【モンスター娘TD】ご主人くんのことが大大大好きなドラゴン娘2人と閉じ込められる100回イかないと出られない呪いの部屋は実在した! 作:五十貝ボタン
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「どうして、こんなことに……!」
目の前にはビリビリに破れた忍者装束に身を包んだドラゴン娘がふたり。
ふたりのしなやかでハリのある肌にはみっちりと縄が食い込んでいる。
「ご主人様、どうにかしてください……!」
シルバードラゴン娘のアルギュロさん。大柄で肉付きのいい体は、縄が食い込むとむっちりといまにこぼれ落ちそうに見える。
「くやしいが、ここは主(あるじ)に頼るしかなさそうだ……」
レッドドラゴン娘のエリュートさん。たわわな乳房が縄で
ふたりとも縄にしばられて身動きができないようだ。
モンスター娘の中でも強い力をもつドラゴン娘の体をいましめる縄が、ひ弱な僕の力でほどけるはずもない。
「いったい、どうすれば……」
僕はあたりを見回した。
畳敷きの部屋。土壁。妖怪島で見たことがある。和室というやつだ。
障子戸はあるけど、開けて外に出ようとしてもこの部屋の中に戻ってきてしまう。
閉じ込められている。誰かに助けてもらうわけにはいかない。
頭上には、謎の数字が浮かんでいる。
『0/100』
「なにかを100回やればいいってことでしょうか」
手がかりがあるはずだ。
どうしてこうなってしまったのか。
イチから思い出してみよう……。
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「というわけで、目録を作ろうと思いまして」
「目録、ですか」
僕はアルギュロさんのコレクションルームに招かれていた。
アルギュロさんは人間の文化を調べることを趣味にしているシルバードラゴン娘だ。大陸からの漂着物や密猟者が持ち込む品物を集めては、日々人間の文化を研究しているらしい。
ここは世界に残された、最低……じゃなくて、最後の楽園ゲシュペンス島。
外界から閉ざされたこの島には、人間が足を踏み入れることはめったにない。
やってくるのはたいていヨコシマな目的を持った密猟者であり、まともな文化交流など望むべくもない。
「おかげでモノは増えていくんですけど、なんと記していいのかわからないものも多くて」
アルギュロさんが紙束をめくる。ちらっと見せてもらうと、名前が空白のまま数字や特徴だけがずらっと並んだリストがある。
たとえば、こんな感じだ――
SCT-072
グドゥグ海岸で発見。漂着物と思われる。ひも状。何かを縛るのに使う?
SCTは「巣の(S)近くで(C)たまたま見つけた(T)の意味らしい。
「巣の近く」というのはゲシュペンス島全域のことだ。アルギュロさんは自分の巣(と言っても、かなり文化的だ)からめったに離れないけど、ドラゴン娘らしい縄張り意識がないわけではないらしい。
「じゃあ、ここにあるのは、名称がよくわからないものばかりなんですね」
「ご主人様なら、なんて書けばいいのかご存じではないかと思ったんです」
「力になれるかわかりませんけど、この島には他にまともな人間がいませんからね」
いちおう元ラシオン騎士団のシスイさんが島に滞在しているけど、彼女はドラゴン娘とはあまり会いたがらない。飼っているワイバーンが他のドラゴンのにおいを感じると怯えるからだ。
「たとえばどんなものがあるんですか?」
「そうですね、たとえば……」
アルギュロがものを取り出す。それは五角形を組み合わせた正十二面体の形をしている。大きさは片手でつかめるぐらいだ。
「これはSCT-19です。どうやら、魔法のアイテムのようなのです」
「魔法のアイテムって、すごいものじゃないですか」
「いろいろと調べてはみたんですが、どうも内部に別の空間を持っているみたいです。おそらく、何らかの条件で外にあるものを閉じ込めてしまうんじゃないかと思うんですが……」
ふう、とシルバードラゴン娘は息をついた。
「その肝心の条件がわからなくて」
「魔法に詳しい人に聞いてみたらどうでしょう? リコさんや、ティーレさんに」
と、言うと、アルギュロはメガネの奥の目をギュッとさせた。露骨に嫌そうだ。
「彼女たちが調べたいというのなら、協力しますけど……」
どうやら、人に頼まれて力を貸すのは構わないが、自分の方から頼むことには抵抗があるらしい。
それも、ドラゴン娘のサガか・・・。
「とりあえず危険そうですね。封印しておきましょう」
さっきのSCT-072とやらでSCT-19をぐるぐる巻きにしておく。ちょうちょ結びにしておけば、封印っぽくなった気がする。
「他にはどんなものがあるんでしょうか?」
「こっちはSCT-801です。強化カードですね」
「強化カード?」
確かにそれは薄い紙片の形をしている。カード型だ。
「はい。任意の呪物(じゅぶつ)に差し込むとその効果を100倍にします」
「どういう意味ですか?」
「いにしえの文献にはこんな一節がありました。
『ドロップした強化カードを使って呪物を強化していこう!
