※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 二部 光の公女   作:伊駒辰葉

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こんなはずでは……。
エロシーンはありません。……え、自慰はどうなるんでしょうか。
事後というか、やらかした後です。


桜はどんどん残念になっていく 1

 視界が開けてすぐに目に留まったのは仏頂面のラスティだった。奈月はラスティに駆け寄ろうとしてはっと目を見張って慌てて周囲を見回した。ベッドに横たわっていた水輝が欠伸をしながら身を起こし、床に横になっていた佑が頭をかきながら身体を起こす。

 

「うわっ、つめてっ! 死人かよ、おれは」

 

 声を上げて言ってから水輝が確かめるように自分の身体のあちこちに触れる。どうやら眠っている間に水輝の身体は随分と体温が下がっていたらしい。

 

「水輝さんっ! こういう時は抱き合って暖めるのが定番よ!」

 

 佑がいいことを思いついた、という顔で言って水輝に駆け寄って抱きつく。おいおい、と苦笑しつつも水輝は片腕で佑を抱いてベッドを降りた。どうやら佑の身体もかなり冷たくなっていたらしい。お互いを触った水輝と佑が顔を見合わせて冷たいと口々に言う。

 

「てめえらはとっとと風呂にでも行きやがれ。目障りな」

 

 ラスティが毒づいてそっぽを向く。どうやらラスティはかなり機嫌が悪いらしい。へえへえ、と言って水輝が佑の肩を抱いたまま、部屋を出て行ってしまう。それを見送ったラスティがふん、と鼻を鳴らして腕組みをする。

 

 ラスティはソファに腰掛けていた。聞けばこの屋敷全体を結界で覆っているらしい。何度か来たらしい魔を問答無用で叩き返したのだという。ラスティの話では抜け殻同然だった水輝や佑の身体は魔にとって格好の力の源になるのだという。

 

「ラスティさん、ありがとうございました」

 

 奈月はおどおどしつつも頭を下げた。するとラスティが嫌そうな顔をしてそっぽを向く。てっきり怒られるものだと思った奈月が身構えたところに、ラスティはぼそりと言った。

 

「……叩いて悪かった。ごめん」

 

 拗ねたような顔で横を向いたまま、ラスティが詫びてみせる。それを聞いた奈月は驚きに目を見張った。

 

「そんな、ラスティさんが謝る必要はありません! わたしは、叩かれて当然のことをしたんですから」

 

 そう言いながら奈月は自然と俯いた。例え常磐が戻ったとしても、してしまったことには変わりないのだ。あの時のラスティの悲しみや怒りは本物だったのだろう。

 

「いや。俺も浅慮だった。奴らが止めるのも聞かずに一人で突っ走って」

 

 そこまで言ってからラスティは顔をしかめてため息を吐いた。どうやらラスティはこちらの世界に来るのを守護神たちに止められたらしい。だがそれを振り切ってラスティは一人でこちらに乗り込んできたのだという。

 

「取り返しのつかないことは無いと、わたしは信じたいです」

 

 胸の前に手を組み合わせて奈月は告げた。するとラスティが少しだけ笑って頷く。

 

「やり直しはきく。俺もそう信じたい」

 

 そう言ってからラスティはよし、と膝に手を当てて腰を上げた。解けていた髪を手櫛で梳いてから、ラスティは長い翠色をした髪を編み始めた。手早く三つ編みをしてから先を紐で留める。

 

「でな? 悪いんだけど、ずっと煩いやつがいてな」

 

 唐突にラスティがそう言う。奈月は不思議に思って首を傾げた。この間までのように何かの気配を読むことは難しい。ラスティの言う意味を理解出来ずに奈月は何度か瞬きをした。

 

「えっと、比喩的な意味で、ずっとラスティさんに迷惑をかけているとか?」

「まあ、ある意味では迷惑だな。ずうっとあんあん言ってるんだからな」

 

 困ったように笑いながらラスティが肩を竦める。それを聞いた奈月は本格的に判らなくなって首を傾げた。

 

「とにかく、一階の奥、隅っこにあるトイレに行ってみてくれ。行けば判る」

 

 笑いを堪えているのか口許を手で覆って肩を揺すりながらラスティが言う。奈月は不思議に思いつつも頷いて部屋を出た。歩いている途中でふと通りかかったメイドがお食事の準備は致しますか、と問う。奈月はみんなの分の食事を頼んでから急いで階下に向かった。

 

 一階の隅にあるトイレに近づくと妙な声が聞こえてくる。奈月は不思議に思いながらゆっくりと廊下を進んだ。進むうちに次第にその声は大きくなる。桜さん? 内心でそう呟きながら奈月は問題のトイレの前で足を止めた。そっとドアノブを握って静かにドアを開く。

 

 洋式の便器に座って股間に手を突っ込んでいた桜が息を飲んで動きを止める。桜は片手に写真の束を握り、もう片方の手を股間に突っ込んで自慰をしている最中だった。胸もはだけて乳房が丸見えになっている。

 

「ひ、ひ、ひ、姫様!?」

 

 ひっくり返った声で叫んで桜がわたわたと慌ただしくスカートを直し、胸を隠す。その拍子に写真が一枚、束の中からはみ出して落ちた。受け止めたそれを奈月はじっと見下ろした。写真には翠が化けた時の桜と奈月が抱き合っている姿が写っている。

 

「あの、えっと、桜さん、そのっ、わたしっ!」

 

 奈月は真っ赤になって手を振り回した。だが慌てる奈月に負けない慌てぶりで桜が写真を胸の間に納める。

「い、いえ! あの、す、すみません、ごめんなさい! どうしても、あの、姫様のことを想うと、堪らなくて、いえ、何を言っているのでしょうわたくしは! とにかくですね!」

 

 早口でまくし立てながら桜が必死の面持ちで身だしなみを整える。トイレットペーパーをがらがらと盛大に引き出して、桜は愛液で汚れた場所を拭き始めた。

 

「よかった……いつもの桜さんだ」

 

 じわりと目に涙を浮かべて奈月は桜に抱きついた。わわわ、と慌てた声を上げた桜が手を振り回す。握られていたトイレットペーパーが賑やかな音を立ててさらに引っ張り出され、広いトイレの中は見る間にトイレットペーパーだらけになった。

 

「ひ、姫様、姫様! し、刺激がちょっと強すぎ……はう」

 

 力ない声を上げて桜が鼻血をふく。奈月は慌てて顔を上げて持っていたハンカチで桜の顔を拭いた。

 

「あの、わたし知ってますから! 桜さんがわたしの事を好きだって」

 

 真っ赤な顔をして奈月はそう訴えた。すると桜がぼんやりとした顔をして頷く。

 

「それは光栄の至り……って、はっ! な、何ですって!?」

 

 急に声を裏返らせて桜が喚く。その直後、桜はまた力ない声を上げて鼻血をふいた。奈月は慌てて桜の鼻をハンカチで押さえた。真っ白だったハンカチに血の染みがじんわりと広がる。

 

「わたしも、桜さんのことが好きです。水輝さんの次にですけど」

 

 ぼそっと奈月が言うと、桜はがばと身を起こして忙しなくトイレットペーパーを引き寄せて顔を乱暴に拭った。

 

「わっ、わたくしは姫様のことが大好きです! 青龍王には負けませんとも!」

 

 血だらけのトイレットペーパーを握りしめて桜が声高に言う。




桜は前はすげえ使える使い魔だったんですけどね……。
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