【完結】「ラッキースケベ?いいや、これは運命だった」〜転移してきたユウカと二人暮らし〜 作:春画屋@二次創作R18
[終-前](8) 約7000字
[終-後](9) 約11000字
[エピローグ](10) 約5000字
「お仕事終了!」
「やったー!」
僕、ユウカ、兄さん、三人で万歳する。これで仕事は全て終了だ。予定通り、完璧!
「結構、早めに終わったな。午後まではかかるかと思ったけど」
「そうだね。これなら、明日帰るまでユウカもゆっくりできる」
「お兄さん、ありがとうございます。それにマモルくんも」
そう、仕事が予定通り終わったということは、明日がユウカがキヴォトスに帰る日だ。先生と兄さんとで決めた日だ。とうとう、その日がやって来た。……ユウカはもう大丈夫、ちゃんと帰れる。僕だって、迷うことなく笑って見送ることが出来る……。…………。
「なんて顔してるんだ、マモル」
「え? ああ」
「今日の残りの時間は自由なんだぞ? それに、これ」
兄さんが
「はい、お前の分。それにユウカちゃんも」
「? はい、これは……えっ?」
「何? 封筒? え、これ……」
「少ないけど、給料。一応、生活費としてうちの親に返す分を差し引いて、この金額ってことで満足してくれ。ユウカちゃんは使い切らないと、日本のお金なんて持って帰っても意味ないだろうし」
少ないと言いつつ、高校生にとっては結構な金額が入っていた。こんなにもらっちゃっていいのか? 確かに仕事はしたけど……。
「いいんですか? こんな……」
「労働時間から計算すれば、それなりに
「デート……」
——デート。そう言えば、一応付き合うという形になってからも、デートに行ったことはなかった。これが最後のチャンスだ。
僕たちは、お金の入った封筒を
「よし、行こうか!」
「行きましょう!」
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「で、来たのがここなんだよねー……」
「何? 秋葉原デートで何か問題ある?」
「いや、何か想像してたのと違うなって。問題はないんだけど」
ここは秋葉原、オタクの街。せっかくだから、おしゃれなデートスポットにでも行きたがるかと思ったんだけど……やっぱりユウカもミレニアム生だからだろうか。よく分からない。しかも連れてこられたのは、
「ここかぁ……」
秋葉原駅前の、例の巨大家電量販店。うん、まあ、秋葉原と言えばね、ここかな。品
「しかも、まさかの文具コーナー」
「さっきから、何ブツブツ言ってるの? ほら、こっちよ……——あった! これよ!」
「電卓コーナー……」
どういうことだよ。なぜデートで電卓コーナー。いや、いいけど。ユウカは展示してあった電卓を、嬉しそうに打ったりいじったりしている。……ユウカが楽しそうだから問題ないな。
「ずっと欲しかったのよね〜。実物を見ないと買えないから、しょうがなかったんだけど」
「通販サイトじゃダメだったの? ポイントだってつくのに」
「ダメよ。大きさ、重さ、
と、えんえんと良さを語っているので、気に入っているのはよく分かった。ちなみに、これ、いくらぐらいするんだろう。ちょっと値札を見て——って何だこれ!
