【完結】「ラッキースケベ?いいや、これは運命だった」〜転移してきたユウカと二人暮らし〜 作:春画屋@二次創作R18
ユウカと出会い、夜に帰る以外はずっと一緒にいるようになって数日。僕たち二人はすっかり仲良くなっていた。
例えば、ユウカの生活費の話。
「そんな、家計簿なんてつけなくていいって」
「だって、私の生活費は今のところ全額出してもらってるんですもの。無駄遣いは出来ないでしょう?」
「洗濯も食事も自分でやって、部屋の掃除までやってくれてるんだから、別に構わないって話でしょ?」
「まあ、そういうことにはなってるけど、やっぱり申し訳ないのよね〜。せめて、帰る前に一度はご両親にあいさつに行かないと」
「いやいや、あいさつって。結婚するんじゃないんだから」
「それにしても、マモルくんって無駄遣いほとんどしないわよね? ちょっと物足りないかも」
「無駄遣いを
「ふふっ、冗談よ♪ いつも問題児ばかり相手してるんだもの。優等生は助かるわ」
といった感じで、ユウカ自身の生活費、僕の小遣いに加え、何ならうちの不動産収入の管理ぐらいやってくれそうな勢いだ。
僕の勉強の話。
「さ、それじゃ一緒に勉強しましょ。キヴォトスと変わらないみたいだし、数学ならバッチリ教えられるから、分からないところは遠慮なく聞いてね♪」
「別にそこまでしなくていいよ?」
「そうはいかないわよ。万が一にも私のせいで成績が落ちたりしたらまずいでしょ?」
「それにしたって、わざわざ自分の時間を割いてまで……いいの?」
「もうっ、そんなにあれこれ考えなくていいのよ。教えがいがあるから、マモルくんとなら私だって楽しいし♪ そ・れ・と・も、私に勉強を教えてもらうのが嫌なの?」
「そりゃ……僕だって楽しいよ」
というわけで、夏休み中の僕の勉強もユウカがつきっきりで管理してくれることになった。
ブルーアーカイブでもそうだったけど、こういう世話好きなのが本来のユウカの姿なんだろう。とにかく楽しそうだ。
夕方には仲良く二人で買い物。
「今日は、夏野菜と緑黄色野菜のカレーに挑戦しようと思うの。コスパもいいし、栄養バランスもバッチリで完璧なんだから」
「ユウカ、料理上手くなったよね」
「ふふっ、今のところ、私の手料理を食べたことあるのはマモルくんだけなんだからね? ……あっ、アイス安いわよ。ほら、30%引きですって!」
「本当だ……でも、一回じゃ食べきれないな。体重、気になるんじゃない?」
「べっ、別に、どうしても食べたいってわけじゃない、けど……。この金額でこの量だったら絶対に買いよ! それに、夕飯の後にきっと何か食べたくなるでしょう? 買っておいて損はないわ!」
「なるほど、食べたいのね。じゃあ、買おうか」
「違うってば! もうっ、いじわる!」
なんて言って、僕をぽかぽか叩く。……とまあ、すさまじいデレっぷり。たまに素直じゃないのも、これぐらいなら、それはそれで魅力だし。
長々とのろけ話のようになってしまったけど——というか、実際のろけ話なんだろうけど、どれだけ仲良くなったかは分かってもらえたと思う。それどころか、僕たちは
これも、のろけ話みたいなものなんだろう。普通の男だったら喜ぶ……いや、中には僕のように微妙な気持ちになる人もいるんだろうけど、基本的にはみんな喜ぶだろう。とにかく、度が過ぎるほど仲がいいって話なんだから。でも——
——多分、僕、男扱いされてない。
初日の時点で、もうされてなかったんじゃないかという話もある。当たり前のように下着売り場に連れていかれたし。
とはいえ、やっぱり決定的だったのは、あの添い寝だろう。何しろ、ユウカ本人が「あれはちょっと」と思うぐらいの状況で、一切何もしなかったんだから。おかげで僕は「絶対の信用」を勝ち取ると同時に、「絶対に無害な存在認定」も頂いてしまったらしい。
