「ぜぇ…ぜぇ…あと…いくつ…だい?」
息を切らして書類をさばき続ける先生は、自身が持つシッテムの箱に問いかける。
端末から2人の可愛い声が聞こえて、あと62枚です!と元気よく返答が帰ってくる。
出張に他業務に追われて、全く恋人との時間を過ごせずにいた先生は、この一週間死ぬ気で仕事を片付ける勢いで真面目に取り組んでいた。
連邦生徒会より送られてきた書類を纏めて、それぞれの部署に送るよう手配する。
なんとか一息つけそうで、片手間に給湯室でお茶の準備を整えた先生は甘味を食べて脳に栄養補給を開始する。恋人から贈られた菓子は、ほどよい甘味に、愛情を感じる美味しさに舌が喜んでいる。
「ふぅ…美味しかった。さて…目処はついたかな」
あれだけ山になっていた仕事が半分以下になり、人間死ぬ気になればやれるもんだなと一人頷いて納得していると、モモトークが鳴る。
確認するとどうやら、デートのお誘いのようだ。
しかし、ラフな格好で来てほしいとは如何に?
「とりあえず準備して向かうとしよう」
何時も着ているスーツを一応持って、ほどよい軽さのジャケットを着込んでトリニティへと向かう事にした。
何度も足を運んだお屋敷へと到着し、モモトークを送ると、いま行きますと返事が返ってきて、扉からではなく庭園の方からナギサ様が向かってくる。
「先生!お早いお着きで」
何かの準備をしていたのか袖をまくり、パタパタと翼を揺らす。まずは熱い抱擁を交わし、バードキスで出迎える。
心地よいがこのままでは終わらないと一旦口を離す。互いに名残惜しいが、時間はたっぷりとあるので焦らずいこう。
「先生お疲れでしょう?今日は私のおもてなしを堪能してください」
「ありがとうナギサ」
手を絡めて、庭園に案内される。
美しく彩られた花々に優しい香りが脳を癒す。
背の丈ほどもある芝生の中を歩いて、目当ての場所にたどり着く。
芝生迷路の中にあったのは大きめのガゼボがあり、テーブルと椅子が用意され、大きなバスケットが置かれていた。
「どうですか?秘密の隠れ家をイメージして建設してもらいました」
周りは芝生によって視線を遮られ、完全に周囲から隔絶された空間が出来上がっていた。
こういった隠れ家にテンションが上がる先生。
手を引き、先生を椅子へと誘導する。
ナギサ様は食器のついたカトラリー付きバスケットを開き、お皿を並べて中からは、手頃な大きさのパイが鎮座している。
切り分けてるとパイに包まれた中身はジューシーで赤身の強い牛肉のパイ包みだったようだ。切り分けたパイを皿にのせてソースをかける。
準備を続けるナギサ様は焼きたてのパンにバターを添えて皿の上に置き、横に調味料各位を揃えて終わると同時に先生のお腹から元気な声が聞こえてくる。
「ウフフ…さぁどうぞ食べてください」
有り難く頂くこととしよう。
学んでおいたナイフとフォークでパイを切り、口に運ぶ。サクサクと少ししっとりとしたパイに食べ応えのある旨味の強い赤身肉がなんとも言えない美味しさを醸し出している。パンはどうだろうか。
半分に千切ると湯気がたつ。焼きたてだからか、モチモチとした食間が心地よい。バターをつけるとまた一入旨くなる。
食べ進めると、バスケットの中から別の物を取り出すナギサ様。
どうやらチーズのようでおかわりのパンをスライスして、挟んで塩と胡椒を降り、此方に渡してくる。
「濃厚なチーズなのでこれだけの味付けで十分なのですよ」
一口食べてみる。普段食べてるようなチーズとは違い、味が明確で濃厚なチーズの旨味が暴力的に舌を揺さぶる。シンプルな味付けで十分と言うのがよくわかる。もう先生は食事に夢中になって食べ進めていく。
メインの食事が終わり、またもバスケットから今度は食後のデザートを取り出していく。
カップに紅茶を注ぎ、お皿に小さいタルト、ブラウニー、デニッシュと一口サイズのケーキを用意してくれた。
タルトを口に運ぶと、サクサクのクッキー生地に乗っけている果物の甘味がマッチしてとても美味しい。紅茶に口をつけると甘さが控えめで若干の渋味を兼ね備えているのかケーキの甘さに良く合う。
ブラウニーはしっとりと滑らかな舌触りにクルミがトッピングされていて食感の違いを楽しめる。
デニッシュはパリサクと中のクリームが甘味が強く生地に負けていない。
それをにこやかに見つめるナギサ様。穏やかな時間が過ぎていく…
「御馳走様でした。とても美味しかったよ」
食後のデザートまで平らげてナプキンで口を拭い、ご満悦な先生。
紅茶を2人で飲みながら、ゆったりとした時間が流れていく。
「私のおもてなしはお気に召して頂けましたか?」
「最高だったよ、ありがとうナギサ」
ナギサ様の額に口づけを運ぶ先生。
互いに顔を見合わせ微笑む。
愛しさを感じるスキンシップにしばし興じ、ナギサ様は自身の太股をポンポンする。
先生は察したようで、ではお邪魔してと膝枕を堪能する。柔らかな太股に顔を埋める先生はそっと手で太股を撫でると、ナギサ様に指でつねられる。
「めっ」
「…ごめん」
気を取り直して、休み始める。普段の喧騒とはかけ離れた空間に、身体は休息を促すかのように睡魔が襲いかかってくる。
うつらうつらし始めると、頭を撫でてくれているようで心地よい。
サラサラと風が吹いて髪を揺らし、先生は静かに寝息をたて始めるのだった。
「お疲れ様です…先生…」