「高っ!」
「そう? どんな製品でも、いいものはこれぐらいするものよ?」
「そ、そうなの?」
そうなのか。……そうか? でも、万単位の金額で売ってる電卓ってあんまり聞いたことないんだけど。そういえば、ン十万するミュージックプレイヤーも、こんな感じだったけど……材質がいいからかな。アルミボディとか書いてある。
「……ね、これ、買ってもいい……?」
「? 別にダメな理由なんてないでしょ?」
「で、でも、デートの軍資金って渡されたのに、こんな色気のない場所に来ちゃって……本当は怒ってたりしない?」
「どういうことだろうとは思ったけど、別に怒ったりは……。ユウカが楽しそうで嬉しいし、欲しいのがあったなら良かったじゃない」
「う、うん。じゃあ、これ、買ってきてくれる?」
「え? 僕が?」
「そ、それで、それを私にプレゼントして欲しいのっ!」
「は?」
??? どういうことだ? 僕が買ってきて、プレゼントする? つまり、欲しいものがあったので、それを僕におねだりしてる、と。なるほど、せっかくお金もあるし——
「お金は私が出すから!」
「——何で⁉︎」
ユウカが自分でお金を出したら、プレゼントでも何でもないだろ。どういうことよ。
さっぱり分からないので、聞いたことを整理してみた。
「女の子には、誰が買ってくれたかが重要なのよ!(そうか……?)」
「でも、こんな高いものを買ってくれなんて言えないじゃない!(それはまあ)」
「つまり、お金は私が払って「買ってもらった&プレゼントしてもらった」という事実が得られるなら、それが一番効率的なのでは? Q.E.D.」
……なるほど? なるほど。やっぱり分からん。
「要するに、僕が自分でお金を払ってこれを買って、ユウカにプレゼントすればいいんじゃないの? 普通に。お金ならあるし、その方が嬉しいでしょ?」
「だ、だって、それはあなたが働いて得た正当な報酬よ? ちゃんと自分で使うべきだわ。私なんかに使わなくても……」
だからって、自分で払ってまでプレゼントしてもらうとか、そんな悲しいことをしなくても。まあ、たとえ好きな子であっても、何万もする指輪だのネックレスだのを当然のように「これ欲しいー。私にプレゼントしてー」なんて言われたら、多少はイラっとするかも知れないけど。
——その辺がユウカは、そこまで……って思うぐらい遠慮するから可愛いんだよなあ。逆に、買ってあげたくなる。絶対喜ぶし。
「初めて稼いだお金で好きな子にプレゼントをするって、最高の使い道じゃない? むしろ払いたい。払わせてよ」
「す、好きな子なんて……はぅぅ。でも、自分で言うのもなんだけど、結構な金額よ? そんな簡単に払っちゃうのは……そっ、そういうところよ、マモルくんってば!」
「でも、嬉しいでしょ?」
「……ぅん、嬉しい……」
レジに行って、「これ、ギフトってことで包んでください」と言うと、店員さんは丁寧に包装してくれた。その手つきは堂にいったもので、いかにも大事な人にあげる高級品といった雰囲気だった。それをユウカがキラキラした目で見ていて、やっぱり僕も気分が良くなって来る。こんなに喜んでくれるとは。
「お金の力って偉大だなあ……」
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「あの……マモルくんがお金の大切さに目覚めてくれて嬉しいし、私が言うのもどうなのって感じだけど、お金で何もかも解決する人間とか、金の亡者にはならないでね?」
「もともと稼げるタイプじゃないし、どっちかというと今の話にしても、
「そうなのよね」
あっさり同意されると悲しい。僕の評価は、「いい人」→「お人好し」→「騙されそう」と、どんどんマイナスに変わっていく。最近、自分でも否定できない。
「それにしても、ユウカにとって電卓がそこまで大事なものだったとは……」
「前のはこっちにくる時になくしちゃったみたいだけど、本当は生活必需品なのよねー。毎日持ち歩いてるぐらいだったのに。これ、マモルくんだと思って大事にするわね♪」
「そこまで言ってくれると、買ってあげた甲斐があるよ」
と、スマホから『……毎日使っているので、もはや「生活必需品」かもしれません』との声が聞こえた。ユウカの声で。
