仮面ライダーカブト〜2人の特殊な少女たち〜 作:ワーム大好きマン
「全損4、半壊7、損傷12。成虫体相手にこの被害の少なさは良くやった。
日賀美ちゃんの力は我々の想定を遥かに超えている様だ」
ZECTトップの
トップから素直に褒められた日賀美は嬉しそうな表情を浮かべ、岬田も誇らしげな表情になる。
「逃げた成虫体は追いかけているか?」
「擬態先は判明しているので、二人の顔をカメラに登録して追いかけています」
三橋が手元のタブレット画面をスライドさせると、岬田小隊のレポートからアラクネアワームが擬態した女子大生の顔写真と情報が現れる。纏められた情報には生年月日から学歴、それどころか電話番号や住所といった個人情報まで載っていたが、警備会社の名目を持つZECTでは当たり前の行為だった。
「次は一先ず擬態先を見つけてからだな。岬田小隊はそれまで休息と、ゼクトルーパーの補充と修復を行ってくれ」
「畏まりました」
三橋は副官を務める
「日賀美ちゃんは待ってくれ。君に頼みたい話がある」
三橋に個別で呼び止められた日賀美は戸惑った表情を見せるも、岬田が彼女を促すべく右肩に手を置く。その意図を把握した日賀美は三橋の話を聞くべく部屋に留まり、岬田は任された役目を果たすべく部屋を去る。
「さて、日賀美ちゃんには特別な役目を任せたのだが、その前に·······マスクドライダーシステム───聞いたことはあるだろう?」
「他の社員が話しているのを聞いたことはありますが、詳しくは知りません」
「簡単に言えば、成虫体のワームを倒せる力を与えるシステムだ。システムはゼクターと呼ばれる自律型の虫を用いるのだが、その一つ カブトゼクターが完成間近で脱走した」
日賀美にマスクドライダーシステムを知っているか聞いた三橋はシステムについて軽く説明し、矢影はタブレットから赤く輝く金属質の甲殻と、金色に輝く角を生やしたカブトゼクターの画像を見せる。
成虫体のワームを倒せる重要な要素が脱走したと、軽々と言い切った三橋に日賀美は驚かされる。
「そんなに驚かなくても大丈夫だ。既にZECTが誇る監視カメラ網とネットの目撃証言から、大体の居場所は割り出した。
君にはカブトゼクターの回収作業をお願いしたい。」
「ゼクターの回収作業って、虫取り網でやるとかじゃ無いですよね?」
「まさか、仮に捕まえても奴らは網を破って逃げ出せるさ」
ZECTの厳重な警備から逃げたカブトゼクターを捕まえろと言われた日賀美は、カブトムシの要素に引っ張られてか虫取り網で捕まえる光景を思い浮かべ、三橋は思わず苦笑する。
三橋が手を伸ばすと、矢影は足元に置いていた銀色のアタッシュケースを渡し、受け取った三橋はそれを机の上に持ち上げる。持ち上げた衝撃で揺れる自らの胸を気にせず、三橋はロックを外してアタッシュケースを開き、その中身を日賀美へ見せる。
「これはカブトゼクターでライダーシステムを起動させるのに必要なベルトだ。この中には
「こんな重要なモノを私に渡して大丈夫ですか?まさか、万が一の場合は私がライダーシステムとやらを使えって事ですか?」
「それはカブトゼクター次第だな。まあ、君なら成虫体と戦えるからいらないかもしれないけど」
「流石に生身で成虫体と戦うのは無謀だと思いますが────では、日賀美ひあら、カブトゼクター確保に赴きます」
ゼクターと同じく必要なベルトを受け取った日賀美は、カブトゼクターを捕まえるべく部屋を後にする。アタッシュケースを持って去った日賀美を見送った三橋は、矢影に渡していたタブレットを受け取り、画面を幾度かスワイプさせるとフッと零す。
「にしても、カブトゼクターがあの娘を選ぶとは───運命ってのは分からないものだね。秋ちゃん」
「あの娘に合わせて作ってたんじゃないですか?」
「それはどうだか────」
矢影のブッキラボウな意見に苦笑しつつ、三橋はタブレットに画面を落とす。そこに映るのはカブトゼクターが懐いているであろう女性の写真と個人情報で、そこには彼女の名前も載っていた。
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朝日の陽射しが白いレース越しに部屋へ入る。柔らかい陽射しはその部屋で寝ている彼女の目を覚まさせるが、彼女は快楽な眠気に誘われて2度目の眠りに入ろうとする。
タオルケットを顔にかけて二度寝しようとした彼女だったが、それを妨げるモノが現れる。掌サイズのそれは赤色を纏ったカブトムシであり、羽を羽ばたかせずに部屋を悠々と飛んでいた。
人工の赤いカブトムシは高所から勢いをつけて降下を始め、金色の角でタオルケットだけを器用に剥ぐ。その小ささからは想像つかない力でタオルケットを剥がされた事で、二度寝しかけていた彼女は嫌でも目を覚まされる。
「もう少し優しい起こし方は無いの?」
