※この作品はR-18です。

童貞魔女(♂)オーウェンはチンチラ奴隷を嫁にする   作:ケロリビドー

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魔女と奴隷と若旦那

(ねえさん、手紙を読んでくれただろうか……)

 

 大騒ぎになってしまったため、商品の納品をするだけでその日は庵に帰ったオーウェンとザジであった。すぐ何とかしなければならないことでもないので、とりあえずあっちから何かアプローチがあるまで待つか……ということにした。なにせ傷つけた者と傷つけられた者同士である。あの手紙を読んだだけでハイ仲直りしましょうというわけにも行かないだろう。そう思って二日ほどそのままにしているところだった。

 オーウェンは軒先に座ってぼんやりと庭を眺めながら考え事をしていた。視線の先では箒を掴んだままきりきり舞いをしているザジがきょえー、などと叫び声を上げている。

 魔女は誰でも箒に乗ることが出来る。大いなるものから何を借りるかはそれぞれで違っているが、箒に乗る能力に関してはもれなく全員が持っていると思っていい。ザジがその能力を得たということは、ザジは魔女として目覚めてしまったということだ。とりあえず母が生前使っていた箒をザジに与え、飛ぶ練習を見てやっている最中だった。

 

(考えることが……考えることが多い……)

 

 カーラとザジの奴隷紋をなんとかしなくてはいけない。その奴隷紋を施したのが姉弟子のダリアだということが確定してしまったので、そのためにはダリアと話をしなくてはいけないのにダリアとは喧嘩別れしたままで、しかもオーウェンはダリアを知覚することが出来ない。弱い立場の者が虐げられる構造を好んでいなかったエウェンの弟子であるダリアがなぜ奴隷紋などという嫌らしいものを扱うようになったのか? 調教師とやらと「デキている」、とウィニーは言っていたが、そいつと関係があるのだろうか。それらの懸念事項がきれいさっぱり解決したとして、その後自分はザジをどうするべきなのか。

 

「お! オーウェン様!! おおおおおおおうぇんさま!!! ザジの中身がはみ出しちゃいますう!!!!」

「落ち着きな!! まずはアンタの方が箒より強いってことをわからせてやるんだ!! 足を踏ん張って持っていかれないように耐えるんだよ!!」

 

 慌てふためくザジにアドバイスをしてやるオーウェン。彼は自分が初めて箒に乗れるようになった時のことを思いだしていた。

 ある日幼いオーウェンがダリアの赤い箒に泥が付いていたので綺麗にしてやろうと思って布で拭いたら、箒がスッと浮いたのである。

 それを知ったエウェンは飛び上がらんばかりに喜んだ。

 

(男の子だから魔女にはならないと思ってたけど! アタシの頭が固かったようだね!!)

 

 その時エウェンが木こりのアランに頼んで作ってもらった箒が今オーウェンが乗っている箒である。父親似のオーウェンは今はチビ助だが、大人になったらでっかくなるだろうと見越してかなり長い柄のものが出来上がってきたので、最初はエウェンの箒で練習した。だから今ザジの相手をしてくれてる箒は年季の入ったベテランだ。悪いようにはしないだろう。母の部屋で埃をかぶっていた箒も、小さな魔女の相手ができてとても楽しそうだ。

 

(そういえば……ザジが魔女になっちまった以上、妻じゃなくて弟子っていうことにしていいんじゃないか? しまった……恥ずかしがらずに最初から弟子ってことにしておけば……)

 

 もうあちこちに妻だと言って回ってしまったので今更どうしようもないことをぐじゃぐじゃと考え、オーウェンは束の間悩みのあれこれを頭から手放した。

 

「うええ~もうこれ座りたくない~。まんこ痛い~」

「言うなよ……わざわざそういうことを……。確かにまあ、脚の間に固い箒挟んで浮いたら痛いんだよな……ほら、アタシは上に立って乗ってるし、ねえさんなんかは横座りしてたからな。工夫してみな。アタシの箒の前に座ってた時はどうやって座ってたよ」

