※この作品はR-18です。

母のSNS   作:松田義和

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僕の葛藤

──止めたはずだった。

あれは限界だった。

心が耐えられるギリギリのところで、なんとか止めた。

僕はそう思っていた。

 

……でも。

 

テーブルの上に置いたレコーダーが、まるで僕を試すように、そこにあった。

ちいさな四角い箱。

たった一度、ボタンを押すだけで──あの続きを、また“聞ける”。

 

(やめろ)

 

頭のどこかで、はっきりとそう言ってる。

この先を聞いたら、もう戻れない。

ただの息子には、戻れない。

そうわかってるのに。

 

でも。

 

あのときの母さんの声が、まだ耳の奥に残ってる。

あの甘さ。あの吐息。あの笑い方。

誰かに触れられて、少し戸惑いながらも、

それでも“嬉しそうにしていた”母さんの声。

 

──僕には、向けられたことがない声だった。

 

(もっと、聞きたい)

 

一瞬、全身が冷たくなる。

自分の中に、そんな願いがあったことに、ゾッとした。

 

(でも……聞きたいんだ)

 

母さんがどんな顔で、どんな声を出していたのか。

どんなふうに、あの男に体を預けたのか。

どんなふうに、乱れていったのか。

 

音だけしか知らないのに、僕の中にはもう映像ができあがっている。

母さんの白い肌。うつむいた横顔。少し乱れた髪。

──そして、もう“僕の知らない人”になっていく過程。

 

 

そう、僕は母さんの不貞行為を目の前にして興奮していた。

 

 

怒りや絶望、裏切られた痛み、そういう感覚ももちろんある。

 

でも、同時に異常な程の性的興奮を感じていた。

 

 

母さんがどんなことをあの男にされたのか、どんなことをあの男にしたのか

あの男を受け入れてどんな声を出したのか、どんなよがり声を上げたのか

 

母さんが他人のものになる瞬間はどんななのか。

 

それを考える時僕の下半身は痛いほど勃起する

最近話題の女子社員AVを見た時なんかと比べものにならないくらいに勃起している。

 

 

このスイッチを押せばそれを全て聞くことが出来る。

 

 

この分裂した僕、どちらの僕が本当なのか。

 

 

知りたくない。

でも、知りたい。

逃げたい。

でも、戻れない。

 

手が震えながら、レコーダーに伸びた。

 

 

僕は、震える指で再生ボタンを押した。

音がまた、部屋の中に戻ってくる。

 

空気は、もう違っていた。

最初の笑いも、冗談も、消えていた。

録音の向こうから聞こえるのは、柔らかい吐息と、衣擦れの音だけだった。

 

──すぅ……カサ……ぎし……

 

「……あ……ん……」

母さんの声が、小さく震えていた。

 

聞いたことのない声だった。

優しさでも、叱る声でもない。

母さんが僕には絶対に見せたことのない、遠い遠い場所で、誰かに触れられて、許している声。

 

「……あの……そこ……」

「大丈夫。焦らないから」

「うん……でも……ちょっと……」

 

布がめくられる音。

それに続いて、息が大きく吸い込まれ、吐き出される。

 

僕の鼓動が、それに合わせるように早まった。

 

「……見ないでって……言ったのに……」

「ごめんなさい。でも……ほんとに綺麗で」

 

「……あ……そんなふうに……」

 

声が、壊れていくのがわかった。

 

(見てないのに、全部見える──)

 

僕は、見えてしまっていた。

布団をそっとめくられる様子。

肩が出て、胸元があらわになり、恥ずかしそうにうつむいている母さん。

 

想像だ。だけど、それは音が導いた映像だった。

 

 

僕は履いているものを脱ぎ捨て下半身を出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

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