※この作品はR-18です。

エンゼル・フォールン ~少女たちは歪んだ教義の犠牲になる~   作:水上些事

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※あくまでゼリーですが、疑似的な排泄シーンがあります。
 苦手な方はご注意ください。



08-2. 夢に届く(シア:アナルゼリー+羞恥プレイ)

 

 離宮の二階、奥まった一室にある礼拝堂。

 

 かつて敬虔な王族の一人が日々の祈りを捧げるために作らせたそこは、今では歪んだ欲望を叶えるための部屋となり果てていた。

 聖人の姿を模したフレスコ画は猥雑な風景画に取り替えられ、祭壇上の金十字は見る影もなく色褪せている。

 入り口の両脇には場違いなほどの光沢を放つシルバーの大箱が置かれており、ひとたび鍵を開ければ、女を嬲るためのありとあらゆる性具が顔を覗かせる。

 

 そんな中にあって、唯一かろうじて荘厳な色合いを保ったステンドグラスは、部屋の中央に置かれた黒壇の机と、その上でうつ伏せに上半身を拘束されているシアの姿を照らし出している。

 少女は今、部屋の後方に向かって無防備に突き出している尻の穴を、連結した球状の器具(アナルビーズ)で何度もじっくりとほじくり返されていた。

 

 

 ――むりゅっ、りゅりゅ……。ぶぽんっ!

  

「ひぁぅっ♡! あっ、は♡」

 

 グレゴールが紐を引くのに合わせて、熱い腸液に濡れた黒い球体が少女の肛門から姿を現し、弾かれたように外に飛び出す。

 白く美しい両脚が内側に跳ね、陰部からはぶしゅっと勢いよく潮を吹きだした。まだ七個も残っている球体が体内でごろごろと転がり、シアの脳内に苦痛をはるかに上回る快感をもたらす。

 連日の肛虐で縦割れしつつある艶めかしい括約筋が、たったいま出て行ったものの存在を惜しむかのようにひくひくと震えた。それに合わせてさらに紐を引っ張ると、もはや肛門は抵抗することを忘れたかのように、一気に三つもの球体を排出していく。

 

 ――ぬ、ぢゅ……  ぶぽっ! ぽっ、ぽんっ……

 

「あ"っひっ!!??♡♡♡ あ”っ、あぁっ♡」

 

 全身を走り抜ける電流に身を反らそうとして、上半身の拘束具に阻まれる。そのぶん代わりに、柔らかな肉付きの尻が雌犬のように激しく振り乱された。

 部屋を満たす麝香(じゃこう)の香りが、シアの体液から立ち上る淫臭に瞬く間に塗り替えられる。細い首の周辺からは、本人と周囲の人間の発情を促すように、重たく甘ったるい体臭が霧状に発散されていく。

 グレゴールは空いた方の袖で口元を覆いながら、ビーズの紐を握った手を前方へと押し出した。

 外界の空気に触れて熱を放っていた球体が、再び熱い腸内にぬぷぬぷと埋没していく。

 

「やぁっ♡ こっ、これ、きっ……ぃっ、あ……♡♡」

 

 ――きもちいい、と口に出しかけたのを、少女の脳内に残ったなけなしの理性はぎりぎりのところで押しとどめた。

 今されていることは、普段とは違う"釘"での処置。神から賜った道具を用いた神聖な行い――媚毒で霞んだ意識はそんな嘘すら鵜呑みにして、後ろの穴に与えられる至極の快楽に酔いしれている。

 

 球体状の蛇が、狭い道をこじ開ける感触。

 玉同士がごりゅごりゅと、腹の中で擦れあう感触。

 背筋が融けそうなほどに狂おしい、排泄の感覚。

 

 それら一つ一つの動きを敏感すぎるほどに感じ取り、歯を食いしばりながら快楽に悶えるシアの顔は、もはや正気の色を探す方が難しい。

 ぶぽんっ、とビーズが抜けるたびに甘い声を上げるシアの様子を、部屋の隅の長椅子に座って見ている姿があった。

 ひじ掛けにもたれて、目の前の茶番を退屈そうに眺めている侯爵。

 愛しの美少女が繰り広げる嬌態を、目を血走らせながら凝視している王子ラミロ。

 

「――聖女シア。今、汝がその身に受けている感覚こそ、その肉体から俗世の穢れが剥がれ落ちていく実感に他なりません」

 

 机にうつ伏せになったシアの正面、祭壇とステンドグラスを背にした大司教が、荘厳な声で語り始めた。

 その間にもグレゴールの手は前後し、球体は下品な音を立てて少女の肛門を無遠慮に出入りしている。

 

「――知っての通り汝は今日、神の化身と見(まみ)える。天より降り立った偉大な存在を前に、汝の体におけるいかなる穢れも存在することは許されない」

 

 大司教が言葉を切るのと同時、にゅぷんっ……と音を立てて一つの球体が抜け落ちた。

 

「ひっ、う……♡」

「故に今、我らは汝の肉体の『門』を開き、神の化身が与える恩寵を隅々まで受け入れられるための道筋を作っているのだ。理解できるかね、聖女よ」

「はい"っ、わかりま、ぁ"……っ♡」

 

 じゅぽ、ぶぢゅぽっ――腕を機械的に前後させるグレゴールの手の動きが大きくなる。

 始めは球体一つだけの行き来だけだったのが、今では一度に四個もの玉を肛門から抜き去っては、押し込むのを繰り返す。

 腹の奥底から引きずり出された粘液が少女の股間に艶を与え、ステンドグラスの光をより強く照り返していた。

 

 終わらない、激しい責め苦。

 尻穴の愛撫に慣れてないものが同じことをされれば、皮膚が切れてしまうだろうほどの激しい抽送。

 しかし、少女は違う。

 薄暗い部屋の中、見守る男たちはおおむね厳かな態度を保つ中で、罪人のように体を縛られたシアだけが上ずった嬌声を上げている。

 

「聖女シアよ、答えなさい」

「あ"っ、ひっ♡♡ な、なんでしょう、かっ♡」

「今、汝の体に与えられているものは何か? 痛みか、苦しみか、それとも」

 

 ――ぶぶ、ぬぢゅ。にゅ、ぽぽぽぽ……

 

「きひぃっ♡!!? あ"あっ、い、いま、わたし、わたしっ……」

「正直になりなさい。神は嘘と欺瞞を好まない。今の汝の御心を、正直に答えよ」

「……き…………わ、わたし……っ」

 

 ――じゅぼ、ぶぽっ、にゅぽ、じゅぼじゅぽじゅぽっ!

