※この作品はR-18です。

まやかしの終わり 二部 光の公女   作:伊駒辰葉

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エロシーンはありません。


難攻不落にまたチャレンジ!(by.透) 2

「でっ、でも! 優一郎様はわたくしを物扱いしたことはありませんわ!」

 

 よほど焦ったのか、要が引っくり返った声で言う。透は怒った表情を作って要を見た。

 

「いや、逆だ。徹底して物扱いしてたからこそ、説明しなかったんだろう。物相手に説明する必要は無いって考え方もあるからな」

「そんな……」

 

 ショックを受けた顔をして要が小声で呟く。だって、と要は小さな声で言葉を継いだ。

 

「だって優一郎様はいつもあんなに優しく抱いてくださったのに……」

 

 優一郎に抱かれた時のことを思い出しているのか、要が切なそうな顔をする。透は少し目を細めて要を見つめた。

 

「優一郎の心の中が見えるのか? おまえには」

 

 透が訊くと要がはっとしたように目を見張る。やがて要は力なくうなだれた。そうでしたの、とぽつりと呟いてから要は頭を振って顔を上げた。

 

「優一郎が他のヒューマノイドを扱ってる姿を見たことがあるだろう? ヒューマノイドは道具だという考え方を念頭に置いた上で、思い出してみろ」

 

 透は要に顎をしゃくった。すると要が考えるような顔をして少し上に視線をずらす。しばし黙ってから要は眉を寄せた。

 

「多輝も斎姫さんも優一郎様に優しく接して頂いていたと思いますけれど?」

 

 要は少し首を傾げてから、困ったような顔をした。どうやら優一郎が他のヒューマノイドに接する態度が各々で違っていることに気付いたらしい。

 

「多輝は、あいつは別だ。優一郎の一番はな、多輝なんだよ」

 

 嗤いを浮かべて透はさらりと言った。すると要が眉を寄せて透を睨む。だがすぐに要の顔からは険が消えた。ふう、と息を吐いて肩を落とした要はつんとすました顔で言った。

 

「知ってますわ。結局、多輝はどう転んでも女ですもの」

 

 特に悔しさもこもっていない要の言葉に透は少しだけ首を傾げた。要はもう、優一郎の一番になることにこだわっていないのかも知れない。そんなことをつい思ってから透は慌てて自分の気を引き締めた。

 

「今、向こうの様子がどうなってるか、ダイジェストで状況編集したビデオだ。今届いたばかりで、俺も見ていないんだが、一緒に見るか?」

 

 透はそう言いながら一枚の光ディスクを白衣のポケットから取り出した。これは総一郎が編集して作ってくれたものだ。ええ、と要が頷く。透は部屋の隅にあった端末にディスクを仕掛け、壁に設えられている画面にビデオを映し出した。

 

「んまあ!」

 

 ぱっと画面が明るくなった瞬間、要が声を上げる。まず映し出されたのは優一郎だ。要は嬉しそうに顔を輝かせていたが、やがてすぐに険しい顔になった。優一郎は多輝の安全に神経質なまでに拘っている。要を貸せ、という透の要望に快諾する優一郎の様や、要の脳が納まったカプセルを抱えて必死で逃げ回る透の姿、斎姫をあっさり順に抱かせようとする優一郎の様子などが画面には映し出された。向こうの世界の彼らの状況が端的に判るように編集されたビデオだ。

 

 やがて画面が暗くなる。要はしばしぼんやりとディスプレイを見つめていた。それからのろのろと顔を動かして透を見る。

 

「……わたくしは……優一郎様にとって何ですの?」

 

 小声で言った要の顔は泣きそうに歪んでいる。やはり口ではああ言いながらも、要はまだ優一郎のことを好いているのだ。

 

「だから、最終決戦兵器だろ? おまえを戦力化しておいたら、もし、多輝が危なくなった時に役に立つかもしれない。そう考えて俺に任せたんだろうな」

 

 そう言って透は肩を竦めた。要が唇を震わせて言葉を継ぐ。

 

「わたくしは、多輝の……ただの盾ですの?」

 

 そう言ってから要は大きなため息を吐いた。見た目にもはっきりと消沈した要を見つめ、透は真顔で言った。

 

「盾じゃなくて矛だろうが……まあ、どっちにしても道具であることには変わりないな」

「わたくしはそんな立場を望んだ訳じゃありませんわ!」

 

 冷静に答えた透に要が声を張る。だがすぐに要はごめんなさい、と透に詫びた。八つ当たりだとすぐに判ったのだろう。

 

「本当にそうか? 優一郎はおまえを最強の兵器にしてやるって言ったんじゃないのか? 恋人にしてやるとか、言われたのか?」

「結果の判っているレースは確かに面白くありませんわ。だから、わたくしはその他のヒューマノイドと同じように、大勢の中の一人でいいと言いましたわ。ええ、言いましたわよ!」

 

 早口でまくし立ててから要が深く息を吸って怒鳴る。

 

「そうでも言わなければ、優一郎様はわたくしを傍には置いてくださいませんもの!」

 

 プライドの高い要が顔を歪めて感情を吐露する様を透は冷静に見つめていた。要は本当は優一郎に好かれたいと望んでいたのだろう。だが、優一郎は要を一番に好きになることは無理だと言ったのだ。つらつらと話をする要の言葉の中から透は事情を何となく読み取った。

 

「どうしても、おまえを傷つけずに済ますわけにはいかないんだな。すまね。それに、改めて見ると俺、スゲー格好悪かったな。佑にあっさり殺されそうになるわ、おまえの脳カプセル抱えてパニック起こして逃げ回るわ……」

 

 そう言いながら透は少し俯いた。するとそれまで消沈した顔でうなだれていた要が慌てて首を横に振る。




透は優一郎と要の関係性をはっきりさせておきたかったようです。
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