【完結】「ラッキースケベ?いいや、これは運命だった」〜転移してきたユウカと二人暮らし〜 作:春画屋@二次創作R18
予定ではあと3〜5話程度です。
「ふんふんふ〜ん♪ この制服を着るのも久しぶりね」
今日のユウカはご機嫌だ。そして、正装……みたいなものと言っていいんだろうか。秋葉原で僕の前(正確には上だけど)に現れた時と同じ姿だ。ミレニアムの制服に、黒い手袋、髪はツーサイドアップにしてある。まぎれもなく、「ブルーアーカイブの早瀬ユウカ」の姿だ。
「ユウカ、ネクタイまがってる」
「本当? あっ、ありがとう。ふふっ、マモルくん、優しい奥さんみたいね」
「日本では同性婚なんて出来ないんですけどー?」
「冗談よ。うん、完璧〜♪」
仕事が落ち着いたとかで、兄さんがここに来るのだ。初めて会うということもあって、ユウカには最初に会った時のブルーアーカイブそのままの格好をしてもらっている。まあ、初対面だからあまりラフな格好も……ということもある。
「あれ? ユウカ、口紅とか塗ってる?」
「口紅っていうか、色つきリップだけどね。マモルくん、女の子の変化に敏感な方? そういうの、結構嬉しいものなのよ」
「いや、僕の前でしたことないのに、兄さんの前ではするんだなって」
「……そういう器の小さいこと気にしてると、幻滅されるものよー? マモルくんのいいところは、素直なところなのに。はい、言い直して」
「可愛いよ」
「本当? やっぱり褒められると嬉しいわね〜♪」
こっちが恥ずかしくなるほど、ユウカがはしゃいでいる。まったく、最近はユウカの方が僕よりよっぽど素直だよ。
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「おぉ、本当にブルアカのユウカちゃん」
兄さんの第一声はそれだった。
弟さんや家族の皆さんにお世話になってます、と丁寧にお辞儀してあいさつ。それからユウカが、ミレニアムの制服をつまんで見ながら質問する。
「やっぱり、そう見えますか?」
「少なくとも、見た目だけならね。ヘイローもあるし。声も……」
「だとしたら、ブルーアーカイブっていうゲームと、私がいたキヴォトスって、どんな関係なんでしょうか?」
「一応、それを一緒に考えるために来たわけだけどね。作業をする間、軽く話を聞かせてくれる?」
そう言うと、兄さんは部屋の中や台所を見て回っては、ちゃんと生活できてたみたいだな、とか、俺がいた頃よりよっぽど綺麗だ、などとチェックし始めた。
ユウカが、くいくいと僕の服の
「ね、お兄さん、頼りになりそうな人なのね」
と嬉しそうにささやいた。
パソコンを引っ張り出して、少し大きめのモニター(持ち歩けるらしい)を繋いで、僕たちにも画面が見えるようにセッティングする。そんな兄さんに、モニターを物珍しそうに見ながらユウカがいろいろと質問しては、「ミレニアムでは〜」「ミレニアム製の〜」なんて話をする。兄さんとは話が合うようだ。
「……で、エンジニア部って本当に何でも武器とかつけちゃうわけ?」
「そうなんですよ。特に意味もない上に、下手したら暴走して事故も起こしかねないし、いつもとんでもない額の予算を要求してきて……」
「ああいうのってさ、実績があるとやっぱり予算おりやすいの? 交渉よりそっち?」
「うーん……使い道とか金額にもよりますけど、私は実績重視ですね。申請した通りのものが出来るかどうかも分かりませんし、
「やっぱり結果を出すのって重要だよなあ〜」
「可能性を感じるものには積極的に投資すべきだと思いますが、出せる金額には限界がありますからね。みんなその辺、理解してないのか、してるのに無視するんだか……はぁ」
何かこの人たち、普通に取引先との会話してるみたいな雰囲気だな。僕だけ取り残されている。ブルーアーカイブの知識でしゃべってるんだけど、無難な世間話というか。
