エンゼル・フォールン ~少女たちは歪んだ教義の犠牲になる~ 作:水上些事
ウル=クローグ大陸の南西、山岳地帯の中ほどに存在する街――エルミナ。
眼下に黒々と広がる深い森と、その先にある広大な海原を見下ろせる高地にあるその街は、いつからか一部の貴族たちの保養地として知られるようになった。
かつての魔大戦のおり、決戦を前にして満身創痍となっていた仲間たちを救うため、自らの命を神に捧げて癒しの奇跡を起こした一人の修道女。
その行いを悼むために巡礼者たちが作った小さな寄り合い所が、やがて多くの寄付や助成を受け大きく発展し、現在の形にまで至ったという由緒を持つ街である。
そのエルミナにおける名物の一つに、毎朝の修道女たちによる巡礼行進がある。
東の山の稜線から太陽が完全に顔を出すのと同時、鐘の音とともに街の最奥にある大教会の正門がおごそかに開かれる。中からは黒衣に身を包んだ数十人の少女たちが二列に並んで現れ、聖歌を高らかに歌い上げながら街の目抜き通りを進んでいく。
頭部のヴェールもなく、衆目に顔をあらわにした少女たちは年齢や体つきの差異こそあれ、いずれも例外なく見目麗しい。彼女らのしずしずとした歩みを、大道の脇に詰めかけた老若男女の群れが様々な種類の目つきで見守っている。
その列の先頭……唯一真っ白な修道服をまとった少女シアは、人々に向かって淡い微笑みを振りまきながら歩いていた。
透けるように日光を照り返す美しい銀髪が、風に乗ってたなびく。
服の両側は、腰骨のあたりから裾までスリットが開き、眩しい純白の両脚が覗いている。
理想の美を象った彫刻のごとく整った顔つきでありながら、しかしその柔和な微笑は
(……ああ、本当にすごいわ、シア)
その少女の斜め後ろで、聖歌を唱えながら付き従うパメラは、昨晩の羞恥や苦痛を微塵も感じさせないシアの様子に心からの敬意を抱いていた。
とても熟睡などできなかったのだろう、起床時には目の下に薄い隈を浮かべていたというのに、その優雅な所作はむしろ普段よりも洗練されてすらいる。
"杭"による調教……我が身を神に捧げるための新たな段階に踏み出したことが、彼女の自覚を促したのだろうか。
従者は複雑な気分になりながらも、今はその成長を素直に喜ぶことにした。
この後に行われる不快な行為から、少しでも気を逸らすために。
――さま。……じょさま……!
一団が街の中央広場を目前にしたその時、脇の人混みがにわかにざわめいた。突然、列を押し分けるようにして一人の若者が飛び出し、列の先頭に向かって走ってくる。
パメラたち数人がとっさに飛び出し、少女を後ろにかばう。暴漢かと思われたその男はしかし、シアの前まで来ると地に膝をついて、必死に額を地面に擦り付けた。
「聖女様! どうか母を、母をお救いください……!」
若者が悲痛な声色で叫ぶ。ほつれの多い粗末な身なりは、ここエルミナの住人ではないのだろうことを伺わせる。
男が飛び出してきた方をシアが見ると、そこには杖にすがるようにしてふらつきながら立っている老婆がいた。その片足は膝から不自然に曲がり、腫れあがっている。歩行すらままならないだろう状態なのは、誰の目にも明らかだった。
聖歌が止み、周囲が静まり返る中、シアは迷わずそちらに向かって歩き出した。
追いすがるパメラを振り切り、人の波を割いて、老婆の前にしゃがみこむ。
「大丈夫ですよ、お婆さん。すぐに良くなります……」
少女がそっと、膝に手をかざす。
神への祈りを、そっと呟く。
次の瞬間……手のひらから溢れた金色の光が、患部を包み込んだ。
息を呑む観衆たちの前で、光は呼吸するかのように十数秒ほど脈動し、やがて皮膚の中に吸い込まれるように消えていく。
衆目の中で行使された御業。光が完全に消えたあと、そこにあったはずの赤黒い腫れは跡形もなく、あるべき姿を取り戻した関節が残されていた。
「どうぞ、立ってみてください」
鈴の鳴るような可愛らしい声。それに応じて、老婆が地についた足に力を込める。
からん、と取り落とした杖が鳴った。
その老体は一瞬だけ、ぐらりと傾ぎ……倒れることはなく、ぴたりとその場に留まっている。
「……あ、あ、ああ……!」
駆け寄ってきた若者が、感極まって涙を流す。
老女は自らの足で一歩ずつ進み、若者と相対した。そのまま、お互いを抱きしめる。
「婆ちゃん……ああ、すごい、奇跡だ、本当に聖女様だった……!」
