※この作品はR-18です。

敏腕エロマッサージ師、ワケアリさんが集まるマンションの管理人になる   作:ベリーナイスメル/靴下香

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取り引きは唐突に

 なんとも言えないアンバランスさ。

 誘惑というには悪意とか邪気とでも言うのか、そんな邪な雰囲気が足りず。

 天然というには何処となく狙っているとでも言うのか、俺の視線を胸元だなんだに向けようとさせる仕草が伺える。

 

 だからではないが、俺としてもどうすればいいのかわからないままでなんとも気まずい感じ。

 ただ、絶対的に間違いなく言える事があって。

 

「――ご馳走様でした。めちゃくちゃ、美味かったです」

「お、お粗末様でした。お口に合って、嬉しかったです」

 

 早瀬さんが作った肉じゃがは、絶品モノだった。

 おふくろの味を恋しく思うにはまだ早すぎるだろうが、この人の作るメシをおふくろの味にするだろう子供は、将来メシで苦労するだろうなと確信してしまうほどに。

 

「つ、次はお米も炊いて来ますのでっ」

 

 まぁなんとも抜けてるというか、他に用意が無くて肉じゃがだけが食卓に並んでしまったけれども。

 一番腹を満たしてくれたのは何よりも、美味しいと言った時に早瀬さんがすごく嬉しそうに浮かべた笑顔……とか言うのはここじゃあ気障が過ぎるか。

 

「次、ですか?」

「あ、ぅ……そ、その、ご迷惑、でしょうか?」

 

 そんなことは無い、次と聞いて食ったばかりだというのに腹の虫が騒いでしまう程度には期待してしまう。

 

「迷惑なんてとんでもない。でも、旦那さんに悪いですし……俺に奮うよりまずは、じゃないですか?」

「そ、う……ですよね」

 

 期待はする。

 料理にはもちろん、出来る事ならこの微妙な雰囲気の払拭にも。

 

 あぁ、そうだな。

 払拭を期待するんだ、だったらこっちからも動くべきか。

 

「それで、早瀬さん」

「は、はい」

「ご相談は、何でしょう?」

「あ……ぅ」

 

 改めて思うが、この状況は中々に意味不明だろう。

 確かに俺は前任者に比べれば圧倒的に若い男だ、親切心というか老婆心でご飯のお裾分けなんてことが起こり得るかもしれない。

 

「ご馳走したかった、というわけじゃあないでしょう?」

「……」

 

 そういう話なら鍋を渡して終わりでよかった、でもそうはならなかった。

 

 だったら、別の目的があったと考えるのはいたって普通の事のはずで。

 若い男としての俺ではなく、管理人の俺に用事、あるいはお願い事でもあると考えるのが自然だ。

 

 それは例えば。

 

 性接待でもする代わりに、家賃を免除してくれ、とか?

 

「管理人、さんっ」

「えあっ!? は、早瀬さんっ!?」

 

 なんて。

 メルヘンやファンタジーよろしく、バカなことを思い浮かべた時、早瀬さんは自分のシャツをまくり上げながら立ち上がり。

 

「だ、だだだ、抱いて下さいっ!」

 

 何にも包まれていない大きな乳房をぼろんっと露出させ迫ってきた。

 

 ……えぇ?

 いきなりというかあんまりにもな展開に頭が追い付かない。

 据え膳食わぬは男の恥とはいうが、流石に人妻を据え膳というには無理があるだろう。

 

「そ、その代わりにちょっと、えぇと……こ、今月のお家賃をお安く――あ、安心なさってください! か、管理人さんは何もしなくて大丈夫、ですから! ただ、うんって言ってもらえたら……!」

 

 わー予想的中だー……あんまトキメキもしなけりゃ嬉しくもねぇなコレ。

 その上最後のラインは自分で踏み越えろと来ましたか、ずるいね、どうも。

 