その内、話題はストーリーの内容に移っていった。トリニティやゲヘナ、それからアビドス。
「カイザーグループって、そんな有名なんだ」
「とにかく系列会社が多いですからね。でも、地上げはともかく連邦生徒会の防衛室と
「そんなのはないか。ま、連邦生徒会長だっているわけだしね。SRT特殊学園なんかは?」
「ヴァルキューレとは別にああいう組織が存在するのは知っていましたが、あそこまで理念がしっかりしているとは思いませんでした。あれ、本当なんでしょうか?」
「んー、真面目な子が多いのは事実みたいだしなあ。ん? どうした、マモル?」
「いや、すごいなって。僕は組織単位で考えてブルーアーカイブを読んだことなんてないから」
「そこはゲームの楽しみ方が違うって程度の話だよ」
確かにブルーアーカイブをやる理由は、キャラであったりストーリーであったりゲームの内容であったり、いろいろあるのは知ってるんだけど。
「そもそも俺は、ユウカちゃんの転移に関しては、かなりしょーもないオチって気がしてるんだよな」
「オチって。そんな、笑い話じゃないんだよ?」
と、ユウカを見たところ、
「そうなのよね。何か私もそんな気がする……」
と、顔をしかめていた。そうなの?
そうこうする内に、パソコンとモニターの準備が出来た。兄さんはマウスをいじりながら、
「まあ、キヴォトスの場所については、結論はあまり変わらないんだよな」
「そうなの?」
「現実的に考えて行けない場所だったら、判明しても意味ないだろう? 行き来する手段を知ってる先生に聞くのが一番早い。考えるにしても優先順位は低いな」
「やっぱりそうか」
先生は知っているはずなんだから安心、という話でもある。
「ブルーアーカイブについてはどうですか?」
「そっちは、きりがないって感じかな」
「きりがない?」
「うん。一応、俺の考えを言っておくと、ブルーアーカイブってのはキヴォトスに対応する神話なんだが……」
「神話?」
「この世界には、いくつもの神話がある。ギリシャ神話、北欧神話、古事記なんかの日本神話、その他にも……」
兄さんはブラウザのタブを順々に切り替えていく。
「そこにはどれも舞台となる場所があり、登場人物がいる。オリュンポスやヴァルハラや
「ゼウスとかオーディンとか?」
「そう。で、俺たちはどこからその知識を得ているか——それは、そこだと言われている実在の場所よりも、むしろ神話のストーリーからだ。神々の役割や本質なんかもな。例えば、
「うん」
古事記や日本書紀によれば、高天原という地にアマテラスという女神がいた。その女神は最高神であり、太陽神でもあったが、弟のスサノオの乱暴
僕の説明を聞いていたユウカが、あっ! と声を上げた。
「連邦生徒会長と、その失踪?」
「そう、そういうこと」
「?」
ぽかんとしている僕にユウカが説明してくれる。
「ブルーアーカイブは、連邦生徒会長が失踪した後の物語でしょう? それによって、キヴォトスにとって連邦生徒会長がどれだけ重要な存在か、本質は何なのかを描いてるってことよ。ですよね?」
兄さんがうなずく。
「アマテラスが最高神であり太陽神であることを、俺たちは天の岩戸のエピソードから知っている。アメノウズメとか他の神々の本質もな。ブルーアーカイブも同じ役割をしているってことだ。アビドスの話は「生徒」と「大人」の関係の象徴。SRTの話は「SRT特殊学園」という組織の本質。他のストーリーも何かしらを表現している……」
「なるほど」
すごい。ブルーアーカイブの謎が解けてきた気がする。
「——というのが、俺がでっち上げた説だ」
「えっ」
「でっち上げなの⁉︎」
感心して、損した……。
「極端に悪い言い方をすればな。一プレイヤーとしての俺の個人的な説ではあるけど、ツッコミどころや矛盾だって山ほどある」
