※この作品はR-18です。

無表情天才美少女魔術師がメチャクチャギタギタに快楽を押し付けられる話。   作:ふぁふわ

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魔術師編
1 異世界に来たら、無言の魔術師少女が魔力を撒き散らしていた★


 田中健一、34歳。独身。ブラック企業。

 

「はぁ……明日も仕事か。給料日まであと10日もあるし、節約しないとな」

 

 突然、足元が青白く輝き始めた。渦巻く光が冷たい風を伴って肌を刺すように広がる。

 

「えっ、なにこれ……?」

 

 慌てて後ずさろうとした瞬間、世界がひっくり返った。地面に叩きつけられる衝撃が背中から全身に響く。

 

「うわっ! 痛っ!」

 

 尻餅をついた田中が顔を上げると、目の前は鬱蒼とした森だった。巨大な木々が空を覆い、葉ずれのささやきが耳にざわめく。

 

 遠くで、鳥とも獣ともつかない低くうなる鳴き声が響き、湿った土の匂いが鼻を突く。唐揚げ弁当が泥にまみれて転がっていた。

 

 田中は現実味を取り戻す。胸の鼓動が耳鳴りのように響いた。

 

「……は? 何? どこだここ?」

 

 田中は呆然と周囲を見回した。頭が状況を理解しようとフル回転するが、答えは出ない。ポケットからスマホを取り出そうとしたが、何故かこんにゃくが出てきた。田中に吐き気が込み上げる。

 

(いやいや、夢だろこれ。夢に決まってる。疲れてるんだよ、俺……)

 

 その時、背後でガサガサと茂みが揺れる音がした。田中がビクッと振り返ると、そこには巨大な猪のような獣が牙を剥き出しに睨み、殺意の気配を濃厚に撒き散らしていた。

 

「うわぁぁぁぁ! 何だよそれ!?」

 

 悲鳴を上げて立ち上がり、反射的に逃げ出した。涙目になりながら木の根を蹴散らして走る。

 

「助けてくれぇ! 誰か! 警察! 自衛隊! チート能力! 何でもいいから!」

 

 足がもつれ、木の根に引っかかって転倒し絶体絶命となる。どうせブラック会社で過労死するかの二択でしかないと田中は切り替えて、目を閉じ死を覚悟した。田中は切替えの早い男だった。

 

(仕方ねぇ、よく見ればクソ上司よりは可愛い猪だしな……南無三……)

 

 だがその瞬間、田中の右手が唐突に眩く光った。すると鋭い風切り音が響き、棘猪の首に一本の矢が突き刺さる。獣は咆哮を上げて倒れ動かなくなり、血の臭いが森の空気に混じった。

 

「え……?」

 

 呆然とする田中の前に、木々の間から人影が現れた。長い金髪を風に揺らす若い女で、軽装を纏い、手には弓を携えている。均整の取れた肢体と無駄のない動きは、訓練を積んだ者のそれだった。

 

 整った顔立ちはファンタジー映画のエルフのようで、ショートパンツから伸びるスラリとした足が健康的な色気を放ち、白い肌が木漏れ日を浴びて輝いている。彼女は田中を見て、少し驚いた表情を浮かべた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「あなた、どこから来たの? その妙な服は何?」

 

 田中は鼻血を拭いながら、混乱した頭で返事を絞り出す。

 

「え、俺? 田中……田中健一。えっと……ここどこ? あんた誰?」

 

 女は眉を寄せて田中をじろじろと見つめた後、ため息をついた。

 

「ここはエリドールの森よ。私はリリア。あなた、こんなところで何してるの? 」

 

「いや、俺だって……なんか光って……!」

 

 必死に説明する田中を見て、リリアは少し考え込むように顎に手を当てる。

 

「転移みたいね……珍しいこともあるんだね。まあいいわ、あなた、とりあえず私と一緒に来た方がいいよ。この森は夜になると殺し熊(ころしぐま)が出てくるわ」

 

「殺し熊って何!? 何を殺しターゲットにしてる生き物なんだよ!?」

 

 リリアに促され、田中はよろよろと立ち上がった。こうして、冴えないオッサン田中の異世界生活が始まったのだ。

 

 

 

 

 **********

 

 

 

 田中はリリアに連れられてエリドールの森を歩いていた。服は転んだ拍子に破れてボロボロだ。リリアはそんな田中の惨めな姿を見て、励ますように声をかけた。

 

