※この作品はR-18です。

穢翼のユースティアIF ~ティアとエリス~   作:Re:o

1 / 2
二つの責任

ティアを身請けしてから数日が立った。

 

これまでにティアは食事を作るのを中心に身の回りの事を良くやってくれている。

 

しかし、最近は思い悩むようにぼんやりしていることが増えてきた。

 

ティア「はぁ……」

ティアは料理の準備をしているが、今日は料理も上の空なようだ。

 

カイム「なぁ、ティア。何か悩みがあるのか?」

 

ティア「はい……」

 

ティア「私、身請けして頂いてとってもとっても感謝しているんです。」

 

ティアは思い詰めたような顔をしてそう話す。

 

何時もと様子の違うティアに対して、妙なことを言う前に機先を制するようにまくし立てる。

 

カイム「俺の身の回りの事はほとんどやって貰っているし、ティアを身請けしたのも俺が自分で決めた事だ。」

 

カイム「お前は余計な事は気にしないでいいんだぞ。」

 

ティア「そうかもしれないですけど……」

 

何か決心したように見えたティアだが勢いに押され、少し気勢が削がれたようだ。

元々上層で召使いだったティアだ、人に使われるのに慣れているのでこういう事を言ってくるとは思っていた。

 

ティア「でもそれだけじゃ、私の気が済まないんです。もっとカイムさんのために何かしたくて。」

 

思いの外、食い下がるティアだが。そんなティアをはぐらかすように笑って窘める。

 

カイム「俺のために何かをしたいというのに、俺を困らせてどうする。」

 

身請けしたからには、ティアを命令に従わせるように強制することが俺にはできるが。

 

ティアにはやはり自由で居て欲しい、俺は奴隷が欲しかった訳ではなくグラン・フォルテの真実――それ以上に、自分でも良く分からない感情をティアに対して持っていた。

 

ティア「むぅ……真面目に聞いてませんね。」

 

拗ねたように声を漏らすティア。

 

ティア「うーん……」

 

何を気にしているのか分からないが思い悩むティア。

 

その後、思い悩むのを辞めたのかティアは決意を持って訴える。

 

ティア「私は身請けして頂いてカイムさんの物になりました。」

 

ティア「カイムさんのためなら何でもしたいと思っているんです。わ、私じゃ駄目ですか?カ、カイムさんを満足させられませんか?」

 

ティアは顔を真っ赤にしながらも、思いもよらない要望を出てきた。

 

ティアが俺にどことなく好意を抱いているのは分かっていたことだが、しかしこのような告白をする程だとは思わなかった。

 

カイム「……ティアお前の事は気に入っている、だからこそ助けられた恩とかそういうもので縛りたくないと思っている。」

 

娼婦を見受けしたのならば妻や妾にするのが普通だが、俺はそういうことをしたいが為に恩を売って身請けした訳ではない。

 

だがティアを羽狩りから連れ戻し、身請けしてからも自分の感情がどういったものなのかまだ分からないが、ティアを気に入っているのは確かだった。

 

ティア「そうですか……じゃあ、エリスさんも同じ理由で、だ、抱かれないんですか?」

 

更に踏み込んでもう一人の身請けされた人間――エリスについて話してくる。

 

カイム「……それもあるが、他にもっと大きな理由がある。俺はエリスに償わなければいけないことがあるんだ。」

 

ティア「私にはエリスさんに対してカイムさんがどんな事をしてしまったのかは分かりません。」

 

ティア「でも私はカイムさんのことを考えるとドキドキしちゃって、カイムさんのためにもっと何かをしたいって思うんです。」

 

ティア「それはエリスさんも同じで、カイムさんを好きなんだと思います。だから過去にどんな理由があってもカイムさんを否定したりしないと思うんです。」

 

都合の良い考え方だと思うが、ティアの言う真摯な言葉にはそう思わせるような不思議な力を感じた。

 

