クリームキスから始まる関係 ~甥っ子の同級生のボーイッシュ少女と過ごす夏休み~ 作:上上上上上上上
三回目にしてこの夏最後の二人の料理教室は、再び姉ちゃんちのキッチン。
今回は侑希が作った昼食を姉ちゃんと翔斗に振る舞い、一部は持ち帰って家族にも食べてもらおうという課題だ。
これは先日侑希がまだ自宅で料理を披露してくれてないってことを侑希ママが話してたのをヒントにして決めたことなんだが……
「ん~、何かあんたら二人って、不思議な距離感してるよね。妙にツーカーしてるのに新婚夫婦みたいな初々しさもあるっつーか……」
姉ちゃんは、俺と侑希が並んで料理している姿を背後のダイニングテーブルから眺めながらそう言った。
今日は俺達二人の関係を怪しまれないよう言葉遣いなど気を付けてたんだが、そんな風に見えてたか。さすが女性は男女関係には鋭いカンを発揮する。
「はははっ、新婚夫婦か~。侑希は小6……え~と12歳だから、少なくとも6年は早いな、残念。って、10コも
誤魔化すとしたらこういう言い方かな、と笑いながら侑希を横目に盗み見ると、料理の手を止めないながらも顔を真っ赤にしている。
「ん、まあ、たか兄ぃならすぐいい人見つかるんじゃない?」
「だといいんだけどな」
「意外と近くにいたりしてね♪あはは!」
侑希も上手くすっとぼけて意味ありげな目配せを返しながらも、慰めるように俺の背中をぽんぽんと叩いてくれた。
「ありゃ、あんた、侑希にも振られちゃったか~」
「るっせぇ!」
姉ちゃんもつられてけらけら笑うが、万が一にも俺と侑希の本当の関係を知られようもんなら卒倒するんじゃないかな。
「ただいま~、何かあったの?」
外から帰ってきた翔斗が、姉ちゃんの笑い声を聞いてキッチンを覗き込んだ。
侑希の初めてのお料理お披露目会を好評に済ませた二人並んでの帰り道、今日ばかりは二人だけの時間を作れなかったことに不満を漏らす侑希だった。
「ほんっと~~~に、次はセックスしてよ!?」
持ち帰り用に冷ましたチャーハンと侑希ママの大好物だという回鍋肉のプラ容器を入れたエコバッグを提げた侑希は、俺に念押しした。
周りに誰の目もないとはいえ、住宅街を歩きながらする話じゃないんだよ。勘弁して!
「大丈夫。明後日は間違いなく親父とお袋が出かけてて、夜まで戻らないから」
自分のこの言葉の意味を改めて噛み締めて、ごくりと唾を飲み込んだ。
そう、明後日俺の両親が外出する予定になってるのを良いことに、おうちデートの約束を侑希と交わしていたわけだ。
侑希の家の前に着いて、改めて周囲を見渡して人通りがないことを確かめると、背を屈めてちゅっとお別れのキスを交わした。
姉ちゃんが俺達のこと新婚夫婦みたいな初々しさって言ってたのはこーゆー雰囲気がにじみ出てたってことなんだろうな、と心の中で苦笑いした俺だった。
◇◆◇◆◇
そしてその翌々日、日中はまだまるで暑さのピークを抜けきったとは思えない8月の末の、約束の午後。
俺達は一旦いつもの公園で待ち合わせた。
「もしもしママ?今◯◯公園なんだけどさ、たか兄ぃと料理の話してて、台所とか道具とか見せて欲しくなっちゃったから、たか兄ぃのお
万一侑希ママがスマホのGPSアプリで侑希の現在地を見たりしても怪しまれないよう、口裏合わせの電話をしてもらってるんだが……親子の会話にしては何だかつっけんどんな口調。
キッズスマホを受け取って侑希ママと話すと、今朝親子喧嘩したばかりだそうで……それでか。
遠回しに機嫌取りをお願いされてしまった。
「侑希、ママと喧嘩したんだって?」
「あーうん、パパママのスマホでこっそりエロ動画とか見てるのバレちゃった」
ぶふぉっ!