 

「きぁっ、あああぁぁぁっ♡♡♡♡ き、きもちいいですっ、きもちいい、きもちいい"っ♡♡」

「それが、汝の正直な答えか」

「はいっ♡♡!! きもち、いいですっ、こんな、神さまの、こんなぁ……っ」

 

 ――じゅぽっじゅぽっ、じゅぽじゅぽじゅぽぢゅぽっ!!!

 

「ぎいっ、い"ぃ"ぁ"ぁ”っっ♡♡ かみさま、ごめんなざいっ♡♡ かみさまのどうぐで、きもちよくなっでっ、ごめんなざい"ぃっ♡♡♡」

「主より与えられた道具を用いて、浅ましく喘いで。それが汝の本心と捉えてよいのか、聖女シア」

「はい"っ♡ ほんしんですっ、ほんとうにっ、とってもっ、とっても"っ♡♡」

「……正直なるものに、主は救いと恵みを与えるだろう」

 

 大司教が厳かに言い放ったその言葉が、合図だった。

 グレゴールは無慈悲な手つきでビーズの紐を握りしめると、残っていた七つの球体を一気に引き抜いた。

 赤く腫れた肛門が玉の表面を擦る音が七つ、ぬぽぽぽっと音を立てる。

 

「きゃあああぁぁぁぁぁっっっっ!!!!??♡♡♡♡」

 

 これまでとは比較にならない甲高い悲鳴が、礼拝堂の空気をびりびりと震わせた。

 内臓を根こそぎ引きずり出されたかのような極大の衝撃に、シアは拘束を剥がさんばかりの勢いで痩身をしならせ、全身を痙攣させる。

 全身に走る快楽電流を逃がすために、床に靴をばんばんと何度も叩きつけた。衝撃で机ががたがたときしみ、そのたびに大きく開ききった肛門からの腸液と秘部の愛液の混合物が飛び散る。

 

「きひっ♡!? いっ、ぎっ♡! はぁっ、はひっ、ひっ、ひぃっ……!!」

 

 気が狂ったかと思われるほどの体の震えが二十秒近くも続いた後、少女の体は唐突に、ぷつりと意図が途切れたように弛緩した。

 ぐったりと机に突っ伏した肢体。その股間からは、ちょろろろ……と尿を静かに垂れ流している。

 息をしているかもおぼろげな体の中で、熱く濡れそぼった尻の中央にある肉輪だけは未だに締まりきらず、くぱくぱと酸素を求めるかのように喘いでいる。

 

「これで、浄化のための準備は終わりました」

 

 大司教は嘆息すると、死んだように力の抜けているシアの傍らに立った。

 

「聖女よ。先ほども言ったように、汝は神の化身とまみえる」

「はー……はー……、は、ぃ」

「それに備えていっそう身の穢れを落とすため、これより汝の尻穴に、我らが神より賜った血液を注入します」

「…………神さまの、ち、ですか?」

「そうです。貴方の腹の中、体温で固まりゼリー状になる。それをしばらく留めおくことで、身を清めます」

 

 取り繕った口上を前に、意識が混濁したままのシアはろくに考えもせずに呟いた。

 

「……はい、わかり、ました。おねがいします……」

 

 それを待っていたかのように、王子ラミロは目を輝かせた。

 待っていましたとばかりに立ち上がると、傍らの机に置かれていたガラス製の大きな注入器を手に取る。

 女性の体に苦痛を与えるため、あえて先端のノズルを太く作ったそれを小脇に抱えて、王子は侯爵の横を通り過ぎた。

 

「分量は分かっているだろうな、ラミロ」

「何度同じことやったと思ってるの。簡単に漏らされちゃ面白くないでしょ」

 

 声を潜めて言葉を交わし、下卑た笑みを浮かべながら王子が進む。

 シアの背後に立った王子は、力の抜けた少女のアナルに指を突っ込んでじゅぽじゅぽと慣らしたあと、注入器を手に構えた。

 球体の激しい抜き差しによる摩擦熱を帯びて、熱くひくつく肛門の入り口に、冷たいノズルの先端を押し当てる。

 

 ――ずぶ、ぶぶぶ。

 

「んっ、く……」

  

 少女の口から、無意識に声が漏れる。

 ラミロは構わず、ノズルを指の第二関節ほどの深さまでねじ込むと、ゆっくりとピストンを押し始めた。

 

「ひっ……!? つめ、た……」

 

 ごぽ、ごぽっ……と、空気の圧縮とともに白い液体が波打ち、押し出されていく。

 先ほどまでの燃えるような快感とは真逆の、内側から体を冷やされる感触に、少女は身をよじらせて呻いた。

 形の固定されているビーズの球体とは異なり、腸内にたぷたぷと溜まった液体は肛道を大きく押し広げる。

 なおも腹の中に注がれていく水は、徐々に流動性を無くして固形化していった。その後からさらに流入してきた液体は空いた腸壁の隙間に染み込み、同じように膨張する。

 

「ぐ、ぅ……くる、し……っ」

 

 顔をしかめて呻くシア。

 腹が内側からじわじわと押し広げられる圧迫感は、本来なら純粋かつ明確な苦痛として小さな体を追い詰めている筈であった。

 しかし、服用した媚毒と先刻の絶頂で焼ききれた脳の回路、そして注入水に少量含まれた媚毒の成分がその苦痛を、通常とは別種の快楽として認識させ始めていた。

 普段の"釘"よりはるかに太い、はちきれそうに引き伸ばされる腸壁の痛み――それはむしろ苦しみ以上に、これまでの快感の記憶を元にした恥ずかしい疼きを体にもたらし始めている。

 

「はっ、はっ…………はぁっ……♡」

 

