※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 二部 光の公女   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


男のくせに生意気な!(by.梓) 2

「男のくせに生意気な! こんなに可愛い子ばかりを侍らせて! 最低ね!」

 

 要を抱きしめたまま、梓がじりじりと二人の方に寄る。ちなりと巴は不思議そうに顔を見合わせてから首を傾げてみせた。

 

「だから、お前にもちょっとはいい目を見せてやろうと思ってな。さてと」

 

 透は宙に手をかざした。すると透の手の上に金属製の歯車が数枚現れる。だがそんな透の様子はどうでも良かったらしい。梓が要に頬ずりをして、次いでちなりと巴の頭を優しく撫でる。

 

「男に同情されるほどみじめなことはないわっ。……ねえ、あなたたち。良かったら改造しない?」

 

 嬉しそうに言って梓が三人を順繰りに見つめる。透は呆れた顔をして梓を見た。

 

「要、梓を支えてやれ。そのままだと倒れるぞ」

「あ、はい」

「な……どういう意味」

 

 それまで嬉しそうにしていた梓が訝りの表情で振り返ろうとする。だがそこで梓はバランスを崩し、床に倒れそうになった。待ち構えていた要がしっかりと梓を支える。

 

「ちょっと! なにをしたのよ!」

 

 触られた覚えはないのに。そう呟いて梓がぎらりと透を睨む。透はにやにやと笑いながら手の上にあらわした歯車を玩んだ。

 

「梓、ここのギアはあまり精度が良くないぞ。別のとこに代えたほうがいいぞ」

「いやあ! 男に、男に、男に」

 

 漸く、透の手の中の歯車の正体に気付いたのか梓が真っ青になって叫ぶ。

 

「汚い手で私の部品に触らないで! ああ、新品にしなきゃ、せっかくこずえちんに発注してもらったのに」

 

 ぶつぶつと呟きながら梓が力なく頭を振る。梓の極端な男性嫌い振りに呆れた顔をして透は手の中の歯車を見つめた。そう、梓は筋金入りの女好きでもあるが、それと同時に改造好きでもある。そのためにかは判らないが、梓は自分自身の身体を機械に改造しているのだ。

 

「巴、改造台の準備を。ちなり、お茶をくれ」

 

 はーい、と元気な返事をして二人が作業に入る。要に支えられた梓が真っ青になったまま叫んだ。

 

「まさかあんた、私に触ったりする気じゃないでしょうね!?」

 

 改造台、と訊いて多少のことは予測出来たのだろう。梓が慌てたように要の支えを振り解いて駆け出そうとする。だが部品を抜かれた機体ではバランスが崩れているのは当たり前だ。梓は悲鳴を上げて床に崩れ落ちた。

 

「安心しろ、俺は触らねーよ。お前の嗜好くらいは尊重してやる。要、いまからそいつをばらして中どうなってるか見るがお前も見学するか?」

「はあ……わたくしはどちらでも構いませんが……」

 

 珍しく曖昧に返事をしてから要は梓を引き起こした。

 

「冗談じゃないわよ! 何で男なんかに見られなきゃならないのよ! 同じ空間にいるだけでも気持ち悪いのに! ああ、もう、もっと離れてよ!」

 

 ヒステリックに叫んで梓が透に向かって追い払う仕草をする。透はやれやれとため息を吐いて改造台のところで作業をしている巴に声をかけた。

 

「巴、準備は終わったか?」

「はい、終わりました。シーツは新しいのに換えましたし、枕もちゃんと」

「この方、男性恐怖症ですの?」

 

 巴が返事するのと同時に要が不思議そうに言う。すると透より早く梓が答えた。

 

「違うよ、私は男が大嫌いなの! 汚いから触られたくないの! 見ると吐き気がするから寄って欲しくないし、出来れば全滅して欲しいの!」

 

 口早に言ってから梓が疲れたようにため息を吐く。要はそんな梓をしばし見てから透を見やった。

 

「この方の機体はもう限界ですわ。先ほどからエラーが大量に出てますの」

 

 要が珍しく曖昧な返事をしたのは、梓の機体状態をチェックしていたかららしい。なるほど、と呟いて透は静かに梓に近づいた。

 

「これで文句はないでしょ?」

 

 悲鳴を上げようと口を開いた梓が声を出す前に透は自分の胸に手を突っ込み、素早く女性に変貌した。すると梓が仰天したように目を見張って息を飲む。

 

「絵美佳……」

 

 掠れた声でそう呟き、梓はほっとしたように脱力した。要が慌てた声を上げて一気に力を抜いた梓の身体を支える。

 

「マジで俺に惚れてたんだな、こいつ」

 

 女性の姿のまま、透はいつもの口調で呟いた。すると要が唇を尖らせて上目遣いに透を見る。

 

「透様は魅力的ですもの。心惹かれてしまうのも仕方のないことですわ」

 

 そう言ってから要はつんと顔を背けた。だがその腕はしっかりと梓を支えたままだ。

 

「要、愛人一人増えても構わないか? 相手する時は女の格好することになるが」

「わたくしが一番愛しいと天に誓えるならよろしくてよ!」

 

 おほほ、といつもの調子で高笑いして要が言う。透は苦笑して頭をかいて肩を竦めた。お茶の準備をしていたちなりがにやにやと笑って透を見つめ、巴が恥ずかしそうに頬を赤くする。

 

「誓いなんてものは軽々しく何度もするものじゃねぇ。俺を信じろ」

「あら、別にいいじゃありませんの。減るものでもありませんし」

 

 うふふ、と含み笑いをして要が透に流し目を送る。からかわれていることを十分に理解しつつ、透はやれやれとため息を吐いて片手を上げた。

 

「ああ、お前が俺の一番だよ」

 

 透はそう言って要に微笑みかけた。すると要がぱっと明るい顔をする。

 

「とりあえず修理と改造をすませちまおう。梓を改造台の上に運んでくれ」

「お任せ下さいな。……あらあら。随分とお軽いですわね、この方」

 

 軽々と梓を両腕に抱え上げて要が改造台に向かって歩き出す。そんな要の後を追いながら透はそっと苦笑を浮かべた。




何か気付いたら出てきたんですよね。梓というキャラクター。
たまにこうやって増えます。
そして作者が忘れます……。
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