※この作品はR-18です。

童貞魔女(♂)オーウェンはチンチラ奴隷を嫁にする   作:ケロリビドー

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 タルトのレシピは適当です。


魔女と奴隷とキャラメルナッツタルト

 出すものを出したらストンと冷静になってしまったオーウェンは、一旦思考をシャットダウンした。目の前には潰れた蛙のような恰好でひくひく痙攣するザジと、零れた水、使用済みのスライムスキンの残骸などが散らばり、惨憺たる有様。スキンの原料として捕まえたスライムの死骸は袋の中で刻一刻と傷んでいっている。

 

「片付けよう」

 

 オーウェンは据わった目でずぶ濡れのザジの服を脱がし、体を綺麗な布で拭いてやると、気絶したままのザジを姉弟子のベッドに放り込む。ごみを始末し、作業部屋に移動、無事なスライムの死骸から内臓を淡々と取り出し、媚薬の詰まった粘液袋を絞り機に突っ込み圧をかけた。明日になれば下に設置した瓶に媚薬が満たされるだろう。

 残った皮は水で綺麗に洗い、作業場にびっしりとひしめく木製の張り型にひとつひとつ被せていく。余談だが、このスライム干しを魔女エウェンが細工師に依頼したとき、「頭おかしいんじゃないのか」と言われたという。

 スライムの処理が終わり、台所に戻る。ザジの腸内に注入する用に急いで抽出したハーブ茶のあまりが冷めきってポットに溜まっているので、カップに注いで飲む。飲みながら喉がカラカラだったことに気が付き、オーウェンはごくごくと音を立てて一気に飲み干し、カップをタンと置いた。

 

「いやノーカウントではなくない???!!!!!??????」

 

 シャットダウンしていた思考がぎゅるぎゅると回りはじめる。

 

(肛門だったとしてもそこにちんこ入れて射精しちゃったらもうそれはノーカウントではなくない???!!!!???? 馬鹿すぎる! スライムの媚薬でエロ馬鹿になっちゃった女の無茶苦茶な主張に喜んでホイホイ乗ってしまった……!!)

 

 オーウェンは迸る内省に頭痛すら覚え、頭を抱えて床に膝をついた。

 

「オーウェン様は頭が痛いのですか?」

「うわあああ!!!!」

 

 急に後ろから声をかけられ、びっくりして振り返ると、目を覚ましたらしいザジが立っていた。裸ではなく簡素な生成りのワンピースを着ていて、つい小一時間前に肛門に陰茎を突き入れられ喜悦の声を上げていた淫らな女と同一人物とは思えないほど落ち着いた雰囲気になっていたので、オーウェンは少し安心した。

 

「め、目を覚ましたのかい。もう大丈夫なのかい」

「はい、ザジはもう大丈夫です。お手間を取らせました」

 

 座り込んだオーウェンと立ったままのザジは、台所で向かい合いながらお互いの顔を見ることをせずに、二人とも明後日の方を見ながらぼそぼそとやり取りをした。見ている方向は真逆の方だったが、頭の中にある言葉はほとんど同じことを考えていた。

 

『ちょっと……予定より、びっくりしちゃうくらい気持ちよかったな……。またやりたくなっちゃうかもしれない……』

 

 オーウェンは、奴隷を手籠めにすることに抵抗があるのに欲望を明確に自覚してしまったかもしれないことに対する恐怖を、ザジは相手を篭絡するために仕掛けている淫獄に自分が溺れてしまうかもしれない恐怖を感じている。そしてお互いに、それは堕ちてしまったら出てこれないものだという予感をもまた感じていた。

 見ているもののない魔女の庵で火が付いた若い男と女の性欲は、熾火となって二人の中で燃え始めてしまった。そしてその火の番をするものはお互い以外にいないのだ。

 

「……オーウェン様……あの……♡」

「たっ! た、たた、たったった……タルトを焼く!!!!!!!!」

「へ?」

 

 おかしな雰囲気になりかけた空気を、オーウェンの唐突な宣言が日常に引き戻した。

 

「あ、アタシは! アンタが甘いもの食って喜んだりしてるとことか、そういうのを先に見たい!! あの、ああいう、その、ああいうのは、その後!!! アタシたちは順番を間違えてるね!! さっきのはその、緊急事態だったから!! 一回くらい間違えても、やりなおしが効くはずだ!! アンタの言う通りやっぱりノーカウントだよ!!」

