ヒューマノイドですのでデフォルトなんですよね(汗)
そういう意味ではエロシーンがあります。
去り際に見た二人の姿を思い出して優一郎は思わず苦笑した。学も文も、訪ねた時よりずっと元気そうに見えた。身体はまだ本調子ではないだろうが、あの分ならすぐに元通りの元気な二人に戻るだろう。
学の元を立ち去った優一郎は今度は吉良瀬トータルソリューションを訪れていた。渚を欠いた吉良瀬トータルソリューションは今現在、殆ど機能しない状態に陥っている。辛うじて動いている者に出された茶を啜ったところで、優一郎は真面目な顔をして正面に腰掛ける道代を見た。
「ご覧のように、半数の者がレズプレイや自慰を繰り返すのみで、業務に就けない状況になっています。技術部は女性器ユニットの修理や交換作業でフル操業状態です」
接客用の笑みをひと欠片も浮かべる余裕がないのだろう。口早に言う道代の表情は暗い。先に手渡された端末の画面を覗き込んでから優一郎は納得顔で頷いた。渚を欠いた時点でこうなることは予測出来た。
「なんとか誤魔化していますが限界です。龍神という存在の大きさを思い知りました。渚さまが戻られなければ、あと一週間で完全に破綻するでしょう」
失礼、と断りを入れてから道代がスカートの中に手を突っ込み、自慰を始める。優一郎は画面に映し出された各ヒューマノイドの状態と道代の様を見比べてから頷いた。確かにこのままでは吉良瀬トータルソリューションは近いうちに崩壊してしまうだろう。これまでここにいるヒューマノイドたちは渚の力で維持されていたのだ。
だが今、渚はここにはいない。水輝の罠に嵌って意識を捕らえられ、半ば廃人と化しているのだ。そのため、渚は祐と共に今は天空の城の預かりになっている。
「優一郎様」
無意識に考えに耽っていた優一郎は道代の呼びかけに我に返った。道代は自慰をしつつも真剣な顔をして優一郎を見つめている。
「渚さまの容態はどうなのでしょうか? まだ、意識は戻られませんか?」
問われて優一郎は天空の城で見かけた渚のことを思い出した。渚は眠るようにベッドに横たわっていたが、どういうものを意識で見ているのか、股間ではしっかりとペニスがそそり立っていた。それを怖がって誰も世話をしたがらないのだという天輝の愚痴も思い出す。
「ここは渚さまの城です。そして、私たちは渚さまを主として仕えています。渚さまをこちらで看病するわけにはいかないのでしょうか?」
道代の懸命な訴えかけに優一郎は難しい顔で考え込んだ。確かに道代たちにしてみれば、例え倒れていても渚が傍にいる方が安心出来るのだろう。何しろ彼女たちは渚をマスターとして登録しているのだ。マスターの不在は何よりも大きな精神的な負荷になる。それはヒューマノイドなら当然の反応だ。
「渚さまが再び襲われることを危惧していらっしゃるのですか?」
思っていたことを問われて優一郎は道代を見つめた。手にしていた湯飲みをテーブルに戻してソファの背もたれに寄りかかる。通された応接室は静まりかえっており、壁にかかる時計の針の音がやけに大きく聞こえる。
道代の指摘したことも優一郎が気に掛けていることだった。詳しい事情はまだ判明してはいないが、渚は確かに水輝の罠に嵌ったのだ。もしもここに戻した後、また水輝が狙わないとも限らない。渚はもう安全であるという保証はどこにもないのだ。
「護衛に割けるような戦力があればいいんだけど……」
どうすれば、と呟いて優一郎は考えを巡らせた。だが地上で誰かが確実に護衛が出来るなら、多輝を天空の城に預けなくても良かったのだ。そこまで考えて優一郎は頭をかいた。道代の言うこともよく判るが名案らしいものが思い浮かばない。
幸い、立城とは話がついているから、立城自身が多輝や渚をどうにかすることはないだろう。だが肝心の水輝にはあれ以来会ってすらいないのだ。
「緊急時に時間稼ぎができて、天空に避難させられるだけの体勢を整えれば良いのですよね?」
相当参っているのか、道代の顔には暗い影が落ちたままだ。早い口調で言われた優一郎は眉を寄せて考えた。道代の言う通りの状況が用意できれば問題はないだろう。
「そうだね、それが可能なら。堅固な城だから、防護は十分だけど……」
相手は搦め手を使ってくるから。そう続けてから優一郎は考え込んだ。相手は水輝なのだ。本気でかかってきたらどうなるか判らない。下手をすると渚は今より酷い状態に、いや、もしかしたら命を絶たれてしまうかも知れない。
そこまで考えて優一郎は思わず目を見張った。今の問題は水輝一人ではない。本当に考えなければならないのは、現在の世にはびこりつつある魔の対処法なのではないか。立城はこれから起こる惨事を津波のように押し寄せてくると表現してみせた。水輝より何より、そちらの対処を考えなければならないのに。
雷龍神を殺していいか? あの時に聞いた水輝の言葉を思い出して優一郎は唇を噛んだ。大丈夫と立城に言われても、あの時の言葉は胸に突き刺さったままだ。
「優一郎様。この会社は吉良瀬という巨大組織の神経のようなものです。それが機能停止したらどうなるか良くお考えください」
リスクはゼロにすることはできないのです。そう続けてから道代がテーブルに手を伸ばしてリモコンを取る。道代がリモコンを操作すると応接室の壁に掛かっていた大きなモニターにある光景が映し出された。画面に映ったのは片手で自慰をしつつ、懸命に通信業務を捌いている通信オペレーターのヒューマノイドたちの姿だった。広々とした通信室の席の半分ほどが空いてしまっているのは、渚がいないために正常に稼働出来ないヒューマノイドがいるためだろう。
「わかった。渚さんをここに戻そう」
最悪の場合でも、渚のペニスさえ使い物になればここは機能する。そう算段をつけて優一郎は頷いた。すると道代の表情が僅かに明るくなる。
「ご決断に感謝します。それから、これは伝言なのですが……」
言葉尻にかけて声を落としながら道代が言う。優一郎は怪訝に思いながらも道代を促した。
「如月の御大から、そろそろ顔を見せに来てもバチは当たらんと思うがのう。だそうです」
吉良瀬の関係者には御大と呼ばれる泰蔵のことを思い出して優一郎は苦笑した。確かに久しく泰蔵には顔を見せていない。
「わかった。渚さんを連れ戻したら向こうの屋敷に顔を出すよ。今日明日にはお邪魔すると伝えてもらえるかな?」
いつになったら落ち着けるのだろう。そんなことを思いつつも優一郎はそう返答して立ち上がった。道代も合わせて立ち上がる。だが手は変わらずスカートの中に突っ込まれたままだ。
何しろ天輝が愚痴をこぼしていたくらいだ。渚は天空の城に迎えに行けばすぐにでも返して貰えるだろう。泰蔵のところには帰りの足で顔を出せばいい。道代とそう話を付けてから優一郎は吉良瀬トータルソリューションを出た。
西の空が茜色に染まっている。オフィスビルを出たところで優一郎はふと、空を見上げて目を細めた。
優一郎は苦労性。
そういう意味でやはり透とは兄弟なのかも知れないw