「ほぉ…衣装とな?」
トリニティにお仕事をしに来ていた先生は、セイアに誘われ紅茶を楽しんでいた。
ナギサ様は残念ながら政務で慌ただしく、偶々手の空いていたセイアが先生とちゃっかりお茶会を楽しんでいた。ミカ?ミカなら草むしりしてるよ。
「ナギサは何着ても似合うとは思う。だからこそ普段とは違うものを着て欲しくてね」
「なるほど一理ある」
垂れた袖を口に当てて思案する。
親友の美しい肢体が衣装に包まれた姿を想う。
確かに捗るじゃないか。
「ふむ…だったらバニーとかどうだい?」
「バニー!?」
面食らう先生。
先生が思っていたのは、あくまで普段の服装に対する思案だった。
まさかバニーを提案されるとは思わず紅茶を吹き出してしまった。
しかしどうだろう。
想像してみようか。
お風呂場へと向かい、汗を流すナギサの着替えを持って、着替えここにおいとくね~なんて声をかける。そうして上がってきたナギサは汗を拭き、着替えに手を掛ける。
だが置かれていたのは普段着ではなく、大人のお店のようなバニーガール衣装。
「も…もう…先生ってば私にこ…このような服を来て欲しいだなんて…」
「せ…せんせ…どう…でしょう…」
「ぴょ…ん…」
ダメだ捗ってしょうがない。
だが流石に幾つかの段階を飛ばしている気がする。
もう少し刻みたい気もする。
例えば軍服。
ふわりとした普段とは考えられない程キリッとした姿を見られると思う。
あるいは体操服。
あまり体力のないナギサは、少し走っただけで汗だくになりながら水筒に口をつけ、端から雫が落ちて地面を濡らす。
少し考えただけでも中々にアイデアが溢れ出る。
そんなことをセイアと共に話していた。
「ではどうだろう?来週にでも某かの衣装を用意させようじゃないか」
「いいのかい?」
朗らかに笑いながら、まかしたまえと無い胸をはるセイア。そうしてお茶会は佳境へと入り、ナギサ様とミカが揃い賑やかに時間が過ぎて行く。
「さて…どうだったかな?私セレクションのチアガール衣装は?」
「ビックリするほど似合っていたよ」
逢瀬から数日の後、またしてもセイアとのお茶会にて、秘密裏に交わされるナギサ様に着て欲しい衣装の話。もう二人はノリノリである。
「気に入ってくれたようで何よりだよ。悩み抜いて選んだかいがあったというものだよ」
写真などは流石に怒られた為、手元にはないが先生はチアガール衣装を着たナギサに応援コールされた時は、一瞬意識が飛び掛け、理性を溶かされた事による逢瀬で、いかに美しく乱れたかをセイアに熱弁していた。
「ものは相談なんだがね先生?実はもう一着特別な品を用意したんだ」
「ほほう?其はいかに?」
足元から紙袋を取り出し、厳重に梱包されている箱を取り出す。箱を開けるとなにやら一枚の布が見えた。それを優しく広げるとなんとも美しいデザインのベビードールが現れた。
胸元に百合の意匠を施され、邪魔にならない程度のレース。素人目に見ても職人の技巧が際立ち、手触りは今まで着ていた服とは比べ物にならないほど気持ちいい。
「これは…」
「美麗…それを主軸に、私の家が抱える職人に織らせた逸品だよ」
袖を捲り、優しく袋に仕舞い先生に手渡す。
先生は震える手で受け取る。
「これをどうかナギサに着させて欲しいんだ」
「私としても是非着て欲しいんだけども…」
これは明らかに…その…お高いだろう?
そんな心配を抱える先生に、自分のポケットマネーから出した故に安心して欲しいと笑うセイア。
先生のお給料何ヵ月分なのか聞くのが怖くなる。
これを着たナギサが、ベッドの上に横たわる姿はさぞ映える事だろう。
…とても見たい。
「先生…正直私が着飾りたくて用意した。だから値段の事を気に病む必要はないよ」
「う~ん…」
「どうしても…と言うならまた感想を聞かせておくれよ」
からからと笑うセイアに観念して、ベビードールを受け取る先生。次のお家デートに着てもらおうと、厳重に仕舞いお茶を一口含み落ち着かせる。
「へいへ~い☆せ~んせ!セイアちゃ~ん☆私にも紅茶い~れて!」
「おや嵐が現れた」
軽口の応酬をよそに先生は次のデートプランを考えるのであった。
「なるほど…そういうことでしたか」
お茶会の席でそんな密会が開かれていたとは露知らず、政務に追われてあまり先生とのお茶会参加できていなかったナギサ様。
気になっていたデートの着替えを用意したセイアに対し、お泊まりの際に問いただしていた。
広いベッドに腰掛けてミカにセイアを渡す。
聞きだす絵面は、ミカの膝に乗せて抱きしめられて身動き取れず、頬っぺたをムニムニさせながらされるがままに尋問されていた。
自慢のお耳でミカの頬をペチペチと叩いている。
「やらか~い☆」
「…っと言った感じでね?先生との語らいは中々白熱したものだよ」
「…それにしても」
3人の姿は色違いのベビードールで着飾られている。
セイアは淡い黄色ベースで意匠はタンポポ。
ミカは薄いピンク色で意匠はフリージア。
そしてナギサ様は純白に意匠は百合。