「あの後も、何かにつけて下着姿を見ちゃったり、事故でいろんなところを触っちゃったりしたけど、僕の方も慣れて全く動じなくなっちゃったしな……」
人間、恥ずかしがりもしない相手だと、大抵のことは慣れちゃうものだとよく分かった。実姉や実妹には興奮しない(する人もいるのかも知れないけど)という話がよく分かる。逆に、慣れちゃってる人相手に何を見られても恥ずかしくなくなるのも分かるようになった。お互いに異性だと思わなくなる、負のスパイラル。
「まあ、変に意識しちゃっても困るし、ちょうどいいんだけどね。キヴォトスに帰ることが決まってる以上、どうやってもユウカと付き合ったりは出来ないんだし」
仲は良くなったと思う。でも、そこで
「裸を見たら、ちゃんと興奮する、ってのが恋愛の条件なんてことはないんだろうけど……。ユウカー? 来たよー。……入るよー?」
声をかけても反応はなかった。玄関の扉を開けて中に入ると……
「——これだもんなあ」
「きゃーっ⁉︎」
ブラもつけていない上半身裸のユウカが、黒のタンクトップを着ようとしているところだった。下もパンツのみ。こうやって、悲鳴はあげるんだけどなぁ。
「黙って入ってくるのやめてって、いつも言ってるでしょう⁉︎」
「声もかけたし、奥の部屋で着替えてっていつも言ってるじゃない。じゃあ、外に出てるから着替え終わったら言って」
「別にいいわよ、すぐ着ちゃうから。そっち向いてて」
「はいはい」
やっぱり、同じ部屋にいることは大して問題じゃないらしい。もう恥ずかしがる様子もなく、普通に着替えている。
「ブラくらいつけなよ。すき間から見えちゃうよ?」
「何回も見ておいて、今さら何言ってるのよ。東京の夏って暑いんだもの」
「つけてないと、ものすごい揺れるからすぐ分かるし」
「そんなの、マモルくんと一緒にいる時だけよ。男の人には分からないだろうけど、ブラジャーってすごく締めつけるんだから」
「そういう、男が生きていく上で一切必要なさそうな知識、もういらないから」
女子校に行くと夢が壊れるというし、ユウカはまだマシな方なんだろうけど、やっぱり「仲のいい女友達」のカテゴリに入れられてる気がする。セミナーの
大体、ユウカの場合、恋愛対象になり得る相手へのリアクションと言えば……
『せっ、先生! 先生が来るなら、もっとちゃんとした格好をしてくれば良かった……うぅ……』
『あー、もう……。先生にこんなこところを見られるなんて……恥ずかしい……』
『先生の前で、可愛くないところを見せたくなかったのに!』
恋愛対象というか、全部相手は先生なんだけど、こんな感じだろう。ブルーアーカイブのストーリーでは、どれを読んでもそんな感じだった。ま、僕には縁のない話だ。
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「それにしても、何か変な感じ。いつもだったらセミナーの仕事に追われてるのに、逆にやることがなくて時間が余っちゃう。……ね、マモルくんは部活とかやってないのよね?」
「それよりバイトがしたいよ。経済力の大事さが身にしみてきた」
「まあ、マモルくんが暇なおかげで助かってる私が言うのもなんだけど……何かやった方がいいわよ。そうね、もしマモルくんがミレニアム生だったら何がいいかしら」
「僕がミレニアム生だったら?」
そう言われても、やっぱりピンとこない。
「C&Cとかヴェリタスは……無理よね。そういうところじゃないし。トレーニング部って感じでもないわよね。あとはエンジニア部に、ゲーム開発部……マモルくん、真面目だものね、ああいうところに
「セミナーなんかいいかなあ」
「え⁉︎ セミナー⁉︎ セミナーがいいの?」
「セミナーって、要するに生徒会なんでしょ? もし入るなら、そこがいいかもって」
「私もちょうどそう思ったところなの! 真面目だし、仕事も出来そうだし、やっぱりそう思う?」
「いや、ユウカがいるからさ」
