20XX年。表社会は一見平和な時代。しかしその裏では今も悪魔、天使、そして人が争い合う世界が続いていた。
争いの激化により、
誰もがこれからの過酷な戦いを予感した事だろう。
これは、そんな時代に産まれたあなたが……この戦いには特に関わらず。また別の問題へと巻き込まれる話である。
長期休暇を貰い、あなたは山の中へと来ていた。趣味であるソロキャンプ。今回は出来るだけ長く、俗世からは離れて自然の生活を満喫するつもりだったからだ。
もう少しで1週間。体力的にも気力的にも此処等が辞め時だろう。自然の生活は十二分に堪能した。そろそろ帰らないと文明生活の恩恵を忘れてしまいそうだ。
あなたは知る由もないが、この時都心には悪魔、天使が現れ始めていた。スマホも切り、文明とは縁を切った生活をしていた為に、最後まで気付く事は無かったが。
あなたがテントを仕舞い、キャンプ用品も手早く片付けると。暗くなる前にと1週間前に来た道を歩き始めた。
しかし可怪しい。幾ら歩いても見知らぬ道ばかりがあなたの前に現れる。この山には定期的にキャンプに来るが、こんな経験は久し振りだ。緊急手段として、電波の通じる場所で助けを呼ぶ事も念頭に入れつつ、再び歩き始める。
……先程から変な鳴き声が聞こえる。動物でも鳥でもない。敢えて言えば熊でもない甲高く、不安を煽るような鳴き声。時折言葉にも聞こえるそれから、あなたは離れるように足を進めた。
『──!?』
一際大きな揺れが訪れる。立っていられない揺れに、バランスを崩しよろけると。大きな岩がある方へと倒れ込む。
その時にあなたは見た。突如、パックリと岩が割れたかのように、大きな暗い穴が目の前に広がる所を。体勢は変えられない。そのままあなたはこの山に出来た
あなたが目を覚ますと、其処は浜辺であった。周りを見渡すと、海のような光景が後ろにはあり。前には深い森の入り口が目に入る。
『???』
謎、謎である。自身が不思議な状況へと陥っていたのは薄々理解していた。山の中では大小はあれども、不思議な経験はするものだ。驚きはすれども、取り乱しはしなかった。
しかしこの状況は意味不明だ。山の風景があれば、何処か迷い家のような場所へと来たのかと思えたが。此処は島である。山から海にあるだろう島へと流れ着いたとは、どういう理屈だ?
『……』
当たり前だがスマホは圏外。手回しラジオも使えない。こんな所に電波は無いか。となると助けは期待出来ない。キャンプ用品や食料はあったが、既にほぼ底をついている。何も無いよりはマシだが、かなり絶望的な状況には変わらない。
悩んだ末。此処に居てもしょうがないと、あなたは体力がある内に、食料と寝床を探す事を決めた。海と森ならまだ森の中。未知の場所には何方も変わりないが、視界は広いとは言え、海を船無しでは無謀だ。
消去法だがまだ走れる地面がある森へと、あなたは歩を進めていった。
「縺ッ繧峨∈縺」縺溘?」(はらへったー)
「縺ェ繧薙°縺上>縺ヲ繝シ」(なんかくいてー)
『……?』
不可思議な体験はしたが、此処まで珍妙な体験は初めてだ。
人型の小さな、しかし腹は膨らんでいる何かが3体。あなたは気付くと直ぐに木の後ろへと隠れた。耳を済ませば言葉のような声は聞こえるが、何を話しているかは理解出来ない。
未知の島に未知の生物。分からない情報ばかりが増えていく。
「繧難シ溘ル繝ウ繧イ繝ウ縺ョ蛹ゅ>縺後@縺ェ縺?°?」(ん?ニンゲンの匂いがしないか?)
「縺茨シ√?繧ク縺具シ」(え!マジか?)
「縺?◆縺橸シ√≠縺昴%縺??」(いたぞ!あそこだ!)
『!?』
あなたが頭を悩ませていると、一体の人型生物がキョロキョロと辺りを見回し始め。それに呼応して2体の生き物も顔を左右に動かし始める。一体の生き物があなたの方を向くと、視線が止まり指差しながらあなたの方へと走って来る。
見つかった!雰囲気的にも穏やかな様子ではない。奴等の目は血走っているし、追い付かれれば良くない展開なのだけは予想出来る。
【??のブフ!…ヒット!】
【あなたに小ダメージ!】
『……!』
冗談ではない。手を翳したと思ったら氷の塊が飛んできたぞ。辛うじて回避が間に合い、ダメージ自体は少ないが。凍傷のように傷口が冷えている。諸に食らったら死ぬぞ!?
