※この作品はR-18です。

性豪ぐだ男の寝取り人理修復ライフ   作:泡が出る方の風呂

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最推し鯖です!


騎士王(槍)、愛を知る
騎士王の価値は――


●

 

 駆ける、駆ける。

 蹄特有の足音を鳴らし、白銀の鎧を纏った白馬が戦場を駆ける。

 跨跨るは同じ意匠の鎧を身に纏う騎士だ。

 獅子を模した兜を被り、赤いマントをはためかせ、聖槍を振るうその姿は正に絵に描いた騎士そのままだった。

 しかし、

「――くっ」

 突進の勢いを利用した聖槍の渾身の一突きは、敵の硬い鱗に弾かれてしまった。

 やはり駄目かと悔しさが胸の内を巡るが、そんな事を思っても現実は変わってくれはない。

「どいてください!」

 後方から聞こえてきた言葉にすぐに反応して愛馬ごと横に退避すれば、

「ジェット三段突き!」

 機械の轟音と共に刀を構えた水着姿の少女が、さっきまで騎士がいた場所を一瞬で飛び去り、そのまま敵を倒してしまった。

 その後、戦闘が終わりマスターが出迎えてくれた。

「お疲れ様、良くやったね」

「もっちろんですよ! 沖田さんブイ!」

 先程の少女、東方の侍の筈が何故か水着と飛行ユニットを装備した、沖田ジェット(……ジェット?)総司は上機嫌に彼女達のマスターに答えた。

「いや〜、ジェット(これ)さえあれば吐血(コフ)ることが無いですからやりたい放題ですよ私!」

「うんうん、そうかそうか。それは良かったねぇ。流石僕のサーヴァント」

「えへへ〜」

 自身の成果を褒められた沖田は満面の笑みを浮かべる。

 ここだけを切り取れば、理想的な主従関係と言えるだろう。

 しかし、

「……それに比べ、なんだい君達は? 何の役にも立ってないじゃないか」

「そ、それは……」

 現在このマスターが率いているサーヴァントは四騎いるのだが、エースサーヴァントである沖田・J・総司以外は禄に育てていないのだ。

 これは派閥作りに奔走していた関係で、高ランクのサーヴァント一騎を育てるしかリソースを確保していないからだった。

「そうですよ〜。せめて足止めくらいにはなって貰わないと困りますね」

「……ッ」

 刀の鯉口を鳴らしながら言った沖田に、白馬の騎士は言葉に詰まる。

 騎士含め他三騎が束になっても敵わない程の成長差。

 戦闘でも先の通り一人に華を持たせる戦法ばかり。

 そして贔屓にしてもらっている当人は増長し、完全な格差社会ができてしまっていた。

「それじゃ、僕達は先に行くから。あ〜最後にミスってたお前。素材の回収と、面倒な事務処理はやっとけよ。行くぞお前ら」

 マスターと仲間が去っていき、件の騎士のみが残された。

 暫くマスターらが去っていった方向を見ていたが、やがてため息をついて言われた通り素材の回収を始めた。

「…………」

 騎士は生前、王だった。

 騎士道精神を重んじ、かの時代を駆け抜け、しかし最後は自国を滅ぼしてしまったが、それでも国や民を愛した立派な王だった。

 それが今ではこんな扱いだ。民や自分に従ってくれた騎士達が見ればなんと言うか。

「情けないな」

 兜の奥で、誰にも聞こえない弱音が溢れた。

 ここには世界を救うという大義名分の下、召喚に応じた。

 聞けば世界は滅んだも同然で、時間を超えてそれを取り戻す旅を始めたばかりだという。

 それなのに禄に活躍することが出来ない現状。召喚してくれたマスターの役に立てず、寧ろ邪魔とすら思われているかもしれないと考えると、今の自分の存在意義を疑ってしまう。