「わ、私⁉︎ そ、それって、私と一緒に仕事がしたいってこと?」
「そういうことかな? ほら、一緒だったらユウカにいろいろ教えてもらえそうだし」
「……あ、そういうことね。まあ、いくらでも教えるけど……」
ガッカリされた。何なんだ。そりゃ、ユウカと仲良く楽しく仕事がしたいっていうのもあるけどさ。
一番はセミナーの仕事が性に合ってそうってことだ。僕は、何かやりたい事をやるより、誰かがやらなきゃいけない事を引き受ける方が、やり甲斐を感じられる性分らしい……と、最近思っている。そういうところが、ユウカと気が合うのかも知れない。
「でも、マモルくんがいたらノアも喜びそうね。コユキみたいに問題児はセミナーにもいるから、しっかりした人がいると心強いわ。それに楽しそう」
「僕もキヴォトスに行ければいいのにね」
現実にはキヴォトスでの生活は難しいだろうし、そもそも僕は家族や学校、今の生活を捨てる事は出来ない。でも、夢を見るのは自由だ。
僕たちは、そんな風に午後を過ごしていた。
「それにしても、こんなに暇を持てあますなら、株取引とか出来ないかしら。でも、身分の証明は必要だろうし……」
「それ以前の問題として、キヴォトスだと学生が株取引とか出来るの?」
「出来るわよ? こう見えても、先物取引で一財産
ユウカが、えへん、と得意げに胸を張る。そういえば、セミナーのグループストーリーか何かでも言ってたっけ。実際にやってたんだ。
「本当に無理なのかしら。ちょっと調べて……。ね、タブレット貸してくれる? 一緒に調べましょう?」
「一緒に? ああ、うん……」
「どうしたの? 早くこっちに来て」
ユウカが、隣に来るよう手招きする。この子、分かってるのかな。僕も、多少裸を見たりとかは慣れちゃったけど、何でもかんでも平気なわけじゃないんだけど。とはいえ、逆らえない。
すぐ隣、至近距離に座る。黒のタンクトップに包まれた、たわわな胸……っていうのも、この距離では目の毒なんだけど、それよりも。
むき出しの二の腕、健康的な足、それに太もも……。胸とかお尻とか、分かりやすいエロと違うから、ユウカもピンとこないのかも知れないけど、最近、こういう誘惑の方がつらい。
「——で、——が、——」
「あー、うん、そうね」
一応返事はしているけど、何の話をしているのか全く頭に入ってこない。とにかく、視界に入れないように……
「ね、聞いてる? どうしたの? どこ見て——ああ、ひざ枕でもして欲しいの?」
「ひざ……っ、いや⁉︎ そんなつもりは全くないけど?」
「ふふっ、そんなに焦らなくてもいいわよ。女の子のひざ枕って、男の子には夢だったりするんじゃないの? 頼んだって、なかなかしてくれないでしょうし」
まず、そんなことを女の子に頼む度胸がある奴ってそんなにいないと思う。少なくとも、うちのクラスでやったら男子全員から(失敗するの前提で)勇者扱いされると思う。
「してみる?」
「しないよ⁉︎」
「別にマモルくんだったらいいわよ? いつもお世話になってるし、頑張ってくれてるし。なんなら、そのまま寝ちゃってもいいわよ?」
ちょっと——いや、かなり嬉しいし、お願いしたいのはやまやまなんだけど、それは普通の服を着ている時に言ってもらえないだろうか。ホットパンツだから、太ももの付け根まで完全にむき出しなんですけど。生足に密着することになるんですけど。
「どうしたの?」
ユウカを見ると、「しないの? ちょっと恥ずかしいけど、あなたならいいわよ♡ ほらほら」とでも(半分以上、僕の願望だけど)言いたげに、ニコニコ笑っている。これは……ひざ枕ぐらいなら、今まで信用を築いてきたごほうびだと思って、してもらってもいいのか? その信用を全部崩しかねないぞ? ひざ枕だけですむか? いや、親戚のお姉さんとかにしてもらうんだと思えば……いやいや、本当にひざ枕だけで我慢出来るか?