その言葉を皮切りに、大きな歓声と拍手が波紋のように広がった。
満足げな笑顔を見せる少女を取り囲む人間すべてが、目前で行われた偉業を手放しで褒めたたえる。
「まさか、実際にお目にかかれるとは」
「噂は本当だったのか」
「伝承の……伝説の聖女様の再来だ……!」
口々に噂する観衆と、嗚咽しながら礼の言葉を繰り返す二人に手を振って、シアは列に戻った。
背後の修道女たちが斉唱を再開しようとするが、瞬く間に観衆の熱狂の波に呑まれる。どうしていいのか分からず、一様に困惑しながら歩みを進めるその様には、みな年齢相応のあどけなさが宿っていた。
聖女という、大仰な名称。
今までのような単なる『商品の箔付け』ではない、本物の奇跡の力を行使できるシアという少女を指す言葉。
それをまったくもったいぶりもせず、対価も求めず、目の前の人を助けるために用いる精神性は本当に喜ばしい――パメラは理性の部分では、間違いなくそう考えている。
だけど、今は良くない。
(……見てない筈、ないわね)
背後の大教会、三階のテラス。
あいつは今日もこの行進を監視しているはずだ。
仮に、シアのやったことが直接見えていないにしても、この騒ぎの大きさからおおよそ何があったかは察するだろう。
そして、この後に起こることまで、容易に想像がつく。
今までに何度も何度も、くだらない欲望の捌け口とされてきたんだから。
――聖女様!
――聖女様!
――聖女様ぁーー!
大勢の賛辞が、皆に向けて控えめに手を振る少女の魅力を際立たせる。
その様子に対して従者の心は、暗く沈んでいた。
◆ ◆
――ぱちゅっ、ぱちゅっ! ぱんっ、ぱんっ、ぱんっ!
「は、っぐ、うぅっ……」
「このっ、役立たずが、無能が、馬鹿者がっ!!」
大教会の敷地内にある別館、その薄暗い一室。
そこでは、豪奢な飾りを体中に身に着けた修道服の男が、石壁に手をついた女に覆いかぶさって一心不乱に腰を打ち付けている。
隆々と太く脈打つ二十センチ長の肉槍は、女の体内に収めるにはあまりにも不似合いなサイズであった。その三分の二すら
壁際に体を追い込まれて苦痛を逃がすこともできず、漏れ出る苦鳴は反響する淫音にかき消される。
一年以上前からほぼ毎日、女はこの拷問じみた姦淫を受け続けている。
「パメラっ! 何のために貴様があのガキのそばに控えておるのだ。ああいう勝手なことをする前に無理やり引き止めるためだろう、がっ!」
「いぎぃっ!!?」
ずんっ! と棒状の凶器がひときわ強く最奥を突いた。噛み締められた歯の根がぎちぎちと鳴り、痛みが全身に伝播する。
針穴のように狭い膣道を何倍にも押し広げる亀頭の圧力が、子宮の裏側を押し潰して進むたび、パメラの意識にノイズを走らせた。
掻き出された分泌液が摩擦熱で気化して、部屋中に淫臭が充満する。その生々しい香りは、男の獣じみた欲望をさらに強く駆り立てた。避妊の心配をしなくていい肉便器の潤んだ膣ひだを、さらに容赦なく音を立てて擦り上げる。
傍から見ればまさしく強姦の現場そのもの。隔絶した体格差による女体の蹂躙。
淫水焼けした黒色の侵入者によって限界まで押し広げられた膣口が、女の心中を現すかのようにみちみちと苦痛を訴えている。
「くっ、ふぅっ……あいかわらずっ、マンコだけはいい具合、だなっ」
司祭はパメラの修道服の上から豊かな乳を揉みしだきながら、肉穴が生み出す快感に酔いしれていた。
これまでの数限りない交合で、柔らかく耕されてしまった媚肉。
男が陰茎を引き抜こうとするたびに、熱く茹った肉の粘膜が、赤子が乳を吸うかのように男根に絡み付いて追いすがる。
亀頭付近まで抜いたそれを再度侵入させると、女の意に反してぬめ付いた淫肉がにゅるにゅると肉幹を出迎える。その歓迎を振り払い、柔ひだに押し付けながら勢いよく摺り上げるだけで、たちまち射精感が立ち上ってくる。
長期間にわたって、複数の男から強要されてきた荒淫。
本来なら広がって戻らなくなるほど酷使されているはずのそこは、しかし不自然なほど血色のいい――新品同様の締め付けと、娼婦のような柔軟さを併せ持つ絶世の名器として、雄の本能を十全に満たすための役目を果たしていた。
「ぐ、うっ……好きで、こうなった、わけじゃ……」
「はははっ、好きでもないのにこの締まりか! 淫売のゴミクズが、こうして使ってやっているだけ感謝しろっ!!」
――ずんっ! ずんっ! ずんっ!! ずんっ!!!