「でも、説得力はあったよ。矛盾点とかも、一つ一つ検証していけば……」
「成立はしちゃうんだよな。そこが問題なんで。こじつけようはいくらでもあるし……。そうだな、ユウカちゃんはこれとは別の考え方でキヴォトスについて考えたことはある?」
「わ、私ですか?」
ユウカは少し考えて、
「「秋葉原」に対応して「
「多世界解釈みたいなものかな。確かにブルーアーカイブの背景には、日本と酷似した場所が多いんだ。渋谷、お茶の水、新宿、鳥取駅なんかも有名だな」
モニターに、検証サイトが映し出され、いくつもの比較画像が表示される。左にブルーアーカイブの背景、右に日本のどこかの風景写真。確かに、まんまのものが多い。知らなかったな。
「だとすれば、キヴォトスとは日本という国と重ね合わせに存在している街なのかも知れない……」
「なるほど」
「——という説をでっち上げることも出来る」
「またか!」
いちいち落としてくるなあ。
「言い方なんだろうけど、でっち上げるって言うのやめない? 途端にうさんくさくなる」
「実際、うさんくさいって言ってるの。俺みたいな素人の思いつきだぞ? 問題は、確定している情報が少ないせいでどんな説でも大体成立しちゃうってことだ。真面目に考えたらきりがない」
「面白い話だったんだけどなあ。まあ、僕たちの問題とはあんまり関係ないか」
「完全に的外れじゃないかも知れないし、意味がないわけじゃないんだけどな」
兄さんはなまじ頭がいいせいか、どうも身もふたもない結論が多い。確かに、僕たちはキヴォトスの研究をしてるわけじゃないけど。
「でもそうすると、考えてもしょうがないことばかり、ってことですか?」
「いや、一つ重要なものがある。「先生」だ。ユウカちゃん、「先生」って実在するんだよね?」
「え? は、はい。実在するとか、そんな大層な存在ではないと思うんですけど……」
「どんな人?」
「どんな人って、えーと……」
先生がどんな人か? ——考えてみれば、僕は
「先生……どんな人か……うーん……」
「何か言いにくい事情とかある?」
「いえ、そうですね……。でも、これ言っちゃうと……」
ユウカの口は重い。
「……おじいちゃん……?」
「え?」
「おじい……何?」
何だって?
「枯れた感じっていうか、家で
「え? お年寄りなの?」
「いえ、そこまでの年ではないと思うんですが、こう……仙人みたいなヒゲなんか生やしてたり。あ、見た目の話ですよ?」
「…………」
「…………」
僕は兄さんと無言で顔を見合わせた。仙人って何だ……。
「ほら! 何か私が先生の悪口言ってるみたいになったじゃないですか!」
「そんなことないって! 年齢を重ねることは悪いことじゃないし!」
「枯れたっていうか、くたびれた感じなら「便利屋先生」だって……こんな感じ?」
「どれですか? この画像、ですか……? いや、こういうやつれた感じじゃなくて、むしろ元気いっぱいで、朝は早起きしてラジオ体操から始まるそうで」
「ラジオ体操……」
午後のおやつは、こぶ茶を飲みながら、せんべいかようかん、あとよくお小遣いとかお菓子をくれるらしい。本当に孫と遊ぶおじいちゃんだ、それ。
「ゲームもやってないし、おもちゃも買わないし、仕事も速いんだ……」
「とにかくひょうひょうとしてて、仕事も他のことも「終わってるよ〜」なんて言って、いつのまに終わらせたんだろうって感じよ。逆に、生徒の足を
「いや、偉い人なんだよ? あっちの「先生」も」
設定上の先生と、ユウカのところの先生と、どっちに対して失礼で、どっちに謝ればいいのか分からない。でも確かに、メモリアルロビーみたいなノリで生徒に好意を持たれる感じじゃなさそうだ。まあ、相手がおじいちゃんみたいな人じゃ——ん?
