ある日、なんとなくリビングに置かれた母さんのスマホを見たら、見慣れないSNSアプリの通知が表示されていた。
「新着メッセージ:Aさんから」──ん? 母さん、SNSなんてやってたの?
正直、驚いた。
母さんはスマホこそ持ってるけど、使うのはほぼLINEと天気アプリくらい。SNSには全然興味ないと思ってた。
気になって開こうとしたけど、すぐ思い直した。
(いやいや、人のスマホ覗くなんてダメだろ)
そう思って、何もせずにその日はスルーした。
……でも、気になって仕方がなかった。
母さんがSNSで誰かとやり取りしてる。それが妙に引っかかって、どうしても忘れられなかった。
数日後、またスマホがリビングに置かれていて、同じアプリに新着通知が来ていた。
もう迷いはなかった。僕はついに画面を開いた。
メッセージ欄には5人の名前。
4人は明らかに女性で、残りの1人は「Aさん」。おそらく男だろう。
とりあえず「Aさん」との会話を開いてみた。
内容は普通だった。趣味とか、天気とか、日常の話ばかり。
ただ、その中でひとつ気になるやり取りがあった。
A「玲子さんの顔、見てみたいな」
母さん「いいですけど、こんなおばさんかとガッカリしますよ。 美人でもないし」
その返事を見たとき、不思議な気持ちになった。
母さんが、誰かに「顔を見せてもいい」と言ってる。
僕が知らない母さんの一面を、のぞき見てしまったような感覚だった。
その後も1週間くらいは、特に進展もなく、当たり障りのない会話が続いていた。
だけど、僕の中ではずっとモヤモヤが残っていた。
正直、母さんは普通に美人だと思う。
ちょっと菅野美穂っぽい雰囲気もある。
体型もスリムで、脚もきれい。
振り返る人もいる。
もう40歳だけど、友達にも評判がいい。
物静かなところも好印象らしい。
正直、自慢の母さんだ。
……けど最近、ふと「女」として見てしまう自分がいて、ちょっとキツい。
そして、ある日のメッセージで──ついにきた。
A「今度、お会いしませんか? ご都合よければ、今週の水曜日にでも」
ドキッとした。
まさかとは思うけど、本当に会う気なのか…?
母さんは最初こそ話をそらそうとしていたけど、Aさんの押しに流されたのか──
A「14:00に○○駅前の喫茶店△△で待っています」
母さん「わかりました。14:00に伺います」
……決まってしまった。
心臓がドクンと鳴った。
ついに、母さんが“会う”って言った。
何が始まるんだ。
僕は落ち着かないまま、スマホの画面を見つめていた。