ただし強化できる回数には限りがあるから、よく考えて強化を選ぼう』
……と」
「いにしえの文献ってそんなローグライクのチュートリアルみたいな感じなんですね」
ゲームシステムの根本から間違えてそうなアイテムの登場で頭が痛くなってきた。
「あっ、そうだ。ヴァンクーヴァー様なら知っているのでは?」
「ビビ神様ですか……いえ、やめときましょう」
「でも、どんなものかわからないと目録なんて」
と、言おうとした僕の肩をアルギュロさんががっしりとつかむ。物腰は穏やかだけど、ドラゴン娘らしく体格は立派すぎるほどだ。肩を掴む手も大きい。
「ご主人様に名前を決めてほしいんです」
にっこりとアルギュロさんが笑顔を浮かべる。
その笑顔の裏には「邪魔されたくない」という意思が滲み出し、『ゴゴゴゴ……』という静かな効果音が(聞こえてないのに)漏れ出すくらいだった。
「わ、わかりました……」
さっきは他の人に頼りたくない雰囲気を出していたのに、僕に頼ることは問題ないらしい。
ちょっとした特別あつかいを受けていると思うと、悪くない気分……
なんて、ちょっと浸っていたとき。
ドゴォン!
とつぜん、壁が吹っ飛んだ。
「ここにいたか、アルギュロ! さあ、勝負せよ!」
粉塵の中から現れたのは、銀の髪と赤い鱗のレッドドラゴン娘だ。
なぜかシノビ装束に身を包み、「ニンニン」の形に指を立てている。
「またあなたですか、エリュート。勝負はしないと言ったじゃないですか」
「ふん、ドラゴン娘オブジイヤーの時も勝負がうやむやになってしまったからな。最強のドラゴン娘が我であることを証明してやる!」
エリュートさんはモンスター娘最強を自認している。だが、そんな彼女も同じドラゴン娘たちには一目置いているらしい。
なかでもアルギュロさんにはなにかと突っかかっているみたいだ。
だけどアルギュロさんは争い事が嫌いで、その挑戦を受けることはない。
「ふっ。我もバカではない。貴様が戦いを受けないことくらいはわかっているぞ」
「いま壁をぶち壊して入ってきましたけど」
「勝負するのは……」
ジト目で睨むシルバードラゴン娘の視線を、レッドドラゴン娘は颯爽と髪をかき上げて受け流した。
「忍法だ!」
ぼんっ! エリュートさんの背後で何かが爆発した。
忍法なのかもしれない。
「忍法……?」
「ふっ、貴様ともあろうものが知らんのか。妖怪娘たちや妖怪島の人間たちが使う特殊な技術だ」
「忍者のことぐらいは知ってます! いつからあなたまで忍者になったんですか?」
「最近、エリュートさんは忍者にハマってるみたいで……」
妖怪島との交流の影響だろうか。エリュートさんはダークでクールな忍者に憧れて、自分用のシノビ衣装まで作ってしまったようだ。
そういえば、彼女が今着ているのはそのシノビ服だ。
手足は具足のようなものを身につけているけど、胴体を守ってるのは極小のビキニみたいな下着とふんどし、それに網状のインナーだけ。
しなやかできめ細やかな肌を守れているようにはとても思えない。いや、そもそもエリュートさんにはほんらい、防具なんて必要ないのだ。あの滑らかな肌にはドラゴンの鱗に匹敵する防御力がある。刃も矢も、魔法だってはじき返してしまうのだから。
モンスター娘にとって、衣装は気分をあげるためのもの。
逆に言えば、忍者の格好になって気分が上がれば、忍法だって使えてしまうのかもしれない。
「いま、私はご主人様と大事な目録作りをしているんです」