「あっ、それでユウカ、あの時あんなに怒ってたのか! 僕が、ユウカが先生のこと……なんて言ったから!」
「は⁉︎ 違うわよ! いや、それもなくはないけど、話題が話題だったから——そっちこそ、何で分かんないのよ! あーもう、何であなたって、何でもそつなくこなすくせに、そういう話になると……」
「そういう話って、何の話だよ⁉︎」
とやっていたら、「
「何にしても、ブルーアーカイブのふわっとしたイメージそのままではない、「先生」という実在する人物がいるわけだ。そして彼は、「キヴォトスの外」からやって来たとも、そこのことを知っているとも明言している。明確に、この日本とキヴォトスを
「そうですね。こちらから聞く形にすれば話題にもしやすいでしょうし、特に隠したりはしないと思います。ただ、今までを考えると、そこまで聞く余裕があるか……」
「先に質問をまとめて箇条書きにしておくぐらいは出来るだろう。ユウカちゃん、モモトークってテキストファイルの添付とか出来る?」
「大丈夫だと思います」
「じゃあ、手伝ってくれるかな」
というわけで、二人は作業を始めた。やることがない僕は、コーヒーでも淹れてこようか。
「ユウカ、また帰るのが早まるかも知れない。良かったね」
そう言ったらユウカはピクリと反応してから、
「そ、そうね。次回に得られる情報が多ければ、私たちの側で出来ることが見つかるかも知れないし、予定が早まるかも。早く帰れる……そうよね……」
「あんまり早すぎるのも抵抗ある?」
「そんなことないわよ。そのためにこうしてお兄さんだって協力してくれてるんだから」
やっぱり、ここでの生活が
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「お兄さん、夕飯も食べていけば良かったのにね」
「忙しいんだよ。いろいろやってるらしいから」
「せっかく手料理を食べてもらおうと思ったのに、残念」
「……あっ、そ」
ついそっけない返事をしてしまった。
「あら? もしかして、また妬いてる? ユウカの手料理を食べたことがあるのは僕だけなのに〜、なーんて」
クスクス笑う。そんなユウカも可愛いと思う——つまり、図星なんだけど。兄さんに限らず他のどんな男にもユウカの料理を食べさせたくない。独占欲だ。
「私がおしゃれしてることといい、マモルくんって、先生だけじゃなく他の人にも嫉妬するのね」
「してないよ。一応、兄さんのことは尊敬してるんだ。自立してて仕事もできるし、家にも頼らないし、頼もしいし」
「本当にそうみたいね。見ていても、そんな感じだった。マモルくんは、そういうところ素直だから——」
「だから、そういう人が僕よりユウカと仲良さそうだったら、多少は悔しいと思うんじゃない?」
「へ?」
ユウカがちょっと間抜けな声を出して、そのまま、あわあわと手を振って、目に見えて慌てた。からかってるつもりだったんだろうけど。
「そ、そ、それって、世間一般では、やきもち妬いてるって言うんじゃ、ない、かしら?」
「どもらないでよ、こっちが恥ずかしくなる。どんなに尊敬している相手でも、ユウカを自分以外の男に会わせるのは嫌なの」
「で、でも、具体的に何かあるわけないって分かるでしょう? 目線の高さっていうか……向こうがこっちを見る目がもう全然違うんだもの。せいぜい、一方的に憧れる程度でしょ?」
「だからまあ、嫉妬ってほどじゃない……と思うんだけどなあ」
以前、兄さんの当時の彼女と会った時、似たようなことを思った。住む世界が違いすぎて、何かあるかもって思うこと自体バカバカしいというか。
——まあ、確かにああいう大人の女性と比べたら、ユウカじゃねえ……
「ちょっと、今、失礼なことを考えなかった?」
「いや、そんなっ!」
「もうっ。……今日、リップを塗ったりいろいろ気をつかったの、お兄さんと会うからってだけじゃなかったのよ?」
「え? それって……僕を意識したとか?」
「だ、だって! こんな日でもなかったら、いきなりいつもと違う格好なんて出来るわけないじゃない! 今まではちょっと油断しすぎてたって思って、反省したけど!」
「あ、そんなに僕が言ったの気にしてたの。別にそこまで……」
と言ってから、あそこまで慣れきってた僕も問題か、と思った。でも、言わせてもらえば、そっちが男扱いしてくれないから……