「……!!!!」

「アンタが言ったんだからね!? ノーカウントだってのは!!!! それに甘いの食いたいだろ!!!???」

 

 返事を待つことなく、オーウェンは材料や製菓道具をガチャガチャと用意し始めた。元々、あんなアクシデントがなければ、初めてのスライム狩りの成功を褒めてやる予定でタルト生地は昨日の時点で作って棚に入れておいたオーウェンである。

 

「アンタ、生地にフォークで穴を開けな。それが済んだらこっちの木菓子を刻む。いいね」

 

 ザジにナッツを渡し、オーブンに火を入れ、暖まるのを待つ間に山羊の乳と砂糖を煮詰めた。甘い香りがしてくるにつれ、ザジは鼻をひくひくと動かして頭の中を食欲モードに切り替えたらしい。表情が媚をなくした自然なものになっている。オーウェンは心の中で胸をなでおろす。彼はこっちのザジのほうをもっと知りたいのだ。

 焼いた生地を取り出し、置いておく間に鍋にバターやナッツなどを入れて混ぜる。そしてタルト生地に鍋の中身を流し込み、さらにオーブンで焼く。

 

「アンタ、きょうだいはいるのかい」

「三人います」

「そうかい、アタシは一人だ」

 

 タルトが焼けるのを待つ間、オーウェンはザジに会話を試みた。が、こういう会話がへたくそな男なのでそこで終わってしまう。もうちょっとがんばれよ。と自分で自分に突っ込み、もう一度彼は口を開く。

 

「あー、あのー、あれだよ。ケイト族? っていったっけ? みんなあれなの? きょうだい多いの?」

「ケイト族は一回の出産で四人くらい産まれるからうちは少ないほうですよ」

「そりゃそりゃ……」

 

 ははは……と乾いた笑いを漏らしながら、オーウェンの心臓はバクバクしている。

 

(う、後ろの穴でよかった……。スキンがあってよかった……今後も気を付けないとこの庵が子供で溢れてしまう……いやいや、今後って何? 子供? 何? 馬鹿なの? 浮かれるな。アタシはこの娘を金で買ったろくでなしなんだよ。律しろ、自分を)

 

 あー、うー、と時折へんな声を漏らしながら、オーウェンはザジに少しずつ話しかけて行った。どんなところに住んでいたのかとか、親はどんな人かなど。聞くたびに少しザジの表情が陰っていくので、そういえばこの娘は奴隷として連れてこられたんだったなと途中で気が付いた。

 

「あー。ごめん……」

「いいんです。どうせもう帰れないので。ザジにはオーウェン様しかいません。ですのでオーウェン様はいつでもザジの体を」

「あーーーーーっ!!! そろそろ焼けるんじゃないかなーーー!!!!!!」

 

 素っ頓狂な声をあげてオーブンに向かうオーウェンの後ろ姿をザジはなんとも言えない表情で見つめる。

 

(なんか、あたしちょっとこの人のこと意地悪な目で見すぎてたかもしれないな……。この人、ほんとにただ寂しくてあたしを買ったんだ……。もともと玩具奴隷のだんな様になるタイプじゃないんだ……。子供代わりに奴隷を買う方のだんな様だ……年下だから親子にはならなかったけど……)

 

 奴隷相手に一生懸命でちょっとかわいい、とザジは思った。

 

「もうちょっとで焦げるところだった。冷めたら食えるから、お茶でも煎れよう。かあさんが好きだった紅茶がたしかここに……」

「オーウェン様」

「ん? なんだい」

「ふへへっ♡」

「なんなんだい。嫌だねぇ!」

 

 毒づきながら、オーウェンの耳は真っ赤になっていた。

 

(何? 今の!! 可愛い!! 馬鹿!)

 

 外はもう夕方になりかけていたが、二人は遅いお茶の時間にした。ザジがタルトを口いっぱいに頬張って、久しぶりの作り立ての手作り菓子のおいしさに泣いてしまい、笑顔を期待していたオーウェンは慌てふためく。

 

「お、美味しくなかったかい?」

「んーん、ひゅごくおいひいれひゅ……♡」

「そうか。いっぱい食べな」

「ひゃい……あむ……んぅ~♡」

 

 泣いたり笑ったり忙しいザジを見て、オーウェンは自分は家族が欲しくてこの娘を買ったんだな、と今更ながらに気が付いたのだった。

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