む。

 

奥まで到達すると、彼女は目を瞑った。眉根を寄せて耐えるような表情をしてから、ゆっくりと目を開けた。

 

「入ったね……」

 

その声は穏やかだった。

 

僕は腰を動かし始めた。前後の緩やかな律動。彼女の表情を見ながら、速さや角度を調整する。そんな技巧を身につけたのは、いつからだろう。もう思い出せない。

 

「あっ……あっ……悠くん……!」

 

彼女が僕の首に腕を回してきた。互いの体温と汗が混ざり合い、一つの塊になってベッドの上を揺れている。

 

僕は彼女の耳元で囁いた。

 

「好きだよ」

 

本当の気持ちだった。

 

美咲の目が大きく見開かれ、それから優しく細められた。

 

「わたしも……」

 

その言葉が最後だった。

 

僕たちは繋がったままキスをした。唇を重ね合いながら、僕は静かに絶頂を迎えた。彼女の中が僕を絞り上げるように収縮するのを感じながら、熱い迸りを注ぎ込んだ。

 

長くはない射精だったけれど、それはこれまでにない充足感と共に訪れた。

 

行為の後、僕たちはシャワーを浴びた。鏡の前で体を拭く彼女の後ろ姿を見つめる。その背中には、いくつもの古い傷跡があった。消えかけてはいるけれど、明らかに暴力の痕跡だった。その傷痕の一つ一つが、彼女が生き延びてきた証なのだと思えた。

 

「怖くなかった?」

 

彼女が鏡越しに聞いてきた。

 

「何が?」

 

「私とすること」

 

僕は首を横に振った。

 

「怖いなんて思わなかった」

 

「よかった」

 

彼女は振り返って微笑んだ。その微笑みはあの夏の日に見た笑顔と全く同じものだった。

 

帰り際、僕は財布から料金を取り出した。彼女はそれを受け取ると、「ありがと」と短く言った。

 

別れ際、彼女は僕の袖を握った。

 

「ねえ、また会えるかな?」

 

その問いかけは弱々しかったけれど、決して嘘ではなかった。

 

僕は頷いた。

 

「うん。きっと」

 

部屋を出て、煌びやかなネオン看板を仰ぎ見る。あの夏の夜のような星空ではなく、人工的で毒々しい光が瞬いていた。

 

振り返ると、ドアの向こうから彼女の視線を感じた気がした。でも僕は二度と振り返らなかった。

 

これからどうなるかわからない。過去の過ちも未来への不安も変わらない。それでも今はただ、今この瞬間だけは美咲と過ごせたことに対する感謝と、また会えるかもしれないという希望だけが僕の中に灯っていた。

(了)

 

 

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