…………。
…………。
「気持ちいい?」
「はい」
「ふふっ、はい、なんて可愛いわね」
結局、「ひざ枕だけ、ひざ枕だけだから」という己の内なる声に負けてしまった。僕の頭の中は邪念でいっぱいで、全く可愛くないと思います。ユウカの中では、それこそ親戚の年下の男の子みたいなモードに切り替わってるみたいだけど。
「何だかアリスちゃんを思い出すわねー。本物を見たら、ビックリするわよ? 可愛いんだから」
どうやら僕は、「アリスちゃん」の枠だったらしい。ユウカが、よしよし、と頭を
「——よね。……で、ど、どう? 気持ちいい?」
「う、うん」
「そ、そうっ、良かった。好きなだけそうしてていいわよ」
これ、向こうも後悔してるのでは? 声がうわずってるし……なんて相手のことを考える余裕は、こっちにもない。触りたい。触りたい。顔だけじゃなく、この太ももを手で触って撫で回したい。出来れば、そのまま上の方へ、太ももの間の秘めやかな場所へ……いやいや、そういうのは妄想にとどめておけ——
「……んっ♡」
「⁉︎」
ユウカが甘い声を上げた。いやいや、触ってないぞ? 僕はちょっと頭を動かしただけで。
「ちっ、違うのよ? 虫、そう、虫がとまったから、ちょっと、へ、変な声……が、出ちゃっ……な、何でもないからね? ぁ、あん♡ ちょっ、頭が、変なところに……ぁ♡ だ、ダメっ♡ 動いちゃっ、はぁっ♡ ぁ……♡」
「お、終わり! 終わりね!」
「んっ♡ そっ、そうよね! いくらマモルくんでも、ちょっと恥ずかしいだろうし!」
ちょっと恥ずかしいなんてレベルじゃない。まずいと思って僕が体勢を変えようとするたびに、逆にユウカが敏感すぎる反応でエッチな声を上げるものだから、僕は完全に男として反応してしまっていた。(どこがとは言わないが)大きくなっているのがバレないよう隠しながら、身体を起こそうとして、ユウカを見上げるような形になって……
「…………!」
巨大なゴムまりのような存在感を放つ、その肉の塊を見てしまった。たぷんたぷんと擬音がつきそうな二つの巨大なふくらみは、ぴっちりと服が締め付けているせいか、真下から見上げているせいか、普段の二倍か三倍くらいの大きさに見えた。
で、
「……こほん」
姿勢を正したユウカが、わざとらしく
「いっ、一度体験したことだし、ひざ枕はもう十分よね? 私も、ちょっと恥ずかしくなってきちゃったし——ちょっとだけよ? 少しだけ。じ、自分から言い出しておいて、恥ずかしいなんて、ねえ? そんな——な、何よ、その顔は!」
そんな言い訳、聞いてない。顔、真っ赤だし。それにしても、とうとう思いっきり触ってしまった、ユウカの生の肌……やっぱり気持ち良かった……想像していたより何倍も……。それに、あの気持ち良さそうな声。エッチする時って、ユウカもあんな声を出すんだろうか。エッチする……そういう時って、二人とも裸で抱き合って……裸で……あんな風に——
「ごめんなさい」
「な、何でいきなり謝るのよ!」
期待を裏切るようで悪いけど、僕はエッチなことばっかり考えています、そんな意味を込めて謝っておいた。
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そんなことがあって、夕飯が終わり、その後——
『ユウカ、元気ー?』
先生からの連絡は突然で、相変わらず軽かった。とはいえ、ユウカの唯一の元の世界との接点であり、相手が先生ということもあり、彼女の表情は明るかった。
『あまり長く通信出来ないから』
とのことなので、こちらでの生活が安定していることや、うちの家族のことなどを説明しておく。
『マモルくんに任せちゃって正解だったみたいだね。それだけ安定した生活が送れてるなら安心だ』
