メインはアウラ(ついでにリーニエ)で一話は尊厳破壊だけ。
それから設定に関しては原作に準ずるようにしていますが、詳細が不明な点は勝手に解釈、また作者オリジナルの魔法もあるので悪しからず。
エロ小説なんて頭すっからかんにして読むもの。
襲いかかってくる女魔族の斧を、剣で受け止める。
振るわれる糸の刃を身体を逸らす最低限の動きで避けつつ、降り注ぐ血の槍を空気の動きで見切り、回避する。殺到する無数の兵隊も、動きだけは完成された戦士のものとはいえ、その首から上は失われ、死んでいるも同然。鎧を蹴り飛ばし、片手の短杖で『
〝随分と浅い猿真似だ〟
「…………後悔させてあげる」
一番近い少女の姿をした魔族を挑発する。
魔族にとって魔法は誇り、それを煽られて乗らない魔族など僅かでしかない。それを聞いた女魔族は地を蹴り、斧を構え周りに見向きもせずに突進してくる。
「リーニエ、ただの挑発だ!!」
「馬鹿が……!!」
リーダー格だろう男魔族が叫び、もう片方の少年姿の魔族が苛立つように吐き捨てる。同時に女魔族をフォローするよう血と糸の魔法が襲いかかってくるが、遅い。
模倣された動き、スピードは完璧だ。
だからこそ、補助で放たれた魔法は追いつけない。
土を蹴り上げ、砂埃を舞い上げる。
「────!?しまっ」
目潰し。だが、模倣した動きは止まらない。
技が振り抜かれた隙に、斧を握る右腕だけを切り落とす。
「クソッ!!」
少年魔族が吐き捨て、女魔族ごと断ち斬ろうと糸と血の刃が迫ってくる。同僚だろうが容赦ない。その隙に、宙を舞った魔族の斧を取り上げ、少年魔族に投げつける。
「は─────?」
回転する大斧が、少年の胴を上下に両断した。
糸の魔法を繰る間は無防備だ。だからこそ後方に徹されたが突然に狙われれば動くのも出遅れるだろう。
「ドラート……!
チッ、リーニエ、時間を稼げ!!」
「………!!」
それを見た男魔族が口惜しそうに舌打ちし、一歩下がりつつ叫ぶ。そして片腕を失いながらも女魔族が拳を構える、が。
模倣した動きを煽られて止められ、意識が落ちたか。
ハッとしたように動き出しては、遅すぎる。
「ご……っ!!?」
横腹を蹴りつけ、真横に吹き飛ばす。
枯れた地面を転がっていく女魔族を横目に、空へ逃げようと飛び立ち、こちらを睨む男魔族と視線が交錯する。
「………アウラ様に、報告せねば……!」
〝アウラはもう殺した〟
「何!?」
そう吐き捨てて笑う。最初から全員逃すつもりはない。
口を使い人を欺く魔族は、だからこそ。
〝『
「な、っ!?」
だからこそ、言葉に引っかかる。
突如、魔族が驚愕に魔法の制御を失う。
物ではない対象へは精神魔法となるよう改造した魔法。本来人間とは精神構造の違う魔族に精神魔法は通じない。だが、これは精神魔法であり、三半規管を砕くもの。それを一瞬の動揺を誘い、奴の精神が揺らいだ瞬間に発動した。
〝お前たちの好きな、嘘だ〟
「っ……貴様………」
目を見開き、魔族は額に青筋を浮かべる。
滑稽なものだ。この戦場で誰よりも冷静だったこの魔族が、今は誰よりも怒り狂ったように激情を浮かべている。握った剣をくるくると弄び、男魔族に嘲笑を向ける。
「私は、ここまで賎しい人間などに、負けるのか……」
〝お前たち以上に賎しい存在があるのか?〟
首を刎ねる。
「………リュグナー様」
起き上がってきたのか。
女魔族が、後ろで荒い息を繰り返して名を呟く。俺は握った大剣を背にベルトで固定し、女魔族に歩み寄る。
「………武器も、必要ないって言うの」
〝魔族の猿真似、お前の魔法はその象徴だな〟
「…………」
ゆら、と女魔族が揺らぐ。
剣を握っている。あの首無しの兵隊どもから取り上げたか。剣を抜く隙はない。
〝だから、どうした?〟
振り抜かれる剣。その刀身の腹を蹴り上げる。
