※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 二部 光の公女   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


エロってからのビンタ 4

「とりあえずお前からは属性吸収したぞ。お前に持たせるには危なすぎるしな」

 

 そう言いながら水輝はさっさと萎えたペニスをしまいこんだ。蹴倒していた椅子を起こし、床に座り込んでいた佑をひょいと抱え上げる。それから水輝は佑を元通りに腰掛けさせた。続いて自分も席につく。

 

「それと、もうそろそろ奴が……」

 

 そう言って水輝が中空を見つめる。佑は怪訝に思いながら首を傾げた。

 

「誰、ですか?」

 

 奈月が不思議そうに言った直後、遠くから声が聞こえてきた。どこにいやがる女たらし。そんなことを誰かが叫んでいる。声はどんどん近づいてきて、やがて人の足音が聞こえてくる。水輝がおもむろに立ち上がり、くるりと振り返る。

 

「なに、呑気にしてやがる!」

「待ってたぞ、この阿呆が!」

 

 駆けてきた誰かに向かって水輝が怒鳴る。次いで水輝は右腕を振るって平手を見舞った。翠色の髪の青年が頬を張られてその場に屈み込む。

 

「いてええええええ!」

「奈月を叩いた分だ! 殺されないだけありがたいと思え!」

 

 腕組みをした水輝が青年を見下ろしながらどすの利いた声で言い放つ。佑は瞬きをして水輝と青年を見比べた。頬を押さえて水輝を睨んでいるのは、あれは確かラスティという名の龍宝珠ではなかったか。優一郎から転写された記憶を探った佑は納得して頷いた。

 

「ラスティさん、無事だったんですねっ! 良かった」

 

 奈月が胸の前に手を組み合わせて目を潤ませる。するとラスティは鋭く奈月を睨みつけて立ち上がった。

 

「常磐を返せ!」

「まだ殴るつもりか、てめえは!」

 

 奈月につかみかかりそうになっていたラスティの足に足を引っ掛けて転ばせた水輝が怒鳴る。その場にすっ転んだラスティの背を水輝が乱暴に何度も踏みつける。

 

「お、ま、え、が、馬鹿をやっている間にとっくに奴は戻ってる!」

 

 げしげしとラスティを踏みながら水輝が喚く。するとラスティは踏みつけられつつも慌てたように顔を上げた。

 

「本当にか!?」

「当り前だ」

 

 そう言って水輝が漸くラスティの背から足を退ける。ラスティはよろけつつもその場に起き上がった。

 

「あの、龍宝珠界では、既に復興が始まってるそうです。宝珠を少しずつ元に戻してるって……」

 

 おずおずとした口調で奈月が言うと、ラスティがぱっと顔を輝かせた。良かった良かったと頷くラスティの後ろ頭を水輝が容赦なく叩く。前のめりになったラスティは後頭部を押さえて水輝を睨みつけた。

 

「てめえ! 他の女と俺に対する態度、随分違うじゃねえか!」

 

 よほど痛むのか涙目になったラスティがそう叫ぶ。すると水輝は腕組みをしてふふん、と鼻で笑った。

 

「お前は女にカウントされてないからいいんだよ」

 

 そう水輝が言えば、奈月がぽろぽろと涙を零しながら言う。

 

「でも、わたしのせいでラスティさんたちにご迷惑をかけた事実は変わりません。わたし、嫌われてしまいましたよね?」

 

 涙声で奈月が言うと、途端にラスティがうろたえる。いやあの、と言葉を濁すラスティの後ろ頭を水輝がまた容赦なく叩く。

 

「いてえな! あー、ええと。常磐が戻ったんなら別にいい」

 

 叩かれたところを撫でさすりながらラスティがぼそりと言う。すると奈月が俯きかけていた顔を上げた。

 

「ラスティさん……」

 

 まだ奈月は泣いてはいるが、嬉しそうな顔に変わっている。ラスティが困ったような顔をして頭をかく。その頬はほんのりと赤くなっていた。

 

「こいつ、そっちの気があるから気をつけろよ、奈月」

 

 ぼそりと言った水輝がラスティの背中に蹴りを入れる。うわ、と声を上げて前のめりになったラスティは、必然的に奈月の胸に飛び込む格好になった。慌てたようにラスティが腕を振り回す。

 

「きゃあっ!」

 

 悲鳴を上げた奈月がラスティを突き飛ばす。慌てた声を上げたラスティを水輝が片腕に受け止めた。

 

「……おれの奈月に抱きついたな?」

「ちょっと待て! 今のはお前が!」

「支払いは高くつくぞ?」

 

 くくく、と喉の奥で笑った水輝がいきなりラスティを横抱きにする。何をするのかと思ったら、水輝は勢いをつけてラスティを天に放った。

 

「おれを護れよ! 阿呆のラスティ!」

 

 おぼえてろー! という声を残してラスティが空に消えていく。それから水輝は肩を回して椅子に戻った。

 

「賑やかな方ね」

 

 事の成り行きを静観していた佑は感想を漏らした。ああ、いつもなんだ。そう笑って水輝が冷め切った紅茶を飲み干す。いつの間にか泣き止んだ奈月がいそいそと水輝のカップに紅茶を満たす。どうでもいいが、何でポットに湯を注ぎ足さないのに次々に新しい淹れたての紅茶が注げるのだろう。

 

「この紅茶美味しい……」

 

 しみじみと呟いて佑は持っていたカップを見下ろした。赤い茶の表面が少し揺れている。のんびりと茶を啜っていた水輝が少し笑って肩を竦める。

 

「自家栽培だと。……あれは家じゃないから……自星栽培?」

 

 考えるような顔をして水輝が言う。その意味が理解出来ず、佑は首を傾げた。一人、奈月だけが嬉しそうに笑っている。佑はしばし三人で穏やかに茶を飲んだ。




やっとタイトル回収(泣)
水輝はラスティには容赦がありません。いつものことです。
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