巨乳エルフ族の隠れ里にヒト族の少年が一人、何も起きないはずがなく…… 作:Rオウ
空には雲一つなく、蒼天がどこまでも青く広がっていた。
大森林には陽光が降り注ぎ、緑の天蓋が里の周囲を覆っている。
今日はティオの成人の儀式が執り行われる日だ。
朝から里はどこか厳かで、そしてどこか浮き立った空気に包まれていた。
里の中心に
美女。
美女。
そして美女。
ここにヒト族の男性がいれば間違いなく目を奪われるほどの美しさを備えた20代の美女が群れをなして広場を埋め尽くしていた。
しかも全員が全員、美しいだけでなくスタイル抜群のナイスバディなのだ。
この上もなく大きく盛り上がった双乳に、大きく張り出して尚且つ引き締まった健康的な臀部。そして細くくびれて美しいラインを作っている腰。
ふくよか、ともまた違う。ましてや肥満などでは絶対に違う。
出るところが出まくった彼女たちの立ち居振舞はむしろ軽快で軽やかですらあった。
そんな彼女たちがゆっさゆっさと形の良い巨乳を煽情的に揺らしながら今日の主役であるティオに近づき、祝福の言葉をかけていく。
ティオにとっては全員幼いころから見知った大人の女性たちだ。
一人一人に礼儀正しく感謝を返しながらもティオが彼女たちに見惚れるようなことはない。
鼻の下を伸ばすようなこともない。
ティオは巨乳エルフ族の隠れ里以外の世界を知らないのだ。
女性とは目の前に集まっているお姉さんたちのことであると、ある種の擦りこみが行われているようなもので、皮肉なことに自身がとても恵まれていることに気づいていなかった。
「……でもほんとに全員集まってくれてるんだなぁ」
広場に集まっている巨乳エルフ族の女性を眺めつつティオは呟いた。
里の住人と言っても、全員が里に住居があるわけではない。
金属製の道具を作る鍛冶場や、農作物を育てたり、植物の繊維から布を作っていたりと、一族単独で自給自足を成り立たせるために、里から離れた場所を流れる河川の周囲であるとか、作業の効率と立地を踏まえて里の外に生産施設があったりする。
今日執り行われるティオの成人の儀式ではそういう飛び地の住人も含め、全員が集まってきてるのだ。
ティオは
今日はそんな人たちも含め全員がティオの成人を祝うために集まってくれているのだ。
ティオは里長からヒト族である自身の立ち位置について里の歴史・背景とともに教え込まれて、十分に理解していた。
──自分がとても恵まれていることに。
◇◇◇◇◇◇
「はい、ティオくんはここね。あっ、もうティオくんって呼んじゃダメなのかな? 大人になるんだもんね♡」
ナリアに手を引かれてティオは広場の中央に連れてこられた。
ティオから見て今日のナリアは異常なくらい上機嫌だった。
「う、うん。ごめんねナリアお姉ちゃん」
ティオは思わず謝ってしまう。
ナリアだけではない。
フィリアやルリアも自分よりはるかに年上のお姉さんなのだ。
姉のように慕っている三人の幼馴染たちを追い抜かして、自分が先に成人してしまうことになんとなく申し訳ない気分がしていた。
「何言ってるの? お馬鹿さんね、ティオは♡」
パンパンと背中を叩かれる。
ぶるんぶるんとナリアの胸が揺れる。
慌てて胸から目を逸らすそんなティオを好ましい目で見つめるナリア。
一方で不機嫌なのはフィリアだ。
自分の弟分であったはずのティオが先に大人になるなんて納得できるはずもない。
むっすぅと頬っぺたを膨らませながらティオの後ろについて歩いている。
その横でルリアが「ダメだよフィリアちゃん。お祝いしてあげなきゃ」と言い聞かせている。
ナリアはその二人に一瞬だけ視線を向け、すぐにティオに見る。
抑えきれない感情が沸き上がってくる。
「ふふっ♡」
笑みが浮かぶ。
年齢が離れているとはいえ男の子が成人するのだ。
里に未婚の女性は三人しかいない。
ナリアの他にはフィリアとルリアしかいない。
「ふふふふっ♡」
ナリアは笑みを抑えることができなかった。
◇◇◇◇◇◇
広場の中央で緑に白のラインが入った儀式用の服を着たティオが一人ぽつんと立たされていた。
成人の儀式の詳細については教えてもらっていない。
ティオに不安がないわけではなかったが、それよりも期待の方が大きかった。
集まった里の女性たち全員の視線を一身に受けながらティオはできるだけ堂々と見えるように姿勢を正したまま里長がやってくるのを待っていた。
やがて、広場に集まったエルフたちが左右に分かれて道が生まれ、その奥から、淡い緑と白のドレスを身にまとった里長エロリナと長老たちが静かに姿を現した。彼女はティオの前に立つと真っ直ぐに彼の目を見つめた。
「ティオ」
エロリナの声にはいつもの優しい響きはなく、里長としての威厳に満ちており、広場全体に響き渡った。
「10年前、あなたは赤子の身でわたくしたちに保護されました。あなたの血はヒト族でありながら、あなたの魂はこのエルフの里で育まれてきました」
