※この作品はR-18です。

精神を病んで無職になった30代男が、ある日貞操逆転して爆乳爆尻美女とエロい目に遭うお話   作:じしんえる

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第3話

「フフ、大丈夫?確か、初めての持ち込みだったわよね。緊張してるの?」

 

 一切彼女は動じていない。普段通りの対処という感じだ。俺の気にしすぎかな?にしても、気さくな話しぶり。名刺をチラ見した。よくわからないカタカナがついているが、ヒラではない役職らしい。結構偉い人なのか?こんなに若そうなのに?

 

「はあ、まあ。ご迷惑おかけしました」

 

 と愚にもつかない返答をし、お茶を濁した。ニヤニヤとこちらを彼女は見ている。

 

「大丈夫、大丈夫。皆、最初はそんな感じだから。……それじゃ本日は、持ち込みありがとうね。先日は某所の即売会で、あなたを見つけて注目していたの。早速原稿を拝見したいんだけど、いいかしら」

 

 流石編集者というだけあって、対応に慣れている。用意してきた原稿を渡した。受け取ると、慣れた手つきで原稿を取り出し、そのまま彼女は読み始めた。

 

 無言の時間が続く。予想はついてたけど、やっぱりこの時間は居た堪れない。やり場のない視線を机に向ける。少し顔も俯く。前職で働いていた時もそうだった。相手にじっと見つめられると、自分の作業に殆ど集中できない。そのせいで、相手が集中しているときには、目も顔も向けないようにする癖がついた。ベテランらしさが天道さんにはあるから、彼女は気にしないかもしれないが。こういう振る舞いって、印象悪く見えてしまうかな。

 

 浮足立つ時間が少し過ぎると、原稿を彼女が読み終えたようで、こちらに向き直った。

 

「ありがとう。よくできてると思うわ」

 

 おお、と一瞬気持ちが湧き上がる。が、ハッと我に返った。これって、あんまりいい返事じゃないんだっけ。あくまで「素人レベルで」よくできてるとか、「面白味はない」という意味合いだとか。という話をSNSか何かで読んだ気がする。

 

 俺が不安になっていると、

 

「ただね。主人公が男性なのに、子供が一人もいないのは問題だわ。セックスシーンもないし。これには何か意味があるの?」

 

 と残念そうに彼女はぼやいた。は?今なんて?

 

「もっと、男性的で精力的なところを訴えてほしいわ。何かの意図があるにしても、ちょっと思想が強いわね~」

 

 眉をひそめ気味に、彼女は続けた。日本語を話しているのは分かる。でも、文脈が読めなくて硬直する。何を言ってるんだこの人。

 

「……えっと。これ、青年誌の持ち込みで合ってますよね?成人向け漫画じゃないですよね?」

 

 流石に質問した。彼女のメールから、掲載誌の確認は何度もした。その雑誌の対象年齢や、興味分野を誤るなんて初歩的なミスをしたくなかったし。

 

 でも、人間って間違いをする生き物だから。どこかで俺が誤解しちゃったんだろう。じゃあまた、別の漫画雑誌担当の編集さんに持ち込みなおそうかな……。

 

「ええ、そうよ」

 

 事もなげに彼女は首肯した。ああ合ってるんですか、そうですか。へー、最近は性的描写の規制が厳しいって聞いてたけど、そんなことないんだあ。

 

 って本当か?え?濡れ場もおかしいけど、子持ちとか女性経験とかそんなの必要ないだろ!読み切りだし!ページ数を踏まえて、そんなの描いてる余裕もないし!20ページ前後しかない作品でエロシーンなんて盛り込んだら、それこそエロ漫画じゃん!

 

「うーん。もしかして、ウチの漫画読んでなかった?とりあえず一冊持ってくるから」

 

 と言って、彼女は席を外した。俺の冷や汗が乾く間もなく、すぐ戻ってくる。片手には見慣れた漫画雑誌。俺に手渡してくる。

 

 ハハハ天道さん、俺だって学生の頃からお世話になってる漫画なんですから、勿論存じ上げてますよォ。まあ最近は読んでないですけど。

 

 と、ペラペラと捲ってみ

 

「あれ!?」

 

 声出た。

 

 ヤッてばっか!どの作品も、必ずその話の中にセックスが描かれている。話の筋に関係なく。枠外の登場人物紹介を読むと、男性キャラには子持ちであることが明言。しかも別に婚姻関係なし。主人公は大抵、複数人の女性関係アリ。子種拡散してると。

 

 何これ?え、この漫画が全国区で販売されてるって言うのか。俺はたまげる。

 

「まあ、強引に誘ったのは認めるけど。通例は守った作品にはして欲しかったわねえ」

 

 彼女も呆れ顔を見せた。いや、こんなの、知らない。いつ日本ってこんなに性描写がユルユルになったんだ?

 

 ここでやっと俺は気づいた。そうだ、「常識改変」だ!多分、女性と男性の扱いが逆転してるんじゃないか。元の世界のいわゆるお色気・サービスシーンが、この世界だと男性の性描写になる。男の裸や、男がどれだけ性的に振る舞ったかどうかがエロいと認識されてるんだ。ということは、どれだけ男が女とヤッてるか、子供を孕ませてるかが興味を持たれるんだ。元の世界より過激じゃん。

 

 それに、この世界の男性の数は少なめなんじゃないかな。前ショッピングモールで、女性しか見かけなかったし。俺をチラチラ見てきたのも、興味津々ってだけだったのか。即売会でも注目されたのはそのせいかも。ああ、この出版社の受付が美麗な男性というのも納得だ。

 

 ってことは、この天道さん。何かの機会に、俺が男だってわかったから対面をゴリ押ししてきたのか?いわば性欲丸出しのオッサンじゃないかよォ。

 

 でもうってつけだ。俺の好みの女性なわけだし。電流が走ったかのようにこの世界が理解できてから、すぐに俺は行動を起こした。

 

「不勉強で申し訳ありません!それじゃ性描写の勉強をしたいので、天道さんが教えてくれませんか!?」

 

 席を立ち上がって言った。気持ちが逸ったので、声が大きくなってしまった。自分でも馬鹿げたこと言ってるなあと思う。周りに聞かれてないかな?でも、きっと彼女には効くはずだ。元の世界で言えばスケベなオッサンだし。

 

 彼女は固まった。そりゃそうだろうな、彼女からしたら都合が良すぎる展開だ。美人局みたいなことしてるし。

 

「え。……どうしたの、急に。よ、よくないわよ。それなら、ウチの漫画を読めばいいじゃない?大体の傾向は分かるでしょ?」

「いいえ、実地での経験が大事だと思うんです!どうかお願いします!」

 

 と、彼女の両手を無理やり握ってお辞儀。さっきまでの余裕はどこへやら、彼女はうろたえた。ニヤつきつつも、期待や不安の入り混じった複雑な表情だ。これならイケるだろ。

 

 彼女は「え~」と何度も呟いては狼狽えていたが、内心では答えが決まっているようだった。三回ほど押したら、彼女は折れた。今日の業務後、ホテルで会うことにした。その場はお開きにし、俺は出版社を後にした。

 

 全てが変わる───。そう強く実感しながら。

 

 

 

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