※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 二部 光の公女   作:伊駒辰葉

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冒頭で携帯電話と書いてあったので修正しました(泣)
エロシーンはありません。


とりあえず状況整理をしてみよう 1

 携帯端末を耳にあてがっていた順は相手の声を聞いてやっほー、とのんびりと言った。広い車内では和也が煙草をふかしている最中だ。

 

「忙しいトコ、ごめーん。悪いんだけどさあ。経緯とか知りたいから、そっち入れてくんないかな?」

 

 へらへらと笑いながら順は言った。首に巻かれた包帯が見えないよう、タートルネックのシャツをしっかり指で引き上げる。

 

『茜さんっ! 無事だったんですね?』

 

 電話の向こうから聞こえた優一郎の声に順は思わず苦笑した。だいじょぶよん、と笑ってから入れてくんないかな、ともう一度訊ねる。

 

『どうぞ』

 

 妙に機嫌のいい声で答える優一郎の声を聞いてから、順は和也に目配せした。嫌そうに舌打ちをした和也が力を放つ。一瞬で順の視界が揺れ、次の瞬間には順は優一郎の部屋の前に姿を現していた。

 

 金属のドアを軽くノックする。返事を待ってから順は部屋に顔を覗かせた。

 

「茜さん、良かった。無事だったんですね」

 

 机についていたらしい優一郎がそう言いながら小走りに駆けて来る。順は軽く手を上げてそれに応えてから部屋に入った。

 

「ごめんねぇ。心配かけて。おまけにこんなカッコで」

 

 そう言いながら順は自分の姿を見下ろした。一度、消耗した力はそう簡単には戻ってくれないようで、順はまだ女性の姿をしていた。試しに何度か戻ろうとしてみたのだが、やはり戻れないのだ。

 

「別に美人なんだし、かまわないんじゃないですか?」

 

 笑いながら言って優一郎がソファを勧めてくれる。順はありがたくその言葉に甘えることにした。困ったように笑いながら腰掛けて、向かいに座った優一郎に答える。

 

「いや、美人とかねぇ、そゆ問題でなくて。やっぱ、このまんまだと調子出ないっていうか」

 

 しばし二人でささやかな世間話を交わしてから、順は話を切り出した。

 

「あのね。姫君がいた部屋のビデオとかさあ。撮ってないかと思ってね」

 

 メイドの格好をしたヒューマノイドの女性が運んできてくれた茶をありがたく啜る。添えてあるのは焼きたてのクッキーだ。

 

「あの部屋は、もともとねえさ……透さんの側の建造物だったんです。僕のほうでは、そのようなシステムはしかけていません」

 

 真面目な顔をして優一郎が言う。順は少し眉を寄せて口許を手で覆った。軽く呻いてから困ったねえ、と呟く。ココアとプレーンの生地で模様がつけられているクッキーを一つつまみ、口の中に放り込む。焼きたての温かさの残るクッキーは口に入れるとほろりと解ける。

 

「弱ったね、どうも。ビデオあれば見たかったんだけど」

 

 難しい顔をして言いながら順は腕組みをした。少し身を乗り出した優一郎が足に肘をかけ、手を組み合わせながら真剣な面持ちになる。

 

「結局、どうなったんですか? 僕はあの場に途中まで居合わせたんですけど、佑に力をほとんど奪われてしまって、仕方なく途中で撤退してしまったので、断片的な情報しか掴んでいないんです」

「オレもねぇ。佑ちゃんの結界に閉じ込められててね。水輝ちゃんの悲鳴しか聞こえなくて」

 

 そこまで言ってから順は頭をかいた。ここで隠したところで仕方がないだろう。順は結界内で交わした立城との会話を優一郎に話して聞かせた。

 

「立城さんが、現在の状況は望んだものでは無いと仰ったんですか?」

 

 思案顔で優一郎が口許に手をあてがう。順はソファの背もたれに寄りかかってため息を吐いた。

 

「オレはてっきりね。あのヒトはまたバカをやるんじゃないかと思ったワケ。真也クン戻そうとしてるんじゃないかってさあ」

 

 苦い顔で順は自分の考えを述べた。だが立城はあの時、やけに辛そうな顔をしていたような気がする。それが演技でないという保証はどこにもないが、嘘だと断じることも出来ない。

 

「いくらなんでも今更それは無いでしょう? ですけど、現在の状況が立城さんの望んだものでは無いとは、到底信じられませんね」

 

 難しい顔をして考え込む優一郎に順はそだよねえ、としかめ面で答えた。何しろ相手があの立城なのだ。皆はあれの思惑通りに動かされているような気がする。順はうーん、と唸って首を捻った。

 

「まあ、あの状況じゃ仕方なかったからさあ。オレも処女進呈なんてしちゃったけどさあ」

 

 苦い顔のままで順は告げた。本当は透か優一郎にと思っていたのだと説明する。だが結局は夜になるまで結界は解けなかったようだ。和也はその後、一人で倒れていた順を回収したのだという。

 

「しかし、あなたや立城さんを完璧に足止めする結界が存在するなんて、信じられません」

 

 考えるような顔のままで優一郎が身を起こす。むー、と唸ってから順は残っていた紅茶を飲み干した。

 

「何かねえ。太陽の光? 影がどうとか言ってたけど……中から消すのはほんっとにムリっぽいね。宝珠の刀とかも竹ひごみたいになっちゃってさあ」

 

 順はぶつぶつと不満顔で告げた。あの結界は例え立城でも内側からどうにかすることは出来ないと言っていた。

 

「これ以上、立城さんと争いを続けるのは無理そうですね」

 

 頭を抱えて優一郎が言う。順はしかめ面をして頭をかいた。

 

「仲良くする気もないけど、ここまで事態がこんがらがっちゃねー……。収拾つけようとしたら、互いの状況整理するしかないと思うし……」

 

 順は足の上に頬杖をついて指先で苛々とこめかみを叩いた。




この2人が一番冷静なのかも?
あ、和也は別枠です……。
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