「それじゃ、仰向けになってくださぁーい」
ボクは身体をぐるりと反転させる。
喜多川さんは引き続き、ボクの横に座っているので、たぶんうつぶせと同じ要領で身体半身づつをマッサージしていく感じかなと思う。
「で、胸周りとデコルテやってくねぇー」
仰向けになると、当たり前だけど視界が一気に開ける。
ボクは両手を頭の後ろに回して、少し顔を起こす。
喜多川さんの姿が見えるように角度を調整する。
両手にオイルをからめた喜多川さんが、ボクの胸から鎖骨の下あたりにオイルを塗り広げている様子を眺める。
「うん、やっぱりそうだ。改めて水着姿を見てみると、メリハリ感がすごいというか」
つい思ってる事を口に出してしまった。
喜多川さんはマッサージの手を止めて、「うぅ」と呻って自分のお腹に手を置く。
「うう、やっぱりそう見える? もっと痩せたいんだけど」
とお腹のお肉をつまむ。
「いやいやいや! 太ってるって事じゃないよ!」
ボクは慌てて弁明する。
ていうか、お腹のお肉、つまめてないでしょ?
全然太ってないのに痩せたがる子が多いの、なんとかならないだろうかと内心思う。
いや、今はそういうのじゃない。
「アニメの喜多川さんって身体全体が細い感じなんですけど、喜多川さんはその……」
出てる部分が出てる、と言いかけて、これも微妙な感じがして言葉を飲み込む。
アニメでは、たしかにおっぱいの描写とかバインバイン動いていたが、巨乳というわけではない。
なにしろヌーブラ2枚重ねしちゃうくらいだから。
でも、目の前の喜多川さんは、あきらかに巨乳で、そのうえウエストはほどよく絞られていて、お尻は大きくて水着がパツパツになっている。
全体的にムチっとした印象で実に女性らしい丸みが感じられる。
あ、これだ。
「……大人に成長した女性のたおやかさっていうか。高校卒業して大学生になった喜多川さんってこんな感じなのかなって」
なんとか弁明すると「ふぇぇっ!?」と奇声をあげて、喜多川さんは硬直する。
「そ、そんな褒められ方、初めてかも……」
ちょっと頬を赤らめて、下ろした髪を両手ですきながらモジモジしはじめる。
喜多川さんのその仕草にボクは「ああ!」と驚きの声をあげて、さらに叫んでしまう。
「そのポーズ! 2話の最後の最後で照れてる喜多川さんだ!」
雫たんの衣装を作ってもらえる喜びのあまり、水着で身体を採寸される羞恥心を忘れてた喜多川さんが、股下の採寸で突然恥じらいを思い出して、もじもじするヤツ!
言われた喜多川さんも、「わっ、ほんとだ!」と驚いた様子。
でもすぐ、彼女は両肩を自分の両手で抱きかかえるような姿勢になって、「くぅ~~」と、少し前かがみになる。
表情をちょっとしかめた感じにこわばらせている。
ボクはちょっと心配になって「喜多川さん?」と声を掛ける。
心配なのは本当だけど、そんなに胸元を押し挟んだら、緩んだ水着からおっぱいが溢れそうになってて、視線がくぎ付けになる。
こぼれる。こぼれちゃうって。
「あ、ごめん。ぜんぜん大丈夫なヤツだから」
身体をぶるりと震わせて、喜多川さんは微笑んでみせた。
「なんていうか、自分が思ってもみなかったところで、キャラとシンクロしちゃた、みたいな?」
なんかふわっとした説明だけど、ボクなりに考えて、もしかしたらと察する。
あ、そういうことか。
「さっきのポーズって、喜多川さんは意識してやってなかったって事ですね?」
ボクが説明すると、「そうそう」と喜多川さんが頷く。
「無意識にやってるから、自分では気づけないんだよね。だからそういうところ教えてもらうと、キャラに近づけてるのが分かって、すごく嬉しい」
と、無邪気に笑う喜多川さんだったけど、ふと伏し目がちになる。
「それに、なんていうか」
つぶやいて、ちょっと考えてる様子で、また口を開く。
「いまさらなんだけど」
