エロシーンはありません。
残された紀早は今は木村の研究所にいるらしい。どうやら紀早には封魔士としての能力があったらしく、実験が繰り返されているようだ。
「油断はできないか……」
深いため息を吐いて優一郎は寂しい面持ちでケーキの上の苺をじっと見つめた。多輝は苺がとても好きで、いつも嬉しそうに食べていたことを思い出す。会いたいのは山々なのだが、多輝のところに下手に出向いた隙をつかれる可能性もある。結局、水輝が今、どこで何をしているのかが判らない以上、無闇に動くわけにはいかないのだ。
「結局、動くわけにはいかないって事か……。斎姫」
「あっ、はい。優くん」
ほんの僅かに遅れて斎姫が返事する。優一郎は不思議に思って斎姫を見つめた。どうやら斎姫は斎姫で考え事をしていたようだ。
「君が僕の前で僕から注意を逸らすなんて珍しいね」
優一郎はにっこりと斎姫に笑みかけた。すると斎姫が困ったような顔になって視線を泳がせる。だがすぐに観念したのだろう。斎姫がおずおずと口を開く。
「あの……! 茜さんの件は、本当に放置しておいても……」
それを聞いて優一郎はああ、と呟いた。茜はいま、水輝と同様に行方が知れなくなっているらしい。そのことを優一郎は立城から電話で聞いた。だが立城も人づてに聞いたという口調で話していたために、どこまでが本当なのかは優一郎にも判らない。
「居場所はだいたいわかってるから、大丈夫。彼の元ならリハビリにちょうどいいんじゃないかな?」
笑い混じりに答えて優一郎はコーヒーを喉に流し込んだ。茜の場合は水輝とは異なり、足跡がはっきりとしている。立城から話を聞いた直後、優一郎は茜の気配をすぐに探し当てることが出来た。
探り当てた茜の傍には不思議な気配があった。今もまだその気配は茜のところにある。人なのか龍神なのか、それとも魔なのか判別のつきにくい不思議なその気配には一人だけ心当たりがある。きっと予想は間違っていないだろう。優一郎はそう確信していた。恐らく立城もそのことには気付いている。あえて優一郎に情報を流したのは、茜の動向に注意するようにとの警告の意味があるのだろう。
水輝と茜は見えないところで繋がっている。水輝が動く時、きっと茜にも何らかの異変があるだろう。
「そういえば、君は茜さんの事をいろいろ気にしていたよね?」
優一郎は斎姫ににこやかに笑みかけた。すると斎姫が真っ赤になってうろたえる。斎姫の機体ログをチェックしている優一郎は、いつだったか茜が斎姫に性交渉を迫ったことを知っていた。その時の二人のやり取りも勿論知っている。
「別に、わたしは茜さんとは……きゃっ」
泣きそうな顔をしていた斎姫が小さな声を上げる。大胆に斎姫のスカートをめくり上げた優一郎は深い微笑を浮かべた。斎姫の恥部は人とは全く異なる構造をしているのだ。クリトリスは小さなライトで出来ているし、その周囲には機体の状態を示すランプのついたパネルが設えられている。一目で斎姫の感情を読み取って優一郎はくすりと笑った。
「本気で心配してるんだね。なるほど」
斎姫の股間を無遠慮に覗き込みながら優一郎はくすくすと笑った。真っ赤な顔をした斎姫が持っていたトレイで恥ずかしそうに顔を覆い隠す。
「ごめん。いじめすぎたね。君が逆らえないのをわかってて」
斎姫は顔を隠しつつも優一郎の言いつけ通りに足を開き、腰を押し出して股間を見せようとしていた。優一郎が優しく声を掛けると斎姫が恐る恐るの態でトレイから顔を覗かせる。その目には涙がいっぱいにたまっていた。
「寝室へ行こう。今日は疲れたし」
にっこりと微笑んで優一郎はめくっていたスカートを戻した。すると斎姫の表情がぱっと明るくなる。だがその時、唐突に斎姫の股間から聞き慣れたメロディが流れ始めた。どうやら誰かから通信が入ったらしい。
「誰から?」
いそいそとスカートの中に手を入れて通信を受けた斎姫の表情が強ばる。それを見て優一郎は笑みを消し、緊張した面持ちになった。
「天輝さんからです!」
切迫した表情で斎姫が机に座る。慌ただしくスカートをめくり、晒された斎姫の股間に優一郎は慌てて手を伸ばした。手早くクリトリスを操作するとすぐに斎姫の機体から音が聞こえてくる。
耳障りなノイズが部屋の中に大きく響く。それはまるで放送の終了した後のテレビの砂嵐のような音だった。その音に混ざって途切れ途切れに天輝の声が聞こえてくる。優一郎は懸命に耳を澄まして天輝の声を耳で拾った。だがどうしてもノイズが多くてはっきりと聞き取れない。
「ノイズリダクションかけます!」
そう斎姫が告げた瞬間、唐突にノイズが消え、天輝の悲鳴の混ざった声が響く。
『白が! ここの空間、完全に閉じてるから!』
咳き込むような早口で天輝が叫ぶ。優一郎は目を見張って斎姫の股間に設えられたマイクに向かった。
「天輝さん! 聞こえますか!!」
『あ! 優一郎くん!? やっと通じたのね!?』
優一郎の声に答えた天輝の声には悲愴な響きがこもっている。その背後では天輝様という誰かの悲鳴が何度も響く。
『生き残った者は屋上に避難! まだ戦える奴は一緒に出るわよ!』
一体、何事が起こっているのか、天輝が鋭い声で叫ぶ。優一郎は驚きに息を飲んで斎姫と顔を見合わせた。
せっかく斎姫的にエロに突入出来るかと思ったのに。
という、感じかも知れません。