「ぎぁっ、あ"…………やめっ、て……」
「ならば反省しろ! これは罰だ。役に立たない貴様への、罰だっ!!」
腰を掴まれ、性処理用具のように生膣を使われる。
なまじ女の内部の締まりが良いだけに、肉棒を引き抜こうとすると亀頭の傘が膣肉をまくりあげ、愛液まみれの肉幹とともに生々しく火照ったピンク色の膣壁が露出する。それが肉棒の抽送に合わせて出たり入ったりする様は、男の興奮をさらに煽った。
肉奴隷扱いとして罵倒はすれど、一般的には極めて整った切れ長の容姿。いずこかの辺境国特有のものだと言われるエキゾチックな肌色。
地味な修道服の下に隠された、男好きのする豊かな体つき。肉棒で突くたび服の中でゆさゆさと揺れる乳房は、手のひらで覆ってもまだ溢れるほど大きい。
そして、挿れただけで射精しそうになるほど、気持ちのいいマンコ。
皮肉にもパメラの存在は、その体を自由に「使える」一部の高位の者たちにとって、まさに天から与えられた存在に等しかった。
「まったく、とんだ拾い物だ! 気まぐれに拾ってやったガキの片割れが、こんな、ああ、こんなっ」
「……うる、さっ……い”ぃぃっ……」
「儂らにすれば、お前のほうがよっぽど『聖女』だ! どことも知れぬ王族どもの慰み者になるあのガキよりっ、お前の方がよっぽどなぁ!」
「あの子、をぉ"っ……シアを、そんな、ことにっ……あ"ぁぁっ!?」
うるさい口を塞ぐように、どちゅどちゅと司祭がスパートをかける。
苦痛に身をよじる従者の反応は肉穴の不規則なうねりとなり、ざらついた媚肉の粒がいやらしく男根の全身を舐めまわす。
窓の外にまで伝わる女の濁った悲鳴を、気に留めるものは誰もいない。四方を壁に囲まれた中庭、そこに面したそれぞれの部屋から響く同種の嬌声や絶叫。
パメラの声を聞きとがめるものなど、誰もいない。
だからこそ、遠慮はいらない。
奥を突くと、女が苦しむ。そうすると、体の防衛本能がより豊かな愛液を分泌する。
そうするとマンコの具合が良くなる。
気持ちよくなるから、さらに強く突く。
女が呻いて、涙を流して、さらにマンコの具合が良くなる――
「おぉっ、出る、そろそろ出るぞパメラっ! 儂の『聖液』を、貴様の中にくれてやる!」
「あっ、ぎっ、あ"っ、あ"あぁぁっ……!」
睾丸でぐつぐつと温められた大量の精液が沸き立つ。
巨根の分だけ長い尿道の管を、勢いよくせり上がる白濁の感覚に男が身を震わせた。
愛する女の膣だろうと、便器替わりの膣だろうと、ペニスを擦れば気持ちいいのは変わらない。
狭くぬめった小さな穴を、思うがままに押し広げる。
大事なのはそれだけ。
突く。
掻き出す。
突く。
掻き出す。
気持ちのいい射精のため。
腰を掴んで引き寄せて、最後に強く、押し込む。
「おぉっ、おっ! 出る、出るぞっ、出るっ、出るっっ!!」
――びゅるーーーーーーっ、びゅるっ、びゅくっ、びゅる、びゅるっ……。
低い呻きとともに鈴口から噴出した白いマグマが、女の腹を膨らませる。
男の射精は激しく容赦がなかった。初老に差し掛かる年齢にもかかわらず、勢いよく連射されるそれは瞬く間に膣内での行き場を無くし、ぶちゅりと接合部からにじみ出る。愛液まみれの肉棒を伝ってぼたぼたと床にこぼれ落ち、白色の小さな水たまりを作った。
