童貞魔女(♂)オーウェンはチンチラ奴隷を嫁にする 作:ケロリビドー
ザジがあんまりタルトを喜んで食べるので、オーウェンは彼女が満足するまで食べればいいと、自分の分も彼女に差し出し、幸せそうに頬張る様をずっと見つめていた。母であるエウェンもオーウェンが何か新しいことができるようになるたびにこのタルトを焼いてくれて、好きなだけ食べな、と笑って言ってくれたものだった。もう何度も一緒に焼いたので一人で作れるようになっていたが、母と死に別れてからよく考えたら今日まで数えるほどしか食べていなかった。
かつての母も自分の分を小さなオーウェンに寄越していて、かあさんはいっぱい食べたくはないのだろうかと申し訳なくなったものだが、今こうやって自分が供する側になってみると、自分の作ったものを喜んでくれる相手の顔を見ているだけで案外満足するもんなんだな……とあの時の母がわかったような気がした。
食べ終わって休憩していると、ザジはほどなくうとうととし始める。オーウェンがそれを見て言った言葉もまた母と同じだった。
「まったく……寝るんなら口の中を綺麗にしてからだよ」
次の日の朝、ザジは口淫でもキスでも、強引に起こしに来ることはなかった。起こしに来ることはなかったのだが、オーウェンが目覚めたとき、自分の体と上掛けの間に小さな暖かい体がぺったりと乗っかって寝息を立てていた。
「まっ……、この娘はいつの間に入ったんだい……」
すぐに起きる気にもならなかったので、オーウェンは腹の上にザジを乗せたまましばらくぼんやりと考え事をしていた。
(きょうだいが多い種族だと言っていたし、ひょっとしたらきょうだい全員で身を寄せ合って眠る習慣の家だったのかもしれないしな……)
ぐっすりと眠っているようなので、気にはなっていたが敢えて触っていなかった彼女の青灰色の髪と耳をそっと撫でてみる。細くみっしりと植わったやわらかい毛はふわふわのつるつるで、指を差し込むと溶けるような手触りだった。
(これは、愛玩奴隷として需要があるのもわかる……触り心地が良すぎるな……)
勝手に触って悪いという気持ちも少しあったが、この感触の誘惑は抗いがたい。しばらくなでなでと触っていると、むにゅむにゅと何か寝言をつぶやきながらザジが身じろぎをする。着ていた寝巻の襟ぐりがずれ、そばかすの散った肩と胸元が見えた。寝巻の中は裸のようだ。小さく尖った乳房の先端に存在している生意気な乳首が見え、オーウェンは目を固く瞑ってうっと呻き、顔をそむけた。思えば彼は欲望を手指に乗せて彼女の体に触れることをまだしていない。不可抗力で肛門を犯した時も尻尾を掴むくらいしかしていないし、体を拭いたりしたときは完全に山羊の世話をするときと同じ気持ちでやっていたし。
もし今後そんなふうに彼女の体を触るようなことがあるなら、その時は慈しみの心を持って、彼女に請われてそうしたい、とオーウェンは思った。
「うにゅ……すごく、どきどき聞こえる……」
もぞもぞと喋る彼女の声が胸にくすぐったい。どうやら目覚めたようなので、オーウェンは髪を撫で繰り回していた手を慌てて離し、ザジの肩を掴んで揺らした。
「うにゅじゃないよ。なんであたしの寝床にもぐずり込んでるんだい。あっちの部屋は居心地が悪いかい?」
「ん……おはようございます……オーウェン様……」
「うん。おはよう。今日も一日頑張ろうかね」
特に意味はないのだろうな、と思ったので、答えを待たずにオーウェンは寝床から起きた。
朝食を済ませ、オーウェンはザジに山羊と鶏の世話をさせる。山羊と鶏は故郷でも飼っていたそうなので、教えなくてもやっておいてくれるためとても助かった。その間昨日干していたスライムの皮の様子を見る。
