他人になった妹は、俺の裏垢調教志願者でした 作:ドン・ドナシアン
動くことも、じっとしていることもできない──。
美咲の両手は、身体の前にある連結部の縦の手摺りに手錠で繋がれている。連結部へ身体を向けたまま、背中から満員電車の乗客に押し潰されるように固定されていた。
逃げ場はない。
その姿勢のまま、電車は容赦なく揺れ続ける。
股間に塗り込まれた媚薬が、確実に効いている。
表面ではない。肉の奥、触れることもできない粘膜の内側から、じわじわと熱を帯びた掻痒が膨らんでくる。
掻きたい──そう思うより先に、神経が焼けるように疼く。
金属の音が鳴った。
はっとなる。
無意識に手摺りに手錠で拘束されている手を動かそうとしたようだ。
握り拳を作る手に力を込め直して耐える。
掻けないと理解した瞬間、痒みはさらに強まる。
電車は揺れながら走り続ける。
気がつくと、反射的に腰が動こうとする。
しかし、腰をわずかでも動かせば、同時に腹の奥で重く膨れあがった便意が、容赦なく主張してくる。
浣腸で押し込まれた液体が、腸の内側で激しく揺れているのがわかる。アナルの括約に力を込めるたび、奥が軋み、決壊の予感がじわりと迫る。
アナルプラグは挿入されたままだが、もう革帯で固定されてはいない。
強まる便意の波に押され、内部から押し出されるかもしれない──。
その恐怖が、美咲の動きを封じる。
ほんの少しでも腰を揺らせば、痒みは和らぐかもしれない。
だが、その瞬間、便意が決壊するかもしれない。
どちらも選べない。
だから、美咲は動かない。
動けない──。
満員の圧が、背中と胸を挟み込む。制服の布地越しに他人の体温が伝わる。
逃げ場はなく、連結部の壁に額を押しつけたまま、浅く荒い呼吸を繰り返す。
股間の奥が、ずきりと脈打つ。
もう……限界……。
痒い──痒い──痒い──。
お腹が痛い──漏れそう……。
痒いよ──。苦しいよ……お兄ちゃん……。
いや、痒いという言葉では足りない。
甘く、粘ついた火照りが、膣の周囲を執拗に刺激する。触れられていないのに、なにかに擦られているような錯覚が続く。
電車の揺れが、その錯覚を確かな刺激へと変えていく。
短いスカートから、股間が垂れ流れる蜜が内腿を伝って膝裏に落ちていくのがわかる。
やっぱり、自分はマゾなのだと思う。
こんな苦しみのなかで、美咲の身体はしっかりと深い快感を拾っている。
太腿を擦り合わせたい衝動が込みあがる。
しかし、それをすれば、下腹の奥が一気に緩む。
下腹の奥で、便意と掻痒が絡まり、どちらが先に決壊するのかわからなくなる。
締める。
歯を食いしばり、尻に力を込める。
その緊張が、さらに掻痒を増幅させる。
思考が薄れていく。
感覚だけが、鋭くなる。
人のざわめき──車輪の軋み──車内放送の声──。
すべてが遠のき、股間と腹の奥だけが異様に鮮明になる。
動けば崩れる。
止まれば狂いそうになる。
その狭間で、美咲はただ、縦の手摺りを握り締め続けるしかなかった。
電車が減速に入った。
揺れの質が変わる。断続的な振動が股間の奥を細かく刺激する。掻痒感が内側から押し広げられるように広がる。
腹の奥も、同時に重く波打つ。
限界はとうに越えている。
連結部に押しつけられたまま、美咲は縦の手摺りを強く握る。背中を押す他人の体温が、逃げ場のなさを強調する。
すると、電車が駅に停車した。
外気が流れ込み、人の波が一斉に動き出す。背後から押され、足が前へ出る。
かなりの乗客が扉に向かって流れていく。すると、人の移動を利用して、お兄ちゃんが美咲の横に戻ってきた。
突然に手錠が鍵で外された。
「降りるぞ」
耳元で低い声──。
「お、降りるの……?」
助かるの?
