修復不可能な関係、一目見た瞬間に感じる止め処無い殺意、そして未だに燻る恋心。僕はあなたと同性に産まれたかった。警戒されずにあなたをもっと知ってあなたと仲良くなって、あなたと歩きたかった。けれど現実はどうだろう?僕はあなたと違う性別で、距離感を一気に詰めすぎて警戒されて、あなたに近づくこともできず、僕はあなたと話すこともできなくなった。
「好きです。僕と付き合ってください」
部屋の壁一面に貼り付けたあなたの横顔や後ろ姿、たまに正面からの写真で告白の練習をする。こんな事をしたって無駄なのは分かってる。僕はあなたの隣を歩けない。いつだって後ろしか歩けない。隣を歩いたら……愛してしまう。
「……」
暇さえ見つければ自分で自分を慰めている。本当はあなたに慰めて欲しい。けれどそんな事を言ったら完全に消えてしまう。だから自分で自分を慰める。僕が僕であるために。
「ぐすっ……ぐすっ……あれっ、鼻血だ……」
最近、鼻血がよく出るようになった。僕の心と一緒で身体も壊れつつあるのかもしれない。
「蜈郁シゥ……蜈郁シゥ」
僕はあなたが欲しい。慰めなんかじゃ足らない。抱きしめられただけじゃ足らない。僕をめちゃくちゃにして欲しい。その魔性の声と身体で……。
「蜻シ繧薙□?」
「えっ……どうして?」
顔を上げたらあなたが居た。ここは僕の部屋で誰も居ないはずなのに。
「縺?縺」縺ヲ蜻シ縺ー繧後◆縺九i縲∝セ瑚シゥ蜷」
あゝ、そんな笑顔で笑わないで。僕が壊れちゃう。
「繧医?縺励?√h繝シ縺励?∝セ瑚シゥ蜷帙?ゅ◎縺薙〒菴輔r縺励※縺?k縺ョ縺九↑?」
すっ、とあなたの右手が伸びてきて僕の頭を撫でる。瞬間、壁が外に向けて倒れて青空が見えた。僕にはあなたが救世主に見えた。時が時なら崇拝していたかもしれない。いやもう崇拝している。祟られない程度に。
「縺翫d縺翫d縺イ縺ィ繧翫⊂縺」縺。縺ァ驕翫s縺ァ縺溘?縺九>?」
「ハ、ハイ!」
「繧イ繝シ繝?繧偵@繧医≧」
「ゲーム、ですか?」
「蜍昴▲縺溘i菴輔〒繧ゅ〒縺阪k縲√←縺?シ」
「やります!」
あなたがにっこりと笑う。
「繧医?縺励?√◎繧後〒縺薙◎蠕瑚シゥ蜷帙□」
不意に立ち上がったあなたの学生服が揺れる。美しい……。
「縺倥c繧薙¢繧薙〒蜍晁イ?縲∝享縺」縺溘i蜍昴■」
「わかりました。負けません」
「蜷帙°繧峨さ繝シ繝ォ縺励※」
「いきます……最初はグー、じゃんけん……」
僕はパーを出した。そして先輩、あなたは……。
「谿句ソオ縲∝菅縺ョ雋?縺代□繧」
チョキを出していた。僕の負けだった。
「縺ゥ縺?@繧医≧縺九↑」
あなたはとてもニコニコしていた。まるで悪魔のように。
「おーい、後輩君、居るのかい?」
え?先輩が2人?しかも後ろから?振り返るとドアの嵌った壁が戻っていた。
「後輩君、開けてくれないか?」
「は、はい!今!」
「蠕瑚シゥ蜷帙?√?繧ッ縺ッ縺薙%縺ォ縺?k繧」
え?でも……。
「陦後▲縺。繧?ァ?岼縲√≠繧後?蛛ス迚ゥ縺?繧」
「誰かと話しているのか?いやでも……特に何も聞こえない……後輩君!開けてくれ!」
先輩がドアを壊しそうなくらい叩いている。
「わかりました!開けます!それ以上叩かないでください!」
目の前のあなたではなく、ドアを叩いているあなたを信用する。
「縺ゥ縺?↑縺」縺ヲ繧ら衍繧峨↑縺」
ドアを開ける。あなたが居た。
「ありがとう。」
その手には血塗れの刃物。学生服も血塗れだった。
「ずっと探してたんだよ、後輩君。君を虐める存在はボクが皆排除したんだ」
あなたの目は光を失っていた。まるで僕を拒絶したあの日のように。
「どうやって突き止めたんですか?」
「ボクは鼻が利くんだよ。ホラッ」
まるで犬のようにスンスン、と鼻を鳴らすあなた。何も変わらない。あなたはあなただった。
「君に距離を詰められた時はその……びっくりしたんだ。信じてくれ、ボクはその……告白されたことも無いから、さ……」
異性同性を問わず人気の高いあなたがそんなはずは……。
「だ、だからその……すまなかった。ボクが悪かった。」
「そんな……先輩」
「險ア縺輔↑縺」
ずっと居なかった先輩の声が背後から聞こえた。いや、もしかしたら背後ではなくて僕の中からの声なのかもしれない。
「後輩君、君はボクのものだ」
「險ア縺輔↑縺!險ア縺輔↑縺!險ア縺輔↑縺!」
僕の中からの声があなたに向けて叫ぶ。あなたは……それを笑って受け流した。
「後輩君から出ていけ、痴れ者が」
胸と腕に抱擁されて包みこまれる。僕は……この胸を独占したいと思ってしまった。
「よしよし……ボクを許して欲しい。ボクは君を拒絶してしまった。こんなに君のことを考えてしまう自分に気が付かなかったんだ」
「先輩……」
包丁の切っ先が脇腹に当たって痛い。
「だからその……好き、なんだと思う、君のことが。都合の良い解釈だよな、本当に。我ながらイライラするよ、君の都合も考えないで」
胸と腕に包みこまれながらも無理やり上を見上げて顔を合わせると先輩と目が合う。あなたが笑うと嫌なことが消えていく。もし、僕があなたと同じ性別だったなら……もっと早く近づく事が出来ていたのだろうか。もし同じ性別で同じ時間を過ごすことが出来ていたのならもっと早くあなたを知ることが出来ただろうか。僕にはわからない。でも違う性別だから出来ることもあると思う。僕は無改造であなたを受け入れたり、逆に受け入れてもらったりできる、少なくともその余地はある。あなたは僕をどうしたいですか?愛したいですか?それとも僕に愛されたいですか?
「好きです、僕と付き合ってください」
「うん、ボクでよかったら……チュッ」
頬に口づけされると目の前が急に明るくなった。さっきまで居た先輩擬きはもう居ない。僕の前にはもう、包丁を持って微笑んで僕を抱きしめてくれる天使しかいなかった。
「ボクのものになってくれよぉ」
「僕はあなたのものですよ」
「じゃあボクは君のものだ……いいね?」
「はい。」
そこから先は何も覚えていない。
主人公が男の子とは言ってないが、女の子とも言っていない。更に、先輩もとい"あなた"が女の子とは言ってないし、男の子とも言ってはいない。