エロリナは一度言葉を切った。
広場に集まった里の者たちをぐるりと見渡し全員に聞こえるように声を張り上げる。
「ティオ。あなたは自らの意志で己の未来を選ぶ時が来たのです!」
エロリナは、再びティオへと向き直った。
「聞きなさい、ティオ。あなたには、二つの道があります。一つは、ヒト族としてあなたの血の故郷であるヒト族の元へ帰る道。あなたがそれを望むなら、あなたに精霊の祝福を与え、この大森林から送り出すことを約束しましょう」
広場に集まった巨乳エルフ族の女性たちの間にざわめきが走った。
エロリナの後ろに控えている長老たちからも動揺する気配が起こる。
成人の儀式の際にこのような問いかけをしたことなどかつて一度もなかったのだ。
「そして、もう一つの道は」
エロリナはさらに言葉を続けた。
「あなたのヒトとしての血に別れを告げ、代わりに精霊を受け入れ我らの同胞として、巨乳エルフ族として共にこの里に根を生やすことです」
ティオはエロリナの視線を真っ向から受け止めた。
「さあ、選びなさいティオ。この精霊と我ら同胞すべての前で。あなたはどちらの道を歩みますか」
広場は水を打ったような静寂に包まれた。
広場に集まった巨乳エルフたちの視線がティオに注がれている。
彼のその小さな口から発せられる言葉を息を殺して待っていた。
ティオは、ゆっくりと顔を上げた。
「ヒトの国へ……帰る……?」
ティオの口から囁くように漏れた言葉に里長エロリナの目が微かにブレた。
この問いかけについてエロリナは事前に長老たちに相談をしていない。
エロリナ一人で決めたことだった。
ティオには幸せになってもらいたいのだ。
大森林の外れにあるヒト族の墓。
年に一度ティオを連れて行っているのは他ならぬエロリナだ。
「答えよ!」
ティオの視線が広場に集う人々の上を滑っていく。
フィリア、ルリア、ナリア……姉と慕う幼馴染たちも不安そうにしているのがティオには見えた。
彼女たちの母親である、リリエルさんとシルヴィアさん。そして、いつもティオに優しくしてくれる、里のたくさんの巨乳エルフのお姉さんたち。
皆、ティオの決断を待っていた。
最後にティオの視線は目の前に立つエロリナに戻った。
赤子の頃に自分を拾い、誰よりも深い愛情で育ててくれた、育ての母親。
ティオは大きく息を吸い込むと、声変わりのしていない美しい響きのソプラノで宣言した。
「僕は……僕のいる場所は、ここです!」
ティオは、集まった全員の顔を一人ひとり見つめ言葉を続けた。
「僕の家族は、僕が好きな人たちは、みんなここにいます! だから、僕がいる場所はここです! エルフとして、皆さんと一緒に、この里で生きていきたいです!」
その言葉が広場に響き渡った瞬間、一拍の間があった。
そして次の瞬間、堰を切ったような大歓声と、嵐のような拍手喝采が広場全体から湧き上がったのだ。
「ティオ!」
「よく言ったわ!」
「私たちのティオ!」
集まっていた巨乳エルフたちは、互いに顔を見合わせて喜びを分かち合い、ティオに向かって祝福の言葉を投げかけた。中には安堵からか、目元を潤ませている者もいる。
「ティオ、このバカ! 当たり前じゃない! あなたがあたしたちを置いて、どこかに行けるわけないでしょ!」
「ティオ……よかった。ルリア、ずっと……ずっと、ティオと一緒にいたいって思ってたんだから」
フィリアとルナは歓声の中を駆け抜け、ティオの両側から力いっぱい抱きついた。
エロリナは、ティオの言葉を聞くと、その唇に深い満足の色を浮かべ、厳粛な表情をわずかに緩めた。彼女はティオに近づき、その赤毛の頭を優しく撫でた。
「ティオ。あなたのその決断、確かに聞きました。今日よりあなたはこの里の正式な一員であり、そして……我らが未来を託す
その声にはティオへの深い愛情が込められていた。
「さあティオ。これを飲むのです」
「……これは?」
「
エロリナから手渡されたガラス製のグラスには透明な液体がなみなみと注がれており、陽光を反射してキラキラと輝いている。
「世界樹の雫……」
一見ただの水に見えたが、よく見れば液体自体が青白く発光していた。
ティオが傍のエロリナを見上げ、エロリナはそんなティオに向けて頷いた。
「ん……」
ティオはグラスを傾け、一息に飲み干した。
エロリナの後ろに控えていた長老たちの視線がティオに痛いほど突き刺さる。
空になったグラスをエロリナに返し、ティオは自分のお腹を不思議そうに見つめた。
「……大丈夫、みたいです」
心配している表情を欠片も見せまいとしている母親に向かって、ティオは安心させようと笑顔を向けた。
そして次の瞬間、ティオの意識は途切れ視界は暗転した。
【Q&A】
Q6:巨乳エルフ族は歳を取るとどうなるのですか?
A6:エルフ族、巨乳エルフ族は300歳あたりで加齢による容姿の変化は起こらなくなります。その為、ヒト族の基準では20代後半あたりの若者しかいないように見えます。