『はい。これなら彼の学校が始まった後のことも、心配いらないと思います。長くお世話になるなら、いろいろ考えないと、とは思っていますが』
『そこは大丈夫。帰れそうなめどは立ったよ。遅くとも八月中——マモルくんの夏休みが終わるまでにはキヴォトスに帰れると思う』
えっ、と僕とユウカは
「…………」
どう表現したらいいのだろう。驚いているのは確かなんだけど、ホッとしているというよりは、どうすればいいか戸惑っている——そんな表情をしていた。
「どうしたの? 良かったじゃない。結構早かったと思うんだけど」
「う、うん、そうね。新学期が始まった後のことも心配なくなったし、生活費も今月の分お世話になるだけで済みそうだし」
「そうじゃなくってさ。ほら、返事打ちなよ。先生、待ってる」
と、
『ユウカ、嬉しい?』
その質問に少しためらった後、ユウカは、
『嬉しいに決まってるじゃないですか! 嬉しくない理由なんてあるわけないでしょう!』
嘘つき。
とにかく、詳しい事情はいずれ、とのことで、先生との会話は打ち切られた。
「また強がり言って。何か帰りたくない理由があるなら聞かせてよ」
「帰りたくない理由? 帰りたくない、理由……うん……」
「無理には言わなくていいよ。それとも、そういうのじゃなくて悩んでるの?」
「いえ、そうね……。……少し、怖いのかも知れない。私、セミナーの会計をやってるでしょ? だから、申請書の不備を指摘しに行ったり、部費を削減するって言ったり、あんまり好かれてないのよね」
「ああ、「冷酷な算術使い」って呼ばれたり?」
「な、な、何で、そんな呼び名知ってるのよ⁉︎ 私、そんなの言った? もー……、知られたくなかったのに……」
「ごめんごめん、ブルーアーカイブでそうだったから」
「え? ……そう」
メインストーリーの二章の冒頭、ゲーム開発部にユウカが廃部を言い渡しに来た時、モモイがそう言っていたはずだ。ただの憎まれ口の類だろうと思って軽いノリで口にしてしまったけど、やっぱり本人に言ったら気を悪くするか。ユウカは不機嫌そうに黙ってしまった。
「……まあ、そういうわけだから、帰ってもあんまり歓迎されないかも、なんて。セミナーは困ってるだろうから、当然早く帰ってきて欲しいでしょうけど」
「歓迎されないなんて、そんなわけないでしょ。そりゃ、生徒会の会計がそんなに好かれはしないだろうけど、ユウカ本人を本気で嫌ってる人なんていないよ。本当は頼れる人だと思ってる」
「……それも、あのゲームのストーリーに書いてあった?」
「そうだよ。キヴォトスに危機が
「詳しいのね」
「こういう時、話が通じやすいだろ? だから最近は読んでるんだ」
「ああ、それで」
というのは建前。本当は、ユウカのことをもっと知りたくて読んでいる。あんまり……特にプライベートなことまで読むのは嫌がるだろうし、よくないとは思っているけど。
「とにかく、大丈夫だよ」
「そうね、それはそこまで心配してるわけじゃないし」
「それはって、他にもあるの?」
「……ない。何もないわ。聞いてくれてありがとう」
ユウカは、夕飯の後片付けをしなきゃ、と言って、行ってしまった。
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ちょっとした興味本位で聞いただけだった——だったら、なぜ聞いてしまったんだろう? とにかく、そのつもりだった。
「ユウカって先生のことが好きなの?」
「は?」
「——あ、ごめん。こんなこと聞かない方が良かったか。……え?」
先生のことを聞かれたら、恥ずかしがったり、
「……何で、そう思ったの?」
「だって、二人でいる時の態度とかさ。まあ、「好き」っていうのとは違うのかも知れないけど。ごめん、悪かったよ。勝手にそう思っただけで……」