絶望することを知った魔族は、決まって無言になる。それをどんな言葉にするか、どう口にすれば良いか分からぬ、ただ話す口を持たない獣になるからだ。
魔族は決まって容姿端麗だ。
人の姿に近いものも、そうでないものも。
片足を払い、女魔族が態勢を崩す。
意思のない空っぽの瞳が、こちらを真っ直ぐに見ている。
〝終わりだな〟
側頭部への蹴りで、女魔族の意識を刈り取った。
三人の魔族。確か、首切り役人とか言ったか。
それが全員揃えば勝てる。揃っているからには勝たなければならない、勝てなくてはおかしい。そういった驕りが連中の中にはあったのだろうが──────
一人は距離という油断をした。
一人は虚言に意識を揺さぶられた。
一人は他者から奪った力を己のものと過信した。
その狡猾さとは裏腹に。
生物としての性質は、憐れなほどに顕著だ。
──────
─────────
天秤が傾く。
白い光に、ゆっくりと。
「───────あ、り、えない………」
呆然と言葉を紡ぐ、桃髪の女魔族。
がらん、と天秤が地面に落ち、続いて女魔族が崩れ落ちる。
その周囲に広がるのは、膝までを氷に包まれた首無し……
死してなお、ようやく役目を終えた者たちの骸たち。
「有り得ない、有り得ない、有り得ない!!
私の魔力より、確実に減らしたはずのに………!!!」
〝断頭台のアウラ〟
「やめろ!!やめろやめろやめろ!!」
本当に───────────本当に、僅差だった。
ほんの少し、あと二度だけ、魔法が使える分だけの魔力。
たったそれだけの魔力を、解放する。
「────────────ぁ」
〝跪け〟
崩れ落ちた片足が、地を踏みしめて。
その桃色の髪が、垂れ落ちた。
「────────」
本当に、便利な魔法だ。
跪くアウラの横に落ちている天秤を、拾い上げる。あれだけ兵隊を動かしておきながらあれだけ保っていた魔力も、だがこちらの魔力と同じ土俵まで引きずり下ろせた。
恐らく、この天秤はアウラの魔法で副産物として生成された魔道具だろう。魔族は魔法を極めるのに生を費やすという、確かに、これはアウラの極めた魔法の証左ということか。
「……る……な………!!」
おや。
「その……汚い手で……その、天秤に……触るな……!!」
アウラが、立ち上がる。
どこまで〝服従させる魔法〟が続くかは知らんが、なにやら強い意思さえあれば一時的に対抗は出来ると聞いた。そこの完全性を再現出来なかったのだろうか。まぁ、いい。
ありがたい魔法の塊さえあれば、簡単なことだ。
嗤う。
手にした黄金の天秤を地面に落とし、踏み潰して。
〝『
「は─────────?」
空っぽになった手の中に、漆黒の天秤を造り上げる。
〝アウラ〟
「そ、んな……いやっ、いや……それは……わたし、の」
〝ひれ伏せ〟
「ごひゃく、ねん」
本当に、憐れで愚かで純粋で────────愛らしい。
「あ、ぁああぁあ、ぁああぁあああぁあ………」
膝をつき、頭を垂れるアウラはボロボロと泣き出す。魔族も悲しければ、悔しければ泣くらしい。それともこれすらも、魔族として人を欺く演技なのか?そうならば、素晴らしいと称賛すらも贈れろうと思うほどに、それは渾身の演技だ。
人間の真似事が、とても上手だ。
そうやって人間を真似続けて、一生を終えていくのだろう。その在り方は、どうしようもなく滑稽だ。
そして────────何より。
〝人が人足り得る頭を刎ね
その矜持と生の証を踏みにじり
侮辱し、冒涜し続けたのは
──────────他でもない、お前だろう〟
〝何を、泣くことがあるか?〟
笑う。嗤う。わらう。
泣きじゃくる真似をする、憐れで愛しい魔族に歩み寄る。
天秤を、傾けることも必要ない。
〝俺のモノにしてやろう〟
「あ、ぁ、あ……」
振り向く。
「な………っ!!?」
さぁ、その腕の傷から、どれだけ魔力が漏れ出した?