普通の人間としては異常な量の射精を、パメラは嫌悪感に身を震わせながら受け入れた。
孕むかもしれない恐怖に毎晩怯えていたのも、十か二十くらいの日のうち。
様々なことを諦めた今では唇を噛み締めつつも、いっときの淫行が終わったことに一先ずの安堵感を得る――また夜になったら、教会と懇意にしている貴族に体を委ねなければならないのを分かっている上で。
「ふー、ふぅー……思い知ったか、
「……ッ」
「これに懲りたら、しっかり役目を果たせ。あんなに軽々しく市井の場で奇跡の業を行使されたら、教会の権威が丸つぶれだ」
奇跡とは安売りされるべきではない。始祖の聖女様の尊い犠牲にならって、厳格な規律の元で行使されなければならず――そんな聞き飽きた講釈を唱える司祭の肉棒はいまだに、熱く潤んでぬるぬると緩く締め付ける、淫肉の奥底に収まったままでいる。
普段のパメラは、そんな男の話を黙って聞き流す。
しかし今日に限っては……昨晩のシアとの交接の記憶、そして先ほど男の吐いた言葉――『お前こそが聖女だ』などという戯言が脳裏をよぎって、女は無性に笑いが込み上げてきた。
それは普段から思っている、男への
昨晩、シアの体をさんざん弄んだ自分も、見下しているこの男と大して変わらないのではないか……そうした、自嘲。
「…………ふっ、く、くくっ……」
肩を震わせる女の声を、男は耳ざとく聞きとがめた。放精の余韻に浸っていた気分が一瞬で消え失せる。
女の、汗に塗れて濡れた黒いショートカット。その中に隠された瞳が暗く歪む。
言葉を紡ごうとしている今のパメラはまさしく、正気を無くしていたと言っていい。
普段なら絶対に口にしない暴言。
それを行う原動力となっている、心底からのシアへの愛情。庇護欲。
独占欲。
「……? なんだ? お前、まさか笑っているのか」
「立派な、お題目だと、思いまして。今までさんざん交合の悦楽に浸っておいて、今更教会の権威などと」
「……黙れ。口が過ぎるぞ、売女」
「本音は、違うでしょう? あの子があんまり注目されると、『姿を消したとき』騒ぎになるかも知れないから。司教どもに厳しく、叱責されるから」
「黙れ」
「貴方があの子のこと、どう見てるか知ってるわ。私の全身をシーツで覆い隠して、あの子の名前を叫びながら腰を振っていたこともありましたものね。……ああ、ああ、あんなに可愛らしいシア。劣情を抱くのも、至極当然……」
「黙れ!」
「――隠さず素直に言えばいいのよ。自分も
「黙れぇっ!!!」
――だんっ!
男はパメラの首根っこを引っ掴み、その全身を壁に押さえつけた。その勢いで、未だ硬さを残した男根がぬぽっと音を立てて外気にさらけ出される。
湯気の立つ肉棒を男は手ずからしごく。みるみるうちに反り返ったそれを、再度膣口に押し当てた。
「……その舐めた口、二度と叩けなくしてやる」
今から行うのは制裁。
体だけの存在の癖に、生意気な口を叩いた罰。
壁際に強引に直立させられた女の体に沿って、その淫道も自然と垂直になっている。
男は、膝と腿に力を溜めた。
壊すために。
女を。
不浄の穴を。
跳躍するかのような要領で、全身全霊の力を込めて。
膣奥の先の、内奥を、穿った。
――ど、ずんっっっ!!!!
「ご、お"っっ…………!!?」
――どずんっ!! どぢゅんっ!!