 本人は慣れていないのか若干涙目で、身体を震わせている。

 というか微妙に震えてるせいで早く吸い付いて欲しいみたいに、目の前で早瀬さんの乳首がぷるぷるしてて大変理性が削られる。

 

 やばいな、ほんとヤっちまおうか。

 

「もちろん必要な物だって持って来てます、からっ。きっと、お――おまんこで気持ちよく、できますからっ」

「……うん?」

 

 ちょっとした違和感が誘惑らしい言葉にあった。

 そのおかげで削られた理性が回復するなんて、なんともな話ではあるが。

 

「……ふぅ。こういう時にどういう風に返事をしたらいいのかわからないんだけど、早瀬さん」

「は、はい」

 

 ポケットから慌てたように取り出された早瀬さん曰くの必要な物、コンドームかと思ったのも束の間で。

 出て来たものはウェットトラスト、通称ウエトラと呼ばれる膣内潤滑油だ。

 そのエッチな巨乳を使ったパイズリなんかで気持ちよくするためには、使えないというか適さない。

 

 この人、一応人妻なんだよな?

 性的な知識が常識レベルにはあると思った上で、ウエトラを必要な物と言っているあたりから察するにワケアリか。

 

 ……仕方ない、ね。

 ちょっと前までよく使っていた言葉なのに、久しぶりに感じるな、この言い訳。

 

「俺、迫られるってのにはあんまり興奮しないんですよ。責める側が好きなんです」

「え? あ、そ、そう、なんですね……」

 

 こんなことは止めろと言って欲しかったのか、それともされるがままで居て欲しかったのか。

 どういう返事を期待していたのかは伺い知れないけれども、早瀬さんは少しだけ目を伏せて纏っていた陰を重くした。

 

「そ、れでは、その」

「うん。寝室、行きましょうか」

 

 こういう形で女の裸を前にしたくはないんだけどな。

 けどまぁ、これもある意味お悩み相談の一つではあるのだろう。

 

 マンション管理人の仕事とは、言えないかもしれないけどな。

 

 

 

「ど、どう、ぞ、ご自由にお楽しみくだ、さい。でも、えっと……ソレは、できれば使ってもらえると、嬉しい、です」

 

 そう言って俺にウエトラを手渡して、ベッドの上に仰向けで早瀬さんは身体を横たえた。完全なマグロ表明だ。

 だって言うのに、ただそれだけでエロさを出してくるのはやっぱ美人、というよりは大多数の男がお相手を願うくらいに可愛いからだろう。

 

「これ、いつも使ってるんですか?」

「えっと……使ったこと、ないです、けど。ごめんなさい、私、濡れにくい、ですから。あった方が良いって、その」

「あぁうん、すみません。余計なことを聞いてしまいましたね、忘れて下さい」

「は、はい……」

 

 濡れにくいって自覚はあっても使ったことがない、ねぇ?

 

 どうしたもんかな、この人の考えるセックスって奴をむしろ教えて欲しいもんだ。

 あるいは言われたとおりマンコにウエトラ仕込んでさっさとぶち込んで終わらせるってのがいいのかも知れないが。

 

 わざわざココで、味気ないセックスをするってのも面白くない。

 

「っ……」

 

 面白くなさを加えて言うのなら。

 早瀬さんはさっきからずっと俺の手を見ている。

 

 こうしているのが自分の意志でかどうかは置いておくにしても、イヤイヤならばさっさと終わってと顔をそっぽにでも向けているのが普通だろうし、乗り気なら逆に俺の顔やらそれこそチンコにでも視線が行ってておかしくないだろう。

 

 これは、まぁつまり。あまり想像したくない事情を抱えているということ。

 

「早瀬さん」

「えっ!? あ、はい、どう、しましたか?」

 

 だから、切り替える。認識をずらして空気を変える。

 気持ちのいいセックスとやらはしたいが、ネタを握ってレイプしたいわけじゃあないのだ。

 

