※この作品はR-18です。

他人になった妹は、俺の裏垢調教志願者でした   作:ドン・ドナシアン

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3話 《WARASHIBE17》と女王様
015 それはあたしのよ。触るな、年増


「身体くらい、自分で洗えるよ──。手錠、外してよ、お兄ちゃん──」

 

 美咲は背中に回された両手を動かしながら、苛立ちのまま声をあげた。

 大理石のような床と泳げるほどの浴槽のある大きな浴場だ。

 そこで、美咲はお兄ちゃんと、ふたりきりになっていた。貸し切り状態だ。

 一見すると、街中にある入浴施設を思わせるが、それだけでないとわかるのは、付帯する設備だ。

 壁一面の鏡──。天井にはレール。滑車や鎖──。湯漕の中心には、古代ギリシャ風の神殿柱のようなものもある。

 そして、よくあるライオンの口から出るお湯の設備の代わりに、裸の少女像が四体。しゃがんで股を開いて──四つん這いで片脚をあげて──小便小僧像のように立って股間を前に出すように──ブリッジのような姿勢で──放尿のように股間の部分からお湯を湯漕に注いでいるのだ。

 どう見ても普通の施設ではない。

 おそらく、特殊な目的で使われる場所なのは間違いない。

 

 だが、美咲の頭の中にあるのは、この奇妙な建物のことではない。

 怒りの原因は、さっき現れたあの女だ。

 浣腸をされて街中を徘徊させられた美咲がついに、おむつの中に粗相をしてしまったとき、偶然に出逢ったあの女である。

 お兄ちゃんが、美咲の身体を洗う場所を借りたいと言った途端、あの女は嬉しそうに笑った。

 そして当然のように、お兄ちゃんの腕に抱きついてきた。

 あの距離感も、あの視線も、あの表情も、どう考えても、ただの知人ではない。絶対に、男女の距離感だ──。

 

 三十歳くらいだろうと思う。でもとんでもない美人だ。背が高く、自信に満ちていて、お兄ちゃんに対して妙に馴れ馴れしい。

 しかも、お兄ちゃんも平然としていた。

 さらに、遠慮などなにもなく、お兄ちゃんはその女に、美咲の身体を洗う場所を提供するように命じた。

 そして、案内されたのがここだ。

 

 考えれば考えるほど、頭に血が昇る。

 お兄ちゃんが誰と付き合おうと自由だ。

 自分に口を出す資格なんてない。

 お兄ちゃんに、ほかの恋人がいたとしても、美咲のことさえ受け入れてくれれば、それでいいはずだった──。

 

 頭では理解している。

 そうでなければならないとも思う。

 それでも、胸の奥だけは納得してくれなかった。

 

「ばーか、マゾはマゾらしく、大人しく洗われてばいいんだよ。もう一度、身体を洗い直してやるよ」

 

 だが、お兄ちゃんは、まともに相手にしてくれない。

 シャワーで美咲の身体についた汚物をきれいにすると、手錠をかけて、一度湯船に浸け、今度は裸の美咲を、真ん中が大きくくくり抜かれている洗い椅子に座らせた。

 そして、自分も同じ椅子を持ってきて、美咲の正面に座る。

 お兄ちゃんも美咲同様に全裸であり、開いた脚のあいだからは、大きくなっている男根がそそり勃っていった。

 

 美咲の裸に欲情をしてくれている証だと思うと、腹がたっているとはいえ、それはそれで嬉しい。

 いつもだったら我慢できなくて、お強請りをしているかもしれない。だけど、いまだけは、そんな気になれない。

 広い浴場に、四体の少女像から注がれるお湯の音が響き続ける。

 

「じゃあ、さっきの年増女は誰なのよ。いい加減に教えてよ」

 

 美咲は唇を尖らせた。

 怒る権利などないのはわかっている。

 自分でも子供っぽいとは思う。

 お兄ちゃんに女がいたとしても、文句を言うのは間違っている。そんなのはわかっているのだ。

 けれど、どうしても腹立たしかった。

 