スッと顔を上げた喜多川さんは、真面目な表情で言う。
「大学生になった喜多川海夢がメンズエステのバイトをはじめてみた」
「わ、同人誌でありそう。ていうかきっとあるヤツ」
そう答えると、「だ、だよねー!?」なんて言いつつ、顔の前で手の平でパタパタ扇ぎながら喜多川さんは続ける。
「さかもつさんが、わりとズバズバって似てるって言われて、それがなんでか説得力があるな、って思うとすごく自分がキャラに近づけてるって実感がわいてきて……」
そしてまた、喜多川さんは伏し目がちになる。
なんだか挙動不審な感じがかわいらしい。
「逆に年齢とか、絶対キャラとは違うところってあるから、そう思うと今のあたしが"成長した喜多川海夢"の二次創作みたいになってる感じがして……、なんていうか、すっごい説明が難しいんだけど」
両手を太ももに置いてすこしモジモジさせる。
しばし俯いた喜多川さんは顔をそっと上げた。
「今すごく、ドキドキしてる」
喜多川さんは頬を上気させながら言う。
「ボクも分かります。というか、喜多川さんに言われて気づきました。二次創作か……同人誌とかいうヤツですよね?」
言うと喜多川さんは何度も首肯するので、続けて聞いてみる。
「やっぱり喜多川さんも、そういう同人誌とか見たりします?」
「うん、めっちゃ読んでる」
ガンぎまりに言う喜多川さん。
「あたしが五条君だったら、絶対押し倒してるわ、ってなるシーンいっぱいあったから、そういうところは同人誌で補完した」
ドキドキするとか言ってるのに、こういうことはスパッと言うところが彼女の重症度が感じられる。
「例えば、ほら。アニメ版だったら最終回のほう」
喜多川さんは、二マリと笑って腰を上げる。
脚を伸ばしてボクの腰を跨ぐと、そのまま腰を下ろしてきた。
喜多川さんが仰向けの五条君に馬乗りになるシーン。
ヒントが分かりやすすぎる。ボクは嬉々として即答する。
「リズきゅんの撮影会ですね!」
喜多川さんが撮影スタジオと勘違いして、ラブホテルで撮影することになって、二人とも撮影に熱中するあまり騎乗位の姿勢になってしまってる事に気づかないんだけど……。
と、そこまで思い出してハッとする。
喜多川さんが、ボクの股間に跨ってる。
ちょっと下にズレてるから、勃起してるチンポには当たらないというなんとも微妙な位置どりだ。
「すごい、即答じゃん」
と喜多川さんは嬉しそうだ。
「こんな密着してさ、五条君ってばチョー躊躇してるっていうか、けっきょくフロントから電話鳴って……」
と、楽しそうにシーンを語り始める。
「たしか、こんな感じでしたよね」
と、ボクは肘をついて上体を起こした。
喜多川さんの顔が間近にあって、彼女は小さく「ぁっ」とつぶやく。
彼女のつぶやきは、甘い吐息に変わる。
「やば……、同人誌のシチュ……」
頬を紅潮させて少しぽーっとした表情でつぶやく。
喜多川さんの潤んだ瞳がボクの視線に絡みつくようだ。
「同人誌ではどんな感じだったんですか?」
ボクはつとめて笑顔で聞いてみる。
喜多川さんは内容をきちんと思い出そうとして「すっごく顔も近づいてたから、やっぱりこう……」と言いながら、思い出したなら、それはそれでさらに顔を紅潮させる。
「キスを、しようとするんだけど……」
ボクは彼女のイメージに合わせて顔を近づける。
でも、喜多川さんは顔を動かそうとしないので、ボクの動きはやわらかい障害物で阻まれる。
喜多川さんが「んっ……」と息をのむ。
ボクは無理にキスしようとせず、視線を落として、障害物を見る。
張りのあるGカップの乳房が、ボクの胸板に押されてすこしだけたわんでいる。
ボクは視線を戻して「これじゃ、できないですね」と言うと、「ん……、そうなの」と返事する喜多川さん。
ボクは上体を喜多川さんのほうへ傾けるんだけど、喜多川さんは上体を引こうとしないので、おっぱいを押しつけるような姿勢になる。