「ごぽっ…………っぶ……」
――ずんっ! ずんっ! ずんっ!! ずんっっ!!!
「……か、ぁ…………っ……――――――」
――どぢゅっ! どちゅ、どちゅどちゅどぢゅどぢゅっっ!!!
「――――――」
それはもはやセックスとは呼べない、棍棒の殴打じみた衝撃。
一度目の突きで、腰が宙に浮く。
その足が地に着く前に二撃目が来て、逃げ場のない極限の痛苦が全身を満たす。
三度目。
四度目。
……五度目の突きで、とうとうパメラは意識を飛ばした。
圧迫された膀胱を通じて、勢いよく尿がしぶく。
自我が消えた虚ろな顔面からは、あらゆる体液がとめどなく流れ出ている。
女の脳内で弾ける多量の火花はその全身を不随意に痙攣させ、これまでとはまったく異なる肉壁の
真っすぐな形だった膣道は生き物のように波打ち、ペニスの根元から先端までをにゅるりと螺旋状に締め付ける。それを無理やり引き抜いて掻き分ければ、次の瞬間にはまた形が変わっていて、一口ごとに未知の刺激を提供する。
壁の表面にある無数の粒が、意思を持っているかのように陰茎を甘噛みし、音を立てながら吸うように舐めしゃぶる。
「ああぁっ! パメラっ! やはりお前は最高だ! お前は儂らにとって、最高の売女だっ!!!」
ただでさえ具合のいい蜜壺が、一突きごとに形状を変えて男性器をもてなしてくるのだから、男にとってはたまったものではない。後から洪水のように溢れ出てくる大量の愛液も、甘美な刺激を後押しした。
あまりの快楽に怖気すら感じて一瞬腰を引くものの、気が付いた時にはまた、どちゅんと奥まで挿れてしまっている。
未知のものを忌避する生存本能と、未知の気持ちよさを求める欲求本能という二律背反。男の体を突き動かすのは意志ではなく、
生殖。
マンコ。
中出し。
「出る、また出るぞパメラ! 貴様の魂を浄化する、神聖な施しだっ!!!」
罰を与えるという前言も忘れ、血走った目で腰の動きを最高潮にした男のうわごとを女はもはや聞いていない。
明滅する視界。
男の体に包まれるようにして、がくがくと上下する体。
常人であれば許しを請い、絶叫しているほどの苦痛すら、すでに途切れている意識には届かない。
生きた肉人形となったパメラをさんざん振り回した男根は、白濁を滾らせて放出の準備を整えた。
亀頭の傍まで出かかったそれを、奥の奥に流し込むために、最後の一突きをする。
「おぉっ……! 受け取れ、パメラっ!!!」
ど、ちゅん!
――びゅるーーーーーっ、びゅるるるるるるるるっ、びゅく、びゅるっ、びゅるるるっ……
「お”ぉぉ、受け取れ、受けとれっ……!」
「…………あ、ぁ……は……」
ぐりゅ、ぐりっ、ぐりゅっ。
びゅるるるっ……どぷっ、びゅるる、びゅく、びゅくっ……
「お"っ、お、おぉっ……」
「――――――」
二回目の放精だというのに、子種汁を送り出す睾丸は十回の脈動を超えてもまだ止まらない。
そのたびにパメラは体内を汚す脈動に合わせて無意識に自らの膣襞を震わせる。
もはや精液というより白色の血液がそのまま送り出されているかのようなそれは、たった三回目の脈動で溢れた。そこからさらに続く、実に二十回近くの放精のたびに、ぶくぶくと泡立った状態となって膣口から漏れ出る。
男女双方の意識が、無色透明に染まっていく。
びゅるっ、どぷ。 ――ぼたぼたぼたぼた。
どぷっ、どぷどぷ。 ――ぼたたっ。ぼたっ。ぼた。
びゅるっ、びゅく、びゅく……。
ぼた、ぼたた。ぼたっ……。
長らく、息を止めて射精の快感に浸っていた男が荒い呼吸をする。
肉棒を抜いたその一瞬、大きな泡が秘部を包んですぐに弾けた。栓を抜かれた膣口から、濁った粘液が我先にと顔を出して太い糸を真下に伸ばす。一度目の射精の時点ですでに床に出来ていた白濁の池の上から、さらなる雨垂れが大量に零れ落ちてその範囲を広げていく。