「手、握りませんか?」

「手を、ですか……?」

 

 なんでと言わんばかりに首を少し傾げられてしまったが、うーん幼い仕草が良くお似合いで。

 実は俺より年下だったりしない? むしろ身体つき以外中学生とか言われても納得しちゃうんですけど。

 

「ええ。早瀬さんみたいな可愛い人を抱けるんです、俺も(・)緊張してしまいまして」

「か、かわいい、なんて……嘘、です」

「嘘かほんとかはお任せするとして。緊張しているのは、本当ですよ? ほら」

「あ……」

 

 出来るだけ自然な流れを心がけて、早瀬さんの思っていた以上に冷たかった手を軽く握る。

 そしてわざと緊張を装って指を震えさせてみれば。

 

「……がさがさ、ですよね? ごめんなさい」

「料理、得意なんですよね?」

「え? あ、えっと……昔は、そう思って、ました」

「家庭的で、良いお嫁さんの手だと思いますよ」

 

 さわさわ、にぎにぎと。

 

「そんな、こと」

「肉じゃが、本当に美味しかったです。思いましたもん、早瀬さんの子供は将来苦労するだろうなって」

「苦労、ですか? それは、どうして?」

「どれだけ美人の嫁さんを貰っても、胃袋をお母さんに握られたままじゃ大変です」

 

 手にあるツボを優しく刺激しながら、何でもない話をする。

 

「……ふふ」

「なんで笑うんですか」

「だって」

「少なくとも、俺の胃袋は早瀬さんにもう握られちゃいましたよ? 早瀬さんより可愛くて料理上手な嫁さん見つけるのは絶対大変です」

 

 繋いでいる手が少しだけ温かくなった。すなわち少しだけ、本当に少しだけ気を許してくれたということ。

 

「ふふふ、もう管理人さんは、お上手ですね」

「ただの本心を言っただけなので、上手というよりは素直と言ってもらいたいですね」

「じゃあ、素直な人ですねって……もう、それだと私が可愛くて料理上手だって認めることになっちゃうじゃないですか」

「あらら、バレてしまいましたか」

 

 異常と言える状況に変わりはない。

 だと言うのに、それを忘れて雑談に興じるってことは、それだけこんな会話に飢えていたということ。

 

「――早瀬さんは、頑張り屋さんなんですね」

「え? っ……!」

「すみません。髪、触られるのイヤ、でしたか?」

「い、いいえ? そんなこと、ないですよ」

 

 そして、俺の手を注視していた理由がこれでわかった。

 頭を撫でにいったわけじゃない、毛先を触ろうとしただけだ。

 

 それでも早瀬さんは手が離れた瞬間、視界の中に俺の手が入った瞬間に、身体を強張らせた。

 

「毛先までこんなにキレイなのに。髪、染め直さないんですか?」

「染め直したいのですけど……忙しくって」

 

 言葉遣いが少し砕けてくれたは良いけれど、やっぱ触れられたくはないよな。

 

 日常的に、多分旦那からだろう暴力を振るわれている、なんて。

 

「じゃあ、そうですね。いつも頑張ってる早瀬さんに俺からご褒美を進呈します」

「ご、ご褒美?」

「要らないなんて言わないで下さいね? ご褒美をあげたら、俺も早瀬さんの身体って言うご褒美を貰うんですから」

「……もう。管理人さんは素直かも知れないけど、やっぱり上手です、特に口が」

 

 断れなくなっちゃったと、困ったように笑ってくれた早瀬さんは。

 

「じゃあ、ご褒美一つ、下さいな」

「ええ。それじゃあ、まずはうつ伏せになってもらって良いですか?」

「ん……わかりました」

 

 素直に言うことを聞いてくれて、うつ伏せになって力を抜いた。

 

 よし、それじゃあ。

 

「安心してください、ただのマッサージですから」

 

 たっぷり、解してあげるとしますか。

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