「ふぅ…流石に…疲れましたね…」
お風呂場での二回戦を終えて、半ば逆上せる2人はベッド腰掛け、アイスティーを嗜む。
身体は芯から暖まり、心地よい気だるさを堪能していた。
「ごめん、無理させちゃったね」
頭を撫でながら謝罪する先生。
あらゆる宝石の輝きに負けない、シャンデリアに照らされる若干湿る髪の美しさたるや。
手櫛ですけば、なだらかに指の端から滑り落ちる髪に夢中になっていると、うなじから滑る雫が眼に入る。
「ん…先生」
頭を撫でられる心地よさに浸るナギサ様は、先生垂れかかり、バスローブ少しだけはだけて谷間から覗くさくらんぼが先生の眼に映る。
気づいてはいるのだろう。
頬を染め、先生の胸板から聞こえる早めの鼓動に、耳を傾ける。
先生はなにも言わずに、腋に手をいれ抱き寄せ互いの熱いと感じる体温を交換する。
暫しの沈黙が部屋に流れ、2人はそっとベッドに横たわる。
しかし、疲れがたたり2人は静かに寝息を立てて休み始めたのでした。
先生の鼻腔を擽る微かな香り。
ふと、眠気眼を開くと横に寝ていたナギサ様は先に起きたのだろうか?姿が見えない。
先生に毛布が被せてあり、起き上がると置き手紙があった。
先生へ
起きましたら食堂の方へおいで下さい。
夕食を作って待っております。
どうやら深い眠りに付いていたようだ。
バスローブから着替えて、ナギサ様が待つ食堂に向かうことにしよう。
いそいそと着替え、勝手知ったるお屋敷を歩き始める。
食堂につくと、淡いピンクのエプロンを付けたナギサ様が準備を進めており、声をかけると此方に抱きついてくれた。可愛い。
「丁度準備を追えたところで声を掛けに行こうとしてたんです」
「ナイスタイミングだったね」
額を合わせ笑い合う2人。
先生の手を引いて席に誘導する。
ワゴンを引いて料理を並べ始め、クローシュを外すとフワリと湯気を漂わせ食欲をそそる。
ローストビーフやヨークシャー・プティングを纏めたサンデーローストに、スコッチエッグ等々…
眼を引く食事にお腹が鳴く先生。
「さぁ食べましょう先生」
2人は手を合わせ食べ始める。
薄く切られたローストビーフをソースに付けて口に運ぶ。容易に噛み切れる柔らかさ、そして赤身肉の旨味に舌が喜んでいるようだ。
プティングはグレービーソースに付けて折り畳み食べるとシュークリームの皮のようなサクフワな食感が大変美味しい。
ここらで温野菜で口休め。
ニンジンの優しい甘さと清涼感で口のなかをリセットしてくれる。
「美味しいよナギサ!」
「ウフフ…そう言っていただけると料理したかいがあります」
談笑しつつ、料理に舌鼓を打ち気付けばすっかり胃の中に収まってしまった。
寝起きの身体に腹六分目の丁度いい量で満足感が強い。
食器類の片付けが終わり、どうしようかと思案を巡らせる前にナギサ様が先生に食後のお茶はどうかと聞いてきた。
折角だから頂こうかなと伝えると、家令になにやら伝えると先生の手を取る。
「今夜は満月ですし、テラスでお茶をしましょう?」
何と今日は満月らしい。
それならと、互いに恋人繋ぎしながらテラスへと向かう2人は腹ごなしと言わんばかりに歩き始める。
「おぉ、きれいな真ん丸」
何とも美しい満月が顔を出して、テラスの2人を月明かりが照らす。
ワゴンが用意されており、軽い茶菓子と紅茶が用意されており、名残惜しくも手を離し先生を席に座らせ、夜の茶会の準備を整える。
「どうぞ」
「いただくよ」
静かな夜の茶会に、まるで世界に2人しか居ないようだ。外の涼しさに紅茶の熱気が身体を暖めてくれる。そっと椅子をずらし、隣りに座るナギサ様。
少し月が雲に陰り、ほのかな灯りがテラスを包み込む。
「私のもてなしはご満足いただけましたか?」
「最高だったよ。身体もすっかり軽いしね」
ぐるぐると肩を回す先生。
ちょっとわんぱくな姿に笑うナギサ様。
お茶のおかわりを貰い、暫しの沈黙を楽しみ、菓子を口に運ぶ。
また明日から、忙しい日々が続くだろう。
だか今は、この瞬間だけは先生を一人占めしてもいいだろう。
「せんせ?愛してくださいませ」
「仰せのままに」
互いに顔を見合わせる。そして音もなく、男女の睦事に興じる2人の艶やかな姿を、見ていたのは雲から覗く月だけが見守っていた。