 シアの苦悶の声に別の色が混じり始めたのに気づいたラミロは、その様子を愉しむかのように舌なめずりをし、ねっとりと白濁液を送り込み続ける。

 

 ――苦しい。

 ――お腹が、いたい。

 ――でも、なんでだろう。

 

 ――きもち、いい……。

 

 

 やがて、十分量を注ぎ込んだと判断したラミロが手を止めた。数分し、内部の液体がゼリー状に固まったと察したころ、乱暴にノズルを引き抜く。

 少女の拘束をほどくようにグレゴールに目配せしたあと、王子は後ろに下がった。

 

 上半身の拘束を外されたシアは、すぐには動けなかった。体力を消費しているのも相まって、ぜえぜえと荒い息をついて机に突っ伏したままでいる。

 見かねたグレゴールに腕を引かれ、体を支えられながら地面に立ったシアは、その異様な下腹部を男たちにさらけ出した。

 

「はぁ、はぁ……あ、すご、い……」

 

 身に覚えのない子を孕んだかのように膨らんだ腹が、白い修道服をはっきりと押し上げている。

 まだ成熟にはほど遠い小柄な体格の中にあって、生命を宿しているかのようなその光景は酷くアンバランスで背徳的な美を放っていた。

 

 少女は体をグレゴールに預けたまま、恐る恐る自身の腹を撫でた。

 重たいゼリーが、ぐちゅりと音を立てる。初めはおっかなびっくりとしたその手つきはやがて、身に宿る命を愛おしむかのように優しくなった。

 括約筋に力を入れて締めながらも、虚空をさ迷うような虚ろな目つきをその部位に向けて、被虐の快感に身を震わせている。

 

「よろしい、聖女シア。しばらくそのまま、神から賜った血をその身に留めなさい」

 

 大司教の言葉に、シアがこくりと頷く。

 話を聞いているのかいないのか、その視線を腹の方に向けたままでいる少女の気を引くように、注入器を陰に置いたラミロがぱぁんと手を打った。

 

「話は終わったな、大司教。それじゃあシアちゃん、今からこのまま王城を案内させていただこう。まだ中を詳しく見てもらったことはなかったからねぇ」

 

 その言葉に、シアははっと我に返ったように王子の顔を見た。

 腹の奥でぐるぐると重く蠢く神の血(ゼリー)の存在を感じ、不安げに顔を歪ませる。

 

「い、今から、ですか……? ですが、わたし、今……」

 

 以前に招いてもらったときに見たのは、謁見の間と客室だけ。今回、案内していただけるとは聞いていたけど――まさかこんなタイミングだと全く思っていなかった少女は、頭一つ分高い場所にあるラミロの顔を哀願するように見上げる。

 にやにやと笑っている王子の代わりにその言葉に答えたのは、後ろから歩み寄ってきた侯爵だった。

 

「聖女殿」

 

 ラミロの横に立った侯爵が、威圧するかのように少女の紅潮した顔を覗き込む。

 びくりと身を竦ませたシアに追い打ちをかけるように、壮年の男は有無を言わせぬ力強さで続けた。

 

「実質二日半という短い滞在期間中、無駄な時間など許されるとお思いか。これからたびたびこちらにお出でいただく聖女殿への、殿下のありがたいお心づかいを無下にするなど」

「……ち、違います。そんなつもりは……」

「貴方と、貴方の従者。二人を迎え入れるためにどれほどの人間が尽力し、どれほどの国費を投じているかお分かりか。失礼ながら、貴方はそのことも承知せず、ただ気分で申し出を断ろうとしているのではありますまいな」

「……っ」

「どうなんだ、聖女殿」

 

 良心を責めるような物言いに、心優しい少女は反論できず押し黙った。

 引き結んだ唇を震えさせて俯くシアの姿を見て、王子が勝ち誇ったように笑いながら言う。

 

「安心しろ、丸きり晒しものにはせん……グレゴールとやら、それをシアちゃんに渡せ」

 

 ラミロが顎をしゃくった先の机には、豪奢な深紅のローブと黄金の杖が置かれていた。グレゴールはそれを取り、少女に衣を羽織らせて前で留める。

 腹部のいびつな膨らみは見えなくなったが、それで苦しみまで消えるわけではない。

 少女は震える両手で杖を握りしめて縋(すが)った。もはやこれが無ければ、礼拝堂から歩いて出ることすら出来そうにない。

 

「さあ参ろうか、聖女様?」

 

 おどけたようなラミロの台詞に促され、シアは一歩を踏み出した。

 その瞬間、腹の奥で粘性を増したゼリーが腹の動きに合わせて腸の中で大きく揺れる。

 

 ――ぐる、ぎゅるるる、ぐぶ……

 

「はっ…………はぁっ、はぁっ、はぁ……」

 

 内側からの圧迫感と、ゼリーの成分から体内に浸透する媚毒。

 体の同じ場所で味わう苦痛と快楽の刺激は、シアの脳裏にでたらめな信号を送り込む。

 苦しいのか気持ちいいのか、自分でも判然としない感情に体を熱くさせながら、先を歩いていく男たちに追従した。

 

 こつん、こつんと杖の音が響くたびに、シアの耳だけにぐちゅぐちゅ、ぎゅるぎゅると鳴るのが聞こえる。

 内股になって必死で肛門を締め、今にも奔流が溢れ出そうになるのを堪える。

 未発達な体を苛む痛みの中で、その心中に芽生えつつある色の正体を、少女は自覚すらしていなかった。

 

 

 

  ◆  ◆

 

 

 

「――さあシアちゃん、ここが『英雄の間』だ。名前くらいは耳にしたことがあるだろう」

 

 そこは、三階の天井まで視界が突き抜ける、吹き抜けの広大なホールだった。

 周囲の壁には威厳に満ちた肖像画――歴代の王や、かつての魔のものとの大戦で名を残した英雄たちのそれが等間隔に飾られている。磨き上げられた大理石の床にあるガラスケースには、彼らが遺した遺物が静かに収められていた。

 