「縺医&繝シ?」(えさー!)
【??のマヒひっかき!…ヒット!…PALYZ!】
一体に追い付かれ、肩から腕にかけてを引っ掻かれる。
激痛の後、あなたの足は動かなくなり、その場に倒れ込む。舌も口も動かない。これは不味いと焦りがあなたの脳を活性化させるが。
「縺?◆縺?縺阪∪繝シ縺呻シ」(いただきまーす!)
ガブッ!と太腿辺りを囓られる。口の奥からは言葉にならない叫び声が上げられた。他2体も直ぐに追い付くと、あなたの腕、肩に噛み付いて来る。
「荵?@縺カ繧翫?繝九Φ繧イ繝ウ縺?a繝シ?」(久しぶりのニンゲンうめー!)
「縺昴▲縺。縺ョ閧峨b蟆代@谿九@縺ィ縺代h?」(そっちの肉も少し残しとけよ!)
「繝「繧ー繝「繧ー窶ヲ」(モグモグ…)
このまま行けば、あなたは喰われて死ぬ。知らない場所で、未知の生き物に喰われて死ぬ。死んだとしても弔われはせず、誰かが今、助けに来る事も無いだろう。
…ならばどうする?諦めるしかないのか。
──いや。
あなたは既に
あなたは
なら、後は最後の1つを埋めれば、あなたは成れる筈だ。■■に。
『───!!!』
抗うように叫びを上げて。あなたは肩に噛み付いていた生き物へと、喰らいつく。万力のような力で、この生き物の腹を喰いちぎると。他2体は呆気に取られ、喰いちぎられた一体は地面の上で悶えている。
「な、■■て■だコ■ツ?」
「か、■■ってねーか?このニ■ゲ■」
「■えよおお!」
【あなたは喰らいつきを覚えた】
【あなたはブフを覚えた】
【あなたはマヒひっかきを覚えた】
【あなたは、幽鬼 ガキの力を写し取った】
写せ身の力。あなたが持っていた力。普通に生き、普通に死ねば目覚めなかったこの力は。あなた自身の意思に反応して、覚醒へと至った。
『……』 ザッ…ザッ…
「ひっ!ニンゲンじゃねーのかよコイツ!?」
「に、逃げようぜ!早く!」
数は3対1。だが、既に喰う者。喰われる者の立場は逆転している。獰猛にガキを見据えるあなたの空気に、残されたガキ達は戦意を喪失し始めていた。
【あなたの喰らいつき!…ヒット!クリティカル!】
故に、それ以降の戦いは、あなたが勝ったという事実だけを覚えてくれれば良い。技を使い、喰らい、最後に立っていたのはあなただけだった事を。
【幽鬼 ガキの特性 飢餓本能を覚えた】
【喰らいつき→喰らいつき+1になりました】
それに、新たに会得したスキルのせいかどうにも腹が減る。
得るスキルにはマイナスもあるのだろうか。あなたはこのスキルを消せないかと強くイメージすると、腹から何かが迫り上がり、口から吐き出すと同時に何かは消えた。飢餓感も無くなったので、これで大丈夫だ。
『!』
意識をすれば元の姿にも戻れる。あの人ならざる形態も悪くないが。愛着は此方の方が多分にあるのだ。戻れるならこっちの方が良い。途中、邪魔だと捨てたリュックを拾い上げる。
この島に居る存在への対抗策は出来たが、寝床と食料、水は見つけておきたい。腹は先程の捕食のお陰か暫くは保ちそうだ。今日の寝床か水を優先して探した方が良いか。
『?』
見間違えかと思ったが、やはりそうだ。カモフラージュをされていたので気付き辛かったが。これは間違いなく人の手で作られた小屋だ。木と葉っぱで作られた、小型の掘立小屋のような家。
コンコンと木製の扉をノックしてから中に入る。手入れがされて無かったから、人は居ないかと思ったが。人の痕跡自体はまだあった。
白骨化した死体。右手には変な機械を持ち、汚れた男性物の服を着ている様から、大人の男性か。先住民、とでも言う存在に手を合わせてから中を見渡す。
六畳程の広さ。少し荒れては居るが充分使える範疇。
白骨化した死体があるのは気になるが、近くに墓でも建てて供養すれば文句も言われまい。少なくとも今日の寝床は此処で決まりだ。
『……?』
となると、彼の白骨死体が持つ機械が気になる。良く中を見渡すと錆びた銃や剣まで落ちている。彼は何者なのか。それを考えながら手慰みに機械を操る。
