※この作品はR-18です。

TSしたからエロ配信で楽して暮らそうと思ったのに姪っ子がエッチないたずらで邪魔してくる   作:月見ハク

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第1話 引きこもり美少女ロリのモーニングルーティン

 起きたらもう昼過ぎだった。うん、これでもいつもより早起きだ。

 

 大きなシングルベッドで体を起こし、軽い足取りで洗面所へと向かう。一人暮らしの1DKのアパートは狭い。狭いのに、やたらと歩数が掛かる気がする。

 

 洗面台の下にはネットで買った踏み台が置いてあって、オレは躊躇なくそこに乗る。この半年間で体に沁みついた動作だ。踏み台に乗らないと、鏡に自分の姿が写らない。

 

 寝ぼけ眼で鏡を見る。そこには息が止まるくらいの美少女がいた。しかもピンク髪の美少女が。

 

「うわぉっ……ってオレか」

 

 起きたばかりだというのに透き通った猫なで声。甘ったるい声色で耳が溶けそうになるが、すぐにこれは自分の声帯から出た音なのだと、脳が認知の辻褄を合わせようとする。

 

 毎度驚かせやがって、と鏡の中の美少女がジト目で睨みつけてくる。我ながらそんな表情すら可愛いから困る。

 

 目鼻立ちの整った顔は、千年に一人のアイドルと呼ばれてもおかしくない。

 

 クリっとした瞳は常に潤んでいるし、パチパチと音が出そうなほどに長いまつ毛は寝起きだというのに綺麗にカールを巻いて上向いている。

 

 すっと通った鼻筋に、色素は薄いが瑞々しいプルプル感のある唇。頬はちょっとだけぷっくりしていて、見るからに柔らかそうで、実際に柔らかくて、それがあどけなさというか親しみやすい可愛らしさを印象付けている。

 

(相変わらず間の抜けた顔してるよなぁ……)

 

 アイドルで天下取れそうな造形なのに、中身がオレのせいか、なんというかこう……バカっぽく見えるのは気のせいじゃないだろう。

 

 そう、半年前までオレは28歳の引きこもり童貞だった。

 

 あるとき高熱でぶっ倒れ、飲まず食わずで一週間ほど寝込み、目覚めるとオレは美少女の姿になっていた。

 

 風呂場の鏡の前で素っ裸になったときのことを、オレは今でも忘れない。まさに女の子というような小柄でほっそりとした体。股のあいだにあるはずのものはなく、そこはつるんとした割れ目になっていた。代わりに胸にはささやかな膨らみが二つ。推定AかBくらいの小さい、でも綺麗な形のおっぱいがあった。

 

 女の子の——それもこんな美少女ロリの裸を見るのはもちろん初めてだったので、思わずじいっと凝視してしまった。驚きと、それを上回る興奮で「え?」「あぇ?」と一時間くらい腑抜けた声を発していた気がする。

 

 そんな戸惑う様子がなんかこう、エロくて……見ちゃいけないのに視線が外せない禁断のエロスを感じて、でもそんなエロい表情をしているのは正真正銘オレで、死ぬほど恥ずかしくて、そんな恥ずかしがってる姿もエロくて——。

 

 てな感じで、危うくオレは女体化初日に自我が崩壊しかけた。

 

 風呂場で二時間ほどあぅあぅしてから全裸で部屋に戻り、ようやくパソコンで自分の身に起きたことを調べてみた。

 

 TSと呼ばれる現象で、何万人に一人、前例のほとんどない症状だとネットには書いてあった。少ないながらも専門に扱っている病院もあるらしく、相談窓口の電話番号も載っていた。

 

 オレはもちろんその番号に連絡する……なんてことはしなかった。

 

 当たり前だ。オレは自慢じゃないが極度の人見知りで重度のコミュ症なのだから。

 

 昔から、とにかく人が恐かった。きっかけはもう忘れた。物心つくころには人と目を合わせるだけで挙動不審になるコミュ症が完成していた。親にせっつかれてバイトの面接を申し込む——電話を掛けようとするだけでお腹が痛くなるほどに。

 

