※この作品はR-18です。

裏 母の写真   作:松田義和

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終幕

最初は、ただの偶然だった。

 

母さんのスマホがリビングのソファに置きっぱなしになっていて、画面に通知が光っていた。

「バッテリー減ってるな」なんて自分に言い訳しながら、僕は手を伸ばした。

いつもならパスコードがかかっているのに、そのときはなぜかロックが解除されたままだった。

 

軽い気持ちで写真フォルダを開いた。

猫の写真、空、夕飯の唐揚げ――よくある主婦のスマホだと思った。

でも、ページをめくっていくうちに、目に飛び込んできたのは、

鏡の前で下着姿の母さんがこちらを見つめている一枚だった。

 

心臓が跳ねた。

現実感がなかった。

目の前にあるのは間違いなく母の姿で、でもそれは“母親”ではなく――“女”だった。

 

慌ててスマホを戻したけれど、

それからしばらく、僕の中では何かが壊れたままだった。

 

母さんは変わらず明るく、夕飯を作ってくれていた。

「ごはんチンして食べなさいよ〜」なんて、いつもと同じ声で。

けれど僕の目には、彼女の表情も仕草も、前とは少し違って見え始めていた。

 

数日後、僕は再び母のパソコンを開いた。

見てはいけないと思いながら、やめられなかった。

そして、また――見つけてしまった。

あの夜の写真よりも、もっと挑発的な、もっと深い何かが滲み出ている写真を。

 

僕は、それをポケットに保存してしまった。

自分でもわかっている。

それが一線を越えているということくらい。

 

それでも、何度も見返してしまった。

止められなかった。

まるで、母さんが僕に“見せている”ようにさえ思えた。

 

そして気づいた。

母さんもまた、僕が見ていることに、気づいていたのではないか、と。

 

ある晩、布団に入ってから、僕はリビングの明かりが消えたのを確認して、母さんの部屋に向かった。

何をするつもりだったのか、自分でもわかっていなかった。

ただ、何かを確かめたくて――引き返せない場所まで来てしまっていた。

 

布団のそばで立ち止まった僕に、母さんは気づいていたと思う。

それでも彼女は目を閉じたまま、動かなかった。

 

「……お母さん」

 

そう声をかけたとき、彼女は微かに指を動かした。

まるで、答える代わりに“委ねる”ように。

 

何かが崩れた。

僕も、彼女も。

 

その夜、言葉はほとんどなかった。

ただ静かに、触れ合った。

夢の中のように、でも確かに現実で――

母さんが僕を拒まなかったことだけが、すべてだった。

 

次の日、母さんはいつも通りに目玉焼きを焼いてくれた。

僕も、何事もなかったように朝食を食べた。

でも、ふたりの間の沈黙は、以前とは違っていた。

何も話さなくても、互いに“知ってしまった”ことが、ずっと空気に滲んでいた。

 

それからの母さんは、少しぎこちなくなった。

けれど、ときどき、僕の視線を意識しているような仕草もあった。

ある夜、ふとしたタイミングで手が触れたとき、母さんはそのまま動かなかった。

 

罪悪感に潰されそうになる日もあった。

でも、それ以上に、もう彼女を“母親”だけでは見られなくなった自分をどうすることもできなかった。

 

 

 

ある夜、台所で音がした。

 

そっと起きて見にいくと

 

母さんがスマホを手に、自分自身を撮っていた。

それは僕にとっての“始まり”だった最初の自撮りを思い起こさせた。

 

 

僕はその場面を見てしまった。

いや、もしかしたら――母さんは見られることを期待していたのでは?

 

母さんは、その写真を削除しようとしていたようだった。

しばらく画面を見て考えていたようだ。

 

でも、できなかった。

 

 

明日になれば僕はまたその写真を見ることになるだろう。

 

 

ならば・・・

 

 

僕は着ているものを全部脱ぐと母さんに近づいて行った。

 

 

 

 

 

 

 

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