『!?』
ウィーンと機械が展開されて行き、映し出された画面にSUMMONという項目を見つけた。試しに中に1つだけあるElenaという箇所を選択した。
すると機械から魔法陣のような物が浮かび上がり、眩い光の後には1人の女の子が立っていた。
「…サマナー様…」
銀髪の髪に開いた瞳は金の眼。スカートの長いメイド服を着た女の子は、白骨化した死体の方へと歩み寄った。
この機械の所持者。その関係者なのだろうか。殺した訳では無いので、変な勘違いをされないと助かるが。
「…貴方様がエレナを呼び出したのでしょうか…?」
呼び出す。結果的にはそうなったな。暫し白骨死体を無言で眺めていた彼女は、あなたの方へと向き直ると。そう質問してきた。
「…お願いします。サマナー様を弔いたいので、お手を貸して貰え無いでしょうか…?」
墓自体は建てるつもりだった。人手が増えるならば悪くはない。とは言え。メイド服の女の子。しかもかなり幼い子に力仕事をさせるのは気が引ける。
あなたは穴は自分で掘るからと告げると、穴に埋める物の選定を頼んだ。どれが彼の物か知らないし、知り合いに弔われるなら彼も本望だろう。
「…サマナー様、エレナは貴方様の事を忘れはしません……どうか安らかに、お眠り下さいませ…」
木に持参したナイフで名前を掘り、─彼女に教えて貰った─静かに十字を切るエレナに合わせて、見様見真似であなたも十字を切っておいた。
スコップを備えておいて良かった。彼女の前で変身するのは控えた方が良さそうだし。
「…有難う御座いました。…貴方様はサマナー様と同じく、悪魔召喚士の方のなのですか…?」
弔いとお祈りが終わると。彼女、エレナは悪魔召喚士?なるものかと尋ねてきた。悪魔召喚士とは何だと問い返すと、エレナは首を傾げた後、では異能者の方ですかと尋ねてきた。
「…成程、貴方様は一般のお方でしたか……ですが、その割には悪魔の気配がするのですが…」
ある程度情報交換。自分は社会人で休暇中に山に来たらいつの間にかこの場所に来ていた。エレナはそれを聞くと、悪魔とは、悪魔召喚士とはと軽く説明を入れてから、納得して。新たに疑問を増やした様子。
裏社会とかあるんだ…。悪魔って本当に居るんだ…。それが説明を聞いたあなたの感想である。
「…形は違えど、異能者の様なものでしょうか…。…何にせよ、貴方様が生き残れたその術には感謝しなければいけません…。…でなければ、サマナー様も御弔い出来ませんでしたので…」
専門家みたいなものだしと、あなたは自分に起きた事を正直に話し、相談した。魔法を使えるという異能者、後は話に聞くだけだが、悪魔に変身する者も居たらしいので。珍しくはあるが、居ないことは無いらしい。
…自分のような存在が争う裏社会、かなり怖い場所だなとあなたは思った。
「…
『──!?』
「…?…サマナー様はもうお亡くなりになられました…。…エレナは造魔、誰かに従う存在です…。…なので、恩人である貴方様に仕えようかと……やはり迷惑でしたか…?」
いやいや、行動を同じにするのは良いとして。君の主は亡くなった人なのではと聞くと。不思議そうな顔でエレナは誰かに従うのが当然だと告げた。
価値観が違うのだろうか。それとも見た目通り、メイドとして誰かに仕えるのが生き甲斐とかか?
うーむ、とは言え見た目美幼女のメイドに傅かれるのも悪くない。いや正直に言うととても魅力的だ。
「…有難う御座います…。エレナの命を懸けて、貴方様をお守りする事を誓います…」
結局下心に負けて、あなたは銀髪金色眼美幼女クラシックメイドを従える事を決めた。あなたも男なのだ。このくらいの役得は許して欲しい。
エレナちゃんとエッチシーンを入れるまでもう少し掛かりそうなので区切り。この作品では主人公がサマナーの素質無い為、基本悪魔は敵です。主人公がカオス寄りをイメージしてるから、無理矢理系ならあるかも。契約出来ないと裏切る可能性があるからね。