「でも痛いな~。オーウェン様がなでなでしてくれたら痛くなくなるかもしれないな~」

「あ? なでなで……ば、バッカ、馬鹿ァ~!!!」

 

 オーウェンが真っ赤になって上ずった声をあげてザジに駆け寄ると、エウェンの箒はザジを乗せたままひょいと浮き上がってオーウェンから距離を取った。

 

「あ! 飛べた!! なんかわかった気がする!!」

「んん~、そうかい……そりゃそりゃ……」

 

 オーウェンが見上げるとザジは太陽の中で笑っていた。逆光で顔は見えなかったが丸みのある頭や耳の形は優しく、ああ、好きだなぁ……あの形。とオーウェンは思った。

 その時、オーウェンのこめかみのあたりにビビッとした違和感が走った。どうやら森の結界に誰かが入ろうとしたようである。

 

「ん? オーウェン様。どうしましたか?」

「来客のようだ。アタシが見てくるからアンタはここに居な」

 

 オーウェンが指笛を鋭く吹くと彼の相棒の箒が真っ直ぐに飛んできたので、彼は飛び乗って森の出入り口に向かった。

 

「あっ、なんだこの蔓っ!!! 絡まって……なんでこれ以上進めねえんだ!? あっ! おい魔女!!! これ何とかしてくれよ!!!」

「誰かと思えば……ウィニーじゃないか。そっちから来るのって初めてじゃないかい?」

 

 森の入り口で蔦に絡まれて立ち往生していたのは、先日奴隷市場でやりとりした元締めの息子のウィニーだった。

 

「は~、びっくりした。帰れなくなるかと思ったわ。魔女ってのは訳の分かんねえとこに住んでんだなあ」

「アタシの許可なく勝手にこの辺の森には入れないんだよ。どうしたんだい、わざわざこんなところまで……まあ立ち話もなんだ。今日だけ許可出してやるから一旦うちで話そう。茶も出してやるよ。嬉しいだろ」

「あ~、嬉しくて涙が出ちまうよ!!」

 

 庵にウィニーを連れて帰ると、お湯を沸かして用意してくれていたらしいザジがハーブティーを二人分淹れて出してくれた。

 

「アンタも飲んで良いんだからね」

「草むらみてえな味すんなこれ」

「何しに来たんだよ。草むら食ったことあんのかい」

 

 訳の分からない感想を言うウィニーに辟易しながら尋ねると、彼は要件を話し出した。

 

「あれからお前の姉貴がこなくなっちまったんだよ」

「ねえさんが? あれからって……この間うちのと追いかけっこしてからってことかい?」

 

 あの日、まだ仕事が終わってないのに! とウィニーは憤慨していたが、どうやらあれからダリアは奴隷市場に来なくなってしまったということだった。

 

「お前ら一体何したんだ? 奴隷紋を機能させるからってんで奴隷に墨入れてんのに、施す奴がいないとただの刺青になっちまうからよ、買う時値段下げられちまうって親父が怒ってんだよな。話聞いてこいってケツ叩かれちまった」

「何って……喧嘩別れしたからごめんなさいの手紙を読んでもらいたくて渡したんだよ。あとは……ううん。家で引き取ってる奴隷たちの奴隷紋の力を消して欲しいって頼んだ。アンタ、これ親父さんに言うなよ。言ったら呪うからな」

 

「怖! 言わねえよ。実を言うとよ。俺あんまりあの奴隷紋っていうの好きじゃねえんだよな。俺は生まれたときから奴隷商だから今更聖人ぶる気はねえけど、逃げたら体中が滅茶苦茶になるって、意地が悪すぎるだろ。親父が引退して俺が元締めになったら止めさせようと思ってんだ」

 

 ウィニーは嫌そうな顔でハーブティを口にし、にげえ! と舌を出した。オーウェンは気になっていたことを聞いてみる。

 

「だいたいなんでうちのねえさんがアンタのとこで働いてんだよ。あの奴隷紋、ねえさんが提案したりとかしたのか?」

「ん? いや、あれの発案者はお前の姉貴の男の方。ウチで雇ってる奴隷調教師のアイデアだぜ」

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