クリームキスから始まる関係 ~甥っ子の同級生のボーイッシュ少女と過ごす夏休み~ 作:上上上上上上上
俺達が内緒の恋人同士になった祭りの夜から4日。
元カノと付き合い始めた頃は何度も夜中までだらだらチャットしたり通話でおやすみコールなどしてたもんだけど、残念ながら小学生である侑希とはそういうわけにはいかない。
侑希はキッズスマホを持ってるが、ネットでのトラブル防止の為に時々ママにメッセージアプリや通話記録などをチェックされてると言うので、直での連絡先交換はまだ出来ていない。
あれ以来毎夜、撮りためた侑希の写真とあの快感の記憶をシコネタにして一発抜いて、その写真におやすみを語りかけて眠りについている。
そんな胸の高まりの落ち着かぬまま、俺は卒論に必要な資料を求めて私鉄で30分ばかり先、隣の市にある他大学の図書館を訪れていた。
禁帯出資料の閲覧をあらかじめネットから予約しておいたので、目当てのページを探し出してコピーを取ってもらったらさっさと図書館を後にする。
そして駅までたかだか徒歩15分ほどの帰り道の強烈な日差しに耐えかねて、駅前の冷房が効いたショッピングモールにぶらり立ち寄る……その入ってすぐの吹き抜けロビーで、奇遇にもママと一緒に買物に来てた侑希に遭遇した。
侑希はパパ似ということで、むっちりしたママとはいつも髪を短くしてるくらいしか似てるとこは見当たらない……ただ夫婦それぞれ学生時代はかなりスポーツに打ち込んでいたらしく、侑希の運動神経は両親譲りと思って良いだろう。
今日はモール全体がセール期間中ということで、ファストファッション店やスポーツウェア店を目当てに母子でやって来たそうだ。
「俺は図書館帰りでして……」
と侑希ママに事情を説明してると、侑希が急に俺の袖を引っ張った。
「図書館……本……あっそうだ。たか兄ぃ、初心者向けの料理の本ほしいから、選ぶの手伝ってくれない?」
しかし侑希ママはやんわり娘を制した。
「ちょっと、ママ夕方に美容院の予約があるからもう帰らないといけないって言ったでしょ」
「ママ先に帰って良いよ。私、たか兄ぃといっしょに帰るから」
すかさず言い返す侑希。
「ダメでしょ、たか兄ぃさんもさっき卒論のために図書館に来たって言ってたんだから。忙しいのよ」
侑希が俺に目で助け舟を求めているのに気づいた。
「あっいや、今日は俺、もう用が済んで帰るだけです。良かったら侑希の本選びに付き合って、あと
「でもそんなご迷惑じゃ……あぁ、そうね。それじゃお願いしていいかしら」
かくして侑希ママは侑希に本代とおやつ代と称して3千円握らせて、駅へと消えていった。
それを見送って、にんまりと振り向いて俺の手を取る侑希。
「こんなに早くまたデートできるなんてね~。さっ、ちゃちゃっと本買って遊びに行こっ!」
モール内の書店で子供向けの料理本をさっくり選んで(そりゃそうだ、在庫に選択肢が少なかったからな)俺も軽く個人的な買い物を済ませると、さてこれから何をしようかという話になった。
そして足を向けたのが、モールの斜向かいにあるネカフェ。
ペアシートで飲み放題ドリンクバーのジュースでも飲みながら、俺が料理を始めたばかりの頃によく見てた動画サイトのおすすめお料理チャンネルをパソコンの大きい画面で一緒に見ようか、という趣向だった。
それが思いもかけず……
◇◆◇◆◇
俺達は案内された番号の半個室型ペアシートで荷物をおろして一息ついた。
そして備え付けのパソコンの電源を入れるとまずBIOSの起動画面が出て、次いでOSが立ち上がる。
しかし、デスクトップが開いた瞬間にエラーメッセージが出たかと思うと、何も操作しないうちに突然画面が暗くなり、また最初の起動画面に戻って……そんな風に再起動が勝手に繰り返され、何の操作も受け付けない。
どうすれば良いか分からなくて店員さんを呼んだら、状況を確認してすぐに店長さんまで呼ばれることになった。
二人は何やら話し合いながら復旧を試みるが、何度試しても変化はない。
ついに店長さんが音を上げた。
「すいません、ちょっとこのパソコンすぐ直りそうにないんで、他の席に移動してもらいたいんですが……」
「ええ、いいですけど」
店長さんは少し言いにくそうに声のボリュームを落とした。
「それが今、普通のペアシートは全部埋まってるんですよ。それで本当は未成年の方は個室は利用できない決まりなんですが……今回は特別ってことで、内緒で個室ペアシートの方にご案内できます。あ、もちろん料金は普通のペアシートのままで結構ですんで」
……こんな具合でまさかの密室デートになってしまった。
「へ~、個室ってこんな風になってたんだ」
「壁は薄っぺらだから、静かに利用しなきゃだけどね」
俺は夜食の買い置きにしようと思ってモール1階のスーパーで買ってきてたジュース、お菓子、パンが入ったエコバッグをフラットシートの上に広げた。
「ほら、これをおやつにしよう。個室はドリンクバーの飲み物や注文した食べ物は食べらんないから」
「あ、これのこと?」
侑希は〝警察の指導により 店内提供の飲食物は 個室に持ち込めません〟という旨の壁の貼紙を指した。
「あ~、パンケーキフェアってポスターあったから、あれ注文しようと思ってたんだけどな~」
「室外の飲食コーナーでなら食べられるよ」
「あっ、でもたか兄ぃスーパーでパンケーキ買ってきてんじゃん、これもらうよ。ここで二人だけの方がいい」
といたずらっぽく目を細めて並んだ肩をぐいぐい突き合わせてくる侑希がどうしようもなくチャーミングだ。
狭い個室の中、二人ヘッドホンを着けて隣り合わせてもたれ合い、買ってきたばかりの料理本とパソコンで見る動画サイトを肴にささやかなおやつパーティだ。
そのうち動画主が料理をしながら恋バナを始めたことで、ふと侑希に聞きたいことがあったのを思い出した。
「あのさ……変なこと聞くけど、侑希は俺と違って一杯友達や知り合いがいるのに、どうしてその中でお前とは全然逆の俺のこと好きになったんだ?」
「え~、それ聞いちゃうの?どうしよっかなぁ……」
侑希はもじもじしながらも、まんざらでもなさ気に独白を始めた。
次回は番外編。
ちょっと趣向を変えて侑希の回想モードです。