「ヒミコのことか?」

 

 お兄ちゃんが笑う。

 まるで、美咲の苛立ちを愉しんでいるかのようだ。

 それもまた、腹がたつ。

 

「ヒミコっていうの、あいつ? 邪馬台国?」

 

「源氏名っていうやつだな。本名じゃねえ。有名な女王様なんだぞ」

 

「女王様? ええっ、お兄ちゃん、変態なの?」

 

「お前に言われたくねえよ。それよりも、また、一からやり直しだ。もう一度洗ってやるぞ」

 

 お兄ちゃんは湯に溶いた特性のローションをスポンジに含ませて、それですっと美咲の肩口をまた洗い始めた。

 

「うんっ」

 

 美咲はそれだけで、身震いしてしまった。

 今日は一日中、お兄ちゃんの仕掛けた玩具に翻弄された。街中でも羞恥調教され、心身ともにヘトヘトになっていた。

 必死にお兄ちゃんの「野外調教」に耐え抜いてきた身体は、異常なほどに敏感になっている。

 しかも柔らかいスポンジが、余すことなく、美咲の性感帯を掘り起こしてくる。

 未知に近い刺激に、美咲はどうしても反応してしまう。

 

「うう、ひ、卑怯よ、お兄ちゃん。あ、あたし、怒ってんだから」

 

「なにを怒っているんだ。俺にセフレがいたことにか?」

 

 直樹が苦笑する。

 

「はああ?」

 

 美咲は声をあげていた。

 しばらく絶句する。

 セフレ──?

 美咲は一瞬硬直する。 

 いま、セフレって言った?

 

「セフレ──。セフレって、あのセフレのこと──?」

 

 やっと声が出る。

 

「ほかにセフレってあるのかよ。まあ、いろいろとあってな」

 

「あいつ、セフレなの──? お兄ちゃんの?」

 

「そんなものだな。それよりも、ここの性感帯だろ?」

 

 お兄ちゃんが背中に回している腕の隙間から、腋の下にスポンジを走らせてくる。

 

「あんっ、やあっ」

 

 美咲は身体をくねらせて、ガードを固めようとした。しかし、ただお兄ちゃんに普通になぞられるだけなのに、気持ちがよすぎる。

 広い浴室に、美咲の声が響きわたった。

 

「だ、だいたい、あの女、どう見ても、三十過ぎでしょ。お兄ちゃんに相応しくないわよ」

 

 美咲は声をあげる。

 

「あら、酷いわねえ。直樹のクズ家族のひとりのくせに?」

 

 そのときだった。

 からからと浴場に入る扉が開いて、さっきの年増女は入ってきたのだ。

 車輪付きのトレイになにかを載せてきたが、一糸まとわぬ全裸だ。陰毛さえも隠してない。

 本当に美人だし、スタイルもいい。

 またもや、かっと血が昇る。

 

「勝手に入ってこないでよ。あたしとお兄ちゃんが使っているのよ」

 

 美咲は声をあげた。

 

「勝手にって……。一応、ここはあたしの店なんだけど」

 

 女──ヒミコが笑った。

 

「……ところで、なんで入ってきたんだ、ヒミコ? 貸し切りにしてくれんじゃなかったのか?」

 

 お兄ちゃんがヒミコに言う。

 

「貸し切りにしたじゃないのよ。でも、せっかくのクズ家族に会ったんだもの。ちょっとお仕置きくらいしたくてね」

 

「お仕置き──? なんで、あんたにお仕置きをされないとならないのよ──」

 

 美咲は声をあげた。

 

「煩いわねえ──。直樹を家から追い出したくせに、今更、集ってきた蠅の分際で偉そうにするんじゃないわよ──」

 

 すると、ヒミコが一転して口元の笑みを決して怒鳴った。

 びくりとなるが、美咲も負けるわけにはいない。

 