——ふと、ユウカを見た。そして気付いた。自分のためにおしゃれをしてくれる——それが女の子にとってどれだけの武器になるのか、男をどれだけあっさりと降参させてしまうのか。今、僕、ドキドキしてる。
「ど、どう? あの日のまま、出会った時と同じ格好。ミレニアムの制服に、この髪型。ブルーアーカイブと同じだって言われた時の。似合ってる?」
「う、うん」
「…………。……かわ……ぃ——……?」
「うん、可愛い」
「…………っ」
かすれて消えてしまいそうな声。質問するだけで恥じらう姿。見た目はもちろんのこと、その仕草の全てが可愛い。もじもじしながら、チラッチラッとこっちを見る。
そして、少し迷った様子を見せてから、とん、と静かに僕の胸に身体を預けてきた。ふわり、とスミレ色の髪が浮いて、いい匂いがした。抱き止めたユウカの身体を感じながら、そうだ、出て行こうとしたユウカを止めようとして、抱きしめて、身体全部で触れ合った気がして——あの時の感じと同じなんだ、と思った。
——これって、ユウカは……。
自意識過剰かも知れない、違ったら大恥をかくな……と少し
「ユウカ……僕のこと、好きなの? 男として」
「……もしかしたら、そうなのかも、って思ってた。一緒にいて安心するし、楽しいし、気を許せる相手だから……そういうのを好きって言うんじゃないかって思ってた」
「そうなの? 気をつかわなくってすむって、真逆なんだと思ってた。でも、恋愛対象の一人でしかないようなこと、言ってたじゃない」
「分からなくなっちゃったの。だって、あ、あ、あ、あんなの見ちゃっ……え、えっと、その」
「落ち着いて。大体何の話か分かるから」
「あぅぅ……」
思い返すと、
「急に、自分の気持ちがものすごく子供っぽく思えてきちゃって。だって、恋人同士が
「僕相手じゃ無理ってこと?」
「いろいろ考えたの。あなたならいいのかも、とか、やっぱりそれは無理、とか。それに、自分が子供なだけなんじゃないかとか、逆にいやらしいだけなんじゃないかとか。その内に、自分でもわけわかんなくなっちゃって」
「う、ん……」
聞いても、僕にもさっぱり分からない。子供っぽいったって、ピュアな気持ちが全然なくて、セックスのことばっかり考えてる方がまずいんじゃないのか? 可愛かったりスタイルが良ければ、恋愛感情なんてなくても平気でエッチしちゃう、問題のある男っていっぱいいるだろうし。それとも、そんな奴あんまりいないのか? 分からない……。
「そんな風に悩んでた私に、あなたは「先生のこと好きなの?」なんて、全然見当違いなこと聞いてきたのよ⁉︎ 分かってる?」
「え⁉︎ あっ、それは怒る! それは流石にちょっと!」
うわぁ……。そこで、それ言ったのか。僕のことで悩んでるのに、よりによって(って言うのは失礼な気もするけど)あの先生の話を、ゲームの知識で。ユウカの側から見たら、完全にバカにしてるみたいだもんな。反省しよう。
「あ、あなたに言われたんじゃなければ、ゲームがどうとか、気にもしなかったんだから! 分かってる? す、す、好きかも知れないって思ってた相手だから、あんなに怒ったんだからね!」
「ご、ごめんなさいっ!」
「ふんっ!」
照れ隠しなんだろうか、腕組みをしてそっぽを向いてしまった。顔は真っ赤だし、心なしか震えてるし。やっぱり照れ隠しか。
——でも、僕への気持ちでそこまで悩んでくれたのか。……なら、僕は? 僕もユウカのことをきっと……
「……ねえ、これって、やっぱり好きってことなのかしら」
「そうだと思うよ、僕の
「でも、好きだからかも知れない、そう思う?」
「そうかも知れない」
「……うん、嬉しい」
僕を見て、ユウカがはにかんで、小さく「私はそれで十分」とつぶやいた。そのいじらしい姿がたまらなく
「……ね、二人とも分からないんだったら、試してみる? 恋人同士じゃなきゃしないこと、してみて……」
「……うん」
その誘惑に抗うことは出来なかった。「好きかも知れない」という大義名分があったから。
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暗い寝室に入って明かりをつけようとして、ユウカに袖をつかまれた。「あ、あんまり明るいと、見られちゃうから、やだ……」と心ぼそそうに言う。「そこまでするか分からないでしょ」と答えながらも、ベッドスタンドをつけるだけにしておく。そこまで——僕たちは、どこまで、何をするんだろう?