 一般の民にも開放されたホールの中、見学や観光に訪れている人々たちの中をシア達は進んでいく。

 王子と、その親族の侯爵。極めて特別な地位の者を伴った一団は、当然ながら人々の視線を引いた。誰かが指さし、名前を上げ、ホールがたちまち喧騒に満たされる。

 そんな中、あえて一団の先頭を歩かされているシアは針の筵のような感覚を味わっていた。

 背後には見知った顔である司教グレゴールもいるが、このような人目があるところで甘えて縋るわけにもいかない。

 

(……おねがい、こっちを、見ないで……)

 

 肛門を締めながらの亀のような歩みのたびに、腹の中で柔らかく固まったゼリーが生き物のようにぬめりと腸壁を撫で上げる。

 注入直後は、まだこれくらいなら……と余裕があった。

 しかし離宮を出て回廊に出たころには既に息があがり、そして今は体の疼きをかき消すほどの重たい圧迫感に脂汗を流し始めている。

 

 豪奢なローブと杖のおかげで、かろうじて保てている体面。

 しかしその内側では、汚濁を腹いっぱいにため込んだ体が、今にも破裂せんばかりにぶるぶると震えている。

 

 

 

「……お、おい。あれ、エルミナの聖女様じゃないか?」

 

 誰かが上げたその一声をきっかけに、人々の雰囲気の色が変わった。

 

「聖女様?」「えっ、本物の?」「なんでこんなところに?」――その囁きはさざ波のように広がり、瞬く間に熱を帯びた喧騒へと変わった。

 噂の美しい少女を一目見ようと、人々がシアの周りにどやどやと集まり始める。

 

「聖女様! すごい、本当に聖女様じゃないか」

「噂には聞いていたが、本当にお美しい……」

「こんな小っちゃい子だったんだ。子どもみたいで可愛いかも」

 

 壁際に追い詰められるように囲まれたシアが、顔を引きつらせる。

 信仰と憧れと、無遠慮なそれが入り混じった数々の視線。普段なら自然と外行きの顔を取り繕えるのに、それができない。

 周りに味方がいない、縋れない――内なる恐怖と体中に満ちる苦痛が、表情筋を鉛のように硬直させている。

 

「ははは、民に好かれていて羨ましいなあ。さあ聖女様、皆にありがたい御言葉を」

 

 白々しいラミロの台詞に、シアはやっとの思いで唇を笑みの形に釣り上げた。

 

 ――パメラさんと約束したから。

 頑張るって。負けないって。

  

「み、みなさま……今日は、お会いできて、嬉しいです……」

 

 震える声。

 不自然さが隠しきれていない笑顔。

 それでも人々はシアの言葉に沸き、さらに輪を詰めようとしてくる。

 侯爵とグレゴールが傍に立って観客を抑える中で、少女の背後からすっと近づいたラミロは、その耳元に唇を寄せた。

 

「……シアちゃんさ。分かってると思うけど、もし今きみの尻から神の血とやらが、ひり出る様なことになったらどうなるかな」

「……っ!」

「きみの名前は今日から『糞漏らし』かな? せっかく神様から賜ったものなのに、許可もなく人前で垂れ流すなんてとっても不信心だねえ」

「…………あっ、あ……」

「きっと、明日から君は汚物扱い。エルミナの教会やそこで勤めてる人たちにも、どんな迷惑がかかるやら」

 

 ぞわっ、と全身の産毛が逆立つ感覚をシアは覚えた。

 首の後ろが冷たくなったような悪寒が立つ。

 腹の中に収まっているものが急に重量を増したような気がして、反射的に下腹部に力を込めてしまった。

 

 ――ぶぢゅっ、ぢ……

 

(ひっ!!?)

 

 ほんの一瞬緩んだ括約筋から、白いゼリーの塊が覗いた。とっさに引き締められた肛門に繋がりを断たれて、ほんの小さな一かけらがぽとりと落ちる。

 シアは声にならない悲鳴をあげ、とっさに奥歯を割れそうになるほど噛み締めた。

 両手で持った杖に頭頂部を押し付けて深呼吸を繰り返し、それ以上の決壊を抑え込む。

 

「はーっ、はーっ、はーっ……」

「聖女様? どうされました?」

 

 体調が優れないのでしょうか、と観衆の一人が心配そうに声をかけてくる。

 少女は杖を握り直して、緩慢に顔を上げた。腹痛で若干血の気が引いたその顔は、元から色白なせいで気づかれもしない。

 

「な、なんでも、ありません……。皆様の、暖かいお心に、胸が、いっぱいで……」

 

 やっとの思いで絞り出したリップサービスに、喜びの声が上がる。

 集まった人々の前で、聖女としての笑みを浮かべ続けるしかないシアの美しい髪と顔は汗で濡れていた。

 やがて、折を見た侯爵が次の場所へ向かうための人払いをするまで、少女は逃げ場もないまま辱めの苦しみに耐え続けるしかなかった。

 

 

 

 

 

 

 

「――おーおー、随分とぱんぱんになってるなあ、大丈夫かい?」

「はぁ"っ、はっ、はっ……あっ、あ"りがとう、ござい、ますっ……」

「王子として、君の頑張りを労わりたいだけだよ。気にしないでシアちゃん」

 

 薄暗い王室書庫の一角で、大きく張り出したシアの腹をラミロが修道服ごしに撫でている。

 一見気遣うようでいて、気づかれない程度に力を込めた手で押さえるようなその動作は、少女の体に多大な負担をかけていた。

 唇は青ざめ、額に玉のような脂汗を滲ませ、内部から突き上げるような鈍痛に耐えながらもかろうじて感謝の言葉を絞り出す。

 

 しんと静まり返った知の聖域。

 神学書が主に収められている、奥まった一角。

 中央区画からは離れているとはいえ、たまに近くを学者が通るような音が聞こえる。

 声を押し殺しても、腹が鳴るのは隠せない。

 周囲にぎゅるぎゅると明確な音が立つたび、顔色に反してその耳たぶは発火しそうなほど真っ赤に染まった。

 

(くる、しい……おうじ、さま、さわらないっ、で……)

 

 書棚に背を預けたシアは心中で懇願しながらも、それを口にはできない。

 あくまで「ねぎらい」として行ってくださっている行為を拒めば、不興を買ってしまうかもしれない――万一にも苦痛を訴えてしまわないように、少女は震える小さな手で口元を抑えている。

