不思議なことに、目覚めは驚くほどスッキリしていた。
昨夜、あれほど激しく身体を隅々まで蹂躙され、快楽の果てに意識を失ったというのに、身体の怠さや痛みはどこにもない。むしろ、いつもより軽いくらいだ。
(……夢、じゃなかった)
隣で安らかな寝息(のように見えるだけかもしれないが)を立てて眠る、美しい女の横顔が、それが紛れもない現実だと告げていた。
昨夜の出来事が、記憶の奔流となって脳裏に蘇る。恥ずかしさと、身体の奥に残る微かな疼きに、顔に一気に熱が集まった。布団を頭まで引き被り、小さく呻く。
そんな私の様子を面白そうに見ていたのか、女はそっと身を起こすと、布団の上から私を抱きしめた。
「おはよう、みこ。よく眠れた?」
「……っ」
返事の代わりに、私はさらに固く布団を握りしめることしかできなかった。
その日からの日常は、完全に変質してしまった。
女は昨日と同じように、一日中私に引っ付いて離れない。朝食の時、テーブルの下で太腿を撫でられるのはもう当たり前になった。登校中、背後から抱きしめられ、耳元で甘い言葉を囁かれ続ける。
学校に着いてからも、地獄は続いた。
親友のハナと他愛ない話で笑い合っている時でさえ、女はお構いなしだ。私の背後から、制服の襟足に顔を埋め、うなじにそっと唇を寄せる。
「ん……っ!」
「みこ? どしたん?」
「な、なんでもない! ちょっと首が痒くて…」
突然身体を震わせる私を、ハナが不思議そうに覗き込む。必死で誤魔化しながら、私は内心で悲鳴を上げていた。
授業中はさらにひどかった。教科書を持つ手に指を絡められたり、机の下でスカートの中に手を入れられたり。先生に当てられても、頭が真っ白でまともに答えられない。声を抑えるのに必死で、全身の筋肉が強張っていくのがわかった。
その日の放課後、自室に戻った私は、ついに我慢の限界を迎えた。
「いい加減にして!」
背後から抱きついてくる女に向かって、私は初めて怒りの声を上げた。振り向いて、爛々と輝く金色の瞳を睨みつける。
「学校ではやめて! 授業に集中できないし、友達にも変に思われるでしょ!」
私の剣幕に、女は少しだけ驚いたように目を丸くした。そして、何かを考えるようにこてんと首を傾げる。てっきり無視されるか、あるいはもっと酷いことをされるかと身構えたが、女は意外にも素直に頷いてみせた。
「……わかった。授業中は、邪魔しない」
その言葉通り、翌日から女は授業中に手を出してくることはなくなった。ただ、私の隣の席に座り、うっとりとした表情で私を見つめているだけだ。
(聞き分け、いい……?)
少しだけ安堵したのも束の間、チャイムが鳴り、休み時間になった瞬間に、その期待は打ち砕かれた。待ってましたとばかりに、女の手が再び私の身体に伸びてくる。
聞き分けがいいんだか悪いんだか、全くわからない。
そして、夜。
ベッドの上は、もはや儀式の場と化していた。
電気を消し、布団に潜り込むと、待っていましたとばかりに女が私の上に覆いかぶさってくる。闇の中で妖しく輝く金色の瞳が、今夜の獲物を確認するように、私の顔を覗き込んだ。
「今夜も、かわいがってあげる」
その囁きが、始まりの合図だ。
パジャマのボタンにかけられた指は、昨夜のように引きちぎるのではなく、一つ一つを丁寧に、じらすように外していく。露わになっていく素肌に夜の冷気が触れ、ぶるりと身体が震えた。
「ん……やめ…」
か細い抵抗の言葉は、すぐに女の唇に塞がれる。舌が強引にこじ開けて入り込み、口内を蹂躙した。呼吸すらままならず、思考が蕩けていく。
唇が離れた時には、私のパジャマは完全にはだけさせられていた。女の冷たい指先が、私の火照った肌の上を滑る。鎖骨をなぞり、胸の膨らみに到達すると、その頂点を執拗に、しかし優しい手つきで転がし始めた。
「ひぅ…っ、ぁ…」
声を殺そうと唇を噛んでも、甘い喘ぎが漏れ出てしまう。その声を聴くたびに、女の金色の瞳が悦びに細められるのがわかった。
女の舌が、今度は私の身体を辿り始める。耳朶を舐められ、首筋を吸われ、その度にびくびくと身体が跳ねる。やがて舌は胸の頂きを捉え、ちろちろと子猫のように舐め上げた。指で弄ばれるのとは全く違う、直接的で湿った刺激に、腰が勝手に浮き上がった。
「だめ…っ、そんなとこ…」
懇願すればするほど、女の愛撫はさらに下の、柔らかな場所へと向かっていく。おへそを舐められ、恥骨のあたりを指でなぞられ、身体の芯がずくりと疼いた。
そして、ついに。女は私の両足の間に顔を埋めた。
「いやっ…!そこだけは…!」
必死に足を閉じようとするが、見えない力でいとも容易く開かされてしまう。そして、最も無防備で敏感な場所に、熱く湿った舌が触れた。
「あああああッ!」
絶叫。思考が完全に焼き切れた。
恐怖も羞恥心も消え去り、ただ純粋な快楽の奔流が全身を貫く。女は私の反応を楽しむように、時に優しく、時に激しく、舌と指で私を弄んだ。何度も何度も絶頂の波が押し寄せ、その度に視界が白く点滅する。もはや自分がどこにいて何をしているのかもわからない。
「も…むり…だめぇ…」
涙声の懇願は、もはや「もっと」とねだる媚態にしか聞こえないだろう。
その言葉に応えるように、女は最後の一撃を加えた。これまでで一番深い、突き上げるような快感が走り、私の意識は完全にブラックアウトした。
また、この快楽の海に溺れさせられたまま、眠りに落ちる。それが、私の新しい日常になりつつあった。