ユウカが、ぽふっとベッドの上に倒れ込む。緊張して体が硬くなっているのが、見ただけで分かる。
制服のスカートはやはり短くて、寝た状態では中が
「わ、私も……ジャケットは脱いじゃって、手袋も外しておいた方がいい?」
「ブレザーは?」
「シャツ、薄いからシワになっちゃうし、ブラが透けちゃうかも……」
「そ、そっか」
裸だって見ちゃったんだ。下着ぐらいもう見慣れちゃったんだろ? もう一人の自分がささやく。でも、そうじゃない。今の僕にとっては、それは神聖で特別なものになっている。
下着すらそう思う相手の身体が、目の前にある。ユウカの肉体を今から自由にしていいと、許可がおりている。僕の望むまま、どんなことをしてもいいと。
——ドクン。
自分の心臓の音が聞こえる。白いシャツ、ネクタイ、黒のブレザーとスカート。ミレニアムの制服は、こうして見るとかなりユウカをスレンダーに見せている。ブレザーの、少しキツめのボタンとシャープな黒がそう思わせるのだろうか。
僕がベッドに乗ると、ギシッと音がした。ん……と、緊張気味のユウカの声が聞こえる。そして、彼女の
「マモル、くん……」
「ユウカ……」
見下ろすと、紅潮した彼女の顔と、
そして……視線を顔から胸へ……薄いシャツとブレザーをこんもりと押し上げる、形のしっかりした双丘へと移す。
「いい、のよ……好きなようにして……。あなたなら、いい……」
これを触っても、
「ふふっ、こうなるかも知れないって思って、見えないところもオシャレしたんだから。ぬ、脱いだら、見られちゃうって」
「それって、ブラとか? 可愛いやつ?」
「だって、女の子らしくないって思われたら、やだもの。で、でも、恥ずかしいからあんまりじろじろ見ちゃダメなんだからね?」
大胆なことを言っているようで、ユウカが間がもたなくて必死に言葉を探しているのが分かる。目を合わせようとしない。落ち着きなく、視線をさまよわせている。見られていない、そのことが僕を大胆にさせた。ミレニアムのかっちりした制服に
緊張で震えながら、僕は膨らみに手を伸ばす。その指が触れる……
「ネ、ネクタイ、ゆるめた方がいいかし——ひゃんっ♡」
驚いたようなユウカの声。でも、そこにはもう性的なものが混じっている。軽く触れられただけで、もう快感を感じ始めている。自分の手で真面目なユウカをいやらしい子に変えてしまう、そんな甘美な予感に身を震わせる。僕の頭はカーッと熱くなり、手のひらにおさまった肉の塊を味わうことしか考えられなくなる。強くつかむと、指がぐにゅっと沈みこむ。そして、欲望のままに揉みしだく——
「あっ♡ あっ♡ んっ♡ ま、マモルくんってばっ♡」
「僕が、何?」
「んっ♡ そ、んなっ、ぁん♡ え、エッチな触り方っ、は、んんっ♡」
「いやらしい声、出てるよ」
「え、あっ♡ や、そ、そんなこと、言っちゃっ♡ ダメっ、恥ずかし……ん、んくっ、くっ、んむっ」
ユウカが口をふさいで、必死に声がもれないようにする。快感に耐えようとする様子を見て、さらに興奮する。無駄な抵抗だと教えてやりたい。もっといやらしい声を出させたい。もう我慢できない——