 

「暖かいなぁ。まるで、神の力強さを感じ取れるようだよ」

 

 王子は嘯(うそぶ)きながら、今度は手のひら全体で、ぐっと腹を圧迫した。

 

「ひっ、ぎぃっ……!」

 

 外からの圧力に、内部のゼリーが行き場を求めて流動する。熱く粘ついた塊が一直線に、尻の出口に向かって動き出す。

 先ほど漏らしかけた恐怖が蘇ったシアは、必死に尻に力を入れた。

 だが、王子の圧迫は止まらない。かつてないほど精神的に追い詰められている少女には、目の前の男が嗜虐心に満ちた顔で舌なめずりをしているのも見えていない。

 

「普段はあまり祈ることもないからなあ。この機会に神と、聖女様の力にあやかっておかねば」

 

 ぐりぐりと、中のゼリーを皮膚越しにこねるように動かす。大きく開いた手のひらで、大きな腹をがっしりと掴むように張り付かせて。

 

 五本の指全体で、ぐにぐにと揉む。

 指の腹を突き立て、果実を絞るように突き刺す。

 手のひらの腹で、一番張り出した部分をピンポイントに抑え込む。

 そのたびにシアの肛門は内側から激しく叩かれ、限界を迎えつつある括約筋はぷるぷると震える。

 

「ぐ、ぎ、ぃ…………っ!」

 

 いたぶられるシアの反応をおおむね掴んだラミロは、『一番効く』と思われる個所に親指を添えた。

 元は小さく閉じていた臍(へそ)が、膨張して広がっているその下――特に出っ張っている個所を、押し上げるように指をめり込ませる。

 

 ぐず、にゅぶ……と、圧迫されるゼリー。

 腸壁を滑っていく白い塊の隙間、そこに生み出された水分混じりの気泡が、ほんの一瞬の緩みを見計らって穴の外に漏れ出た。

 

 ――ぶりゅ、ぶぷっ……。

 

 静寂に満ちた書庫に小さな、しかし明らかに粘ついた下品な音が鳴る。

 シアの顔から血の気が引いた。冷たく跳ねる心臓に突き動かされるように周囲を見回す。

 幸い、学者たちに気付かれた様子はない――しかし、すぐ目の前にいるラミロには当然、その音はしっかりと耳に入っていた。

 

「……おや?」

 

 わざとらしく首を傾げながら、シアの顔を見つめてラミロは言った。

 

「今、変な音がしなかったかな? 何か水っぽいものが漏れ出る様な……」

「……き、気のせいです。そんな音、してません……!」

 

 認めれば、全てが破滅する。

 シアは全身から冷や汗を噴き出し、忙しなくきょろきょろと視線をさ迷わせた。

 明らかに嘘をつき慣れていない初心なその様子に、味を占めた王子は追い打ちをかける。

 

「気のせい? そうかなあ。私には、このあたりから音がしたように思えたが」

 

 再びシアの腹に手をおいた王子は、汗でびっしょりと湿った修道服の上から執拗に腹を押し始めた。

 ぐりぐりと動く手つきを見ながら、少女はとうとう嗚咽すら浮かべ出す。

 

「は、あ"っ……ほ、ほんとう、ですっ……もう、もう、ゆるしで……っ」

 

 もはや声を殺すこともままならない。極限まで膨張した苦痛に、堰を切ったように涙が溢れ出す。

 苦痛に満ちたその声に、屈服の手ごたえを感じたラミロは満足そうな顔を浮かべながら、一転してぱっと手を離した。

 ようやく解放され、書棚にもたれて荒い息をつくシアを見ながら、王子はその細い顎をきざったく手で持ち上げた。

 

「どうやら、君の言うとおりのようだな。疑って申し訳ない、シアちゃん」

「…………あ"、ありが、とう……ございます……」

「では、次の場所へ行こうか。まだまだ見てほしい場所が色々とあるのでな」

 

 近くにあった杖を少女に押し付け、踵を返して歩き始めるラミロの背を、シアは絶望的な顔で見た。

 もう一歩も動きたくない。それでも目の前の男に追従するしかない――少女の心は、今から死地に赴かんとする殉教者じみた気持ちに満ち溢れ始めていた。

 

 

 

 

 

 

 

 王城の片隅、国が抱える楽隊が用いる楽器庫。

 そこを訪れた時には、既にシアは限界を迎えていた。

 

 顔色は血の気が失せて蒼白となり、もはや呼吸すらままならない。

 その歩いた跡をよく見れば、染みのようなものが点々と続いている。

 時間とともに粘度を増すゼリーの感覚に、少女の脳はもはや耐えるという意識を持つこと自体を放棄しかけていた。

 

(……もう、だめ。あるけ、ない……)

 

 足が鉛のように重い。

 声高らかに何かの話をしているラミロの声は、もはやまったく耳に入っていない。その周囲にいる侯爵やグレゴールの姿もおぼろげになっている。

 今の少女を動かしているのは、皆に迷惑をかけたくないというなけなしの気力だけだった。

 

 自分を慕ってくれている、修道女の子たち。

 気を遣って優しくしてくれる、男性修道士たち。

 声をかけて応援してくれる、街の人たち。

 リズさん。

 パメラさん。

 

 霞む視界の中で、今まで出会った人たちの顔が次々と浮かぶ。

 そうだ、大変なのは自分だけじゃない。

 自分だって、みんなみたいに頑張れる。

 みんなのためなら、頑張れる。

 

 部屋の奥に向かって歩く王子の背に、なんとかついていく。

 頭の中に、みんなの顔と声を思い浮かべながら。

 

 

 ――その不注意さが、シアにとっての悲劇を生みだした。

 

 

 かつん。

 

「……あっ」

 

 石畳の床の、欠けて窪んだ部分を杖が打った。

 ぐらりと体が傾ぎ、とっさに残った体力のほとんどを使って体を支える。

 下腹部に、思い切り、力が入る。

 

 

 ――ぶじゅっ、ぶりゅりゅりゅりゅっ! ぶぢゅ、ぶぷっ……!