まだ、環状線の一周には遠い……。
一瞬、指が股間へ動きかける。
「ここで自慰をするつもりか?」
お兄ちゃんの意地悪な笑い声……。
はっとして手を引く。
気がつくと、痒みが襲っているスカートの中に手を入れようとしていたのだ。
慌てて手を股間から遠ざけ、拳を握り直す。
爪を掌に食い込ませる。
お兄ちゃんに腕をとられて、降車する乗客の最後から扉に向かう。
美咲は咄嗟に両手でお兄ちゃんの腕を握る。
意地悪なお兄ちゃんに密着して、美咲の心臓が痛いほどに鼓動を繰り返す。
痒みと便意から気を紛らわせようと、お兄ちゃんの腕を掴む手に全力の力を入れた。
痛いはずなのに、お兄ちゃんはなにも言わない。それも憎らしい……。
ついに、ホームへ押し出される。
白い照明。広い空間。ターミナル駅特有のざわめき──。
だが、軽くはならない。
掻痒感は消えるわけもなく、腹の奥の便意の圧も抜けない。
人の流れに巻き込まれながら、美咲はそのまま構内へと連れ出されていった。
「お、お兄ちゃん……もう、限界……」
縋るように声を出す。
これが何十回目の哀願になるのかは、もうわからない。
しかし、赦しを乞う言葉を口にせずにはいられなかった。
歩くだけで腹の奥が揺れる。締めているはずのお尻の括約筋が内側から押し返される。
「ああ、そうだな……。じゃあ、トイレに連れて行ってやる」
だが、突然の赦しの言葉に、美咲の胸の奥が一瞬だけほどけた。
「……えっ、本当に……?」
助かる。
その思いが、条件反射のように広がる。
出せるの?
この便意から、解放される。
膝の力が抜けかける。握っていた腕の力が、ほんのわずか緩む。
「ああ、俺は調教で嘘は言わねえ……。だが、準備しておくか」
直樹が改札口に向かう人の波から押し出して、人の少ない壁際に押し出す。
人の流れから外され、壁際へ押しつけられる。
改札へ向かうざわめきはすぐそこだ。
「じゅ、準備って?」
不安のままお兄ちゃんを見る。
しかし、お兄ちゃんは、美咲を壁に向かって立たせると、電車でされていた手錠を再び取り出して、美咲の両手首に前手錠をかけた。
「お兄ちゃん──?」
慌てて、腕を組んでいる素振りをして、手錠を隠す。
「トイレまで我慢だな」
お兄ちゃんは驚いたことに、自分の身体に隠しながら、美咲のスカートの中に後ろから手を入れて、さらにお尻に埋め込んでいたアナルプラグを引き抜いたのだ。
「うあっ、だめっ」
美咲は両膝をがくりと、二本の太腿を摺り合わせる。
便意はいまやや強烈な大波となって、押し寄せていたのだ。
美咲は慌てて、渾身の力をアナルに注ぐ。長時間、アナルプラグ守られていた分だけ、締めつける力に二倍、三倍の気力を込める。
「どうした? トイレに行くんだろう?」
お兄ちゃんが美咲の腕をとって立ちあがらせる。
しかし、もう崩壊は間近だ。
「お、お兄ちゃん、無理よ……」
姿勢を直して、歩こうとはするが、数歩で美咲は力尽きてしまった。
排便せずに、歩くのはもう無理だ。
「じゃあ、ここで垂れ流すのか、奴隷?」
お兄ちゃんが冷酷に微笑む。
「う、うう……お兄ちゃんの意地悪……」
美咲は手錠を掛けられている手で腿に爪を立てながら、お兄ちゃんを涙目で見る。
「これが調教だ……。主人様の許可なく、排便できるわけないだろう」
お兄ちゃんが頬を崩す。
美咲は、歯を喰い縛る。
とにかく、トイレまで……。
覚悟を決めて、再び歩き出す。
お兄ちゃんが連れて行ったのは、緑色の扉の多目的トイレだった。
「早く──」
美咲はゆっくりと扉が閉まっていくのももどかしく、排泄用の洋便器に向かう。
しかし、お兄ちゃんにまたもや阻まれた。
お兄ちゃんは前手嬢の片側を外して、今度は手洗い用の手摺りに繋ぎ直す。手洗いについている手摺りは低く、美咲は上体を倒して腰を屈めた格好になる。
でも、便器までは届かない。
「ど、どうして、お兄ちゃん? トイレに連れて行くって約束で……」
がちゃがちゃと手錠を動かすが外れることはない。
美咲は必死にお尻に力を入れながら、後ろに立っているお兄ちゃんを振り返る。
すると、お兄ちゃんが鼻で笑った。
「トイレに連れて来たろう。でも、排便させてやるとは言ってねえぞ。そもそも、まだ環状線を一周してねえだろう」
「そ、そんな……」
便意で粟立っている美咲の肌にどっと冷や汗が流れる。
「便意もそうだが、痒みも限界じゃないのか?」