「めっちゃ叱られたよ。小学生が見るもんじゃない、だってさ。動画どころか、これから本当にしちゃうのにね。ははっ」
侑希はいたずらな笑みで白い歯を見せた。
侑希ママごめん、何の言い訳にもならないけど俺、侑希に真剣に向き合ってますから!
「やば……ドキドキしてきた」
「そんなの俺だって同じだよ」
自転車をうちの古マンションの駐輪場に置いてエレベーターに乗り込む時、繋いだ侑希の手がこわばっているのを感じた。
オレンジに光るデジタルの階数表示と共に気持ちも高ぶっていく……きっと侑希も同じなんだろう。
エレベータを降り、両親不在の自宅のドアを開け、自室のクーラーを点けて、侑希を招き入れる。
そんな一つ一つの当たり前の振る舞いさえ煩わしく感じるほどに逸る気持ちを抑えつつ。
喉がカラカラなのは決して外の酷暑のせいばかりじゃないだろう。
「これがたか兄ぃの部屋……やっぱ大学生って本いっぱい読むんだぁ」
いつものキャップを脱いで床の上のクッションに座った侑希は、俺が渡したグラスのジュースを飲みながら部屋を見回して言った。
「いや俺のは少ない方かな。近頃は大学の教科書や資料と料理本以外は殆ど電子書籍で買ってるし」
ここまで来て何世間話なんかしてるんだろうな、俺ってば。
侑希のどうしてもセックスしたいという求めに応えて、両親がいない時間を見計らって待ち合わせまでして俺の部屋に招いたんじゃないか。
ずっと歳上の俺がちゃんとリードしないと……と言ってもどうやって話の流れをコントロールすれば良いものやら。
「あ、侑希、それさっきコンビニで買ってきたやつだよな。食べないの?」
侑希の手元のレジ袋を指しながらも、つい関係ない話に逃げてしまう自分に自分でがっかりだ。
「違うよ、たか兄ぃ。これは食べる用じゃなくて……」
侑希はローテーブルの上でたっぷりクリームをスポンジで一周り巻いただけのロールケーキとプラスプーンの袋の口を切りながら言う。
「……これはほら、こんな風に使うやつ」
ロールケーキの真っ白なホイップクリームをスプーンでひとすくいして、自分の指先に塗りつけた。
「覚えてるでしょ、たか兄ぃ」
一瞬にしてあのクリームキスの味と感触が、そしてその興奮が俺の胸に蘇った。
リードするつもりがリードされちゃってるよ、情けないなぁ、俺。
でも10も年下の彼女の侑希にここまでさせておいて、この流れをぶった切るなんてヤボな真似する訳にはいかないだろ。
「ああ、侑希。あの感動は忘れない。あれがあったから、今俺達はここにいる」
俺も侑希に倣って、自分の指先にホイップクリームを塗りつける。
床に座ったまま身を乗り出して熱い視線を交わしながら、クリームを塗った指を互いの口元に差し出し合った。
「好きだよ、侑希」
「私も、たか兄ぃが大好き」
そしてあのときと同じように、俺達は互いの指先を咥え合う。
ちゅっ、ちゅっ、ちゅぱっ、ぺろっ、ちゅっちゅ~っ……
ゆっくり、慎重に……何度となく思い返してはシコネタにした言葉通りに甘美な時間が、俺の部屋で再び始まった。
小さくて柔らかい指先が俺の口の中をこちょこちょと蠢きくすぐり回り、俺はその指先を舌で捕らえてねろねろとねぶり回す。
侑希もまた俺と同じことをやり返してくる。
舐め回した指先が、かき回された口の中が、こんなにも感じるなんて、あの時まで思いもしなかった。
今はそこに互いを思い合う恋愛感情というエッセンスまでが加わって、以前にもましてずっと深みのある陶酔感を醸し出している。
何度も思い出してはクリームを追加して甘い々々愛撫を繰り返すうち、俺はまたロールケーキからすくい取ったクリームを、今度は侑希の唇に塗りつけた。
「えへへ……前と同じことしてても、今は好き同士って思ったら、もっと気持ちいいね❤」
上気した頬と潤んだ瞳がたまらなく愛おしくて、俺は両手の指を正面から絡め合ってクリームで白く彩られた侑希の唇にむしゃぶりついた。