「まさかとは思いましたが…」
鏡の前に立つナギサ様。
夏。
ともすれば忌むべき太陽の日差しに苛まれる季節。すなわち先生に水着を、魅せる機会を得る絶好の季節!
……のはずだったのだが、衣装ケースから取り出した水着を着た所、一部分が収まりきらず大変不格好になってしまった。
「くっ…!なんとか収まりつきませんか!?」
たぽたぽ揺れる乳房を納めようと奮闘するナギサ様。しばらく格闘を続け、やっとの事で美しいプロポーションを取り戻したと思えた矢先。
ブチリ
無慈悲な音と共に水着は千切れ、床に落ちる。
お気に入りの一品で、先生に見てもらおうと張り切っていた分、心身ともにダメージが大きい。
しょんぼりしつつ、弾けた水着を諦め服を着る。
ナギサ様に電流が走る。
逆に先生に選んだ水着を着ればいいのでは?
そうです!そうですよ!そうしましょう!
そうと決まれば早速連絡してデートの日取りを決めましょう!
ナギサ様は絶好調だった。
2日も徹夜したのだ。変なテンションになっていてもおかしくない。というかおかしい。
早速先生に電話すると早口で捲し立てる。
しかし残念なことに、暫く1日デートできるような日付がないとのこと。
そんなことで今のナギサ様がめげるわけもなく、ならば夜にお屋敷に来るのはどうだろうか?と交渉を続ける。
それならばと先生は時間を作ってくれるようだ。
短い夜の間とはいえ、先生に会えるのならば無問題。電話を切って、懇意にしている衣服メーカーに連絡を入れて、あるだけの水着を買い込み、順次輸送してもらう。
ナギサ様の暴走は止まらない。
気付けばお屋敷に、運び込まれる夥しい数の水着。
一つ一つ丁寧にマネキンに着させ、部屋に飾る。
夜になる頃には準備は整い、先生を迎える準備も終えた頃、先生は訪ねてきた。
「やぁナギサ……大丈夫?」
「お待ちしてました先生!」
普段とは違うテンションの電話を受けて、心配しながらお屋敷についた先生。
明らかに深夜テンションのままのナギサ様に若干引きつつ、心配そうにナギサ様を抱き締める。
ぐりぐりと胸板に顔を擦り、ご満悦なようだ。
先生の手を引き、お部屋へと案内する。
扉を空ければそこにはマネキンがズラリと並び、お部屋を占拠していた。
ビキニ、ワンピース、タンキニ…等々数多の水着を並べている。
「どうでしょう?是非先生に選んで頂けませんか?」
「喜んで手伝うよ」
今此処に水着ファッションショーが開幕する!
「ビキニだと…」
「この布地がですね…」
「色のアクセントが…」
「ふむふむ…」
「流石に露出激しいか…」
「ほぼ紐ですね…」
夜も更けて、床に散らばる水着を他所に盛り上がる2人は、しまいには金色のビキニを取り出してきた時点で一旦休憩を挟む。
そうして脱ぎ散らかした水着とマネキンを片付け始め、部屋には3枚の水着が残った。
あとは最後に先生が着せたいと思った物を選ぶだけだが、どうにも悩む。
1枚目は黒のワンピースタイプ
2枚目は白のビキニ
3枚目はピンクのヒラヒラがついたセパレート
ベッドに腰かけてナギサ様に膝枕する先生は、頭を撫でて落ち着かせる。
「ふぅ…かなり絞り込めましたね」
「お疲れ様。すこし落ち着いたかい?」
笑顔を向ける先生に、同じ様に笑顔を返すナギサ様。頭、頬、顎と優しく撫でられ心地よい。
そんなスキンシップを楽しんでいたら、いつの間にか寝息を立てている。徹夜明けの空元気も尽き、
労いの意味を込めて撫で続け、深い眠りについたのを確認し、布団を掛けメモ書きを残しておく。
「おやすみ、ナギサ」
額に口づけを落とし退室する。
眉間の皺はとうに消え、穏やかな寝顔を晒すナギサ様。
「…昨日の私のバカ!」
起きた時には昨日の失態に、顔を赤らめる羽目になった。