※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 二部 光の公女   作:伊駒辰葉

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真面目な話し合いが続きます。
エロシーンはありません。


とりあえず状況整理をしてみよう 3

「如月の御大からね。話がきてた。もう、競い合ってる場合じゃないから、席を設けて話がしたいって」

 

 肩を竦めて言ってから順は深々と息を吐いた。如月の御大、というのは吉良瀬財閥の首脳陣の一人だ。

 

「KTSの状況について、僕のところにも問い合わせが来ましたよ。あそこのヒューマノイドの稼働率が落ち込んで業務が滞ってるいるので、渚さんには早く戻っていただかないと」

 

 渋い顔で優一郎がため息を吐く。そだねぇ、と答えてから順は力なく首を振った。

 

「今はナギちゃんは使い物にならないよ。根こそぎ力ぶん取られてほとんど廃人化してるって話。天輝ちゃんから冥界通じて連絡あった」

 

 うんざりしながら順は言葉を継いだ。だがこれは急に起こった事ではない。いつかは魔が世界に溢れ出したに違いない。龍神の数が極端に減り、穢れや澱みを祓う者が減った。そして世界には濁った感情があちこちに凝っている。

 

「力も、場合によっては意識も必要ありません。渚さんのペニスが立ってセックスさえできれば、あそこは成立しますから」

「あ、それなら何とか出来るかな。無理やり勃たせりゃいいんしょ?」

 

 そういうことなら使える薬が幾つかある。順は優一郎にそう説明した。対龍神用の麻薬にも似た催淫剤は開発済みだ。ただ、習慣性があるために、回復後に薬を抜くのに多少手間がかかるかも知れない。が、そこは龍神だ。治す方法など幾らでもある。

 

「多輝を預かってもらうついでに、渚さんたちを引き取ってきます」

 

 女の身体にならないと……。そう呟いて優一郎が立ち上がろうとする。順はだがそこで待ったをかけた。

 

「タンマ。上行くの?」

 

 どうやら優一郎はより安全な場所に多輝を隠そうとしているようだ。声をかけられた優一郎が元の位置に腰掛け直す。

 

「今すぐってわけじゃ当然ありませんけどね。多輝と由梨佳さんを預かるというか、保管してもらうには、あそこが一番安全かなあと」

「そっか。そりゃそうかもね」

 

 そう言いながら順は遠慮のない目で優一郎をじろじろと眺め回した。視線を感じた優一郎が不思議そうな顔をする。順はしばし優一郎を見てから苦笑した。

 

「佑ちゃん剥がしてるいま、キミが女になるのってムリじゃない?」

 

 佑は最初は優一郎が女性の姿を取った存在だった。だが今では二人の意識は完全に乖離している。

 

「そうか、そういえば、あれから試した事がありませんでした」

 

 そう言ってから優一郎がおもむろに自分の胸に手を突っ込む。しばしそのままの姿勢を保ってから、優一郎は胸から手を抜いた。

 

「無理のようですね」

 

 難しい顔をして優一郎が言う。だろうねぇ、と苦笑して順は頷いた。

 

「優一郎くんが嫌じゃなければ、ヒトの皮被るって方法もなくはないけど」

 

 まあ、多少煩いかもだけどねー。そう続けて順は肩を竦めた。すると優一郎がぴくっと頬を引きつらせる。

 

「斎姫の身体を使えば、問題はないでしょう」

 

 その声はどことなく震えているような気がする。順はそお? と気軽に言って笑ってみせた。ヒトの皮を被る。魂をそのままに中身だけを闇の獣たちに食わせ、その中に無理やり入るという方法だ。その方法なら気配も消せるし、姿だけでなく中身も偽り易い。ただ、魂が叫びを上げるのを聞いていなければならないという欠点がある。

 

「しっかし、経緯調べようと思ったのに、あんま情報拾えなかったなあ……」

 

 のんびりと言って順はクッキーを口に放り込んだ。

 

「問題点の整理はできたでしょう? 消滅してしまったものは、もう仕方有りませんし」

 

 淡々とした口調で語る優一郎にそだね、と答えて順はお茶のお代わりを要求した。苦笑をした優一郎がメイドに連絡を入れ、報せを受けたメイドがしばしの後にお茶のお代わりを持ってくる。その間、順はじっと黙って考えを巡らせ続けた。

 

 極端なことを言えば、世界に蔓延る魔も、それによって人が困っているのもどうでもいい。対処を全くしない訳にはいかないだろうが、どのみち誰かが汚れは掃除しなければならないのだ。その手間が省けているという考え方も出来る。

 

 問題は水輝だ。和也は水輝は二つに分かれたと言っていた。表面的に見れば、立城は誰に文句をつけられることもなく片方の水輝を手に入れられた。だから目的は達しているのではないかと見ることも出来る。何しろ立城は水輝に異様な執着を持っている。その理由は知らないが、欲しいものが手に入れられたのだから文句はないだろう。

 

 だがそれを本当に立城は望んでいたのだろうか。そこまで考えてから順は茶を入れてくれたメイドにありがとうと礼を言った。お辞儀をしたメイドが静かに部屋を出て行く。

 

「茜さん。多輝を天輝さんのところで預かってもらった後、僕は立城さんに会談を申し込むつもりです」

「あ? ……うん、そうだね。その方がいいのかも知れない」

 

 珍しく真面目な顔をして順は答えた。順を見つめていた優一郎が不思議そうな顔をする。順は視線に気付いて苦笑をした。

 

「何かね。もう、ちょっと、マジでそれどこじゃないような気がして」

 

 主龍神の不在は今までにもあった。先の天輝を水輝が散らした後、しばし主龍神の座は空席になっていた。その間にハンターたちは一丸となって龍神に戦いを挑んだ。結果は曖昧で、どちらが勝ったとも言い難い戦いだった。だが双方の被害は大きかった。ハンターも龍神も、多くの同胞をなくした。




KTSの話も出てきました。
KTSというのはヒューマノイドを製造販売レンタルしている企業です。
トップは池田渚という女性&龍神ですが、現在は水輝のせいで使い物にならない状態です。
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