そんな怪しいのぺっしなさい 作:ぬるぬる
黒衣の少女が気づいた時、辺りは不気味な世界だった。
薄暗いのに何処からか灯りが採られているのか、隅の方まで見渡せる。
壁や天井果ては床まで肉色の不気味なもので覆われ時々蠢きながらテラテラと光っている。
部屋は蒸暑く、いつの間にか解除されていたバリアジャケットでは無く私服になっており、肌に張り付く嫌な感触が不快感を上げる。
何か香が焚かれているのか甘ったるい匂いがする。
置かれている状況は最悪だ。
なにせ、手足首に触手が巻きつき身動きが取れない上に愛杖のバルディッシュも手元に無い。
兎に角自力で魔力を行使しようとするも、練り上げた途端何処かへ吸い取られるように霧散する。
こんな事は初めてだった。
そして、こんな不気味な場所も。
家はただ明かりに乏しいだけ、うん。ここまで酷く無い。
そうポジティブになるも、状況は変わらない。
とにかく状況を整理しようと彼女はこれ迄を振り返る事にした。
私はプレシア母さんの命を受け、この第97管理外世界の鳴海にやって来た。
そして、母さんの用意してくれた仮住まいのマンションの屋上に降り立った瞬間、魔力波を感知した。
母さんの話ではジュエルシードと呼ばれる物が多大な魔力を保有していて、そしてそれが生物を取り込んで発動すると大きな被害を齎すらしい。
そして、放置すれば次元震を発生させる程だという。
これはその予兆かもしれない。
そう考え、アルフに住まいの準備は任せて、その下へと飛んだ。
そして見たのは明らかに奇怪な猫だった。
リニスでもこんなに大きくは無かっただろう。
なにせ根に影を作るほど生茂った木よりも高く大きい。
これは明らかに異常であり、木を薙ぎ倒す様はこのまま放っておけば多大な被害をもたらすであろう。
なのに、私と同じくらいの女の子達が全く危機感の無いままきゃあきゃあと騒いでいる。
このままでは危ない。
そう思って猫の注意を引く為に直射弾を1発。
私の魔法は体質により電気を帯びている。
実際の威力よりも強く感じるであろう。
そして直撃。
すると魔力波が感じられ、この猫がジュエルシードを取り込んで発動しているのだと考えた。
そして封じ込める為に魔力ダメージを与えようと今度は動きを止める為の強めの一発を構成していると、声が。
「あなたはだれっ!」
先程まで騒いでいた少女が何故か此方を警戒している。
相当な魔力を有しているはずなのにあの危険物を呑気に見物していたかと思えば、助けた此方に敵意を向ける彼女。
阿呆なのかもしれない。
相手にするだけ時間の無駄だと考え、
「答える必要は無い」
とだけ言い放ち発射。
猫状の暴走体の構成を瓦解すべく魔力刃にて両断しようとしたところ、何故か阿呆少女が魔法を行使して立ち塞がるでは無いか。
そして何故か上から目線の少女を打倒すべく闘い、そして背後から突き刺したところでプツリと記憶が途絶えている。
わからない。
そこからどうやって今の状況に繋がるのか。
考えあぐねているところへ、誰もいないはずの部屋で声がかけられた。
「おはよう、フェイトちゃん」
「っつ?!誰っ!」
「酷いなぁ、さっき会ったでしょ」
「あなたは、さっきの……」
「なのは、高町なのはだよ。ようこそここへ、歓迎するよ」
先程の阿呆少女が立っていた。
何故か全裸で。
その足下からは触手が生えてきており、少女に先を擦り付けていた。
そして彼女も先を手馴れた手つきで扱しごき、愛おしげに目を細めウットリとしていた。
そんな光景が酷くいやらしく、何と無く嫌悪感を抱かせた。
何故か名前が知られていることも一つの要因だろう。
きっ、となのはを睨むフェイト。
しかし、拘束された状況の相手なぞ眼中にないのか、ただ目の前の触手とじゃれあうのに夢中なのか気にした様子は無い。
目の前にいるのに相手にされないのは、正体不明で恐らく敵対関係にあるとはいえ何と無く寂しかった。
「とにかく、離してっ」
「うふふ、折角の手がかり。逃すと思う?」
「あなたに何か話すことは無い!」
「まあ、そうだよね。でも私も大体の事は解ってるし、後は余興」
「余興?」
「そう、貴女には心配してくれる人なんていないし、帰ってこないのを探す様に行動する人もいない。私が思う存分楽しんでも文句が出ない」
「そ、そんなこと……母さんやアルフがきっと……」
「アルフ?それってこの人のことかな?」