「マモルくん、私と先生が二人でいるところなんて、見たことないでしょう?」
「それはそうなんだけど、ほら、ブルー……」
「それも、
「……あっ」
ユウカの悲痛な表情を見て、僕はとんでもないことを言ってしまったのに気付いた。いや、今までずっととんでもないことをしてきた事に気付いた。ストーリーばかり読むようになって、僕は……
「——私は、そのゲームのキャラじゃない! 私は私よ! 今、ここに実際に存在している私よ!」
「ユウカ、その……」
「そのゲームに、どれだけ本当のことが書いてあるかなんて知らない! でも、マモルくんが私を見てないのは分かる! さっきだって、そのゲームの知識で私と周りの関係まで決めつけて、私が嫌そうな顔をしたのだって気付いてないでしょう⁉︎」
「…………!」
——嫌そうな顔、してたか? 思い出せない。僕は、どっちかといえばユウカを安心させることができたって、ストーリーを読んでおいて良かったなんて思っていて……。
「あなたが、私をそんな風にしか見てくれないなら、もうこんなところ出て行く! あなたの世話にだってならない!」
「待って、ユウカ!」
玄関に向かって、本当に出て行ってしまいそうなユウカを追いかけて、必死に抱き止める。そこには……僕の腕の中には、確かにひとりの人間がいた。ずっと一緒に過ごしてきて、今は傷ついて泣いている女の子がいた。ブルーアーカイブなんてゲームは、何も関係なかった。
何で、こうして触れるまで分からなかったのか。僕にでも出来ること、僕にしか出来ないこと、僕がすべきこと、それはユウカを理解して側にいる、それだけだったのに。ゲームのキャラに詳しくなることなんかじゃなかったのに。
「ごめん、ごめん……」
「うっ、うぅ……」
「僕のことは嫌いでもいいよ。でも、出ていくのなんてやめなよ。ここにいた方がいいよ」
ぎゅっと、抱きしめる腕に力を込める。
他にちゃんとしたところがあるなら、出て行かれてもしょうがないと思った。それでも、こんな風に飛び出して行って、いいところが見つかるとは思えなかった。
「……嫌いなんかじゃない。だから、ショックだったの。きっと悪気なんてないし、ここまで責めることじゃないって分かってたけど」
「言い訳はしないよ。とにかく、これからは直す」
ユウカが、無言でうなずく。体から力が抜けて、落ち着いたのが分かった。もう出て行こうとしたりはしないだろう。
と、ユウカがくるっと振り向いて、今度ははっきり僕を睨みつけて(死ぬほど怖かった)言った。
「大体っ! 何で先生なのよ! そんなこと、あるわけないでしょ⁉︎」
「え? えぇ……」
この期に及んで、と思われるかも知れないけど、弁解させて欲しい。ブルーアーカイブのプレイヤーで、ユウカが先生に対して全く何の恋愛感情も抱いてないとまで言い切れる人、そうそういるか? いくらブルーアーカイブとは事情が違うにしたって、正妻候補とまで言われている、あの露骨な分かりやすいユウカだぞ? いつもリアクションは大きいわ、小声でブツブツ言ってるわ……。この流れでそんなこと、口が裂けても言えないけど。
第一、実際に先生からメッセージが来るたび、あんなに喜んで……まあ、それはいいや。
「でも、キヴォトスに他に恋愛対象になるような男っていないんでしょ? そこ、どうなってんのかよく知らないけど」
「だって、先生は大人よ? 私と見てる世界が全然違うもの」
「大人だから」という理由であっさり否定していいもんだろうか。それじゃすまないような激重感情を抱いている子が、他にも数人いたような気がするんだけど。アビドスの子とか、トリニティの子とか、SRTの子とか。もちろん、ゲームを念頭に置いちゃいけないって話なんだけど、それにしたってさあ。