 

 ――ぼとっ、ぼたぼたぼたぼたっ! ぼとっ、ぼと……

  

 

 

 周囲の空気が、死んだように静まり返った。

 とっさに肛門を締めたその時には、既にシアの腕ほどの長さの白色ゼリーが、床に垂れ落ちて転がっている。

 

 シアの体が、凍り付いたように動きを止めた。

 錆びついた蝶番のように、ぎぎ、と顔を下に向ける――未だぱんぱんに膨らんだままの腹の下、自分の体内から漏れ出たばかりのそれが光沢を放ち、湯気を放っていた。

 

 ――耐えられなかった。

 漏らしてしまった。

 神さまの血を。せっかく賜ったものを。

 こんな形で。

 

 肺から漏れ出した空気が、あは、と音を立てる。

 杖にしがみついたままの両膝が、がくがくと笑い始めた。

 体が震える。

 止まらない。

 止まらない。

 絶望でぐちゃぐちゃになった思考が青と黒と白と緑と虹色と、色んな色に色とりどりに発色して混ざり合い始める。

 

「おぉ、おぉ……これはいけないなあ、聖女シア」

 

 王子ラミロが、わざとらしく悲嘆の声を上げた。

 その眼は、シアの両脚の間に転がっている醜い塊と、打ち震える彼女の顔を愉しげに行き来している。

 

「まさか聖女様ともあろうお方が、このような場所で粗相とは……ああ、残念だ。このことは父上……いや、広く民にも知らせねばなりますまい」

「…………そ、そんな。そんな……っ」

 

 英雄の間で耳打ちされた言葉が、少女の脳裏に蘇った。

 

 ――不敬。

 糞漏らし。

 汚物扱い。

 エルミナの人たちも、同じ誹(そし)りを受ける。

 みんなも、同じ扱いを受けるようになる……。

 

「……お、お許し、ください……! 王子様、どうか、どうか国王様には……!」

 

 杖を捨て、嗚咽とともにラミロの前に膝を付く。

 未だゼリーの大部分は腹に残っていて、膝を床にこすりつけたくてもできない。代わりにシアは必死に体を折って、可能な限りの声を上げた。

 

「どうか、みんなには言わないでください。黙っていてください……!」

「しかしなあ。あったことを黙っていろとは、神に対して不誠実ではないかな、聖女殿」

「お願いします、お願いします……! なんでもします、償うためになんでもやります。ごめんなさい、許してください……!!」

 

 部屋中に響く涙混じりの声。

 小さく美しく可愛らしい少女が、何でもすると懇願している。

 その惨めな姿にぞくぞくと体を昂らせながら、ラミロは隣に立つグレゴールの耳に顔を寄せた。

 

「おい、お前、聞くところに――――――、――――――ようだな」

「そうですが。まさか、――――――――」

「いいだろう? この娘は今、――――――――」

「…………」

 

 ひそひそと言葉を交わしたのち、グレゴールが渋面を作ったまま頷いた。

 密約が成立したことに満足した王子は、足元で許しの言葉を繰り返すシアの前に屈み、脂まみれになったシアの髪を優しく掬った。

  

「……良いだろう、シアちゃん。君のような可愛らしい子が泣くのは私も不本意だ。今回だけは特別に見逃して差し上げよう」

「……! あ、ありがとうございます。ありがとうございます……!!」

「ただし、条件がある。立て、シアちゃん」

 

 王子は悪魔のように微笑むと、シアの腕を掴んで立ち上がらせ、再び杖に縋らせた。

 そのまま少女の背後に回ると、懐にしまっていたもの――礼拝堂から持ち出して来ていた、冷たい輝きを放つ金属製の大きな肛門プラグを取り出す。

 

「シアちゃん。神から分け与えてもらった血、これ以上漏らすのは本意ではないだろう?」

「っ……は、はい、そうで……えっ!?」

 

 ラミロはローブごと修道服を乱暴にまくりあげた。肉付きの薄い小さな尻の間、粘液でべたべたに汚れた尻の穴があらわになる。

 そこにプラグの先端を押し当てた王子は、躊躇なくそれをぐりゅっと捻じ込んだ。

 

「はっぎぃっ!!??? いっ、た……!!」

 

 痙攣する下半身を抑えるために片手で腰を掴み、金属の楔をずぶずぶと埋没させる。

 細い腰に対して明らかに大きすぎるそれは、しかしこれまでの調教のかいあってさほど苦労せず侵入していく。

 さすがに一番太い部分では多少つっかえたが、ラミロが手のひらで押し込むと、肛門は少しずつ巨大な異物を飲み込んでいった。

 

 

 ――ず、ぶぶぶ…… ぐぼりゅっ!! ずぶ、ぶ、ぶ……

 

「あ、がっ…………あ、あ"っ、は……」

 

 体が裂けそうなほどの痛みに目を見開き、ぱくぱくと口を開閉させて悶絶する。

 根元まで捻じ込んだプラグを軽く引っ張り、そう簡単に抜けそうにないことを確認した王子は立ち上がり、侯爵の傍に立った。

 

「叔父殿、あれの処理の手配を頼む」

「……お前、後で覚えておけよ」

 

 目の端をひくひくと震えさせる侯爵を尻目に、ラミロはシアの前に立った。

 未だに挿入の衝撃から覚めない少女に向かって、満面の笑みを浮かべる。

 

「さあ、見学を再開しよう! まだまだ見せたいものがあるのだ。ついてきてくれるね? シアちゃん!」

 

 

 

 

 ――その後も、少女にとって地獄の巡回は続いた。

 腹の中は熱く滾ったゼリーが移動のたびにうねり、出口である尻には冷たいプラグが埋め込まれ、圧迫感が体を支配する。

 シアはもはや自分が生きているか死んでいるかすらの感覚もあいまいになりかけていた。

 意志のない人形のように歩みを進める。

 誰かの気配がしたら、笑顔を作る。

 決まった対応しかできない、畜生にも劣るほどの薄い意識下で、ただこれ以上の失態を犯さないためだけに歩を進めている。

 

 

 

 

 やがて、一行は壮麗な彫刻が施された巨大な扉の前で足を止めた。

 