エウェンが考案した様々な品物を作るための作業場は天窓から明かりが入るようになっていて、半乾きのスライム皮が貼りついた木製の張り型がずらりと設置されたスライム干し台が複数並べてある。台の足元は盆のようになっていて、中には湿気を吸い取るためのおがくずが入っていた。あと一日ほど干せば収穫できるだろう。オーウェンは湿気を吸ったおがくずを新しいものに取り換えた。そうこうしているうちに、家畜の世話を済ませたザジが戻ってくる。
「うわあ……おちんぽがいっぱい」
「言わなくていいよそういうことは!!」
「オーウェン様、この木製おちんぽ、ザジも一本欲しいです」
「あ? 一応聞くけど……な、何に使うの? ……使うの?」
スライムが貼りついていない張り型を撫でまわしながらザジがそんなことを言うので、オーウェンは妄想をたくましくしながらも尋ねてみる。
「かじり木がないと前歯が伸び続けてしまうので、かじります」
「かじり木」
オーウェンの頭に浮かんでいた張り型で疼きを慰める淫猥なザジのイメージが、デカい前歯で張り型をボリボリ齧るイメージに一瞬で塗り替えられて、なんだか、自分のモノまでヒュンッとした。
「そ、そうか。ケイト族は前歯が伸びるんだね。鼠っぽいもんな。でもだめだよ。スライムの体液が染み込んでるから、うかつに齧ったりなんかして昨日みたいになったらどうすんだい」
「そしたらまた抱いてくださいよ」
「アンタ!! ノーカウントだって言っただろ!!! 昨日のはノーカウントなの!」
「でも前歯が伸びると困っちゃいます。オーウェン様のおちんぽ様を怪我させてしまうかもしれないし……」
「アタシのを口に入れる前提で話すのもやめてくれるかい!?」
しばらくわあわあと話していたが、そこらに生えている木を適当に齧らせて張られた結界に影響があってもいけないし、人に相談しに行こうということになった。
「どこに向かうのですか? オーウェン様」
「木こりの夫婦が近くに住んでる。一応、お隣さんってことになるかねえ」
頭巾で耳を隠したザジを箒の前に乗せて飛ぶ。木こりの家は街よりも森の入り口に近い所にあるので人に見られることはほとんどないが、念のために街に行くときの恰好をしてもらった。ほどなく見えて来た森小屋の前で、人懐こそうな中年の女性が洗濯物を干している。
「おばさん!! おはよう!!!」
「あら、おはようオーウェン……えっ」
女性は、白いシーツの後ろから顔を出してオーウェンに挨拶をすると、箒の前に座っているザジの姿を見て驚いたような声を出して動きを止めた。
「あ、ああ。そっか。そうね。エウェンではないのね。そうよね。エウェンの服を着ているからびっくりしちゃった。私もうボケちゃったのかと思ったわ……」
「まだそんな歳じゃないだろ……。サイズが合ってるから着てもらってるだけだよ。ほら、アンタ、挨拶しな」
箒から降りたオーウェンがザジを促すと、ザジはスカートの裾をつんとつまんでちょこなんと挨拶をする。
「初めまして。ザジと申します」
「あらおはよう、初めまして。私はエブリン。オーウェンの母親の友達なの。よろしくね。オーウェン、この娘は?」
「この娘は、あー、うーん……」
オーウェンはザジを紹介しようとして、迷う。妻であるという設定をここでも使うべきか。それとも正直に言うべきか。エブリンは信用できるし、かじり木を求めて来たのだから鼠獣人であることは明かすべきだが……。
「この娘は、そうさね。アタシの家族。新しい家族なんだよ」
「そう、やっと誰かと一緒に住む気になったのね。安心したわ。今日は何の用かしら。立ってないで中に入りなさいな」
二人はエブリンに促されるまま、庭を横切って森小屋へあがった。