お兄ちゃんが後ろからスカートをまくって、アナルの下からどろどろに濡れている美咲の股間に怒張を貫かせてきた。
「あおおおっ──お、お兄ちゃん──だ、だめえ──も、漏れるうう──」
美咲は泣き叫んだ。
しかし、股間から突き抜けるような歓喜が拡がる。狂うような痒みが襲っていた股間がお兄ちゃんに貫かれたことで一気に癒やされていく。
でも、一瞬でもお尻に込めている全力の締め付けを緩ませるわけにはいかない。
理不尽に身体だけが震えた。
「声を出すなよ……」
お兄ちゃんが苦笑しているような声を出す。それでも容赦のない律動は続く。
美咲のすべての気力は、便意が襲っているアナルに集中している。当然にほかの部分は完全に無防備だ。お兄ちゃんに何度も股間を貫かれ、あっという間に美咲は快楽の頂点に達してしまいそうになる。
だが、達してしまえば、絶対にアナルが崩壊してしまう。
美咲は必死に最後の崩壊だけは耐えた。
「ん、んんんっ」
懸命にアナルを締めつけて耐える美咲の股間に、お兄ちゃんが精を注いだのがわかった。
打ち込まれるお兄ちゃんの欲情の証が美咲の心を温かくする。
だが、便意はもう限界に迫っていた。
さすがに、快感に身を委ねることは、いまの美咲にはできなかった。
「お、お兄ちゃん……も、もう、漏れちゃうよ……。早く──」
美咲は手錠を揺らしながら、必死にお兄ちゃんに訴える。
奇跡的に逃れたとはいえ、便意との戦いはまだ続いている。
「調教では、お前の望みはすべて否定される。残るのは身を委ねることの快感だ、覚えておけ」
お兄ちゃんが 背後でかさりと音をさせた。
首だけを振り返らせる。
視界の端にうつったのは、白くて分厚い紙おむつだった。
「な、なにそれ?」
思わず声をあげる。
「環状線はまだ半周以上は残っているだろう? トイレに連れて行くのは、一周してからだ。それまでは、念のためにこれをしてろ」
お兄ちゃんの淡々とした声──。
ぞっとした。
耳を疑う。
トイレは目の前だ。
「む、無理よ、お兄ちゃん──。また、電車に乗るだなんて──。途中で漏れちゃう──」
「だったら、匂いで気づかれるなよ」
お兄ちゃんが背後にしゃがみ、美咲の脚を通していく。
トイレはすぐ横にある、それなのに、近づくことを許されずに紙おむつをはかされてしまった。
スカートを整え直してから、お兄ちゃんは手摺りから手錠を外して、前手嬢に付け直す。
「ああ……」
美咲は絶望に打ちひしがれた。
この便意に襲われたまま、残りの半周を耐えられる自信はない。
いや、この瞬間にも崩壊が迫っていた。
「行くぞ」
多目的トイレから再び雑踏の中に連れ出される。
でも、今度はアナルプラグはない。
一歩一歩が最後の寿命を削っていくようだった。
お兄ちゃんは改札に向かうことなく、再びホームに向かう方向に美咲を導く。
だけど、大きな波がまたもや襲ってきた。
もう動けない──。
美咲はついに立ち止まった。
巨大な便意がアナルに向かって怒濤となって迫っていた。
それを喰いとめる手段は、美咲には残ってなかった。
「あっ、ああ……」
腰が崩れ落ちた。
だが、途中で阻まれ、お兄ちゃんの腕の中に身体を埋められた。ホームに向かう改題の手前であり、かなりの人混みだ。そのそばで美咲はお兄ちゃんに抱き締められたかたちだ。
「お兄ちゃん……あ、あたし……もう……本当に……だめ……」
顔をあげる。
周囲の通行人が美咲たちに、視線を向けるのを感じた。だが、次第に気にならなくなる。絶望のなか、大好きなお兄ちゃんだけが美咲を支配している。
「ああ、頑張ったな……」
お兄ちゃんがいきなり美咲の口に唇を重ねてきた。
唖然とした。
だが、口の中を舌で掻き回され、唾液を注がれて、美咲はすぐに我を忘れた。
舌を絡める。
快感が拡がる。
「んああっ、ああ……」
身体が震える。
美咲のお尻が大きく波打って痙攣し始めた。
おしめの中でついに、崩壊が始まったのだ。
しかし、口づけは続いている。
周りにどよめきのような声がするが、美咲の耳には入って来ない。
全身が震えて、美咲は快感に包まれた。
ああ、いま自分は昇天している……。
おむつに汚物を出しながら、美咲は心の底からそう思った。
「……へえ……。ねえ、直樹……。もしかして、これって、あんたの家に転がり込んだ、例のクソ妹?」
そのとき、突然に声を掛けられた。
驚いてお兄ちゃんと交わしていた口づけを離す。
目の覚めるような妖艶な大人の美女が美咲を呆れたような表情で覗き込んでいた。