「シアちゃん、ここには一人で入ってね。父上……国王陛下がいる」

 

 王子の言葉に、シアは疲労しきった顔を向けた。

 そこには幾ばくかの疑問と、偉大なる者がいる場所に一人で立ち入るのかという恐怖の色が浮かんでいる。

 

「少しだけ顔を見たいんだって。大丈夫だよ、そんな大したことはない……多分」

 

 そう言いつつ、ラミロが自分から扉を開く。

 中は広々とした貴賓室で、テーブルの一番向こうに王が座っていた。踏み入るのに少しだけ躊躇し、意を決して中に入る。

 

「こちらに来い」

 

 低い声に促され、シアは一歩進むのにすらはあはあと荒い息を吐きながら、時間をかけて王の前まで進んだ。

 杖をついた姿のまま、銀髪を垂らして深く頭を垂れる。

 

「……このような、不格好な対応で、申し訳ありません」

「よい」

 

 屈むことすら苦痛を伴う。そんな非礼を一言で受け流した王の返事に応えて、シアは甘えるように顔を上げた。

 ラミロと比べて、引き締まった精悍な体つき。獅子のたてがみのようにかきあげられた髪は遠目には黒々としていたが、近くで見ると白髪が目立つ。

 ぎらぎらと力強く輝く両眼は、シアの顔を薄く眺めたあと、腹の方を見た。おもむろに太い腕を伸ばし、ローブの前をはだける。

 

「あっ」

「……見苦しい腹だな」

 

 国王はそういうと、骨ばった指先でシアの腹をなぞるように撫でた。

 

「ひっ……」

 

 書庫での出来事を思い出してしまった少女は、身をすくませた。しかしその恐れに反して、それ以上の刺激は無い。

 ただただ、生まれたばかりの赤子を慈しむような優しい手つきで何度かさすった後、男は手を引いた。

 

「もう戻っていい」

「え……は、はい」

 

 それきり、もうシアに関心はないと言いたげに王は目を閉じた。

 少女は頭を下げ、重い体に鞭を打って扉までの道を戻る。

 

「……せいぜい、励むことだ。この国のために」

 

 少女の耳に、その呟きは届いていなかった。

 

 

 

  

 

 

 

 すべての巡回を終えた一行は、離宮の礼拝堂へと戻った。

 扉が閉じられた瞬間、最後の力を振り絞ったシアは膨れた腹を振り乱しながら中央の机ににじり寄り、机に突っ伏して息をする。

 尻に固く突き刺さったプラグが無ければ、楽器庫と同様の不始末を何度犯していたかも知れない――それほどに、腹が苦痛と疼きを訴えている。

 

「だ、大司教、さま……っ! も、もう、むりです……! お許しを……どうか、お許しをください……!」

 

 涙と汗で濡れ光った顔を上げ、祭壇の前に立つ大司教に向かってシアは訴えた。もはや聖女の威厳など何もなく、ただただ必死に救いを求めるように言葉を紡ぐ。

 グレゴールにプラグのことを含めた顛末を耳打ちされた大司教は、無表情のまま頷いた。

 

「よかろう、認めよう。……グレゴール君、その挿れられたという器具を抜いてやれ」

  

 その許可が、少女には天の福音のように聞こえた。

 厠(かわや)でもない、ましてや礼拝堂という神聖な場所で腹の中のものをひねり出そうとすることについての倫理観は、とうにシアの頭から抜け落ちている。

 

 背後に回ったグレゴールが、修道服をまくり上げた。解放を待ち望むかのようにふりふりと振れる尻を抑え、冷たい金属の台座に手をかける。

 今まさにプラグを引き抜かんとした、その時だった。

 

「――待て」

 

 鋭く声を発したラミロは、ゆっくりとシアに近づいた。汗で濡れ光る少女の顔を、静かに見下ろしながら囁く。

 

「よかったなあ、シアちゃん。これでようやく気持ちよくなれるね」

 

 ステンドグラスからの逆光に隠れて、ラミロの表情は見えない。

 少女は言われたことの意味が分からず、困惑に首を傾げた。

 

「……え? きもち、よく?」

「ああそうだよ。今までずっと我慢してきたから、さぞすごいことになるだろうなあ」

「そ、そんなことは、ありません。わたしはようやく、我慢してたものが……」

「ああ。我慢してたものがようやく出てくれるんだから。そうだろう?」

 

 ようやく苦痛から解放されると思ってからの、理解不能な問答。シアの表情が、みるみるうちに泣き顔に染まっていく。

 

「……本当に、分かりません。それより、早く、栓を……」

「ああ、やっぱり自覚なかったんだ、シアちゃん」

 

 王子が、少女に顔を近づける。

 その顔は、少女の心を完全に挫くのを目前に控えた恍惚の色に染まっている。

 

「――さっきの楽器庫で、きみが漏らした時さ。体をぶるぶる振るわせて……ものすごい気持ちよさそうな顔、してたよ」

「……え?」

「顔を真っ赤にして、だらだら涎垂らしてさ。見てるこっちが一瞬、頭がおかしくなったかと心配になったくらいだ」

「…………そっ、そんなこと、ありません……!」

 

 シアは、震える声で必死に否定した。

 みんなのために頑張って。

 みんなの顔が、次々に浮かんで。

 それでも、耐えることができなくて。

 

 一瞬、何もかもがどうでもよくなった気がして。

 全部、忘れることができて。

 

 ただ、体を包んだ、開放感だけが――

 

 

「…………」

「ふふ。いくら否定しても、今から分かるさ」

 

 ラミロが顎で合図する。グレゴールは促されるまま、握ったプラグの台座をしっかりと引っ張った。

 ぷぽんっ!! と空気が解放される音が響き渡る。

 ほんの少しの安堵感が、少女の体の力みを緩ませる――

 

「さあ、浄化の時だ」

  

 宣言とともに、王子がシアの体の下に手をやり――その膨れ上がった腹を、みぞおちから臍まで、絞り出すように圧迫した。

 栓の抜けたアナルからゼリーが一瞬、小動物かのようにひょこりと顔を出し――次の瞬間、決壊した堤防から溢れ出す鉄砲水のように、極太の白濁ゼリーが空中に向かってぶちまけられた。

 

 ――ぶりゅりゅりゅりゅりゅりゅっっ!!