「だ、第一、他に恋愛対象がいないわけじゃないでしょう? それこそ、同じくらいの年齢の男の子とか」
「はい?」
同じくらいの年齢の……それに該当するのは、僕だな? 該当はしている。
「ちっ、違うわよ⁉︎ あ、あ、あ、あなたのことを言っているわけじゃ……」
「分かってるよ。でも、恋愛対象には含まれてるんだ、一応?」
「そ、そうね! もしかしたら将来的に、そういう可能性もあるってだけだけど! もし、ずっと一緒にいたとして!」
「じゃあ言っておくけど、そっちももうちょっと僕のことを理解してよ? これでも一応男なんだから、ユウカが信用しきっているほど安全じゃないよ?」
「そ、それは……私も、今日、反省したわ」
「あ、そうなんだ。……今日?」
ユウカが、顔を真っ赤にして無言でうなずいた。
「…………」
「…………」
どれの話なのか分かったので(分からないわけがない)、二人とも顔を真っ赤にしてうつむいてしまう。さっき触れたユウカの生の肌の感触を、甘い声を思い出してしまう。向こうも一緒なんだろう、お互い恥ずかしくて何も言えない——
「お、男の人って、本当にああなるのね、びっくりした」
「⁉︎」
「あ、ご、ごめんなさい。男の人はどうしても体が反応しちゃうからしょうがない、って言おうと……」
「見たの⁉︎」
「ズ、ズボンの上からよ?」
「当たり前だよ! 脱いでないし!」
死にたい、生まれて初めて本気でそう思った。
「なっ、何よ! 今まで、一度もそんな風になったことないじゃない! そっちこそ、もう私のこと女だなんて思ってないんでしょう? 下着姿を見たって、裸を見たって、平然としてるし!」
「うっ、それはまあ……」
「言い訳すらしないし! もうっ、もうっ、バカーーーっ!」
返す言葉もありません。バカ、バカ、と言いながら、ぽかぽか叩くのが可愛らしすぎて、そういう意味でも何も言えません。これはこれで、痴話ゲンカした後にイチャイチャしてるようにしか見えなさそうだな。
「でも、その方がいいだろう? 万が一、どっちかが相手のことを好きになったりしても、いつかはユウカは帰っちゃうんだから——あ、ごめん、僕、また……」
ユウカが泣きそうな顔になったのを見て、また失言したのだと思った。
しかし、ユウカは首を振って否定した。目に涙をためて、
「違うの。ここの生活があんまり楽しくって、さっきまで忘れてたの。いつかはキヴォトスに帰らなきゃいけないってこと。好きなだけいていいみたいに錯覚して……」
「ああ、それで……」
さっき言わなかったのはそれか。……そんな気持ちのユウカに、ストーリーがどうとか、僕は幻滅させるようなことをベラベラ
「もし……もし、選んでもよくて、私がここにいたいって望んだら、マモルくん……」
「ユウカが本気で望むなら、僕が何とかするよ。ずっとここにいていい。でも、キヴォトスに帰りたいって気持ちは変わらないんだよね?」
「私の故郷だもの。ただ、我がままを言いたくなっちゃっただけ。こんなこと言ったって、困らせるだけなのに」
「何でも言っていいよ。言われなきゃ分からないことだってあるんだから」
離れたくない、無意識にそう思っていたんだろうか——ユウカをぎゅっと抱きしめながら、ここでキスでもして、ずっと一緒にいようと言ってあげたいと思っていた。責任も取れないただの子供の一時の感情とはいえ、そんなことを思ってしまう自分は、今後もユウカを好きにならずにいられるんだろうか、初めてそんな不安を覚えた。
まっすぐ進めばいいだけだったはずの道は、急速に様相を変えようとしていた。
ちなみに、来てからユウカは大体いつも同じ格好です。髪はハーフアップにして、体操服ユウカとほぼ同じイメージです。
ユウカが先生に何の恋愛感情も抱いてない理由は、いずれ出てきます。