そう言ってなのはが指を鳴らすと、床が盛り上がり、椅子に拘束されたアルフが出てきた。
「あ、アルフッ!!」
「あん、気持ちいいよぉ、もっとおくれよ。この程度じゃ満足出来ないよぉ」
「アルフ?っっきゃん?!何これ、アルフから何かが流れてくるっ!」
「へぇ、そんな効果もあったんだ」
フェイトに見える様向かい合わせにされたアルフ。
股を開脚された姿勢で固定され、触手がアルフに突き刺さっていた。
リニスに優しく洗ってあげなさいと言われていた股の付け根。
お尻付近に触手が蠢いていた。
耳にヘッドホン、目には保護メガネの様なものをかけられ、フェイトが目の前に居るのに気付いていない様だ。
そして、虐められているはずなのにアルフとのリンクからは気持ちいい、楽しいといった感情が流れてくる。
何が何だかわからない。
フェイトは混乱した。
アルフが何故そんなにも楽し気なのか。
何故こんな所に縛られて居るのか。
触手と親しげな全裸少女、高町なのはとは一体何なのか。
何故ジュエルシードを探して地球まで転移してきたのを知っているのか。
そして、確かに母とは暫く連絡を取れず、集めるまで戻って来るなと言われ、この星でアルフと2人きりだが、何故それを確信しているのか。
何故こんな不気味な所に閉じ込められているのか。
なぜ、何故?
甘ったるくムシムシする環境が思考能力を奪う。
今まで周囲の言葉に盲目的に従って行動すれば良かった。
脱出しようにも魔力が吸い取られる様に霧散し、魔法を行使出来ない。
バルディッシュは何処かへ行ってしまい、アルフも捕られられ、援軍も望めない。
こんな想定外な出来事にどう対処すれば良いのかわからない。
どうしてこうなったのか、ただお母さんのお願いを叶える為のお使いで、どうしてこんな目に遭わなくちゃいけないのか。
そう考えるとフェイトは悲しくなり、涙が零れた。
しかし、思考リンクからは気持ち良さと楽しみが溢れ、より一層頭の中がぐちゃぐちゃになった。
じたばたしていると声がかけられた。
「そんなに難しく考えなくても良いの」
「だって…私は母さんのために、母さんが……」
「ジュエルシードなら全部私が探すよ。その間フェイトちゃんはここでアルフと気持ち良くなっていれば良いの」
「そんな、私は母さんのお使いで…」
「フェイトちゃんは真面目だね。集まれば誰が集めても良いんだよ。そしてフェイトちゃんが持ってプレシアさんに渡せば良いんだよ」
「そう、なのかな……?」
「そうだよ。ほら、アルフもフェイトちゃんと来たのに夢中になって気持ち良くなってるよ」
迷うフェイトになのはの甘い囁きが耳に入る。
これだけ優しくしてくれる子の言うことなら、間違いでは無いのかもしれない。
アルフからも楽しい気分が伝わってくる。
段々ほわほわして来た。
自分でやらなくても良い?
アルフと同じ様に楽しくなっても良いの?
「良いんだよ。フェイトちゃん。フェイトちゃんは私がお世話してあげる。時間もお使いも、何もかも忘れて楽しんでいれば良いの。そうすれば、ジュエルシードが集まってプレシアさんが悦んでくれる結果になるよ」
フェイトの内なる疑問に阿吽の呼吸で答えてくれるなのは。
アルフとおなじように気持ち良くなれば、母さんが喜んでくれる。
そして、フェイトは。
「お、お願いします。高町なのは。私も気持ち良くさせて。そして母さんにジュエルシードを渡して」
「いいよ。そしてなのはって呼んで、フェイトちゃん」
「うん。なのは。アルフと一緒に気持ち良くなりたい」
これが一番なんだ。
お母さんにジュエルシードを届けれて。
私もアルフも気持ち良くなる。
全部なのはに任せれば……。
思考能力が弱った中、判断した。
これがベストなんだと思い込んだ。
そして、その瞬間頭に黒い液体が垂れてきた。
そしてぐちょりと湿った気持ち悪い服に染み込み、流れ落ちると裸になっていた。
汗も流され気持ちいい。
そうか、なのはが裸なのは気持ちいいからなのか。
やっぱりなのはの言うことが正しいんだ。
フェイトは盲目的になのはを信用した。
今まで誰かがフェイトの行動を指示してくれた。
しかし、この星に降りたってからは一人ぼっち。
アルフが居ても、自分で考え動かなければいけない。
そんな所に強くて理解してくれるなのはが現れた。
そしてフェイトは新たな依存先を見つけた。