誰かが常識改変したかつての母校に、今更通う事になった件 作:べっこう飴02
この手の
催眠洗脳で好き放題できる能力やら道具が実際にあったとして――それを使い、何処まで、何時まで好き放題できるものなのだろうか?
まあ、おそらくそう長く続くものではないのだろう。
まったく関係のない所で、事故に合うかもしれない。
正気に戻った誰かに、刺されるかもしれない。
同じような不可思議な力を持った――いや、それ以上の
少なくとも
詳細な状況は割愛するが――偶々、信号を無視して交差点に突っ込んできた車にはねられ、意識不明の重体となり、一命こそとりとめたものの、植物人間となり、再起不能。
ただ、その男が残した爪痕は――確かにあったのだ。
これは、幸か不幸か、それに組み込まれてしまった、別の
◇
どこか懐かしい、かつての母校の教室。
其処で俺は、他の生徒に混じって、欠伸を噛み殺しながら席について授業を受けていた。
「――で、ここはテストに出るからな、覚えておけよ」
黒板の前で、教師が授業の要点をまとめた内容を板書している。
まだ若い教師……二十代くらいか。下手をすると俺よりも年下かもしれない。
しばらく前に受けた、前職での講習でもそうだったが、
何というか授業ってのは、いくつになっても退屈なものだな、と思う。
俺が昔通っていた頃と、(はっきり覚えている訳ではないが)授業の内容が大分違うな。
時代が変われば、変わるものもある、という事だろう。
まあ、俺が
その時。唐突に、ぱきん、と頭の中で何かがひび割れて、唐突に気付いた。
気付いてしまった。
学生、学生?いや、待て。
何で俺は……
俺はもう社会人の筈だ。
……転職活動中、という但し書きはつくが。
だというのに。つい先ほどまで、俺はこの状況を疑問すら抱いてなかった。
記憶は……あやふやなところもあるが、全てが抜け落ちているわけでもはない。
ここが何処かは、理解できている。
もう十年以上前に通っていた、かつての母校。
ざっと、2,3日ほど前あたりから、つい先ほどまで何の疑問も抱かずに、ここに足を運んでいた。
教室内を見回すと……俺よりも一回り以上は若い年齢の……現役の学生たちの姿。
まだ真新しい制服を身に着けた彼らの授業態度は様々だが……共通している事が、一つだけある。
誰も、俺の事を異物として認識していない。
まるで俺がここに居る事が、あたりまえのことであるのかのように平然としている。
当たり前だが、かつての
面影さえもありはしない、赤の他人。
夢でも見ているのではないか、と自分の頬をつねるが、しっかりと痛い。
ついでに手のひらを見ると、細かなしわが刻まれているのが確認できる。
ぱっと思いついた確認方法の全てが、今の状況を、現実のものだと告げている。
目の前の、俺よりも若い――教師の板書は止まらない。
俺の内心を他所に、退屈な授業は滞ることなく続いているようだ。
(何だ……一体、何が起きてるんだ、これは?)
いきなり放り出された、異常すぎる状況に……俺はただ、戸惑う他なかった。