 おかげで28年の生涯でまともに口が聞けるのは親のほかには、年の離れた姪っ子だけという有り様だった。

 

 そんなオレが一人で駅に向かい、電車に乗り、病院に行き、受付をして、医者と対面するなんて難易度の高いミッションをこなせるはずもないのだ。

 

 幸いなことに、オレは一人暮らしのボロアパートで親の仕送りだけを頼りに日々を生きているごく潰しだ。つまりは一歩も外に出なくてもオレの生活は完結している。親とはメールで金の無心をするくらいのやり取りしかなく、もう何年も顔を合わせていない。

 

 誰とも会わず誰と話こともない人生。なら体が美少女になろうとも生活はこれまでと変わらない。一日中、趣味のゲームに没頭して引きニートを謳歌するのみ。

 

 普通だったらこの見てくれを生かしてアイドルデビューしたり、第二の人生をエンジョイしたりするのだろうがオレには無理な話。結局、姿が劇的に変わろうとも中身は変わらないのだ。

 

「はぁ……」

 

 鏡の中の美少女が、今度は悩ましいため息をつく。

 

(くそ……かわいいな)

 

 一度、鏡の自分と唇を合わせてみたことがある。そんなオレのファーストキスは、顔が真っ赤になるほど背徳的なものだった。背徳的すぎてこれはマズいと思ったオレは、それ以来そういうことはしていない。

 

 何度か裸で鏡に向かいオナニーを試みたこともある。おっぱいを軽く揉んでみたら体に電流が走った。「んぁっ」と信じられないほどエロい声が出て、全身を味わったことのないゾクゾク感が駆け巡った。あまりの衝撃に目から涙がこぼれる。

 

 本能的にこれはヤバいやつだと察した。この快感を知ってしまったらもう戻れない。禁断の扉の先に進んだらもう引き返せない。そんな物騒な扉は開けないに限る。そう、オレは昔からビビりだった。

 

 調べてみると、TS症の症状として、ホルモンバランスの変異による体の過敏化が報告されているらしい。五感が敏感になり、要は感じやすくなってしまうのだ。

 

 美少女ロリで、おまけに敏感体質。

 

 これも、俺が絶対に外出しない理由だ。こんなエロ要素増し増しの子が外を出歩いたりなんかしたら、たちまち痴漢に遭うか最悪さらわれてしまう。この世は変態ばかりなのをオレは知っている。男に触れられるのはもちろん、エロい目で見られるなんて想像しただけでゾッとする。

 

 ぶるりと体が震えたのをごまかすように、オレは顔を洗った。

 

 といっても顔にパシャっと水を掛けるだけ。これもたんなる景気づけに過ぎない。女体化したオレの肌は、一切のケアを必要としない。いつもツヤツヤでなめらかで柔らかくて、まるで赤ちゃんの肌みたいにきめ細かい。

 

 唯一オレの女体化を知る姪っ子いわく、体からは常にミルクのようないい匂いがする……らしい。

 

 ——だからってシャワーをサボっちゃダメだよ。

 

 姪っ子にいわれた言葉を思い出し、のそのそと風呂場に行く。

 

 さっとシャワーを浴び、水分を吸ったピンク髪をわしゃわしゃとタオルで拭いた。このピンク髪もTS症の影響らしい。乾かさないと姪っ子に怒られるのだが、毛量が多くてドライアーを掛けるだけで三十分以上かかってしまう。

 

「メンドいなぁ……今日はいっか」

 

 今日はと言いつつほぼ毎日なのだが、自然乾燥に委ねることにする。姪っ子が来るのは週に二回くらいなので、そのときだけ頑張ればいい。どうせ放っておいても不思議なことに髪はごわごわにならないし、いつの間にかサラサラふわふわな触り心地に戻るのだ。

 

「さーて、ゲームしよ」

 

 今日も自堕落なルーティンをこなすべくパソコンに向かう。

 

 小腹がすいてはいるが耐えられないほどじゃない。もともと食が細かった上に、今は胃袋が小さくなったおかげで余計に食事に頓着しなくなった。一日一回、オンライン配達で頼めば事足りる。配達時はもちろん置き配だ。