「ふぐっ、んっ、んっ、ぁ♡ あふっ♡ だ、ダメ、そんな乱暴にしちゃ……んくっ、んっ、ふぁっ、んっ、ん〜〜〜っ」
ユウカが頭を振ってイヤイヤをする。んっ、んっ、と押し殺した声を無視して、ブレザーの下に潜り込ませた右手で、弾力のある乳房を揉みしだく。薄いシャツの生地越しに、硬い感触。ブラジャーだ。まだ、生の乳房の感触は味わえない。その代わりに、形が変わってしまいそうなほどに、荒々しく揉みしだく。これが……これが女の子の胸……この手の中にあるのが……。僕は、あのユウカの胸をいじりまわしてる……あぁ……あぁ……。
んっ、んっ、と、くぐもった声と共に、ユウカが下半身をくねらせる。もう、これは邪魔だ。僕はブレザーのボタンを外し、ガバッと前を開いてしまった。シャツが乱れて、裾が出てしまっている。短いスカートはめくれ、美味しそうな太ももがあらわになっている。僕は露出した生肌に触れ、じっくりと撫でまわして存分に味わう。太ももの付け根——ほとんど股間のあたりまで
「ふっ♡ ンっっっ、は、ぁ♡ あ、あ、あ、ン♡ んぁっ♡ あ、ダメ、そこっ♡」
「ユウカっ、ユウカ……」
「あぁ……あ、ぁん♡ ぁ、んくっ、あぁ……♡ ふっ、ンンっ♡ ぁ、ふ♡」
スカートの中に蛇のように忍び込んだ僕の手が、ユウカの尻を
「——ぁっ♡ んっ♡ ——くん、私——んぁっ♡ あっ♡ あっ♡ あな、————きっ、なのっ、んぁ、あぁっ♡ 私、大、す————んぁぁっ♡」
ほとんど身体を密着させて、僕はユウカの上半身も下半身も思うままに撫でまわしていた。ユウカのよがり声は途切れることなく続いている。何か言っているようだが、聞き取れない。
——もう、全部脱がしてしまえ!
ぐいっと、ブレザーの襟をつかんで左右に引っ張り、白いシャツのみのユウカの無防備な上半身が現れる。これも脱がせてしまえば、あとはブラジャーのみだ。それを外せば……ゴクリと喉が鳴る。もう、ユウカは僕のものだ。僕だけのものだ。
右側の乳房をぐにゅっと握りしめると、あぅっ、とユウカが苦しそうな声を上げた。僕は邪魔なネクタイを乱暴に引き抜き、シャツを引き裂くようにして——
——脱がそうとする寸前に、ユウカの顔を見た。やっと。
「——? ど、どうしたの? いいのよ? 私、あなたのこと、好きなんだから……」
その目は、怯えていた。にも関わらず、無理に作った笑顔で、ユウカは僕を好きだと言ってくれる。好き、好きだから……それは、ユウカを欲望のままに抱いてしまっていいという許可。僕に抱かれてもいいと思う根拠。きっと、はっきり口に出さなければ効果がないと怖がって、何度も僕に言っていた言葉。それすらも、聞こえていなかった。僕は、そんなものがなくてもユウカを自分勝手に犯そうとしていた。きっと、抵抗されても止まらなかった。
スカートはめくれ、シャツは胸元がはだけ、きわどいところまで見えてしまっている。まるで乱暴された後みたいに。ユウカの目には、うっすら涙が浮かび、綺麗だったスミレ色の髪は、乱れてボサボサになってしまった。あの、可愛らしかったユウカが。それでも、
——何をやってるんだ、僕は? これが好きな女の子にすることか?
