……すみません。エロシーンはほぼありません。
まず女性でなければならない。続いて性的行為を受け入れられなければならない。被虐的嗜好がなければならない。これら全てはヒューマノイドを維持するための絶対不可欠な条件だ。何故ならヒューマノイドはストレスと呼ばれる記憶のギャップを性的快楽により解消しなければならないからだ。
記憶のギャップとは機械と生身の脳の記憶のずれを指す。このずれを放置したままにしておくと、やがてヒューマノイドは破綻する。
「ええ。一応は判っていると思いますけれど」
少し不安のこもった声で言ってから要は確かめるように言った。
「ストレス解消のために性的奉仕を受ける必要があるんですわよね?」
要が首を傾げて言う。透は真面目な顔で首を横に振った。
「逆だ。奉仕し支配されるのはおまえのほうだ。そうでなければ、維持は難しい。優一郎は、自分に対する恋愛感情を利用して上手く誤魔化していたが、長期の不在で問題が顕在化した」
そこで透はその先を言っていいものかどうか考えて口ごもった。驚いた顔をした要がやがて困惑に顔を歪め、問題とは何ですのと問う。
「おまえと、その……あいつの最近の関係を見て不安に思ったんだ。俺は以前おまえと敵対していたが、おまえはあのような理不尽なイジメのような行為を他人に強要するような性格では決して無かった」
白銀に対する要の態度を思い出しながら透は告げた。要はきっと本当に白銀を好いていたのだろう。だが、白銀は要のペットであることを享受していた感がある。口では彼氏になりたいとは言っていたが、積極的に要に意見することもなく、ただ言いなりになっていたようだ。そんな白銀に対して要は理不尽なことを命令していたような気がする。白銀が例え龍神だとしても、その力をまともに使えていないことは要なら知っていただろう。なのにあの大きなクーラーをたった一人で運ぶような命令をしたのだ。
「そう……ですの……。わたくし、白銀を苛めていたんですのね」
小声で要が呟く。落ち着かせるつもりで透は要の肩に手を乗せた。
「今なら冷静に考えられるだろう。客観的に行為を思い返してみろ?」
要にとって辛いことだとは思ったが、透はそう言った。要が自分が何をしていたのか、それをまず自覚させなければならない。そうでなければ要の心には白銀のことが曖昧になってしまう。今はそれでもいい。だが、先で気付いた時に要はきっと積み重ねた時間の分、余計に辛い思いをするだろう。
黙りこくっていた要がそうですわね、とぽつりと呟く。それから要は力なくうなだれた。
「謝ることも出来ませんわ」
小声で言ってから要が疲れたようにため息を吐く。
「要、おまえのせいでは無い。それはお前がヒューマノイドという存在である以上仕方ないことだからだ。優一郎が居ない状況で、おまえは自分を支配してくれる相手を求めた。それがおまえの精神を歪ませ白銀に対する態度をおかしくしたんだ」
「そんな……」
ゆっくりと話す透を見つめる要が目を見張る。だが要はやがて俯いてそうかも知れませんわね、と呟いた。
「おまえの、体内に蓄積されたデータを分析して、客観的に分析も終わっている。おまえは支配者を求めている。身も心も任せられる絶対的な存在をな」
透ははっきりとした口調で告げた。すると要がのろのろと顔を上げて透を見つめる。それから要は少しだけ笑った。
「わたくしのこと、何でもご存知ですのね。変ですわ。わたくし、あなたには」
そこまで言ってから要が唇を尖らせる。透が促すと要は視線を逸らしてぼそぼそと言った。
「みっともないことばかり言っている気がしますわ」
照れたような困ったような顔をする要を見つめて透は何度か瞬きをした。もしかしてこれは拗ねているのだろうか。初めてみせた要の表情に透はしばし見入っていた。
「おまえを、一生、愛してやる。もちろん、結婚もする。だから、おまえは俺に道具として仕えろ」
「……わたくし、本当は無様ですわよ?」
頬を染めて要が小声で言う。珍しく年相応の安心した顔をしている。いつもはきっと要は肩肘を張っているのだ。
「おまえの無様な姿を決して他人に見せはしない。俺だけがじっくり鑑賞してやる」
真面目な顔で透は告げた。要が透を見つめ、やがて目を潤ませる。泣きそうに顔を歪めて要はこくんと頷いた。それからおずおずと腰を動かし始める。台の表面にぎこちなく股間を擦りつけ始めた要を見て透は眉を上げた。
「長引かせてすまなかった。それではいくぞ」
深く息を吸いながら透はびしりと要を指差した。
「セックスシステム、プログラムワン駆動! 出力五十パーセント!!」
透は声高に宣言した。すると透の声を音声認識した要の機体内でモーターが噛みあう音が鳴る。
「あんっ!」
愛らしい声を上げた要が台に上体を伏せ、尻を高く持ち上げる。尻を高く上げた格好で要は卑猥に腰を動かし始めた。膝をついて足を開いた要の腰が男を誘うようにくねる。
透はベッドに乗って要の足元に回り、ドレスを大胆にめくり上げた。ショーツを穿いていない要の股間が丸見えになる。
「メカマンコ、オープン!!」
透が声を張ると、要の陰唇が小さな機械音を立てて開き始めた。いやぁ、と真っ赤な顔をして要が弱々しく首を振る。
「恥ずかしいですわっ」
肩越しに透を振り返りながら要が泣きそうな顔をして言う。
「可愛いぞ。要。それと、今から俺のことは名前に様をつけて呼べ」
「なっ、何でわたくしが吉良絵美佳に様をつけなければなりませんのっ!?」
慌てたように要が言う。透がじろりと見ると、要は慌てて口を噤んだ。それから恐る恐るといった態で言う。
「吉良絵美佳様?」
それを聞いて透ははたと思い至った。要には一度名乗った覚えはあるが、きっと要は絵美佳の名の方を気にして透の名を忘れているに違いない。先のビデオの中で呼びかけられる場面もあったが、要にしてみれば透はまだ吉良絵美佳と言う名前なのだろう。
「俺の名は木村透だ。まあ、すぐに如月透になるのだろうが」
「木村様で宜しいんですの? それとも透様ですの?」
でもわたくしは呼び捨てにされているのに、と要が少し不服そうに唇を尖らせる。
「名字は要らん。要、不服か?」
透はにやりと笑ってみせた。あん、と掠れた声を漏らした要の膣口から透明なものが伝い落ちる。
「判りましたわ、透様」
うっとりとした目をして要が言う。
「それでは、行くぞ」
そう声をかけて透は要の身体に覆い被さって口づけした。
白銀不憫。
ですけども、白銀もちょっとどうなのよ? という感じだったので。
あ、白銀というのは要が連れ回していたペット(のような男)です。
龍神のひとりではありましたが、記憶をなくしていてパンピー状態で、しかもあまりにも鈍くなっていたのでどうしようもなかったというか。
しかも機械が苦手だったのでヒューマノイドに拒否感がありました。
前はぜんぜんまともだったんですけどね……記憶がなくなるとこうも酷くなるのかと思いました(泣)