「な、なによ──。それは悪かったと思っているわよ──。だから、あたしはお兄ちゃんに償いするの──」

 

「償い? まさか、直樹の調教を受けるのが償いとか、眠たいこと言ってんじゃないでしょうねえ。耳掻きと耳はどっちが気持ちいいかわかってる?」

 

「うわっ、喩えが、だるウザ」

 

「はああ?」

 

「とにかく、お兄ちゃんの調教はあたしの趣味よ──。放っといて。あたしとお兄ちゃんはセフレよ。あんたはもうお呼びじゃないの」

 

「な、なによ、この娘──」

 

 ヒミコが目を剥く。

 

「とにかく、大学卒業して就職したら、お兄ちゃんにはヒモになってもらって、あたしが養うんだから──。約束してんの」

 

 美咲は声をあげた。

 

「ばか、なにがヒモだよ。ふざけるなよ」

 

 お兄ちゃんが呆れたように笑う。

 だが、ヒミコが呆気にとられたような顔になる。

 

「ヒモ? あんた、直樹をヒモにするの? あんたがじゃなくて?」

 

 ヒミコが不思議そうな表情になる。

 

「もしかして、お兄ちゃんが清掃員バイトだから、小馬鹿にしてるの? お兄ちゃんはお金にならなくても、立派な清掃員なんだから」

 

 美咲は怒鳴る。

 だが、ヒミコは不思議そうな顔になる。

 

「……清掃員って……。直樹、そうなの?」

 

 ヒミコがお兄ちゃん見る。

 勝ったと思った。 

 このヒミコは、事情を知っているような物言いだったが、お兄ちゃんの仕事すら知らないのだ。

 ちょっと溜飲がさがる。

 

「……ヒミコ、余計なことを言うなよ。美咲はまだ、なにも知らないんだ」

 

 すると、お兄ちゃんが困ったようにヒミコに告げた。

 なにも知らない……?

 どういう意味?

 なんか、またむっとなる。

 

「……それよりも、せっかく来たんだ……。なら、三人で遊ぶか。その時間はあるんだろう?」

 

 お兄ちゃんがヒミコを見る。

 

「もちろんよ。なんだか、面白そうな娘じゃない。客なんて、キャンセルするわ。直樹が相手をしてくれるならね」

 

 すると、ヒミコが誘うような目をして、お兄ちゃんのそばにしゃがみ込む。

 しかも、お兄ちゃんの脚のあいだに、手を入れてすっと触ってきた。

 

「うああ──それはあたしのよ──。触るな、年増──」

 

 美咲は怒鳴りかけた。

 

「年増、年増って、あんたねえ……」

 

 ヒミコが美咲を睨む。

 

「なあ、仲良くしろよ……。まあいい。身体を洗うのは中断だ……。美咲、もう一度湯船に入れ。とりあえず、真ん中の柱に両手を繋いでやる」

 

 お兄ちゃんが美咲の腕をとって、立ちあがらせた。

 

「へえ、じゃあ、まずは先にわたしに味見をさせてよ。いいでしょ、直樹?」

 

 ヒミコがお兄ちゃんに媚びを売るように擦り寄る。

 

「だめよ。あたしの身体は、徹頭徹尾、お兄ちゃん専用よ──」

 

 美咲はヒミコを睨んだ。

 

「ほう、ならいいぞ。責めさせてやる。ただし、十五分間な。それまで美咲が耐えたら終わりだ。今度は美咲にヒミコを責めさせる」

 

 直樹が笑った。

 美咲もびっくりしたが、ヒミコは眼を丸くしている。

 

「……へ、へえ……。なら、いいわ。その代わりに、十五分以内にこの娘が極めたら、そいつの陰毛を全部もらうから」

 

「いいだろう。じゃあ、美咲、頑張れ」

 

 お兄ちゃんが笑う。

 美咲は絶句してしまった。

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