「この動画、まるっきり私と同じこと言ってるのね。何かちょっと怖いわね……。あー、でもそうね。うんうん、12
ユウカが見ているのは、ブルーアーカイブ公式が配信している『先生、ちょっとお時間いただけますか?』という60秒のショート動画だ。その中に、ユウカが電卓について熱く語っている回があったのだ。ゲームの方にも「愛用品(ステータスとスキルが上がるとか何とか)」として「ユウカの関数電卓」なる装備があるそうだし、本当に大事なものなんだな。
ユウカは動画を見ながら、何で私が遠回しに先生をデートに誘ってるのよ……とか、この動画の再生数っていくらぐらいの利益が出るのかしら……とか、ブツブツ言っている。夢がないな。
「それにしても懐かしいねー」
「そうね。ふふっ、あの時はまだ同い年だって知らなくて、無理に敬語でしゃべったりなんかして」
「それを
「そっ、それは覚えてなくていいのよ! ていうか、別に見栄張ってたわけじゃないわよ⁉︎」
「いやいや、今から思えば、ユウカのそんなところも可愛いと思ってたんだなあ〜、なんて」
「そっ、そんなこと言って、あなたは……もうっ」
ユウカは少し照れてから、僕とクスクス笑う。ここは秋葉原の
あの時は、まだ会ったばかりのこの子と、こんなに長い付き合いをするとは思わなかった。いろいろ大変なこともあったし、あの時の自分にアドバイス出来るなら、簡単に引き受けるなと声を大にして言いたい。女の子と一緒に暮らすって、めちゃくちゃ大変なんだぞ、と。
——それでも、あの時の決断は正解だったって信じてる。
苦労を知って、賢くなる——
「——それで……。ね、聞いてる?」
しまった。いろいろ考えていたら、全然聞いていなかった。
「ごめん、何だっけ。お昼も食べたし、この後どこに行こうかって話だよね」
「あなたのご両親に会いに行くって話でしょ?」
「そうだった、うちの親に……うちの親?」
「連れてってくれるわよね? あなたの家」
ユウカがにっこりと笑った。えっ、うちの親? 嘘でしょ……。
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言われてみればユウカには、散々うちの親にあいさつしたいと言われていたのだ。そうなんだけど、何となく「わざわざ会いたいなんて、ユウカは真面目だなあ(実際に会うわけないけど)」みたいなノリでしゃべっていたのだ。キヴォトスから転移してきましたとか、このゲームに出てくる子ですとか、信じてくれるか分からないし。
もし会わせるにしたって、「この子だよ、うちで預かってる子」って紹介すればいいだけなのだ。実際、その通りだし。そもそも異世界がどうとかって話がなければ、そうするのが当たり前なんだ。でも……
「へえー、本当に可愛い子ねー」
「名前、
「マモルくんやお兄さんや、皆さんにはお世話になってます」
うちの両親に、丁寧にお辞儀するユウカ。その横に座る僕。めちゃくちゃ居心地が悪い。だってこれ、どう見たって息子が彼女を家に連れてきましたって図じゃん。実際、その通りじゃん。ユウカじゃなくて、「僕とユウカが」うちの親と話してる図じゃん。何をしゃべればいいの。
「いやね? マモルにどんな子なのって聞くと、とにかく可愛い可愛いって」
「あの、母さん」
「表情がコロコロ変わって可愛いんだとか、ちょっと強がるところも可愛いんだとか、でもすぐに素直になるから、そこがまた可愛いんだとか、そういうのを発見するたびに、私に」
「そ、そんなことを言ってましたか……」
「母さん、あのさ」
「それから」
「母さん、もうやめて」
死にたい……。正直に言おう。多分こうなると思って、何かと理由をつけては会わせないようにしてたんだ。もう逃げ切れると思ってたのに……。それよりキヴォトスの話とかさせてくれよ。本人のいないところでしょっちゅう可愛いって言ってたのを、バラすのやめて。
ていうか、そんなにいろいろ言ってたっけか? 自分でも全然気付かなかったけど何なんだよ、僕は。ユウカのこと大好きじゃん。大好きすぎるだろ。どんだけ好きなんだよ。そんなの聞かされたって、ユウカだって困るじゃん。どんな顔してるのか、怖くて見れないよ。あはは……とか、引き気味に笑ってるけど。