寝起きの彼女 総部天華はベージュに輝く長い髪を指でくるくる巻きながら、タオルケットを角に載せたカブトムシへ愚痴を零す。タオルケットを雑に投げ下ろしたカブトムシは、不満タラタラの天華の眼前に赴き、彼女に文句を言うかの様に角を上下に動かす。
小さいながら怒るその姿に愛らしさを感じたのか、天華はカブトムシの赤く硬い体を撫でる。撫で終えた天華はベットから降りると同時に、着ていたパジャマを脱ぐ。
パジャマの下に下着は着ておらず、Hカップにもなる巨乳が丸出しになる。天華にとっては男からの視線を集める邪魔な存在だが、化け物が化けた女は揃って巨乳であり、何が良いのかと不満に思いつつヌーブラで覆う。
気に入っている白いワンショルダーブラウスを羽織り、ジーンズを履いて着替えを終えた天華はキッチンへ向かう。おばあちゃんから受け継いだこの家は彼女一人が住むには大きすぎるが、血が繋がっていないにも関わらずこの歳まで育ててくれたおばあちゃんの恩に報いるべく、住み続けていた。
キッチンへ向かった天華は、慣れた手つきで朝食を準備する。トースターでパンを焼く間に、IHコンロで温めたフライパンでスクランブルエッグを作り、ついでに冷蔵庫のヨーグルトを器に盛る。
健康的な洋風の朝食を作り上げた天華が、最後の付け合わせとしてオレンジを斬ろうとすると、赤いカブトムシが彼女の前に現れる。カブトムシはまな板の上に置かれたオレンジへ向かうと、金色の角でオレンジを8つに切り分けた。
「毎回思うけど、その角どうなってるの?」
刃物の雰囲気を一切醸し出さない角でフルーツ等を斬れるカブトムシに天華は話しかけるが、カブトムシは角を上下させるだけだった。
「便利だけど、動画撮っている時には邪魔しないでよね」
赤いカブトムシとの共同作業で朝食を作り終えた天華は、食卓で朝食を食べる。暫く前に始まった奇妙な共同生活だが、天華自身は何処で産まれたかすら分からないカブトムシとの生活に慣れていた。
自分で作った食べ終えた天華は片付けを終えると、買い物へ向かうべく準備していく。今日買うものをラインナップすると家を出て、横のガレージに置いてある自転車に乗って出発する。自転車を漕いで買い物へ行く天華の脇で赤いカブトムシが飛ぶ姿は、まるでペットを思わせる。
住宅地に張り巡らされた道路は通勤通学が終わった時間帯だからか、人通りが少ない為に天華は気分よく走っていく。走りながら今日は何を作るか、何を作れば視聴者は喜ぶかを考えていた天華だったが、考えすぎていた故に後ろから走ってきた自転車に気づけなかった。
自転車に乗った男は天華を抜かすべく横に並んだ瞬間、前のかごに入っていたバックをひったくった。
「あっ!?おい待て!!」
目の前で愛用のバックをひったくられた天華はひったくり犯を追いかける。ひったくり犯に追いつこうと自転車を必死に漕ぐが、相手が男性である為か徐々に離されていく。
「す、すいません!その人、ひったくりです!」
ふと、進路上に女性の姿を見つけた天華は大声でその女性にひったくり犯の存在を伝える。左手にアタッシュケースを持ち、右手でスマホを弄っていた彼女 日賀美ひあらは、すれ違いかけている男がひったくり犯だと知ると直ぐに動き出す。
その場に立ち止まった日賀美は黒タイツを纏った左脚で、ひったくり犯の自転車を蹴り飛ばす。乗っていた自転車を倒された男は道路へ打ち付けられ、痛みが染み渡った体を無理矢理起こした瞬間、右脚での回し蹴りを食らった。
「う、うわぁぁ·······」
日賀美がひったくり犯を倒す光景を目の当たりにした天華は、余りにも容赦ない攻撃に若干引く。
日賀美も天華と同じく筋肉など無いであろう細く華奢な身体ながら、胸はデカデカと膨らんでいる運動には不向きな体型にも関わらず、その見た目からは想像出来ない戦闘スキルを披露した。
「犯罪率は渋谷彗星以前には戻ってないんだから、気をつけなさい」
「あ、ありがとうございます········」
日賀美は路上でのびているひったくり犯から回収したバックを天華へ渡し、忠告をすると警察へ110番通報すべく右手のスマホを弄りそうとした。
「どうしたの?ひったくり犯倒したかったの?」
110番通報をしようとした瞬間、天華が何かと話しているのに気づいた日賀美が彼女を向くと、宙を飛んでいる赤いカブトムシを見つけた。赤い甲殻に金色の角、その見た目は矢影が見せたカブトゼクターそのものだった。
「カブトゼクター!?なんでここに!?」
「あんた、カブトゼクターって言うの?」
思わず声を上げた日賀美に対し、天華は驚きながらもカブトムシに自らの名前を問うた。その反応から日賀美はカブトゼクターが天華と一緒にいたのだと気づいた。
「私はZECTの日賀美ひあらです。いきなり失礼しますが、お名前とこのカブトゼクターと一緒にいたかを教えてください」
「そ、総部天華です。カブトゼクター?とは2週間位前から一緒にいました」
「分かりました。ひったくり犯を渡した後、少々お話を聞かせて貰っても良いですか?」