「うん、たまにはそんなこともあるよ。生きてるだけで儲けものって思わなきゃ!」

 

「死にかけてるんですが!?」

 

 森を進むと、小さな集落が見えてきた。木造の家々が点在し、煙突から上がる煙が薪の香りを運んでいる。

 

「ここはオルン村だよ。とりあえず今夜はここで休もう!」

 

「どう見ても日本じゃねぇんだよなあ……うっし、切り替えて行くぞ」

 

 オルン村に着くと、リリアは村はずれにある小さな酒場に田中を連れて行った。二人がテーブルにつくと、田中がため息を漏らす。

 

「はぁ……やっと落ち着ける……でも俺、どうすりゃいいんだこれから……」

 

 酒場のドアが閉まると、外のざわめきがふっと遠のいた。厨房からはこんがりした肉の匂いが漂って来る。田中は木の天板に肘を乗せ、一息ついた。 

 

 だがその時、酒場の外からけたたましい馬の嘶きと叫び声が聞こえてきた。田中が慌てて窓に駆け寄ると、村の入り口付近で何かが起こっているようだった。

 

 黒いローブをまとった数人の男たちが、何かを叫びながら剣を手にしている。喧騒にまみれて舞う埃が緊張を増幅させる。

 

「何だあれ!? 強盗か!?」

 

 田中が叫ぶと、リリアも窓に近づき、鋭い目で外を見た。

 

「あれは……『影の使徒』!?」

 

「影の使徒って何!? なんかヤバそうなんだけど!」

 

 刹那、冷気のような魔力の気配が店内に揺らめいた。酒場の扉が勢いよく開き、小柄な人影が飛び込んでくる。そこには一人の少女が立っていた。

 

 クリアブルーのボブに、硝子のような白い肌。年齢は15か16歳くらいに見える。瞳は深い蒼色で、感情が読み取れないほど静かだ。

 

 黒と紫を基調とした少しボロボロになったローブをまとい、細い手に短い杖を握っている。美少女という言葉がそのまま当てはまる容姿だが、その表情は無機質で、まるで人形のようだった。

 

 

【挿絵表示】

 

 

「……ごめん、巻き込んだ」

 

 少女は小さな声で呟いた。杖を握る指は白く、声は静かだが、切迫した響きが込められている。

 

「あなた、 あの連中に追われているの!?」

 

 リリアが問うと、少女は小さく頷いた。視線を一瞬伏せ、息を浅く吐く。

 

「……追われている。あいつらは私の魔法を奪おうとしている」

 

「魔法?」

 

 田中が聞き返すと少女は彼を一瞥し、驚愕に目を見開いた。しかしすぐに表情を戻し、困惑とも安堵とも取れぬ顔で僅かに眉を寄せる。

 

「……やっと来たか」

 

「え、俺? ついさっき来たばっかだけど……」

 

 田中が意味も分からず混乱している中、少女が静かな声で名乗った。

 

「……私は魔術師、セリス。森を逃げてきたけど、見つかった」

 

 無口で感情をあまり表に出さない口調だが、その言葉には緊張感があった。杖の先端で紫の光が微かに揺らぎ、空気のざわめきが増した。

 

 切迫した空気のまま、外で影の使徒たちが酒場に近づいてくる足音が聞こえてくる。田中の顔が真っ青になり、汗が額を伝った。

 

「ヤバイぞ来てる!」

 

「どう見ても悪人、殺るわ!」

 

 リリアが弓に矢をつがえた。セリスは杖を握り直し、静かに呟いた。体がわずかに震え、瞳の奥で蒼い光が一瞬強まる。

 

「……私が戦う。巻き込んだのは悪いけど、死にたくなかったら下がってて」

 

 その言葉と同時に、彼女の杖の先から紫色の光が溢れ出し、部屋全体が不思議な気配に包まれた。まるで空気の密度が変わったような、妙な圧力。 

 

 田中は思わず言葉を失っていた。細い腕に握られたその杖から、底知れぬ魔力が流れ出しているのを感じる。田中の肌がざわめき、息が浅くなる。

 

(……すげぇな、あの子。こんな力、俺の人生で見たことねぇよ)

 

 それが田中とセリスの出会いだった。

 

 

 

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