しかしエリスから全てを奪ったのは俺だ、アイツを人間らしくするのは俺のやらなければならないことだ。

 

カイム「……エリスがどう思うかは分からない。だが、真実を知ってエリスが俺の死を望むなら俺には死ぬ覚悟もある。」

 

その時入り口のドアが開く音が聞こえる。

 

エリス「カイムはいつも私の幸せを勝手に決めないで。」

 

エリスが音を立てて俺の家に入ってきた。

 

ティア「エリスさん……」

 

カイム「――エリス、最初から聞いていたのか?」

 

こんな形でエリスに打ち明けることになるとは――しかし、いずれ話さなければ事でもあった。

 

エリス「多分ほとんど聞いたわ、小動物が私を差し置いてカイムのものになろうとした話も聞いた。」

 

エリス「カイム、私をカイムのものにしてくれない理由、教えてくれるわよね?」

 

こういった話をする時にはいつも感情的になるエリスだが、エリスは落ち着いた顔で俺の顔を見据えている。

 

話を家の外で聞いている内に、身請けした理由を聞き出す覚悟を決めていたのかもしれない。

 

カイム「わかった、俺がお前を身請けした理由を話そう。」

 

カイム「聞いた上で俺をどのようにしてくれても構わない、償いが必要なら殺して貰っても仕方ないと思っている。」

 

これは遅かれ早かれ片付けなければいけないだ、むしろ見方によっては言うのが遅すぎたとも言えた。

 

カイム「エリス、お前の両親を殺したのは俺なんだ。お前の両親が殺されたのも、娼館に身を寄せてしまったのも全部俺のせいだ。」

 

カイム「俺が全てを奪ってしまったエリスを人間らしくしたら、見受けの事情を話して償いをしようと思っていた。」

 

カイム「黙っていて今まで済まなかった……」

 

エリス「そうなの……でも、私があの家に居た時は家の中にずっと閉じ込められていて、空も見たことがなかった。」

 

エリス「言うことを守れなかったら何度も殴られたし、あんな人達どうでも良かったのよ、カイムは罪の意識なんて感じる必要は無いわ。」

 

エリスは嘲笑するように心底どうでもいい事のように、自分の過去を切って捨てた。

 

エリス「私は生まれた頃から人形のように育てられたわ。」

 

そして、落ち着き払った様子で自分の過去から今までを話し始めた。

 

生まれてからずっと同じ部屋に閉じ込められ、両親の言いなりになっているだけの毎日。

 

空も自然も見たことも聞いたことも無く、あらゆる事を知らず人形のように部屋にずっと閉じ込められていた。

 

両親が死に、娼館に連れて行かれても人形のような自分は変わらなかった。今度は自分が娼館の物になっただけの話だ、違う持ち主の言う事に従うだけだからだ。

 

ティア「そんなことが……」

 

心のやさしいティアには辛い話だったかもしれない。

 

エリス「でも、カイムが私を身請けしてくれた。だから私はカイムの物になろうとした。」

 

カイム「でも、カイムは私に自由になれって私を突き放す。」

 

エリス「人形として生きて来た私に、どうしろというの。カイム、私は人間になれない……カイムのものになりたいの。」

 

悲しげに自分を嘲るエリス。

 

カイム「そうだったのか……」

 

カイム「だがそれなら尚更、俺や誰かに依存する必要は無いんだ、エリス。」

 

カイム「身請けされてようやく、お前は自由を手に入れる事が出来たんだ。」

 

どんな人生を送ってきたとしてもエリスの人生を変えてしまったのは俺なのだ。

 

そんな俺が人に依存してしまうエリスを受け止めることが出来るのか。

 

エリス「どうしてそんなこと言うの……カイム、私、カイムの物になりたいの……もう、カイムと離れて一人になるのは嫌……」

 

これまで、黙っていたティアが口を開いた。

 

ティア「私は馬鹿なので二人の話をあまり分かってないのかも知れません。」

 