 

「あっやば、ピックし忘れた」

 

 そういえば、昨日の夜指定でネット注文していたものがあったのを思い出す。

 

「うー、まだ明るいんだよなぁ」

 

 荷物を届けてもらうときは常に置き配だが、それをピックアップしに玄関先へ出るのも、オレにとっては命がけだ。うっかりドアから顔を出したところを近所のおっさんに見られたり、隣人の男子大学生なんかと出くわしたりしたら、エロ漫画のような凌辱展開が始まってしまう。

 

 それを割けるために深夜、人の気配のないときを見計らってガッとドアを開けてパッと荷物を取るのだ。でも今届いているはずの荷物はそれなりに高価な一品。盗まれでもしたら大変だ。

 

 うーんと五分ほど悩んだオレは、少ない勇気を振り絞ってピックしに行くことに決めた。

 

 ドアのチェーンを外し、のぞき窓から外をうかがい、おそるおそるドアの鍵を開ける。わずかな隙間からさっと顔を出し左右を見回し、手の届く場所に片手で持てるほどのダンボール箱が置かれているのを確認。一度ドアを閉め、深呼吸をしてから、一二の三でドアを開けて荷物をつかんでドアを閉めた。

 

「ふぅ……ミッションコンプリート」

 

 やり遂げた。一瞬で一日分のカロリーを消費した気がする。今日はもうダラダラ過ごしても誰も文句は言うまい。

 

 ふひーとやり切った感のあるため息をつきながら、パソコンへ戻る。ネットで買った高級ゲーミングチェアに飛び乗り、電源を入れた。

 

「……そいやそろそろ資金が心もとなくなってきたな」

 

 オレは今ハマっているFPSゲームを起動させると、デスクの引き出しの奥からマイクセットを取り出した。

 

「アーアー、あいうえお、かきくけこ、しゃししゅ……さすしせそ」

 

 つつがなくマイクテストを終えると、『ニトのゲーム配信』と表示されたチャンネルのスタート画面を押す。

 

 ——お?

 ——ニトちゃんキター!

 ——5日ぶり?

 ——待ってた!

 ——ニトちゃーん♡

 

 告知もしていないのに、コメント欄にはすぐコメントが湧いてくる。

 

 オレはニヤリと口角を上げ、「こほん」と軽くせき払いをした。

 

「ったく平日の昼間だってのに、相変わらずヒマ人ばっかだな~」

 

 ——さっそくのブーメランで草w 好きwww

 ——ああああ声かわいいいいい

 ——今日顔出しある?

 ——皆の衆スパチャの準備だ…!

 ——うぅワイのなけなしのバイト代が

 ——はやく神エイム見せてくれ

 

「まーまーそう焦んな、今日はこの前チート使って襲撃してきたガキを狩りに行くから」

 

 ——またもブーメランwww

 ——ガキにガキ呼ばわりされるガキかわいそ

 ——ニトは腕は確かだからな、ガキ死んだな

 ——俺もメスガキにののしられてぇ…

 

「あのなぁ、これでもお前らより一回りくらい年上なんだからな」

 

 ——嘘乙

 ——嘘www

 ——すがすがしいほどの嘘

 ——まさかのロリボイス姐さん?

 ——お、ご新規か

 ——嘘だぞ

 ——この前顔出ししてたがどこからどう見てもJCにしか見えんかった

 ——可愛すぎてチンコ爆散した

 ——天使級の美少女=ニト

 ——この声であの見た目、ぶったまげるぞ

 ——マジか…アーカイブ見つからんのだが

 ——ニトちゃんアーカイブ残さんからな…もったいない

 ——今日顔出しある?

 ——この乱暴な口調とビジュアルのギャップが…あんまないのが不思議なんよな

 ——ニトちゃん可愛い!!

 

「……乱暴な口調で悪かったなぁ、まぁ見てろ、神エイムでお前らの奥歯ガタガタ言わしてやるから」

 

 なおもポコポコ湧いてくるコメント欄を無視し、オレはゲームをスタートさせた。

 

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