 ――ぶじゅじゅぢゅぢゅっ、びちゃびちゃびちゃびちゃっっ!!!

 

「あ"ッ――――――――ひ、あ"あ"あ"あ"ぁ"ぁ"っっ!!??♡♡♡」

 

 それはもはや、排泄と呼ぶのもおこがましいほどの勢い。

 長時間に渡って腹の中で蓄えられたエネルギーは、水平に突き出した尻に沿って、極太の槍のようにゼリーを真っすぐ後方へ射出していく。

 直径十センチ近い固形は数メートルも渡って飛翔し、扉のすぐそばでびちゃびちゃとまき散らされた。

 

「あ"ぁ”ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"ぁ"っっ♡♡♡♡ あ"ーーーーーーーーーーーーーーっっ♡♡♡♡♡」

 

 シアの体温で固まった、何メートルにも及ぶゼリーの塊が、一つの生命体のようにうねりながら少女の腸内を滑るように逆流する。

 連日の肛虐で開発された体内を、媚毒という名の鋭いトゲによってがりがりと縦横無尽に掻きむしられて、シアは喉が裂けんばかりに絶叫した。

 

「ひぃぃぃ"ぃ"っっ♡♡♡♡♡ いぃ"ぎぃぃぃぃぃ"ぃ"ぃ"ぃ"っっっ♡♡♡♡」

 

 意味の分からない濁った嬌声が、礼拝堂にこだまする。

 机に自分からしがみついたまま、少女は小さな体を激しく痙攣させ、何度も何度も絶頂の波に打ちのめされた。ぶちぶちと脳内で何かが千切れる音がし、鼻血をだらだらと垂れ流す。

 あり得ない角度でしなった体に合わせて、噴出されるゼリーの飛び方も変わった。硬く張り詰めた筋肉が痙攣するたびに、角度の変わる噴水のようにいびつな放物線を描く。

 

 ――ぶぢゅぢゅぢゅっ!! ぶりゅりゅりゅりゅっ……!!

 

 一メートル、二メートル……少女の腹に収まっていたとは思えない量のゼリーが床を汚す。

 腹に力が入るたびに射出の勢いが増し、その感触で少女はまた絶頂した。

 そうするとまた体に力が入る。

 ゼリーの勢いが増す。

 イく。

 また力が入る――

 

「そうだ、全てをひねり出せ! それがお前の真の姿だ、シアっ!!」

 

 快楽の無限地獄に囚われたシアを、ラミロが嘲笑する。

 限界を超えて広がり切った肛門はもはや堰き止める役目を果たさず、その狭く暖かい腸壁はただただゼリーを吐き出すための肉の穴と化している。

 白目を向いて意識を手放したシアの体は、脳からの指示を失ってもなお体を大きく跳ねさせ、そのたびに白い塊の残りをぶじゅぶじゅと吐き出していく。

 

「っ――――――――か、ぁ…………♡♡♡♡♡」 

 

 奔流は一分近くにも及び、ようやく陰りを見せた。

 勢いが良すぎたために、途中で途切れて中に残ったままでいたゼリーの塊が、遅れて顔を出す。

 極太の棒杭じみたそれは、ごぼっ!! と鈍い音を立てて垂れ落ち、びちゃりと床で爆ぜた。

 

 気を失って弛緩したシアの体はそれを追うように、ずるずると机から滑り落ちる。

 かくん、と、床に膝を付き、そのまま横向きに倒れ込んだ。

 

「いやあ、素晴らしいショーだったよ、シアちゃん。こんな見世物、あの有象無象どもに見せるなんて勿体ない」

 

 ラミロは、ぱちぱちと讃えるような拍手をした。

 まだ子供じみた体の全身で快楽を追求したその姿勢を、微笑みながら褒め称える。

 

「……でも、まだ終わりじゃないんだよ」

 

 王子はそういうと、シルバーの箱の中から新たな注入器を取り出した。

 グレゴールがシアの体を抱き起こして立たせ、再度机の上に上半身を載せて抑え込む。

 そして、ぐったりと動かないシアの股、開いたままの肛門に、太いノズルを突き刺した。

 

「…………ぃ……っ」

 

 体の洗浄は、一回では終わらない。

 液体が再び体内に注ぎ込まれていく。その異物感に、シアの体はびくびくと微かに震えた。脳が機能を停止していても、その体はすでに否応なく快楽の記憶と感触を体に刻み込んでしまっている。

 

「ま、もう我慢とか無理だろうけど……っと」

 

 注入を終え、ゼリーが固まるのを待つ。いくらか待ってノズルを引き抜いたのと同時、尻穴から音が立った。

 

 ――ぶりゅ……。

 

 締めるべき括約筋は、指示を失って緩み切ったままでいる。

 自然と、腹の中で固まったゼリーは、自重で次々に漏れ出した。

 

 ――ぶぷっ、ぶりゅりゅりゅっ……ぼと、ぼとぼとっ、ぼと……。

 

 壊れた蛇口のように、白い塊が少女の尻から床に垂れ落ちていく。

 無様で、惨めな光景。

 そして、そのゆっくりとした排出がもたらす、内壁への刺激。

 

「……んっ、ぐ…………っひ……♡♡」

 

 華奢な体が、小さく跳ねる。

 絶頂する。

 イく。

 

 大きめの塊が漏れ出るたびに、敏感な体が浅く達する。

 魂が抜け落ちた体が、快楽だけを摂取して震え続ける。

 

「大司教。あとどれぐらい時間がある」

「あと数回ぐらいなら」

「はあ、勿体ないなあ。あいつなんかに先にいただかれるより、今すぐこの子に挿れたいよ」

「……王子」

「分かってる、分かってるよ。まったく、嫌な世の中だ」

 

 愚痴を吐きながらも、その表情と声は弾んでいる。

 空になった注入器を投げ捨て、ラミロは新たに箱の下に向かった。

 次を取り出すために。

 シアの体に快楽を、忘れられなくするために。

 

 

 

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