BL警報! 人外警報です!
でもってこれで一章は終わりです。
低い軋みが響いている。間近に聞こえるその音に立城は目を覚ました。軋みは一定間隔で続いている。
「あ、起きた」
くすくすという笑い声を聞きつけて立城はのろのろと瞼を上げた。暗い闇に覆われた視界の中で薄い青の髪をした葵が嗤っている。
立城はいつの間にか葵に組み伏せられていた。聞こえているのはベッドの軋む音だ。葵が身を躍らせるたびにベッドが軋み、微かな水音がそれに重なる。
「んっ、あおい?」
次第に目が慣れてくると周囲の様子が見えてくる。立城が居るのは書斎だった。窓の外に見えるのは暗い夜空だ。裸の立城に跨る葵が目を細めて自分の手をしきりに舐める。その手はべったりと血に汚れている。
立城のペニスを肛門に咥え込んだ葵が片膝を立てて腰を前後に揺する。
「その血は!? 喰べたの、かい?」
「その辺に居た奴らを喰った」
嗤いを浮かべて言ってから葵が立てていた膝を下ろし、背を丸める。頭を片手に捕まれた立城は驚きに目を見張って押されるままに首を仰け反らせた。
「立城、立城」
呪文のように囁きながら葵が立城の首筋に顔を伏せる。首筋を舐められた立城のペニスがひくりと脈打つ。
「んくっ! 葵、これからは僕に無断で勝手に喰べたりしたら駄目だよ」
こみ上げてくるものを堪えて立城はにっこりと笑った。しきりに立城の首筋を舐っていた葵がゆらりと顔を上げる。
「あの珠、美味かった……奴らも美味かった……」
恍惚の表情で呟いた葵が微かな吐息を吐いて身を震わせる。立城のペニスを咥え込んだ葵の腸壁が収縮する。葵はどうやら軽く達してしまったらしい。しきりに腰を前後に揺すって間延びした声を漏らしている。
「珠!?」
驚きに目を見張って立城は葵を凝視した。ふふふ、と含み笑いした葵が少し腰を持ち上げてゆっくりとペニスを肛門で擦る。
「ああ。紫色をした珠だ。美味そうな匂いがしていたから」
喰った。背を丸めて間近に立城の顔を覗き込みながら葵が嗤う。深いため息を吐いてから立城は葵の目を覗き込んだ。
いつの間にか葵の目は薄く赤味がかかっている。薄紫だった瞳が赤味を増して赤紫に変化しているのだ。
「これからは珠も無断で食べてはいけないよ。葵」
「判った。今度から喰った後で許可を貰う」
嗤いながら言って葵が右手を立城の胸に乗せる。次の瞬間、立城は強制的に快楽を与えられて仰け反った。葵がそんな立城を愉悦のこもった目で見下ろしながら伸ばした爪先で立城の肌をかりかりと引っかき傷つけていく。
「やっ! 葵っ! んくううっ!」
「いっぱい出したな、立城。気持ちいいか?」
葵の囁きが頭の中にこだまする。掠れた声を上げて立城はびくんと背を反らした。葵の赤い爪先が立城の乳首をくすぐってから静かに胸に沈む。
「ほら、立城。これ、触って欲しいか?」
立城の耳元に囁く葵の爪先が器の中の宝珠をつつく。立城は夢中で何度も頷いた。直接、器の中に手を入れられているのに、異様な快感がある。
「立城、可愛い。まずこれから弄ろうな」
唇を舐めて嗤った葵が爪先でかりりと立城の宝珠を引っかく。絶大な快楽に立城は激しい声を上げて腰をがくがくと震わせた。
「あっ! あああんっ! あおいっ! いいっ!」
葵の腸内に精液を撒き散らしながら立城はだらしなく顔を緩めた。放尿しているかのように立城のペニスの先端から大量の精液が溢れる。葵は軽く腰を揺らして立城のペニスを根元までしっかりとくわえ込み、くすくすと笑い出した。
「邪魔な奴らは全部喰ってやるからな。ほら、中を触るぞ」
嗤いを浮かべて言った葵が立城の中にこめられている黒い宝珠に爪を立てる。
「くああああぁっ!」