「貴様の考えぐらい、私には読めるぞ。そういう名目で主(あるじ)を独り占めしようとしているのだろう」
「うぐっ……」
アルギュロさんは言葉に詰まったようだった。
「ふっ、隙を見せたな! 忍法封印いま破る!」
「封印してたんですか?」
「していたのだ! 見よ、忍法ころもがえ!」
エリュートさんが指を複雑に組んで印を結び、ぱんと両手を合わせた。
すると、なんということだ! いずこからともなく細かく刻まれた紙が舞い上がった。
それは吹雪か散る花か、はらりはらりと舞い跳びながら、銀竜娘を取り囲む。
「しまった!」
と叫んだ時にはもう遅い。紙吹雪がやむころには、その衣装もまた変えられていた。げに恐ろしきは異形の呪法。忍びの業(わざ)と竜の呪力(ちから)が合わさりて、獣神をも恐れぬ怪力乱神を引き起こしていた。
こほん。
アルギュロさんの服装が一瞬で変わってしまった。
衣装はエリュートさんのものに近い。手足には具足をつけ、わずかな下着の上にあみあみインナー。
ただしアルギュロさんはエリュートさんに比べてもいろいろと大きいので、ぴちぴち感もさらに増している。インナーでさえ食い込んで今にも破れてしまいそうに見える。
いかなる術理によるものか。忍法ころもがえというのは、相手を勝手に着替えさせる技らしい。
「くぅ……どういうつもりですか」
アルギュロさんはほんのごく一部しか隠れていない下帯……ふんどしって形状のやつだ……が落ちてしまわないように、長い尻尾を緊張させる。後ろからだと、幅広のお尻が丸見えだ。
「言っただろう。忍法対決だ。これで条件は同じだな」
ふふんと鼻を鳴らし、エリュートさんは大きく胸を張った。インナーに押さえられているというのにまったく負けていない柔らかな乳房が、ばるんっ! と弾む。
エリュートさんはあくまで対等な条件でアルギュロさんと勝負したいらしい。いきなり侵入してきて、対等もなにもない気がするけど。
「はぁ……まったく。仕方ありませんね。だけど、ここでは……」
と、アルギュロさんが折れかかっている背後で何かが動いた。
先ほど、ぐるぐる巻きにしたSCT-19を覚えているだろうか。何かを封じ込める力を持つという謎の十二面体である。
それが謎の光を放ち、形を変え始めていた。さらに巻き付けていたSCT-072(ひも)が ヘビのようにくねくねと動いていた。
ひゅばっ!
SCT-072は目にもとまらぬ速さで両端をひらめかせた。
「あぶない!」
エリュートさんとアルギュロさんの声が重なった。二人は俊敏に高速で動く紐から僕を守ろうとしたのだが、それが裏目に出てしまった。
紐が狙っていたのは彼女たちの方なのだ。
「くっ……! 絡みついて……!」
「ほどけません……!」
紐はみるみる手足に絡みつき、体の自由を奪っていく。僕もなんとかしてほどこうとしてみたけど、ぴくりとも動かない。
それどころか……
「引きずり込まれる!」
謎の光を発しながら展開していく十二面体。ひもは明らかに、そちらへ引きずり込もうとしていた。
「あ、あれは!」
いつの間にか、SCT-19にはカードが刺さっている。SCT-801だ。
「さっきの衝撃でカードが刺さって、呪力を100倍にしたんですね。でも、発動条件がなぜ満たされたのか……」
「分析してる場合じゃないです!」
ぴかーーーーーーっ!
SCT-19は完全に展開し、目も眩むほどの光を放って……