ティアは胸の前に手を重ねて、真摯に思いを伝えようとする。

 

ティア「でも、カイムさんはエリスさんを大切に思ってますし、エリスさんもカイ

ムさんを大切に思ってます。」

 

ティア「過去には悲しいことがあったのかもしれないですが、でも今の二人が一緒になるのは自然なことだと思うんです。」

 

いつもはオドオドしたり自分をバカだと揶揄したりするティアだが。市場で売られる子供を心配し、俺のことを心配し家から出て行くティアらしい優しい言葉だ。

 

エリス「ティア、あなた……」

 

ティア「そ、それにっ、エリスさんが元々先に身請けされてますし。」

 

ティア「私はカイムさんと一緒になれれば、に、二番目でも嬉しいんです。」

 

カイム「ティア……お前そんなことを考えていたのか……」

 

エリス「……あなた度胸があるのか、分からないわね。」

 

エリスは驚きというより唖然とした面持ちでティア見たあと、こちらに視線をよこす。

 

エリス「ふふ、まあいいわ、それにカイムは私達を身請けした責任があるわよね……」

 

ここには俺だけではない、純粋さと優しさを持ったティアがいる。

 

エリスは俺とティアと三人で暮らすようになったら、ずっと人間らしく変わって行けるかもしれない。

 

カイム「お前ら、俺を置いて話を進めるな……わかった。だが俺は、エリスが人間らしく変われるようにすることを諦めないぞ。」

 

これからもエリスに対しての罪の意識が完全には消えることは無いだろう。

 

しかしエリスとティアには自由に人並みに幸せになって欲しい。

 

それが二人を身請けした俺の責任でもあり、そして二人には幸せになって欲しいと思っていた。

 

 

カイム「エリスとティアを俺の妻としたい、二人と一人が一緒になることで色々あ

ると思うが末永くよろしく頼む。」

 

ティア「カイムさん嬉しいです……」

 

エリス「どれだけ人を待たせるのよ……」

 

プロポーズだというのに気の利いたこと一つも言えないが、二人には十分だったようだ。

 

涙に濡れて輝く二人の美しい顔を見て、一つの欲求を覚える。

 

カイム「ティア、エリス、二人を妻とする証と言ってはなんだが……二人にキスをしたい、いいか?」

 

ティア「は、は、は、初めてなので優しく、お願いします……」

 

エリス「私もお願い、キスして……」

 

カイム「わかった、ティアからいくぞ……」

 

ティアの顔に手を添えキスをする。

 

ぎゅっと目を閉じ緊張した面持ちで、キス受け入れようとするティア。

 

ティア「ちゅ……っ……っ……はぁ……」

 

ティア「カ、カ、カ、カイムさんとわ、わ、わ、私、キスしちゃいました……」

 

高鳴る心臓を抑えるように手を重ねるティア。

 

カイム「これからもよろしく頼むぞ、ティア。」

 

ティア「はい……」

 

 

 

カイム「エリス、待たせたな……」

 

エリス「ティアはあんなこと言ってたのに私とキスするのは、ティアの次なのね……」

 

ティア「す、す、すいません。」

 

キスをしたのは俺からなので悪くもないティアだが、謝ってしまうのがティアらしい。

 

エリス「でも、ティアが動かなかったらカイムとそうなれなかったかもしれない。不服だけど、まぁいいわ。」

 

エリスは少しムスッとしているが、少し照れているようだ。

 

長いまつげの向こうの瞳を閉じる。

 

エリス「んん……ちゅ……ちゅ……んっ……はぁ。」

 

ティアと違い情熱的に唇同士を触れさせあおうとするエリス。

 

エリス「キスって気持ちいいのね……」

 

トロンとした目で、カイムを見つめるエリス

 

カイム「俺も気持ちよかった。エリス、これからよろしく頼む。」

 

エリス「うん……」




エッチしかしない二話目(完結)に続きます、13日の8時アップ予定です。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。