立城は目を見張って痙攣のように身体を震わせた。葵がそっと宝珠から爪を抜いて手を離す。立城の胸から手を引き抜いた葵は、長く伸びた爪に絡まった黒いものを美味そうに舐め始めた。
「水輝とか言う奴も、立城のこと悪く言う奴も、全部、全部」
何かにとり憑かれたように呟いて葵が自分の爪を舐める。立城は震えながら歯を食いしばり、懸命に身を起こそうとした。すると葵が哀しそうな顔をしてそっと立城をベッドに押し戻す。
「だ、ああんっ! めっ! あおっ……うううんっ!」
「立城はおれのだ。他の誰にも渡さない」
熱っぽい声で言って葵が爪を元の形に戻し、身体を倒す。覆い被さられた立城はそこで違和感を覚えて眉を寄せた。葵の股間からペニスがなくなっている。
「んっ! あお、い、きみ、は?」
切れ切れの立城の声に応えず、葵が嬌声を上げて跳ね起きる。びくびくと脈打つ腸壁の動きをペニスに感じ、立城は目を細めた。背を反らしてしばし震えていた葵がのろのろと立城の上から退く。
「あの、佑とかいう女、大事だったんだろう?」
ベッドに手をついて息を乱しながら葵が言う。伏せているためにその表情は判らない。それを聞いた立城ははっと目を見張った。いつの間にか佑が優一郎の中に元通りに納まっている。
「佑に何を?」
ゆらりと葵が顔を上げて嗤いの形に目を細め、唇を歪める。
「肉と魂を引き剥がしてやった。ほら、そろそろ戻ってくる」
そう言って葵が身を起こす。ゆらりと宙を漂った影が葵の股間に集まってペニスを形作る。喉の奥で嗤いながら葵は自分のペニスを指で軽く弾いた。
とりあえず元に戻ったのなら問題はないだろう。そう思いながら立城は慎重に言葉を継いだ。
「葵。きみは何? 僕のものじゃないの?」
「次は誰にする? あの桜とかいう女も大事なのか。へえ、赤い女とか人形とかも大事なのか」
立城の質問に応えずに葵がつらつらと語って嗤う。立城は葵が言い示したのが自分の頭の中に浮かんだ者たちだということに気付いた。
「葵。怒るよ」
真面目な顔で立城は告げた。すると葵が嗤うのをやめて不思議そうに首を傾げる。
「何でだ? 大事なのが全部消えたら、立城はちゃんとおれを見てくれるんだろう?」
まるで邪気のない顔で葵が言う。
「ちゃんと、とは、どういう風に?」
じっと葵を見据えたまま、立城はゆっくりと身を起こした。どうやら引っかかれた傷は塞がったらしい。それに特に痛いところもない。葵は立城と交わりつつもその辺りは気を遣っていたようだ。
「だって立城、おれのこと要らないだろう?」
あどけなく笑って葵が立城の目を覗き込む。立城が何か言う前に葵が言葉を継ぐ。
「でも大事なのが全部消えたら、おれしかいなくなる。そうしたら立城はおれだけ見てくれる」
まるで幼い子供のような無邪気な顔で葵が言う。だが葵のまとう雰囲気は不気味な黒い闇を感じさせる。ここに来た時とは変わっている。
「いつ、僕が君のことを要らないって言ったの?」
「立城が欲しいのは水輝っていう奴だろう?」
そう応えてから葵は笑いながらベッドを降りた。書斎の中は大きな刃に傷つけられたように荒れている。本棚は裂け、分断された本があちこちに散らばっている。壁には深い切り傷が幾つも走っている。
「おれじゃない、おれみたいな、でもおれじゃないやつ」
口の中で呪文のように葵が言う。
「水輝も欲しいけど、葵、きみも欲しい。それじゃだめなの?」
少し上を向いて口の中で何事かを呟いていた葵がゆらりと立城を見る。その目は笑いの形になっていた。
「うそつき」
そう応えた葵の身体が少しずつ透け始める。立城は急いでベッドを降りた。
「嘘じゃない! 僕は……葵!」
伸ばした立城の手をすり抜けるように葵がその場から消え失せる。立城は呆然と目を見開いて葵の消えた場所を見つめた。
立城が追い詰められてる感ですねー。