 自分はここにいて良いのか。考えれば考える程、自分の足場が崩れるような気がした。

「大丈夫ですか?」

「ハッ!?」

 半自失状態になるまで思い詰めていた騎士は、突如かけられた言葉に我に返った。

「え? あ……」

「アルトリア・ペンドラゴン、さんですよね?」

 話しかけてきたのは黒髪の東洋人だ。背は騎士――アルトリアと同じくらいだがまだ少し幼さを残す面影。

 マスターの一人で最初の特異点を攻略した――、

「確か藤丸立香、でしたか? なんの用です?」

 カルデア内で唯一の一般人だったという少年だ。

「今からほら、あそこにいるクー・フーリンと戦闘訓練をしようと思っていたんだけど。今にも倒れそうな貴女が目に入って」

 視線を少年の指す方向に向ければ、確かにクー・フーリンがこちらに軽く手を降っていた。

 近くにいないのは、敵意がないと示す為か。

「そう、でしたか。いらぬ心配をかけましたね、お気遣い感謝します」

 とはいえ、あまり他のマスターと話しているのを我がマスターに知られても良い顔はされないだろう、とアルトリアは判断。その場を離れようとする。

「あ、あの! せめてこれだけでも。疲れてそうだから気分転換に。ダ・ヴィンチちゃんに貰ったんだけど、ちょっと良い紅茶なんだって」

 そう言いつつ藤丸は水筒を差し出してきた。

「それではあなたの分が」

「大丈夫だよ。予備でもう一本持ってるからさ。あっ! もしかして毒とか入ってないか気になる? それなら…………ゴク、これでどう?」

「そこまでしなくても貰いますから!」

 そこまでされて断るのも気が引ける。しぶしぶ水筒ごと受け取った。

 取り敢えず一口いただく為に兜の装着を解除する。

 そしてカップにもなっている水筒の蓋に紅茶を注ぎ、口にする。

 すると確かに美味しい紅茶の味が口の中に広がった。香りも申し分無し。流石ダ・ヴィンチが勧めるだけある。

 と、

「どうしたのです藤丸?」

「いや、凄い美人だなって」

「なっ!?」

 

 

【挿絵表示】

 

 

 藤丸の不意打ち発言に狼狽するアルトリア。だがすぐに落ち着きを取り戻し、

「あまり親しくもない相手に、そんな事を言ってはいけませんよ」

「はは、ごめんごめん。っと、そろそろ行くね。水筒はそのうち返してくれればいいからさ」

 そう人懐っこい笑顔で言いながら藤丸は、自身のサーヴァントと共に去っていった。

 彼らを見送るアルトリアはしかし、自身の主が去って行った時とは真逆の表情を浮かべていた。

 それは本人にすら分かっていない違いだった。

 

 

●

 

 

 その後も藤丸と関わる事があった。

 例えば食堂で。

「あれ、もしかして足りてないですか? 良かったら俺の唐揚げ、少し食べます?」

 例えば種火周回で。

「あ、アルトリアさん! 良かったら一緒に回りません? こっちの戦闘訓練も兼ねて」

 例えばカルデアの廊下で。

「ああ、紅茶の礼? 良いですよ気にしなくて。俺の方こそ色々お世話になってるし」

 等々。気が付けば、自身のマスターとより会話量が増えていた。

 彼と話すのは楽しい、とアルトリアは感じていた。

 元来彼女は話すのが得意な方ではない。特に上下関係など関係ない友人知人との何気ない会話、ともなれば。

 しかし藤丸はそんな彼女を苦に思う事もなく、親しげに話しかけてくれる。

 生前の若い頃から戦いに明け暮れ、更に国を守る重責を背負ってきたアルトリアには、それはとても新鮮で心地良いものだったのだ。

 そしてある時、彼女はふとこう思った。

 まるで若い恋人同士の逢瀬だな、と。

 一瞬、自分が何を考えたか分からなかった。しかし次の瞬間、顔を赤くした。

 ……今私は何を考えた? 逢瀬だと? マスターでもないあの若者と? 私は世界を救う戦い為に喚ばれたサーヴァントだぞ。浮かれた事に現を抜かしている場合では無い。

 いくら彼といるのが楽しいからと気を抜きすぎだ。

 頭を振って気を取り直す。こんなだからマスターに認められないのだ。もっと精進せねば。

 そう決意した矢先の事だった。

「お前、なんか最近調子に乗ってない?」

「……ッ!?」

 マスターからの突然の指摘だった。

「暫く前から藤丸と仲良くしているようだな? 色々と聞いているぞ、所構わず逢引しているってな」

「そんな事は!」

 反射的に否定するが、幾度と無く会っていたという事実はなくならない。それ故の後ろめたさがある。

「決してその様な意味で会っていた訳では」

「その言葉を信じられると思うか? お前、俺に何してくれた? 何もしてないだろ? 戦闘でも役立たずだしさ。真面目ぶって一緒に寝ようともしなかったよな? それが積み重なって信頼がないんだよ、し ん ら い が!」