背後に忍び寄ってきていた、あの女魔族に天秤を傾ける。
〝『
嗤いが、止まらない。
─────
─────────
「魔族退治、見事だった……とでも、言うべきか?」
グラナト伯は、その目を鋭くしてそう口にする。
その両隣には全身を鎧に包んだ騎士がおり、グラナト伯も、その手を腰に差した剣の柄に添えている。迸る敵意は、だが意味のないものだ。
「見ていなかった訳ではない。
お前が、あの魔法を使うところを。
あの魔族どもを───────従えたところを」
俺もまた、背後に。
断頭台のアウラ、その配下であった女魔族を従えて、ここに立たせているのだから、敵意はあって当然だ。そして彼は、魔族に恨みを持つ、多くの人間のうちの一人なのだから。
ちなみにアウラはあの場に棒立ちにさせてある。結界を張り他の騎士に見張らせて放置だ。結界はフランメの防護結界のほんの一部を解析した特別製でもある。破壊は出来ず、だが出来たとして、感知くらいは出来る。それにアウラの片足を斬り落とし、『服従させる魔法』で魔力を常に放出し続ける命令を下した。これでアウラの魔力が回復することはない。
「何が目的だ」
〝単に、魔族討伐の報告を〟
「惚けているつもりか」
グラナト伯は、静かに言う。
『服従させる魔法』は危険すぎる。アウラを下した人間が、それをコピーしていると分かっていれば警戒すべきだ。俺も同じ状況ならそうするだろう。
「ならば従えた魔族。それは、どうするつもりだ」
〝慰み者として、献上でもしましょうか〟
「冗談にしては度が過ぎるぞ」
〝では、防護結界でグラナト領へ
侵入出来ないようにされてはどうでしょうか〟
「なんだと……?」
〝私は魔族を連れ、グラナト領を出ましょう。
そうすれば、すぐにでも防護結界を使えば良いかと〟
「貴様………」
グラナト伯は柄を握り締める。
同時に騎士たちも臨戦態勢を取り、空気が張りつめる。
だが。
「──────いや、それで、良い。
二度と………二度と、ここには近付かんでくれ」
彼は、首を横に振ってそう言った。
冷静になったのだろう。こちらが敵意を向けられ、無防備のままであったのも証拠になったはずだ。
「報酬は─────」
〝不要です。
そして、魔族も研究が済めば殺しましょう〟
びく、と女魔族の肩が震えた。
これもまぁ、嘘ではない。飽きたら殺すつもりだ。
「……………最後に、聞くが」
グラナト伯は、俺を見て問うた。
「お前は、戦士ではないのか」
〝戦士の誇りも、魔法使いの矜持も…………
とうの昔、故郷を魔族に焼かれたとき、捨てました〟
「…………………行け」
グラナト伯に背を向けて、俺は女魔族を連れ部屋を出る。
町を出て、アウラを天秤で再び従え直す。
そうして、死んだように沈黙する少女の魔族と、ブツブツとうわ言を呟き続けるアウラを連れ、グラナト領を出た。
♡喘ぎとかいる?
-
いるよ
-
いらないよ
-
作者の好きにしていいよ