「で、これがヘイローってやつか。天使の輪っかみたいな……」
「そう、それ。ユウカが来たキヴォトスってところでは、みんな頭の上にこれが浮かんでて、その他にもキヴォトス人はみんな身体能力がすごくて、銃で撃たれても死なないし学園都市で生徒が自治してて、あとなんだっけ、えーと、トリニティとゲヘナがエデン条約で連邦生徒会長がブルーアーカイブで」
途中からよく分からなくなってきたけど、早口で説明した。とにかく、話題をそらしたい。うちの両親、何を説明しても普通に受け入れられそうだし。
「なるほど、異世界転移ってやつか」
「流行りの異世界転生とはちょっと違うんだけどね。でも、父さん、よく知ってるね」
「だって、転移の方はうちらの頃から結構定番の設定だったやつだもんなあ。そういう呼び方をしてなかっただけで、異世界に勇者として召喚されましたとか、これのパイロットになってくれとか、ああいうのは全部そうだろ? 多分、今WEB小説で流行ってるようなのも初期のはラノベで読んだし。異世界に召喚されて、貴族の女の子の使い魔になるやつとか」
「ラノベ読んでたんだ」
しかし、そういう知識があるにしても「なるほど異世界転移か」であっさり納得したな。この人、自分が転移しても「これって、ラノベで読んだあれか」で済ますタイプなんだろうな……。
母親は母親で、「転生と言えば、あの頃はダイヤルQ2でアトランティスの前世の仲間と出会うのが女子高生の間で流行ってて」とか言って、普通に混じって会話してるし。でも、母さんの言ってるのは何か違う気がする。何で転生そのものが流行るんだよ。
何にしても、早めにユウカを連れてきても全く問題なさそうだったのが分かった。いっそ、ここまで恥ずかしいことになる前に早めに会わせておけば良かった。
「とにかく、ちゃんと帰れるんなら良かった。生活費として渡した分も返してもらっちゃったし、俺たち何もしてないもんなあ」
「全部マモルたちに任せちゃってたものねえ」
「そんな……私がこっちにいる間の生活は全てお世話になってしまって、本当に感謝してるんです。なのに、あいさつしに来るのもこんなにギリギリになってしまって……。お金だけでも返せて、お兄さんにはすごく感謝してるんです」
「ただでさえ異世界なんか来ちゃって自分が大変なのに、そんなの気にしなくて良かったのに」
両親はいつも通り、あっけらかんとしていたけど、ユウカのしっかりした言葉を聞いていたら恥ずかしくなってきた。僕だってお礼は言わなきゃいけないはずなんだから。
「お金とか住む場所だけじゃないよ。僕は、いざという時は父さんや母さんが何とかしてくれるって、どこかで安心してた。感謝してる。実際、初日からあんな電話かけちゃって」
「あ、その話は別に……」
ユウカに泊まってくれと言われて、「親に聞いたらダメって言われたー」なんて情けない言い訳を作って逃げようとしたなんて、今思うとみっともないことこの上ない。今だって、ユウカがいなければ言おうとは思わなかった——
「何でお前、空気読んで言わずにいてやったのに、自分から言うの? あんな情けない話」
「え」
「あんたが言うと、正直で偉いとかより心配になるのよね。これで世の中渡っていけるのかって」
「そうですか。まあ、そうだよね……」
言わなきゃ良かったらしい。はぁ……。
「ふふっ。まあ、こうやってバカ正直に言わなくても、とは私も思いますけど……。でも、彼がこういう人だから、私も安心して暮らせました。私を大事にして、守ろうとしてくれるのは嘘じゃないって、いつだって信じられましたから」
ユウカが僕に向かって、ありがとう、と言った。照れたりせず、真面目な顔でそう言った。両親も変に
僕たちはそのまま実家にいて、夕飯を食べて行った。ユウカが作るのを手伝ってくれたのが、母さんにはよほど嬉しかったらしい。ユウカのおかげで、僕は思いがけず親孝行が出来たようだ。
——[終-後]「最後の夜、そして懐かしいキヴォトスへ」に続く
主人公のマモルくんは、ゼロ魔の才人くんを大人しめにしたイメージで書いてました。
ファーストキスならぬ、ラッキースケベから始まる二人の恋のヒストリー…ということで。
電卓の話は「お時間いただけますか?」の第3回です。