「う、……あ」

 それはマスターが私を育ててくれなかったからだ、とは言えなかった。

 閨を共にするのはともかく、戦闘については言い訳ができた。が、真面目な性格故に自罰的な方向に思考が向いてしまう。

「も、申し訳、ございません……」

「いいよいいよ形だけの謝罪なんてさ。誠意ってのを見せてよ」

「何を、すればいいでしょうか?」

「令呪をもって命じる。――藤丸を殺してこい」

「なっ、あ……え?」

 ナニカ、理解デキナイ事ヲ言ワレタ。

 次いで衝撃。

「コフッ……あ、が?」

「こういう風に殺せって言ってるんですよ」

 横っ腹から、刀の刃が生えていた。

 同時にかけられた声に、やったのは沖田だというのは理解できた。

「ちゃんと殺したら治してやるよ。そんで沖田の次に育ててやるし愛でてやる。俺の中で必要な存在にしてやる」

 それは乱暴な口調なものの、アルトリアが羨望してやまなかった言葉。

「は、い……」

 次々と襲ってくる衝撃の数々に、アルトリアの思考は鈍化してしまい、一体何について頷いたかさえ曖昧だ。

 そして、傷の見た目だけを取り繕われて、彼女は送り出された。

 

 

●

 

 

 フラフラとした足取りでアルトリアが向かったのは、藤丸立香のマイルーム。

 ここに来るまでの胸中、様々なものが渦巻いた。

 藤丸の事、マスターの事、世界を救う事、沖田の事、戦いの事、訓練の事、紅茶の事、痛みの事、傷の事、楽しかった事、辛かった事、魔力の事、カルデアの事、民の事、騎士の事、国の事。

 今、自分が何を思ってこの扉の前にいるか、彼女は分からないかった。

 何がしたくてここにいるのか、一つも分からなかった。

 五分、十分と、時間だけが過ぎていく。 

 ここはマスター達に用意されたマイルームでも一番端に位置する。その所為か人の気配はなく、邪魔する存在はない。マスターからの命令を聞くには絶好のチャンスだった。

 やがて、何の前触れもなく、彼女はインターフォンを押した。

『はーい。あれ、アルトリアさん? 今開けますね』

 ビクリと、彼の声を聞いて僅かに肩が震えた。しかしそれも扉が開くまでの一瞬の間の事。

 扉が開き、藤丸が姿を現した。いつもと変わらない、好青年といった風貌。

「いきなりどうしたんです? 何かありました?」

 いつまでも動かず喋らないアルトリアを怪訝に思い、彼が心配する。してくれる。

 そして、

「――え、ちょ!?」

 アルトリアは強引に藤丸を部屋に押し込み、そのまま倒れるように床へ藤丸を押さえ込んだ。

 自動で閉まるドアの音を聞きつつ、徐ろに彼の首へと両手を添えた。

 あとはこの手に力を込めるだけ。自分はサーヴァントで、相手は何の抵抗もしない生身の人間。その首をへし折るのは容易い、筈。なのに。

「……なぜ、抵抗をしないのですか」

「…………」

「答えて、ください」

「…………」

「答えて!」

 少しだけ目を閉じて考え、そして彼は言った。

「アルトリア、顔を見せて」

「……いや、です」

「見せて」

「………」

「お願いだよ」

 命令ではなく、お願いされて、だから仕方なく兜の装着を解除した。

「……やっぱり。そんな顔をしているアルトリアには、殺されてあげられないよ」

 彼は困ったような、しかし包み込むような優しさをもってそう言った。

 そこまでだった。

 アルトリアは藤丸の胸の中で泣くしかなかった。




アルトリア・ペンドラゴン Lv.1
クラス:ランサー
絆Lv.0/5(マスター)
現マスター。精神に作用する魔術が得意。

絆Lv.4/5(藤丸立香)
サーヴァントと契約を結んでいない為、聖晶石の獲得はありません。
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