僕は逃げるようにベッドから降り——
「ちょっ——な、何やってるの、マモルくん!」
ごすっ、ごすっと鈍い音が、目を覚ましてくれた……ような気がする。ユウカももういつも通りだ。服は乱れたままだけど、いつもの可愛らしいユウカだ。醜い肉欲の対象なんかじゃない。
「大事なユウカを守るための、ケダモノ退治……」
「それ、自分のこと言ってるの? あなたなら、いいって……」
「ダメだよ。抱くことしか頭になくって、またユウカのことが見えなくなってた。怖がってることすら気付かなかった」
「……! 私、怖がってなんて……ううん、そうなの? また……」
「こんな男にもてあそばれちゃダメだ。僕は、もう少しでユウカを酷い目にあわせるところだった」
「もう分かったから大丈夫よ。私はあなたのことが好きなの。だから……」
「そうやって、必死に自分にも言い聞かせてたんじゃないの? 好きだから、いいんだって」
「だ、だって、私たち、もうどれだけ時間が残っているのか分からないのよ? どんどん話が進んじゃって、帰る日が伸びそうな気配は全然なくて、いつキヴォトスに帰らなきゃいけないのか分からない! 本当の気持ちを確かめる余裕なんてないじゃない!」
崩れ落ちるユウカを見ながら、僕は絶望していた。ユウカはもう帰ることを義務だと感じている。ユウカにとって、キヴォトスは帰りたい場所だったはずなのに。どうしてこうなってしまったんだ。ユウカを変えてしまったのは僕だ。その上、こんな……。
僕がブルーアーカイブのことを意識して口にしないようにしてから、ユウカもキヴォトスでの生活や、友達のことを話さなくなっていた。それは、話題に出ないんだから当たり前だと思っていた。僕たち二人が、ちゃんとお互いを見るようになった証拠だと思っていた。でも、僕がユウカを見なくなった時と同じように、ユウカはきっとキヴォトスを見ていない。
そして、僕たちがどうであろうと変えられない事実がある——
「残された時間がないっていうのは、いつか帰るのが確定してるからだ。僕たちの関係に、最初から未来なんてないんだ」
だから僕はユウカに過度に好意を抱かないように、抱かせないようにして……どちらにも失敗したんだ。
「ユウカはキヴォトスに帰らなきゃいけない。何があっても、絶対に」
「わ、私が、ひっく、望むなら、ずっといられるよう、何とかしてくれるって、言ったじゃない……うっ、うぅ……」
「ごめん」
どうにかならないからじゃない。僕はユウカが望まなくても、絶対にキヴォトスに帰す。他の理由ならともかく、こんなどうしようもない男のために帰るのをやめるなんて、それだけはダメだ。
「もういいわよっ! 帰ったらみんなに、こんな可愛い子の身体を好きなだけまさぐって、いい思いをしておいて、途中で逃げた最低男だって言いふらしてやる!」
「言いふらすって……それはダメ! それは多分、君の方もろくなことにならない……」
「どうせどうにもならないなら、優しく丁寧にエッチして、その後キスして、「ずっと一緒にいようね」とか言ってくれれば良かったのよ! 嘘だって分かってても、それで良かった!」
「そんな無茶苦茶な……」
情けない声を出しながら僕は、こんな風に泣かせることしか出来ないなら、無責任な嘘つき男でも、一瞬でも女の子を幸せに出来るならマシなんだろうか……そんなことを考えていた。でも、そんなのは僕には絶対に出来ない……。
次の日、僕たちは一言も口をきかなかった。二日目に仲直りして、そして三日目にはいつも通り……こんな日々を、僕たちはいつまで送ることが出来るのだろうか。時間の流れは止められない。
この先生は主に茶飲み友達として人気があります。若者のノリについていけないので。要領がいい分物足りないので、ユウカみたいに世話好きの子ともちょっと距離があります(十分仲はいいんですが)。
お兄さんの推測通り、彼がかなり異質な存在ってこともあります。
次回、かなり話が大きく動く予定です。