そう、お泊まりで使えるようにちゃっかり3人分用意していたようで、集まった時に見たことある箱を、ミカに手渡していたのはこれだったようだ。
女子しかいないとはいえ、親友の肌色面積の多さに少々顔が赤くなる。
「これが所謂お揃いコーデというもの…かな?」
「下着のお揃いって聞いたことないけどね~☆」
胸枕に頭を押し付けるセイア。
そんな抗議に笑いながらベッドに横たわるミカ。
そんな光景を見て笑い後こぼれるナギサ様。
自分もベッドで休もうとした所、なにか足元に隠すように置いてある箱が見えた。
「ふふふ…それに気付いたようだねナギサ」
いつの間にか起き上がる二人になにやらよろしくない予感が産まれたが、非力なナギサ様がミカに抱き着かれて抵抗などできるわけもない。
「ナギちゃんギュ~☆」
「あ…あのミカさん?」
頭に?が浮かぶが、疑問に答えてもらう前に抱っこされベッドの上に連れてかれてしまった。
その後ろでなにか箱から取り出すセイア。
「正直最後まで迷っていたんだがね?気付かれたのであればしょうがない」
そして取り出された物は…
紛うことなきバニーだった。
「……………あの………まさか……ほんとに?」
尋問していたときに一番最初に出ていた案。
バニー衣装とかどうだろう?とかいっていました。
冗談の類いと聞き流していましたが、目の前にあるものが冗談ではなかったと認識してしまう。
「私は一言も冗談とは言ってないからね」
「いや…流石に…」
しかも結構きわどい。何処ぞのユスティナのように角度がえぐい。胸元には小さく兎のマークがついている。
「お願いだよナギちゃん。ナギちゃんの可愛い姿魅せて欲しいな☆」
「此所には私達しかいない。だから頼むよナギサ」
曇りなき眼で懇願する2人の視線に屈してしまいそうになるナギサ様。頭に様々な葛藤がよぎるも2人の眼差しは強くなる一方。
迷うこと10分余り。
大きく溜め息を吐いて観念して小さく解りましたよと呟く。二人は心のなかでガッツポーズを取った。
「しかし着方が…」
「ふふんそれに関してはこちらにまかせたまえ!」
「まっかせてね!」
…恐らく判断を誤ったと悟ったときには時既に遅く、ニッコニコで準備を始める二人を眺めていた。
もうどうにでもなれと完全に受け身の体制で待つ。
「おぉ…」
「わぉ☆」
「………」
着替えは5分ほどで終わり、ベッドに乙女座りするナギサ様。網タイツに胸元を大胆に開き、兎耳までつけた姿はこう…イケナイ気分にさせる。
この兎を二人締めしていることに、優越感を禁じ得ない。
「思ってた数倍恥ずかしいのですが…」
「用意した私が言うのもなんだか良く似合っているよ」
褒め称えるセイアに、ごそごそとなにか準備しているミカがこちらを向く。めちゃめちゃ笑顔だ。
色違いのバニー衣装をもっていた。
「恥ずかしいなら同じ格好なら恥ずかしくなくなるよね☆」
「一理あるね」
目の前でなんの迷いもなく脱ぎ始める親友に若干の心配を抱えつつ、良くない流れに流されてるのではないかと今更ながら思うナギサ様であった。
そんな思案を巡らせてるうちに、着替えが終わったようだ。
「じゃ~ん☆」
自分が着ているバニーの色違いを着込むミカ。
腰を艶かしく動かし、両手を頭の上で組む姿に顔が熱くなりそうだ。
「ふむ…これは中々」
こちらは黄色を基調としたバニーのようだが、こちらは元の狐耳を活かしている。
しかし悲しいかな。胸元が少し…寂しいようで、膨らみの部分が少し捲れている。
「ナギちゃ~ん!そいや!」
普通に押し倒されてしまった。
別に嫌ではないが急には止めて欲しい。びっくりする。のそのそとセイアもベッドに上がり、ナギサ様の横に陣取り横たわり、おでこと耳にバードキスを落とし頬擦りされている。
「写真に残しておきたいくらい可愛いんだが…」
「駄目ですよ」
口元に指で×マークを作る。
この姿が形で残るのは流石に恥ずかしすぎる。
先生にすら許さなかった事もあり、撮影は厳禁とした。
「では眼に焼き付けておくことにするよ」
「うんうん☆」
2人は位置を変えて、後ろ側にミカ、正面にセイアと3人並んで両側から抱き着かれる。
前に後ろから抱き締められて若干暑い。
そしてミカは首筋にセイアは胸元に、口付けを落として行く。優しく愛されてこそばゆさを感じ、2人の大きい耳に顔を、翼に身体を包まれる。
ミカの翼は膨らみがあり、ナギサ様の羽よりも大きく、羽毛のふさふさが強い。
「ふふ…心地よいですね」
「ふっふ~ん☆手入れは欠かしてないからね!」
2人の熱を帯びて、翼に包まれて、眠気が襲いかかってきた。半ば眼がぼんやりとして口元が緩む。
ミカに頭を撫でられて、徐々に意識が微睡みに向かって進み、抗いがたい睡魔に負けて数分の後に寝息を立てて休んでいた。
「お休みナギちゃん」
「お休みナギサ」
2人は最後に口付けして眠りにつくのであった。
「ということがあってね」
「私も見たかった……!!」
後日、親友&同性特権を存分に使ったお泊まり会の様子を聞いた先生は、慟哭するのであった。