びちゃ、とパメラがその中に両膝を着いた。その体は息絶えた蛙のように弛緩したまま壁にへばりつき、ずるずると滑り落ちていく。
「ふー、ふー……思い知ったか。ゴミの分際で、生意気な口を、叩きおって……」
元は一度の姦淫で済ませるつもりだった司祭の男は息も絶え絶えに、パメラの修道服の端を掴んで自らの男根を拭った。
普段なら舌と喉で清めさせるところだが、既に大分時間を浪費している。自身にも職務がある以上、名残惜しいが早くこの場を辞さねばならない。
「さっさとここを片付けてあのガキのところに戻れ。あまり不始末が続くようなら、お前の『妹』がどうなるか分からんぞ」
壁にだらりと頭をついている女に言い捨てると、司祭は扉を開けて去っていった。
廊下から流れ込む風の流れが頬を撫で、パメラの意識をわずかに現実に引き戻す。しかしそれは、新たな苦しみへの繋がりに過ぎなかった。
「……うっ、ぇ…………」
気絶から目覚めて早々に、胃の底がひっくり返りそうな嘔吐感が全身を駆け巡る。足元の汚濁から立ち上る臭気がそれを後押しし、鼻孔の奥に酸味のある臭いが立ち上ってきた。
昨晩にシアの部屋で気絶し、目覚めたのはわずかに夜空が白みそうになってきた頃。そこから大急ぎであらゆる支度を整え、著しい倦怠感と寝不足に苛まれたままの体を押しての巡礼行進、そしてこの荒淫。
激しいめまいでぐらぐらと揺れる意識と視界の中では、今まさに込み上げようとしているものを押さえておくことができない。
せめてもと口に手を当てると、いつの間にか手に付着していた白濁液がべちゃりと顔を汚した。
我知らずとはいえ、嫌悪している男の出したそれを、自ら塗り付ける行為。
「…………ふ、ぐっ、ぅ……」
みじめさに、ぼろぼろと涙が零れ落ちる。
普段は必死に心を殺して飲み込んでいることが、心身ともに不調の極みにある今は受け入れ難かった。
生きるため。妹のため……でもそれはやがて、シアの心を致命的に傷つけることに繫がる。
先のない未来の展望からくる絶望感が、女の心中から今の状況を耐えようとする気を失せさせた。
我慢すると苦しい。
たまには、楽になりたい。
だったら今だけ。この、一瞬だけ。
喉が蠕動する。
沼の底から一塊の空気が、しゃぼんのように浮かんでくる。
体が硬直して、震えが、止まる。
「――パメラ! 口を閉じてなさい。鼻だけでゆっくり、大きく息を吸って」
唐突に、鼻先で清涼な香りが弾けた。
嗅覚を一つ一つ呼び覚ますかのような、ハーブの強い刺激臭が鼻孔に流れ込んで、パメラの意識を一気に覚醒させる。
声を発した人物――背後で膝立ちになった少女が鼻先に香水瓶を当てている。もう一方の腕で体を抱き起こしてくれたのを支えにして、パメラは言われた通り呼吸に集中することにした。
冷たくて心地が良い空気が喉奥に流れ込んで、今にも胃からせり上がってきていたものをゆっくりと押し戻していく。
「慌てなくていいから、しばらくそうしてなさい。……はあ、まったく。こっちまで服を洗わないといけなくなったじゃない。後で手伝いなさいよ」
パメラと同じように膝を精液に浸した少女が、不満げにぼやく。その声色はあくまで友人に対する軽口じみていて、従者はむしろ心が安らいだ。
リズ。何故ここにいるのかはわからないが、今は素直に甘えることにする。その腕に体を預けたまま何度か深呼吸をしているうちに、やがて嘔吐感も収まってきたパメラは、ふらつく頭でゆっくりと後ろに振り返った。
両肩の前に下ろした、つややかな二本の金髪の三つ編み。
シアより多少年上だというその容姿は幼年の面影を残しながらも、機敏な愛玩動物を思わせる健康的な生命力に満ちている。
大きく愛らしい目元をいたずらっぽく細め、指でつまんだ香水瓶を揺らしながら微笑む様は、ここの修道女には見られない余裕と愛嬌があった。
「ん、もういいの? まだ甘えていてもいいのよ?」