「ん……、それにあのシーンだと、隣のエッチな声はまだ聞こえてるから、あたしの気分はどんどん盛り上がって」
喜多川さんは同人誌の展開を説明すると、それに応じるように、おっぱいの先端が硬くなってブラを押し上げる感触をボクは胸板に感じる。
ボクは胸元に落としていた視線を戻して喜多川さんを見つめる。
喜多川さんは困った表情になる。
「だ、だって……」
察した喜多川さんは、言い訳を考えるようで黙って視線を泳がせる。
けど、結局観念する。
「だって、まんま同人誌のシチュで、すごくエッチぃんだもん……」
ただ照れてるわけではなく、エッチなシチュエーションに照れてる様子が可愛くて、思わず頬が緩む。
「ここから、どうなるんですか?」
期待に高まる気分を抑えながら、促すように聞いてみる。
「うぅ……でも」
戸惑いの表情を見せる喜多川さん。
「今日会ったばかりの人なのに……」
ボクははっとする。
これは中の人の気持ちが出てるんだ。
それはそうだ。
コスプレでエッチな気分が盛り上がったといっても、展開が急すぎる。
それに今の状況だって充分エッチだし、なんというかメンエス以上に楽しめてるというのはある。
なによりセラピストさんの気持ちは優先しないといけない。
ボクは「ですよね」と言いかけたところで、喜多川さんが「でも」と言葉をかぶせてきた。
ボクは思わず躊躇して、言葉を繋げられずにいる。
喜多川さんは顔を上げて、わりと真剣な表情でボクを見返してきた。
「でも、エッチしたいって、喜多川さんが言っている」
言い切った喜多川さんは、ボクの背中に両腕をまわして、おっぱいを押し付けて、身体を密着させるようにボクを押し倒した。
え、どういうこと?
中の人と喜多川さんが葛藤してるってこと?
ボフッと、ボクの身体はベッドに倒れるのだけど、身体全体に柔らかな感触が押し付けられて気持ちよすぎる。
葛藤とか、そういうのを押しのける肉感の気持ちよさ。
耳元で喜多川さんの喘ぎ声が聞こえる。
「はっっ、ああぁっっ」
気持ちいいのは喜多川さんも同じようだった。
喜多川さんの硬くなった乳首がボクの胸板で押しつぶされているだろうし、なにより、ボクの竿に密着している喜多川さんの股間の熱さを感じれば、当たり前の反応だと思う。
喜多川さんは短い吐息を繰り返しながら、ボクに身体を押し付けてくる。
「うぅ、気持ちいい。さかもつさん……、ぎゅってして」
言われてボクは喜多川さんの背中に腕を回す。
細い背中とスベスベの肌が腕全体に感じる。
「う、うぅ……。ヤバ」
ボクがゆっくり力をこめていくと、喜多川さんがつぶやきながら小さく喘ぐ。
「ボクも気持ちいいです。特に、おっぱいの弾力がすごくて」
「うぅ、おっぱいってそんな直球な言い方……」
喜多川さんの言葉に衝撃が走る。
うわっ!
なんだこれ?!
ボクは思わず腕に力を込めてしまって、戸惑った喜多川さんが「え? 何?急に? こういうの、嫌じゃないけど」などとうろたえる。
すぐにボクは謝って腕の力を緩める。
「喜多川さん、ごめんなさい! その声で『おっぱい』とか言われたのが、思った以上に響いて、つい力が入ってしまって……」
そう言うと、喜多川さんは身体を傾けて顔をこちらに向ける。
ボクもならって少し顔を横向ける。
「え、ほんと? ……じゃあ、もっと言っちゃおっかな?」
喜多川さんは嬉しそうだ。
やっぱり、喜多川海夢に似ているって事が彼女にとってなにより嬉しい事なんだ。
ボクにとって願ったり叶ったりでしかない。
「はい、是非お願いします」
「おっけー❤️」
「あ、できれば、状況の説明っぽくお願いしたいです。いろいろな言いまわしを聞きたいです」
「もう、さかもつさんの欲しがりさん!」
けっこう乗り気だ。
後先考えないノリの良さもなんだか喜多川さんっぽい。