「褒美をあげなくてはね」
綺蝶のその言葉は、みこの身体の芯に、甘い痺れを走らせた。彼女はみこを抱き寄せると、深く、濃密な口づけをする。それは、罰の後の慈雨であり、新たな契約の証だった。唇が離れると、銀の糸が二人を結ぶ。綺蝶の瞳は、満足と、そしてこれから始まる宴への期待に濡れていた。
「貴女がわたくしのために選んだ、あの雅な魂。その献身に応える褒美は、格別でなくてはならないわ」
綺蝶はそう囁くと、みこの手を取り、寝室へと誘う。その足取りは、いつになく優雅で、まるで大切な客人をエスコートするかのようだった。
ベッドに腰掛けさせられたみこの前で、綺蝶はゆっくりと自分の着物の帯を解き始めた。滑らかな絹地がはらりと床に落ち、月明かりに照らされた彼女の完璧な肢体が露わになる。その光景は、どんな芸術品よりも官能的で、みこは息を呑むことしかできなかった。
「今宵の主役は、貴女への褒美。…そして、わたくしの身体よ」
綺蝶は、みこの前に裸身のまま跪いた。しかし、それは以前の遊戯のような隷属の形ではない。自らの美しさを誇示し、それを享受する栄誉をみこに与える、絶対的な女王の振る舞いだった。
「さあ、みこ。わたくしに触れなさい。貴女が望むままに、この身体を味わうことを許可します」
その言葉に、みこは恐る恐る手を伸ばした。綺蝶の肩に触れると、吸い付くように滑らかな肌の感触に、指先が震える。
「もっと、大胆になりなさい。貴女は、わたくしに選ばれたのよ」
綺蝶の言葉に背中を押され、みこは彼女の身体を確かめるように撫で始めた。しなやかな首筋、丸みを帯びた胸、くびれた腰のライン。その全てが、人間離れした完璧さを持っていた。みこは導かれるように、その胸の頂点に唇を寄せ、恐る恐る舌でなぞった。
「ん…っ」
綺蝶の喉から、甘い声が漏れる。その反応に、みこは背徳的な悦びを感じた。自分が、この絶対的な存在に快感を与えている。その事実が、みこをさらに大胆にさせた。
「上手になったわね、みこ。どうすればわたくしが喜ぶか、身体で理解している」
綺蝶はみこの髪を優しく梳きながら、その行為を促す。みこの唇は、彼女の身体をゆっくりと下っていく。腹を舐め上げ、その中心にある窪みに舌を這わせるたびに、綺蝶の呼吸が乱れていくのがわかった。
やがて、みこはその旅路の終着点、最も神聖で、官能的な場所へとたどり着く。綺蝶が、自分にしてくれたように。みこは、捧げ物をするような敬虔な気持ちで、そこに顔を埋めた。
「ああ…っ!」
綺蝶の身体が大きく弓なりになった。彼女から流れ出す霊力は、芳醇な葡萄酒のように甘く、みこの舌の上で蕩けていく。それは、ただ快楽を与えるだけの行為ではない。綺蝶の力の源泉に直接触れ、その魂の一部を味わうという、究極の交合だった。
「みこ…もっと…その舌で、わたくしの魂を掻き乱して…」
綺蝶の命令とも懇願ともつかない声が、みこの支配欲を煽る。みこは、教えられた全てを駆使して、彼女を悦ばせた。どうすれば彼女の呼吸が乱れるのか、どうすれば甘い声が漏れるのか。まるで自分の身体のことのように、手に取るようにわかる。二人の魂が、深く共鳴している証拠だった。
綺蝶が指をシーツに食い込ませ、絶頂に喘ぐ。その姿を見届け、みこは言いようのない達成感に満たされた。
だが、綺蝶はそれで終わりにはしなかった。
「素晴らしいわ、みこ。最高の褒美だった…次は、わたくしが貴女に返す番ね」
息も整わぬうちに、綺蝶は素早く体勢を入れ替え、今度はみこをベッドに押し倒した。その瞳は、先ほどまでの悦びに蕩けた表情から一変し、獲物を前にした獣の光を宿している。
「貴女がわたくしに与えた快楽…その何倍もの悦びで、貴女の魂を満たし尽くしてあげる。わたくしなしでは、息もできぬほどの、極上の蜜をね!」
有無を言わせぬ力で、みこの両脚が大きく開かれる。先ほどまで自分が味わっていた場所に、今度は綺蝶の熱い舌が突き立てられた。与えられた快楽が、今度は増幅されて自分に還ってくる。循環する快楽のループに、みこの意識は瞬く間に白く染め上げられていった。
もはや、どちらが褒美を与え、どちらが与えられているのかもわからない。ただ、互いの魂を求め合い、貪り合う。その倒錯した悦びこそが、二人を繋ぐ唯一無二の絆だった。
この夜、みこは完全に理解した。綺蝶の「最高傑作」であるということは、彼女を悦ばせると同時に、彼女によってこの上なく悦ばされる存在であるということを。その甘美な支配関係から、もう決して逃れられないのだと。