「……いえ、私も早く戻らなきゃ。リズ、肩を貸して。一人じゃ立てそうになくて」
「はいはい。人使いが荒いわね」
パメラの横にさっと並んだ少女は、女の腕を自らの肩に回してゆっくり立ち上がった。精液まみれになった服が足に張り付く感触に顔をしかめながらも、近くの机まで女の体を運んで天板に腰かけさせる。
「あーもう、べたべたするし部屋中臭いし。ほんとあんたたち、その……こんなのよく耐えられるわね」
口を尖らせながら窓を開けに行ったリズの首元には、ここの修道女たちと違って黒い羽根の入れ墨がない。
あるとき街の外で行き倒れていたところを救われ、滞在することとなった異色の経歴の少女。髪や肌ともに、ここの者たちとは質が違う輝く色つやは、かつて居たという上流貴族の実家の暮らしを彷彿とさせる。
「……好きで耐えてるわけないでしょう、色々事情があるのよ。それよりリズ、貴方は何でわざわざここに来たの? 今の時間はまだ草むしりの途中じゃなかったかしら」
「シアちゃんがあんたのこと心配してたから、代わりに忍び込んで来てやったのよ。今朝から顔色がめちゃくちゃ悪かっただの、朝の行進から戻って早々あのジジイに呼び出されて全然戻ってこないだのって」
「ああ……」
「そこ、机に水とタオルと着替えが置いてあるわ。掃除はこっちでするからさっさと支度して戻りなさい。それとも……ふっ、あたしが拭ってあげましょうか?」
おおげさなジェスチャーを取るリズに「バカね」と返したパメラは、震える体に鞭を打って体を拭い始める。
部屋の清掃の準備を始めたリズを横目に、パメラは一時の感傷に浸った。シアが自分のことを心配していたという言葉に、
――まだ聖女ではない、候補者という立場だったころから付き合いのあるシア。
あの頃のシアはまだ今のように余裕ある外面を取り繕うこともままならず、二人きりのときは何かにつけ服にしがみついて、内心の不安を吐露するような少女だった。
その臆病で心配性な本質は、今も大して変わっていない。
それでいて、かつての自分が苛立ちから声を荒らげたような時にも臆せず慰めてくれた、大事な記憶。
一刻も早く戻ってシアのことを抱き締めてやりたい。そんな衝動に駆られたパメラは、自分でも驚くほどスムーズに身支度を整えた。
先ほどさんざん奥を突きまわされて、未だに疼く子宮の感触を無視し、床の清掃を始めていた少女に話しかける。
「リズ……その」
「ここはやっとくからさっさと戻りなさい。慣れてるわ。あとそれとなくシアちゃんにお礼言っときなさいよ。あたしが来てなきゃ、あんた今でもこのきったない汁塗れだったからね」
「……そうさせてもらうわ。ありがとう、あなたがいてくれて良かった」
「あ、あたしじゃなくてシアちゃんにお礼しろって言ってるでしょ! いいから早く行きなさいよ!」
声を上擦らせるリズに笑みを返して、パメラは部屋を出た。
自分の任務は、シアの監視と行動の制御。あの子が教会にとって不都合なことをしないように見張り、導き、必要なら力ずくでも止めること。
……頭では分かっていても、シアが親子の元に歩いて行ったのをとっさに止めることができなかった。あの場面で迷わず他人を救うために動ける、その善性を抑えつけたくはなかった。
脳裏に、妹の姿がよぎる。
自分と一緒に、この街で棄てられた子。
あの豚どもの懐に軟禁されていて、会いたくても会えない子。
自分が身を捧げている間だけは、無事でいてくれる。
そう言われた。
本当に?
自分のやっていることがただの逃避なのかも分からないまま、パメラは歩いた。
今だけは、吐き出すのを許してほしい。
あの子の顔が見たい。
甘えたい。
心労から来る刹那的な衝動が、女を動かしている。
「…………リズ、ごめんなさい、ちょっと」
「は? あんた何で戻ってきてんの」
「変な臭いがしないか確認してくれないかしら。一応、一応ね」
「もう、本当にバカね! そこに立ちなさい!」