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白との取引
薄く目を開けると白い天井が見えた。見覚えのない天井をしばしぼんやりと見つめてから、順はそっと息を吐いた。どうやらまだ生きているらしい。そのことにほっとしてから順は周囲を見回した。
やけに飾り気のない部屋だ。広々とした空間には順の横たわる大きなベッドがぽつんと中央に据えられていて、後は壁際に小さな飾り棚がある程度だ。ドアはやけに凝った彫刻が施された大きなものが設えられている。ぐるりと部屋の様子を見て取ってから、順は自分の足下に目をやった。そこには白い服を身に着けた、白い髪をした女性が二人ほど居る。どうやら順が目を覚ましたことには気付いていないようで、何やら怖々とした表情でこそこそと話し合っている。
「あーのー。どうでもいいけど、オレはいつまでこんなカッコしてなきゃなんないのかな?」
へらへらと笑いながら順が告げると、二人の女性は悲鳴を上げてベッドから飛び降りた。順は掠れた声で力なく笑ってから自分の足下を指差してみせた。順は何故か両足を大きく開かれ、膝を立てて股間を晒す格好をさせられているのだ。
壁際まで後退していた女性たちが震える声で代わる代わるに説明をしてくれる。どうやら順の体内に残っている立城の精液が問題らしい。ここは天空にある男子禁制の城で、男の匂いが少しでもするものは全てある階層から上には入れないのだという。だが順は怪我を負っていて、それを治療するためにこの城に招き寄せたのだそうだ。その話を聞きながら順はなるほど、と頷いた。要するにここでは実は男なんです、などという冗談は通用しないということだ。
順の膣内にはローターのようなものが入れられていた。この扱いもどうかと思うけど、とぼやきながら順はだるい身体を何とか起こし、自分の股間をのぞき込んだ。出し入れが自由に出来ないようにするためなのか、膣内に挿入された栓からは取り外すための紐などは伸びていない。どーすんのさ、これ。そう呟きながら順はため息を吐いた。
喋るたびに身体が疼く。順は苛々しながら女性たちが喋るのを聞いた。彼女たちはどうも自分たちとは違う時間軸で生きているらしい。喋り方も挙動もやたらとゆっくりしている。だが実際には地上と過ぎる時間は変わらないらしい。その説明を受けた順は慌てて今はいつかと女性たちに問いかけた。
あれから半日近く経っている。順は真っ青になって慌ててベッドを飛び降りた。今は呑気に股を開いて横になっている場合ではない。すると慌てたように女性たちが順を引き留めようとする。順は舌打ちをしてから二人の女性を見比べた。素早く選んだ片方の女性の腕をつかんで歩き出す。
「あの! まだ動かない方が宜しいと、長様が!」
「いーから。オレ、風呂入りたいんだよね。風呂。判る? 身体、洗ってくれるんしょ?」
白琅渉と呼ばれるこの城を形成する白龍神が順につけている、ということはそれなりのことは了解しているという意味だ。そう考えながら順は女性に風呂に案内させた。
どこかの温泉か、というくらい広々とした浴場に順はさっさと服を脱いで入った。後から白い女性が慌てたように付いてくる。どうやら順の我が侭に付き合う気にはなったらしい。女性はちゃんと衣服を脱いでいる。順は浴室に姿を現した女性を頭からつま先までまじまじと観察した。白い髪に灰色の瞳をした女性は視線から逃れるように自分の身体を隠そうとする。
「別に隠さなくてもいいしょ。つーか、マジ急いでるから、余計なことしないでくんない?」
苛立ちをこめて言ってから順は自分の身体を隠そうとしていた女性の腕をつかみ、身体の前から退けた。艶やかで滑らかな肌には傷一つついていない。形のよいバストの先には愛らしい薄紅色の乳首がついている。カップはCからDと言ったところか。ウエストは細くくびれ、ヒップは柔らかな丸みを帯びている。すらりと長い手足、それなりに整った顔の造作を次々にチェックしてから、順はまあいいでしょ、と頷いた。
「あの……? お客人?」
「悪いね。オレ、気は短いんだ」
それだけ言ってから順は右腕を揮って女性の胸に手を突き入れた。悲鳴すら上げる間もなく、女性が目を見張って息を詰める。どうやらこの女性は生まれてそれほど時を経てはいないようだ。よし、と呟いてから順は浴室のタイルの上に女性を押し倒した。悲鳴を上げてもがく女性の口を素早く手で塞ぎ、胸に唇を這わす。順は深く息を吸ってから女性の胸に頭を突っ込んだ。痛みと苦しみに暴れていた女性がやがて身体の動きを止めて脱力する。順は首まで女性の器に潜り込んだところで目を開いた。どこまでも続くと思える闇がそこには広がっている。闇の中には八つの輝きが浮かび、ゆらゆらと揺れている。音のない世界。順は耳の痛くなるような静寂にしばし浸ってから、一気に女性の器の中に身を滑らせた。順の姿が女性の胸から吸い込まれた後、脱力していた女性が引きつけのように何度か身体を跳ねさせる。
「よし。こんなもんか」
それまでぎこちなく身を揺すっていた女性がそう言ってから立ち上がる。のんびりと周囲を見回してから女性は少しだけ眉を寄せた。名前、と呟いてからしばし思案する。
「明音でいっか。代用品だけど」
呑気に言ってから明音は浴室の天井を仰いだ。もう、この女性は生きては居ない。いつもなら中身を誰かに食わせるのだが、今はその暇はない。明音は天井に向かって声を張った。
「ここで暴れまくるよかましっしょ? 道、開けてよ」
幸い、力は女性の分を吸収してかなり戻っている。明音は指を鳴らして服を身にまとった。こんなもんか、と一人で納得している間に城が微かに震える。明音は舌打ちをして口元に薄い嗤いを浮かべた。
「……ほーん。いいよ? 別に。何なら手当たり次第に食い尽くして、ついでに天輝ちゃんもやっちゃおっか?」
剣呑に明音が告げた直後、閉じていた空間の端に僅かな亀裂が生まれる。それを感じ取った明音はほんじゃ、と軽く手を上げてその場から転移した。
順が相変わらず無茶をしています。
というか、流れるように殺しましたねw